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理想と現実! 悲劇の聖杯戦争!! ◆SpFFtiBeDg


 そこは武道の鍛錬を行う道場だった。
 木製の床は電気の光で反射していて、まるで鏡のように煌めいている。しかし、道場にいる人の心までは輝かせなかった。
 マスター・園田海未は胴着に着替えて弓道を行っている。ゆっくりと弦を引き、弓を放った。一直線に突き進んだそれは的の中央に当たる。続くように海来は弓を放ち、そして当てていく。
 とても正確で、百発百中と呼ぶに相応しい。その実力の高さは、海来が長年に渡って修練を重ねてきたことが伺える。
 誠司……それに、いおなやつむぎのように、彼女も一生懸命に頑張ってきていた。そんな海来の力になりたいと、愛乃めぐみ/キュアラブリーは思う。

「ふう……」

 海未は一息つきながら、頭を軽く振る。
 額から溢れる汗を拭いながら、彼女は振り向いてくる。

「凄いね、マスター!」

 キュアラブリーは満面の笑みを浮かべながらマスターを褒め称える。
 しかし、当の海未はしかめっ面を向けたままだ。

「ランサー」
「えっ、どうかした?」
「……この状況であなたはよくそんなに前向きでいられますね」

 その口から飛び出したのは、辛辣な言葉だった。

「今は聖杯戦争の真っ最中……私もあなたも、いつ殺されたっておかしくありません。それなのに、どうしてあなたはそんなに笑っているのですか?」
「それは……」
「もしかして、私を喜ばせようって魂胆なんですか? 『こんな時だからこそ楽しもう』とか『いつだって希望を忘れちゃいけない』とか、そんなことを考えているのですか?」

 キュアラブリーは言葉を失う。
 海未の口から出てきたのは、どれもキュアラブリーが言おうとしていたことだからだ。否定など出来るわけがない。
 違う理由を考えて誤魔化そうともしても、嘘が苦手なキュアラブリーには出来なかった。

「やっぱり……」
「えっと……どうしてわかったの?」
「あなたが単純だからです!」
「うっ……」

 キッパリと言い放ったことで、ラブリーは固まってしまう。
 そこから畳み掛けるように、海未の言葉は続いた。

「あなたはいいですよね。恵まれていて、何も失わないで、幸せな毎日を過ごしているのですから……ええ、確かに希望を持てれば楽しいでしょう。
 でも、私はあなたじゃありません! あなたの希望を私に押し付けないでください! 私は……あなたじゃないのですから!」
「マスター……」
「それに、みんなを『幸せハピネス』にするだなんて言いましたよね! じゃあ、あのジョーカーやバーサーカーという危険な奴らも『幸せハピネス』にしてくれるのですか!?
 それができればあなたは確かに嬉しいでしょう! でも、巻き込まれる私はどうなるのですか!? もしも奴らが話の通じない連中だったら、私は殺されてしまうかもしれませんよ!
 そうなったら、あなたはどう責任を取ってくれるのですか!?」

 海未の怒声は道場に響き渡る。
 ジョーカーとバーサーカーという危険人物を倒せとの『通達』が来た。彼らのことはわからないけど、きっとブラックファングやサイアーク達のように凶悪な相手かもしれない。
 海未の言うことは尤もだし、彼らが誰かを傷付けようとしているのなら戦わないといけない。だけど……

「……マスターの言うとおりだよ。その人達が悪いことをしているのなら、あたしは戦う」
「ええ、それが正しいでしょうね」
「でも、もしも助けられるなら……助けたい。その人達も何か理由があるかもしれないし、それに自分だけが幸せになるなんて――」
「甘えたことを言わないでください!」

 紡ごうとした言葉は、海未の口から出てきた叫びによって遮られてしまう。
 彼女の瞳に込められているのは怒り。サイアークを操っていたつむぎから向けられた感情と全く同じだった。

『何もできないくせに、助けるなんて簡単に言わないで!』

 そう言っていた彼女はとても悲しんでいて、泣いていた。つむぎの気持ちを理解しなかったせいで傷付けてしまった。
 あの時と同じことを繰り返そうとしている。みんなを幸せにしたいのに、これでは逆だった。
 重い事実が胸に突き刺さっていく中、唐突に海来の表情に込められた怒りが緩んでいく。そして、キュアラブリーから背を向けた。

「……私としたことが、熱くなりすぎました。申し訳ありません。少し、一人で精神統一をしてきます。ついてこないでください」
「えっ、でも……」
「一人にしてください!」

 明確な拒絶の言葉と共に海未は去っていく。そのまま部屋の中から出ていく彼女を、キュアラブリーは追うことができなかった。
 助けられるのなら助けたい。だけど、そのせいで誰かが傷付いてしまうかもしれない。そうなったら、どちらを選べばいいのか?
 みんなが幸せになるのは難しい。とっくにわかっていたはずなのに、今になってそれを実感することになってしまう。
 海未のことは守りたい。だけど他のマスターやサーヴァントの人達だって犠牲にしたくない。

(ねえ、誠司……こんな時、誠司だったどうするの? 誠司なら、マスターのことを助けてあげられるのかな?)

 不意に、彼女の脳裏に一人の少年の姿が浮かび上がる。
 相楽誠司。生まれた時から隣にいる、めぐみにとって大切な少年。彼はいつだって誰かの為に頑張っていて、めぐみもまた彼に助けられた。
 誠司だったらマスターの悩みを解決できるのか、誠司だったらこんな時でもマスターの支えになってくれるのか、誠司だったらどんな答えを見つけてくれるのか。
 誠司に相談したいけど、彼はここにいない。当たり前のようにいてくれた彼がいない事実を突き付けられただけで、とても不安になってしまう。
 今の彼女は伝説の戦士でも人助けが大好きな愛乃めぐみという少女でもない。ただ、自分の無力さを呪うしかできない一人の少女だった。
 身体の弱かったお母さんを助けることで、誰かを救う嬉しさを知った。それから、誰かを助けたいと思った。それなのに誰も助けられないことが、とても苦しい。
 海未を救う為にはどうすればいいのか……ただ、その答えだけでも知りたかった。





 心を落ち着かせる為に、園田海未は目を閉じながら黙想していた。しかし、胸のざわめきは収まらない。
 聖杯戦争と言う異常な状況を前に、少しでも平静を保ちたいと思って弓道を行ったが……気休めにもならない。むしろ、余計に動揺を強めるだけだった。
 平和だった頃の日常が胸の中に湧き上がってしまい、それに対する後ろめたさや苛立ちが湧き上がってしまう。あのランサーを見ていると、その気持ちが一層強まった。
 後先考えないで突っ走る……その姿が高坂穂乃果と重なって見えてしまった。

(私だって、誰かを傷付けるなんてしたくありません……でも、世の中はそんなに甘くないのですよ!)

 全ての人が幸せになる。それが実現できたらどれだけ嬉しいだろう。
 だが、現実はそんな絵空事で成り立っていない。アイドル活動だって、メディアに大々的に取り上げられて脚光を浴びるグループがいる裏では、夢と理想が裏切られて涙を流すグループだっている。
 華々しいように見える世界ですらそうなのだから、命を賭けた殺し合いでみんなが幸せになるなんて有り得ない。次の瞬間には、自分達だって殺されてもおかしくなかった。
 そうなっては自分達の夢は叶えられない……それを知らないで理想論ばかり口にするランサーがあまりにも腹立たしい。

(……いけません、今は落ち着かないと。その為にここに来たのですから)

 頭を振って、心の波を鎮めようとする。しかし、そうしようとすればするほど、思い出が湧き上がった。
 穂乃果やことりの笑顔。μ’sのみんなと過ごした日々。大変だったけど楽しかったレッスン。挫折と成功。どれも大切だった。
 それが失うかもしれないと考えただけでも怖くなる。だから逃げ出したいけど、そんなことはできなかった。



【千代田区・B-2/1日目 深夜】


【園田海未@ラブライブ!】
[状態]健康、道着に着替えている
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]制服
[所持金]一般女子高校生のお小遣い程度
[思考・状況]
基本行動方針:?????
0:とにかく今は落ち着きたい。後のことはそれから考える。

【愛乃めぐみ/キュアラブリー(ランサー)@ハピネスチャージプリキュア!-人形の国のバレリーナ- 】
[状態]健康
[装備]プリチェンミラー、ラブプリブレス
[道具]なし
[所持金]一般女子中学生のお小遣い程度
[思考・状況]
基本行動方針:海未のことは守りたいし、誰のことも犠牲にしたくない。
0:……どうすればいいのかな。



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最終更新:2015年03月04日 00:02