第5章 パーティ構築考察
実際にどんな技構成、持ち物、パーティがいいのかについて。
構築の基本
最初に説明した通り「味方がいる」ことによって、苦手なポケモンを「味方に任せる」ことができる。また、大半のポケモンは「まもる」を覚えさせる事情から、技が実質3枠しかないということもざらにある。
このため、タイプ一致技以外の技(いわゆる「サブ技」)はシングルに比べるとあまり入れられず、場合によっては1つも入れられないということも生じる。
たとえば一撃ウーラオスは「どくづき」や「アイアンヘッド」といったフェアリーへの役割破壊技を持たないことが多い。「あんこくきょうだ」「ふいうち」「インファイト」「まもる」で技が埋まってしまい、どれも必要な技だからである。
ダブルバトルでは、シングルのように自身で対抗できる相手がどれだけいるかよりも、「味方との相性(プレイヤーの間では「横の相性」と呼ばれる)」が重視される。極端な弱点が存在していないかどうか、存在していたらどう対処したらいいのか、パーティを作る段階から意識しなくてはいけない。
たとえばサンダー原種の横にランドロス霊獣を置く場合、攻撃面では「ほうでん」と「じしん」を共にノーリスクで使えるため非常に強力で、防御面でもランドロス霊獣の苦手なみずをサンダー原種が、サンダー原種の苦手ないわをランドロス霊獣が対処できる。
だが、両方ともこおり弱点であり、「こごえるかぜ」を1回食らうだけでも物凄いダメージを受けてしまう。さらに両方素早いため「トリックルーム」にも弱い。
このため、後続にこおりを対処でき、かつ比較的すばやさの低いポケモンがいれば比較的安心して戦うことができる。
相性を考えるという点はシングルに通ずる部分があるが、この場合の「相性」はタイプ相性のみならず技の相性や特性の相性も含む。場合によってはタイプ相性のアンバランスさを無視してでも他の相性を優先することすらある。
たとえばエスパータイプで「ワイドフォース」を使いたい場合、サポート役としては特性「サイコメイカー」を持つイエッサン♀やカプ・テテフになることが多い。どちらもエスパータイプを持つため「ワイドフォース」持ちと弱点が被ってしまうが、他に代用は利かない。
このように、パーティを考える場合まず2匹の組み合わせから考え始めることが基本となる。
1匹をどうしても使いたいという場合であっても、その1匹の相性補完ないしサポートができるポケモン(「パートナー」「相方」などと言われる)を見つけることで安定して戦わせることができる。
役割分担
ダブルバトル内でのポケモン1体の役割としては「攻撃役(エース)」「補完役」「サポート」が考えられる。ダブルバトルでは特に「サポート」が重要で、サポート次第で攻撃役や補完役が動けるかどうかが決まる。
代表的なサポート
【「すばやさ」操作】
要素:「おいかぜ」「こごえるかぜ」「エレキネット」「でんじは」「ダイジェット」など
例:トルネロス、ラティアス、レジエレキ、ライチュウ原種、エルフーン、ニューラ、クレセリア
【「トリックルーム」展開】
例:サマヨール、ポリゴン2、ブリムオン、クレセリア
【天候・フィールド展開】
要素:「ひでり」「あめふらし」「サイコメイカー」「エレキメイカー」「にほんばれ」「あまごい」など
例:コータス、ニョロトノ、イエッサン♀、カプ・コケコ、エルフーン
【火力補助】
要素:「てだすけ」「コーチング」「うそなき」「デコレーション」など
例:イエッサン♀、マホイップ、リオル、フェローチェ、エルフーン、キュワワー、ニューラ
【耐久補助】
要素:「リフレクター」「ひかりのかべ」「オーロラベール」「キョダイセンリツ」「かいでんぱ」「いかく」「バークアウト」「すてゼリフ」「いやしのはどう」「フラワーヒール」など
例:ガオガエン、オーロンゲ、ライチュウ原種、ポリゴン2、ラプラス、キュワワー
【相手の妨害】
要素:「ねこだまし」「このゆびとまれ」「サイドチェンジ」「キノコのほうし」「アンコール」「ちょうはつ」「ファストガード」「ワイドガード」など
例:ガオガエン、ピッピ、トゲキッス、モロバレル、イエッサン♀、キュワワー、エルフーン
それぞれどのようなサポートができるかは覚える技や特性によって異なる。火力が高い場合、補完役、場合によっては攻撃役と兼任させることもある。
ダブルでサポートが強い理由の1つに「相手のヘイト(攻撃したくなる心情)を集めやすい」ことが挙げられる。
先の項で「持久戦法」は「相手に『このポケモンに危険性なし』と判断されて隣を集中攻撃され続け、結果自身だけが残ってジリ貧になり負けるというケースがありえる」ためあまり強くないと書いたが、サポート役の場合倒さないと試合の主導権を握られてしまうことから、相手は積極的に倒しに行く場合が多く、自身だけが残されることは持久戦法の場合に比べて少ない(もちろん0ではない)。
特に動きを止めたり火力を削いだり攻撃をそらしたりするようなサポートは、相手のパーティを半壊させることすらできるため、狙われやすさも抜群である。
この代表選手がダブル界のスーパーモンスター・ガオガエンである。
ガオガエンは「いかく」「バークアウト」「すてゼリフ」による耐久補助、さらに「ねこだまし」「ちょうはつ」による妨害ができ、かつ放置されかけても「フレアドライブ」で自分から倒れに行くのでジリ貧になりにくい。このスペックから優秀なサポートとして多くのパーティに採用され、使用率1位を何度も獲得している。
1匹の型
もちろん、好きなポケモンでバトルをしたいという場合は往々にしてある。そこで、簡単ではあるが特定のポケモン1匹に注目して考えてみることにする。
例えばブースターをダブル向けに育てて実戦投入させることにしたとする。
ほのおタイプで「こうげき」が高く、「こんじょう」発動時の「フレアドライブ」の火力は目を見張るものがある。反面それ以外はあまり強くない。またイーブイ系列の例に漏れずサポート技が多い。
これらの特徴から、例えばダイマックスエースを想定する場合、
特性:こんじょう
技:フレアドライブ あなをほるorばかぢから かみつくorアイアンテール まもる
持ち物:どくどくだまorいのちのたま
性格・努力値:いじっぱりorゆうかん、ASorHAベース
サポートを任せる場合、
特性:もらいび
技:マジカルフレイム つぶらなひとみ てだすけ あくび
持ち物:オボンのみ
性格・努力値:おだやか、HDベース
このように育てることができるだろう。
基本的に好きなポケモンをパーティに入れるのであればエースが分かりやすいので、エースとして運用させることとする。
パートナーの選定
エースの攻撃面、防御面での弱点を考えて、それを完全でなくても埋められるポケモンがよい。
エースとしてブースターを立てる場合、弱点である「中途な素早さ・耐久」「ほのお技以外の火力不足」等を補えるポケモンということになる。
すばやさ種族値は65なので「トリックルーム」で運用するにはややギリギリのライン。「おいかぜ」の方が分かりやすいか。
そのため、例えば「にほんばれ」「おいかぜ」を使えるエルフーンやラティアスとの組み合わせが考えられる。
パーティを組む
1匹とそのパートナーが決まったら、更にその組み合わせを補完するポケモンやサポートするポケモンで周りを埋めていって完成する。
たとえば先のブースターを第8世代剣盾鎧冠環境(禁止級・幻使用不能)で考えるならば、
ブースター ラティアス フシギバナ レジエレキ アシレーヌ 一撃ウーラオス
が案として挙げられるだろうか。
バランス面で整っているように見えてもいざバトルに臨んだ場合噛み合わないということが往々にしてあるので、実戦を積んで確認する必要がある。
ただし、パーティを組むときに「範囲攻撃への弱点被り」にはくれぐれも注意されたい。
シングルバトルでは「一貫性」という「特定のタイプの攻撃を半減されない状態」が存在する(ただしこれは本来の語の意味と大きく異なる)が、ダブルバトルの場合「範囲攻撃」に対してこれと似た状況が発生すると考えてよい。
たとえば執筆者が第6世代こんなパーティを組んだことがある。
サーナイト ガブリアス バンギラス ウォッシュロトム カポエラー ファイアロー
これはサーナイトの特性「テレパシー」を活用してガブリアスやロトムの全体攻撃とサーナイトの「マジカルシャイン」で範囲攻撃のラッシュを決め、さらにメガバンギラス(当時)が隣のサポートを受けて「りゅうのまい」を使い制圧することを主な戦術とする。
だが、実はフェアリー弱点が3匹もいる。したがって、例えばニンフィアやメガサーナイト(当時)などと対面してしまうと、それはそれは大変なことになる。
対策としてはバンギラスをハッサムに変える、カポエラーに「ワイドガード」を覚えさせるなどがある。
上のパーティでいうと実はラティアスとフシギバナが両方こおり弱点なので、こおり技をメインに据えているパーティとは若干戦い辛い。が、そこはブースターの出番でもあるので、敢えてそのままにしている。
よく用いられるパーティコンセプト
1.エース立て
強力なダイマックスポケモンや高火力持ちをパーティ全体でサポートする。
「じゃくてんほけん」起動、特性発動の補助、「てだすけ」、能力強化など、サポート方法は様々。
立てるエースによって以下に挙げるコンセプトと合わせることも多い。
2.天候
通称「天候パ」。4つの天候、「晴れ(日差しが強い)」「雨」「砂(砂嵐)」「霰」のうちいずれかの恩恵を強く受ける要素を活用して戦う(ここでは便宜上漢字表記とする)。
分かりやすいのは天候によってすばやさが2倍になる特性「ようりょくそ」「すいすい」「すなかき」「ゆきかき」を活用するパーティだろう。
天候始動方法は特性を活用することが多いが、かつては技による始動が主流だった(というよりその方法しかなかった)。特性による始動が本格化したのは天候始動特性を持つ一般ポケモンが全天候に登場した第5世代以降である。
天候を奪われてしまうと大きく弱体化するため、天候の維持が重要。天候変化特性持ちはなるべく倒されないようにする立ち回りが求められる。
基本的に天候はパーティに1つだけだが、多くの相手に対抗できるように2天候組み込む場合もある。
晴れ:ほのお技の威力が1.5倍になる。基本はほのおの大火力とくさの機動力を合わせて戦う。第9世代からは「こだいかっせい」も活用する。
雨:みず技の威力が1.5倍になる。特性「すいすい」を併せ持つみずタイプが多いため、ひとたび雨が降れば機動力2倍火力1.5倍の化け物が降臨する。
砂:いわタイプのとくぼうが1.5倍になる。ただパーティとして砂嵐を活用する場合特性「すなかき」を活用する方が主流。いわタイプはほぼ天候始動役。
霰:タイプに与える影響なし。「ふぶき」が必中になるが半減されやすく、パーティバランスも崩れがち。他タイプのサポートをどれだけ入れられるかが重要。
雪(第9世代より):こおりタイプのぼうぎょが1.5倍になる効果が追加されたため、多少しぶとく立ち回れるようになった。
なお、やや毛色が異なるがフィールドもここに含まれ、「エレキフィールド」下で「クォークチャージ」を発動させるパーティなども開発されている。
3.トリックルーム
【サマヨールは トリックルームを つかった!】
「すばやさ」は「ダメかも」を狙うのが基本。王冠類での補正が利かないので育成はやや手間がかかる。
相手に応じて「トリックルーム」を使うか使わないかを選ぶパーティも存在する(この場合「スイッチトリル」と呼ばれる)。
「コンボ」でも話した通り「トリックルーム」の始動には工夫が必要で、サポート次第で始動時の弱点が大きく変わる。剣盾ではイエッサン♀が最も有用だが、フィールド書き換えなどで妨害される可能性が0ではない。
効果が切れた後にそのまま戦うか、再始動させるかを予め決めておくとより戦いやすくなる。
ただし効果が5ターン(始動時も含めるため実質4ターン)しかないため、「まもる」等でターンを凌がれるとジリ貧に追い込まれる。ただ攻撃するだけでなく「じゃくてんほけん」等の火力補助のコンボを活用し、相手を一発で倒せるように工夫するとよい。
通称「トリパ」「トリルパ」。鈍足高火力ポケモンを先制で行動させることで、すばやさ重視のパーティに対抗する。
【ゆがんだ じくうが もとに もどった!】
4.おいかぜ
4ターンの間「すばやさ」を2倍にして上からの制圧を目指す。4ターンは始動ターンも含めるが、剣盾からは「すばやさ」の操作が即時反映されるようになったため、正味4ターンと考えてよい。
主に「すばやさが中途なエースポケモンを暴れさせる」「安全にコンボを決める」などの戦術が考えられる。「晴れ」「雨」等と組み合わせるのもよい。
性能はやや異なるが「ダイジェット」から展開するパーティもこれに含まれる。
どちらも最大の弱点は上記「トリックルーム」。
5.壁
ただ壁を張るだけでなく、壁から能力強化(主に耐久強化)に繋いで主導権を握ることを目的とする。
コンセプト自体はシングルにも存在するが、軽減率が減少している分味方と連繋が取れるため、即時展開が可能なのがポイント。「壁」+「あくび」も1ターンでできてしまう。
剣盾ではダイマックスによって自身や味方の耐久を上げられるため、ダイマックスは倒すというより受け切る目的で運用される。
最大の弱点は下記「ほろびのうた」。
6.滅び
通称「滅びパ」。場に出ている4体全員にかかる「ほろびのうた」で相手を無理矢理倒す。
交代されると効果が失われるが、特性「かげふみ」で止める他、相手2体を最初に倒しておいて残り2体に「ほろびのうた」をかけるという戦術も存在する。
ただしゴーストタイプに「かげふみ」は無効なので、相手にいた場合優先的に倒すことが求められる。
自分と相手が同時にこの技で倒れた場合「最後に倒れたポケモンがいた方の勝利」となるので、全体的に「すばやさ」は低くしておくことが多い。
なお、ニョロトノがこの技を覚えられるため、第5世代以降は雨との組み合わせも見られる。
7.グッドスタッフ
特にコンセプトを持たず、相手の立ち回りに合わせて柔軟に対応する。
ただしコンセプトがないからといってコンボがないとは限らない。「てだすけ」や「じゃくてんほけん」起動等は採用もしやすいため組み込まれることがある。
最終更新:2023年08月06日 14:09