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一人×2 ◆lnFAzee5hE



「多分明日、七原を殺すことになる」
きっと明日は国語で、森鴎外の舞姫をやることになる――そんな日常を口にするかのように、
桐山和雄は作業中のパソコンから顔を上げることもなく、唐突に言った。
東京以前の七原秋也は少なくとも、クラスメイトを尾行するような趣味は無かった。
特に、不良グループのボスなどという人間を尾行するのならば、尚更であるはずだ。
ならば、考えられるのは、突如スリルを伴うそのような趣味に目覚めたか、NPCの暴走か、誰かに操られているか、あるいは自身がマスターであるかだろう。
この中の何が正解であるとしても、あるいは何一つ正解でないとしても、自分が聖杯戦争に参加する身である以上、七原秋也を生かしておく理由はなかった。

「――――」
部屋で、己の宝具――『悪魔召喚プログラム』の動作確認を行っていたザ・ヒーローは桐山和雄の言葉に顔を上げ、
肯定するでもなく否定するでもなく、再び作業へと戻った。
宝具が動作不良を起こすことはあり得ない、しかし百%の安全が保証されたとしても、ありえるはずのない百一%目を起こしうるのが悪魔という存在だ。
故に、ザ・ヒーローに安らぎの時はない、一人になってからは尚更で――そしてもう、誰と共にあったとしても一人でしかあれない。
楽器のように軽やかに響き渡るキーボードの音、それだけがこの世界に唯一存在を許された音だった。

「悪魔召喚プログラムを貸してくれ」
桐山の言葉に、悪魔召喚プログラムを内蔵したザ・ヒーローのコンピューター、アームターミナルが無造作に放り投げられる。
先ほどと比べて余りにも乱雑な扱いであるが、この程度の扱いで動作不良を起こされては実際の戦闘では全く役には立たない。
いや、そもそも作業自体がただの言い訳で、ただ染み付いた癖が抜けなかっただけなのかもしれない。
何が真実なのか、それはわからない。
ただ、受け取った桐山和雄は悪魔召喚プログラムのソースコードを流し読むと、アームターミナルをザ・ヒーローへと返した。
「悪魔召喚プログラムを作っている」
「――――」
桐山の発言に、ザ・ヒーローはやはり無言だった。
言葉だけでない、宝具を人的に再現するという行動に対して、感情一つ揺れ動いてはいなかった。
しかし、例え何か言葉を発するにしても悪魔召喚プログラムという存在の出処と、桐山和雄が神がかった天才であるということを考えれば、
掛ける言葉など、そうか――あるいは、やはりな――ぐらいしかなかっただろう。

「現段階での完成度は23%程だ、英霊との再契約、悪魔召喚、コンピューター上での電子的悪魔(デジタル・デビル)の再現、何を行うにも魔術的知識が足りていない」
「――――」
23%、この世界に召喚された日を考えれば恐るべき数字である、神ならぬ神の子の御業というならば、これ以上のものはあるまい。
しかし、そこまでだ。桐山和雄は神ではなく、神の子であった、であるが故に全知ならぬ身は知識という巨大な壁にぶつかった。
魔術は厳重に隠匿された現代の奇跡である、桐山が如何に天才でアウトローであるとしても――こればかりは出会えなければどうしようもない。

「近日中に図書館へ行く」
「――――」
ザ・ヒーローは答えない、ただ無表情なその目で一瞬だけ桐山の方を見て、悪魔召喚プログラムと向き合う作業に戻った。
図書館で魔術的知識が得られるか、その可能性は限りなく低いだろう。
しかし、この世界が偽りの東京であるあり、また己が魔術的知識を持ち得ない以上、
どこかに魔術師との優位を埋めるための手段があってもおかしくはない、そしてその手段が図書館にあるという可能性は無いとは言えないだろう。
この東京においては何事も試してみなければわからないのだ。

「眠る」
桐山和雄が眠るのは体力を癒やすためではない、ただ起きている理由が無くなったからに過ぎない。
ベッドに横たわり、目を閉じる。それだけで、すぐに睡眠へと移行する。
夢は見ない、深く眠ることもしない、何かがあればすぐに目覚める――それは、獣の眠りだった。

「――――」
悪魔召喚プログラムを仕舞い、己の武器であるM10サブマシンガンの調整を行いながら、ザ・ヒーローは扉と窓に気配をやる。
マスターは眠っている、当然何かあれば――いや、気配だけで目覚めるに違いない。そういう男だ。
だが、一応は眠っている以上、敵対者にとって今こそが襲撃の好機である。
英霊は眠らなくて良い、故に相手の襲撃にだけ用心していれば良い。
もう、悪夢に飛び起きることもない。

お休みの間悪魔に肉体をのっとられぬようお気をつけて――これは、誰の言葉だっただろうか。
少なくとも、眠らなくて良い以上、もう肉体が悪魔に乗っ取られることを恐れる必要はない。
もう、己の肉体は悪魔よりも恐ろしいものに満たされている。

「お休みの間悪魔に肉体をのっとられぬようお気をつけて……」
意味もなく、口に出して言ってみた。
それは、余りにも無意味な言葉だった。

ここにいるものは皆、悪魔さえ乗っ取ることが出来ぬほどに、空虚であるというのに。

【B-3/霞ヶ関・桐山の家/1日目 深夜】

【桐山和雄@バトルロワイアル(漫画)】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]イングラムM10サブマシンガン
[道具]制服
[所持金]中学生にあるまじき大金
[思考・状況]
基本行動方針:皆殺し
1:放課後辺りに七原秋也を暗殺する
2:図書館へ行く
3:魔術的知識を得て、悪魔召喚プログラムを完成させる

【ザ・ヒーロー(ザ・ヒーロー)@真・女神転生Ⅰ】
[状態]健康
[装備]無銘の剣、イングラムM10サブマシンガン、悪魔召喚プログラム
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:皆殺し
1:どうでも良い


006:俺たちは闇から光を見ている 投下順 008:Who is in the center it is chaos?
005:理想と現実! 悲劇の聖杯戦争!! 時系列順 009:誓いの爪痕


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000:DAY BEFORE:闇夜が連れてきた運命 桐山和雄&ザ・ヒーロー(ザ・ヒーロー 018:遠き山に日落ちずとも -あるいは命堕ちる家路-

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最終更新:2015年04月18日 22:37