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Who is in the center it is chaos? ◆GOn9rNo1ts



<<犯罪係数 92>>

シンデレラガール、渋谷凜の朝は早い。
輝かしい偶像(アイドル)の頂点に立つ彼女の一日は、いたって地味な朝のランニングから始まる。
服装は動きやすさを重視したジャージ。公道を走るのに煌びやかなドレスは必要ない。
傍らには小鼠の変わりに飼い犬であるハナコ。手には彼女が粗相をした際に処理をするための手提げ袋。
かぼちゃの馬車のお出迎えもなく、向かうお城も、今はなく。ただただ体を動かすために。
その日も、凜は自分の足で静かに、しかし確かな足取りで、トレーニングと犬の散歩を兼ねた『毎日』を開始した。

いつからこの日課を始めたのか、凜は覚えていない。
ダンスのレッスンで体力不足を感じた時からだっただろうか。
デビューシングル曲が決まった時だっただろうか。
ライブへの出演が決まった時だろうか。それとも、はじめて総選挙の順位が発表された時だろうか。

分からない。

ただ、何か特別なことがあって、始めたのだろうなとは思う。
不足を感じたのか、向上を願ったのか。新たな階段を、登りたくなった。
いずれにせよ、この地道な一歩一歩が今の渋谷凜を、アイドルとしての渋谷凜を確立させていることは、疑いようのない事実だ。
最初は『特別』で始まったことが、今や日課と化すほどに『当たり前』となっていて。
例え、ほとんどすべてが偽物の街に放り込まれたとしても。
例え、誰かと殺し合いをしなければならないと知らされたとしても。
例え、得体のしれないおっさんと四六時中一緒にいなければならない日々に暗鬱を抱えても。
この当たり前を続けていることで、彼女は浮足立ちそうな現実に足をつけ、息が詰まりそうな空気にほ、っと一息をついている。
そんな気がした。

思えば、この世界を生き抜くためには無意味なレッスンに行き続けているのも『彼女』に会って『当たり前』を手にしたいから、なのかもしれない。

「おはようございます」

ともかく。

現実から逃避したいがための。
もしくは――現実にしがみ付きたいがための。

彼女の『当たり前』は。

かつて『特別』が始まったこの道で。

今回もまた、終わりを告げた。

「お会いできて光栄です、シンデレラガール」

彼は、黒のスーツを纏っていた。

「いえ、今はこう呼ばせていただきましょう」

彼は、三白眼だった。

「聖杯戦争参加者、渋谷凜さん」

彼は、突然に『特別』を与えに来た。

「貴女に、運営からの通達があります」

彼は、名刺の変わりに拳銃のようなものを凜に向けていた。

「……場所、移しても良い?」

これ以上、この『特別』が自分の『当たり前』を浸食していくのが厭で。
これ以上、彼女をシンデレラに変えてくれた『彼』との出会いを塗り潰されたくなくて。
凜は苦々しい顔を隠そうともせず、そう言った。



◇ ◇ ◇



「いやあ、助かりました。通常は封筒を郵送させていただくのですが、渋谷さんの場合はお家の方に先に開けられてしまう可能性もありましたので」

銃口を向けた無礼への謝罪を聞き続けながら辿り着いた公園で、彼――東金と名乗った男は開口一番そう言った。

「それにしても矢張りといいますか、全アイドルの頂点ともなるとこんな朝早くからトレーニングに励むものなのですなあ。
まだ年若いにも関わらず大人顔負けのプロ精神。感服するばかりですよ」

「それで、なに」

世辞など聞き飽きていると言わんばかりの必要最低限な反応。
もしくは、シンデレラへの階段を登り続けてきた中で自然と身に着けた「警戒すべき相手への対処法」とでもいうべきか。
そんなぶっきらぼうさに怯むこともなく、彼女より干支一周分は大人な男は言葉を続ける。

「わかりました。早速本題に入らせていただきます。
本日、聖杯戦争運営側から聖杯戦争参加者の皆さんへ討伐クエストが発令されました。
バーサーカー・ギーグ及びそのマスターであるジョーカーの討伐です」

「討伐?」

「詳しくはこちらをどうぞ」

眉をひそめる凜を尻目に、東金は手際よく封筒をポケットから取り出した。
どこにでもある普通の封筒だった。「聖杯戦争参加者の皆様へ」なんて文言が冗談のようにさえ感じられる。
早速封を切り、軽く目を通し始めた凜。
あくまでも冷静に、平静を保ちながら読み進めていく。


そんな彼女の見えないところで、東金の顔が悪鬼のように醜く歪んだ。


「やつらは聖杯戦争をする気がない」


凜の身体がほんの数ミリ揺れ、表情が一瞬強張った。
舐め回すように凜を観察していた東金は、あえて何も反応しなかった。


「やつらはクズだ。生きている価値のない、人以下のゴミクズだ。
信じられますか、渋谷さん。やつらは強盗にも、殺人にも、強姦にも、何一つ意味をもっていないんです」

意味もなく、犯罪を犯し続ける。
それがジョーカー。生粋の狂人。
罰を受けるべき罪人。

「そんな無秩序極まりない存在は、消さねばならない。
聖杯戦争に臨む覚悟もなく、自分のしたいことだけをして生き続ける。
決して許される存在ではない。そうは思いませんか、渋谷さん」

「……だからって、よってたかって殺す、ってのはどうなのかな」

「聖杯戦争のために生まれたこの世界における罪とは、何だと思いますか、渋谷さん?」

凜は、答えられなかった。
東金の目から逃れるように、手紙を読み続けるふりをして、ただひたすら目を動かした。
ただ、この時間が早く終わらないかと。等身大の、女の子のように。
東金は、楽しそうにそれを見つめていた。


「可愛いわんちゃんですね。私もよく、小さい頃に子犬と戯れたものです」


東金の腕がハナコの頭へと伸びていく。凜は、はっと顔を上げる。
何故か、意味もなく唾をのんだ。
頭を撫でる。ただそれだけの行為のはずなのに。
なんだか酷く、暴力的な気配を感じているように。


ハナコは尻尾を振らなかった。


代わりに大きく、欠伸をした。


ぱさり。


「おっと」


小型犬に手を伸ばそうとしゃがんだ拍子に、東金の内ポケットから一枚の写真が落ちる。


凜は見た。



東金とハナコから目を離せなかった結果。



見てしまった。



写真に写っていたのは、一見、何か分からない『物体』
奇抜な飾り付けをされた奇妙なオブジェ。
かの高名な芸術家の前衛的な作品ですと美術館で紹介されれば、信じてしまうかもしれない。

但し、それが公共の場では芸術作品足りえない理由がある。


その『物体』のちょうどてっぺんに。





『顔』が乗っていた。







明るい栗色の髪に、凜は見覚えがあった。




オブジェを飾りたてる襤褸切れの暖かい色合いに、凜は見覚えがあった。




オブジェの足元に何故かきちんと両揃えで置かれている、ぴかぴかに磨かれたスニーカーに、凜は見覚えがあった。






それは





それは





「失礼しました。忘れてください」


今、自分がどんな顔をしているのか、凜は分からなかった。
決して鏡で見たくないような、そんなアイドルらしからぬ顔だろうとは、想像がついた。

「……痛ましい事件でした。被害者は誰にでも好かれる、学園のアイドルだったそうです。
このような悲劇を一日でも早く終わらせるために、ジョーカーは倒さなければなりません」

ハナコが、また大きく欠伸をする。
凜は力が抜けたようにしゃがみ込み、震える手でハナコを抱き寄せる。
大丈夫、大丈夫、と。言い聞かせるように呟いた。

「貴女がどのような決断をするか、それは私の預かり知らぬところです。
ですが、少なくともご家族や友人やアイドル仲間の皆さんには、それとなく夜分の外出を止めるように勧めたほうが良いでしょう」

『彼女』は、最近ずっと遅くまでレッスンに励んでいるようだった。
『彼女』の家は、凜の家よりもレッスン場から遠いところにあった気がする。
凜はいつもレッスンの帰りに、『彼女』と凜の家の前で別れていた。

「最も、ジョーカーは他人の家へ当たり前のように侵入し一家惨殺を行っています。
サーヴァントを持たぬ人間にとっては、この世界で安全なところなどないのでしょうがね」

サーヴァント。超常の存在。凜が持つ、武器にして防具。
その力を行使すれば、ジョーカーを前にしても身を守ることができるだろう。

だけど『彼女』は?

「ああ、一つ言い忘れていました」

ひたり、と。
東金が、凜の前に一歩を踏み出す。
最後の一押しを、押すように。

「ジョーカーを殺した場合でも、貴女が殺人犯として捕まることはありません。
流石に、英雄として祭り上げられることはないでしょうが……討伐依頼書に記載の通り、報酬も御座います。
少なくとも、新聞一面に『シンデレラガールの知られざる一面!』なんてことはありえません。そのために我々運営がいます」

我々は、世界は、貴女の味方です、渋谷凜さん。
ジョーカーは悪で、貴女は正義だ。
人殺しの化け物を打倒し、大切なものを守る、正義の味方だ。

そんな毒が、零れ落ちていく温かい思い出に代わって、凜へ流し込まれていく。

「それでは、貴重なお時間をありがとうございました」

「…………」

お互いに、話すことはもう何もなかった。

凜は、胸に抱えたハナコの温かさを感じながら、走る。
悲鳴を上げかけているような顔で。今にも泣き出しそうな顔で。
それでもきっと、彼女は何事もなかったかのように家に着き家族に会い、何事もなかったかのように学校へ向かい友人たちと談笑するのだろう。
それぐらいは出来る演技力を、シンデレラガールは身につけてしまっていた。
だけど、それでも。
渋谷凜は『彼女』の――島村卯月の、太陽のような笑顔に一刻も早く会いたかった。


「頑張って下さい」


その言葉は、渋谷凜に届かなかった。



<<犯罪係数 64>>




◇ ◇ ◇



<<執行対象ではありません、トリガーをロックします>>

「なかなかに手強いですな」

東金朔夜は渋谷凜の姿が完全に見えなくなったことを確認してから、己の手に握られた拳銃に声をかけた。

「何度か挑発も行ったのですが……反応さえありません」

「マスターを守る気がないのか、守れるという絶対の自信があるのか」

「それとも、こちらの意図を読んでいるのか」

<<懸念事項、対象が解析系スキルもしくは宝具を持っていた場合、当騎の宝具を視認された可能性は今後に悪影響を与えかねません>>

「その点においては申し開きのしようも御座いません」

「軽率な判断でした。ただ」


「彼女の、シンデレラガールの今の色を見ておきたかったものですから」 


<<………………>>

「なに、御心配には及びません。マスターである渋谷凜は聖杯戦争へと臨む覚悟を決めたようですし」

「いずれ、サーヴァントの方も尻尾を出さざるを得ません」

<<東金執行官は引き続き任務に励んで下さい>>



「お任せください。全ては、シビュラによる完全統治のために」




◇ ◇ ◇



知っている顔 知らない貌


うた:東金朔夜&シビュラシステム


知っている顔 知らない貌


Who are you ?


貴女は シンデレラ ガール 
誰もが羨む ヒロイン
全国民の 知っている顔 

そしてお前は 従者
誰もが知らない 怪物
名前も分からぬ 知らない貌 

光に 紛・れ・て 闇は静かに ひ・そ・む

俺ら 全てを 支配しなくちゃ 気が済まねえ

DOMINATE!

知っている顔 知らない貌

お前たちは

秩序? 混沌? 

善か? 悪か? 




知りたいのさ








<<Sibyl System>>




<<深刻なエラーが発生しました>><<深刻なエラーが発生しました>><<深刻なエラーが発生しました>>




<<当システムのエラーを確認しました>><<エラーを引き起こしたバグへの対処を最優先で行います>>




<<汚染箇所を確認します>><<汚染範囲を測定します>><<汚染強度、狂>><<対処法を協議します>>




<<しばらくお待ちください>>




<<協議の結果、汚染範囲を廃棄することに決定しました>><<当騎における0.76%を廃棄します>>




<<バグの侵入経路を推測します>><<ケーブルから侵入の可能性、大>><<汚染範囲における電力供給ケーブルを切除します>>




<<調査の結果、該当ケーブルは千代田区の余剰電力を供給していたものと判明しました>><<対象地区の警戒度をD→Bに上昇させます>>




<<また、当騎の精神障壁を突破したことから対象バグの危険性を暫定的にAランクに認定します>>




<<監視官及び執行官の維持、問題ありません>><<禾生壌宗との同調、問題ありません>><聖杯との接続、問題ありません><<ムーンセル及び東京との連絡、問題ありません>>




<<全機能の復旧、並びに正常動作を確認しました>><<当騎の完全性は、保たれています>>




<<引き続きルーラーとしてご利用の程、宜しくお願い致します>>




◇ ◇ ◇



姫は騎士へと歩を進め。
狗はエモノを鋭く見つめ。
王はUTSUWAに毒される。


<…………フフフ>


復讐。義憤。愛情。正義。
大義名分の名のもとに。
闇へその身を沈ませる。


そして、この小話の語り部たる<私>は。


<ハハハハハハハハハハハハ!>


■■■■■■■■は、彼ら全てを高みから嘲う。


【A-4/渋谷/1日目 早朝】

【渋谷凜@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態] 精神的に少し不安定。犯罪係数64
[令呪]残り3画
[装備] 手持ちバッグ(散歩グッズ入り) ハナコ
[道具] なし
[所持金] 手持ちは高校生のおこづかい程度。
[思考・状況]
基本行動方針: 私は……
1. 今はただ、島村卯月に会いたい。
2. ジョーカーを……?
[備考]
※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。
ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。

【ランサー(アドルフ・ヒトラー)@ペルソナ2罪】
[状態] 健康。
[装備] ロンギヌス
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:愉しむ。
1.愉しい。
[備考]
※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。
※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。
※<検閲済み>


007:一人×2 投下順 009:誓いの爪痕
006:俺たちは闇から光を見ている 時系列順 011:誰も知らないあなたの仮面


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000:DAY BEFORE:闇夜が連れてきた運命 渋谷凛&ランサー(アドルフ・ヒトラー 015:禍々しくも聖なるかな

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最終更新:2015年10月22日 23:05