東方歌永塚 ◆gcfw5mBdTg
『相変わらず、何も見てやしない。ここなら安全だとでも、思ったの?』
『今度は自己満足に走っただけね。狂うのと何も変わりはしない。結局貴様は、逃げることしかできない』
必死にレミリアを否定するリリカの姿は、最高の見世物だった。
無様に這い蹲るリリカに、歪んだ憫笑を浮かべた吸血鬼がまたも問いかける。
『そんなに、死にたくないか』
リリカの返答は決まっている。
愛する家族への想いという、今のリリカにとって唯一であり絶対の、譲れない想い。
何もかも吹っ切れた感覚で、 精一杯の想いを吐き捨てる。
だが――吸血鬼は哂う、蔑む、嘲笑う。
『家族のために生きるっていうわけね? 下らない。そんなものが理由になどなるものか。
それで尊厳が保たれるとでも思ったら大間違いだ。薄っぺらい誇りで、私は動じない』
大切な家族を無価値だと断じられたリリカは、衝動のまま、束縛を今にも引きちぎらんとする。
……だが拘束を破る事は叶わず、吸血鬼は尚も演説を続ける。
『結局のところ尊厳を取り戻すのも奪うのも、力だ。恐怖でしか誰も、何も取り戻せない』
吸血鬼が語るは暴虐の理論。
二人の姉の後押しを受けた今のリリカはそれを間違っていると断言できる。
リリカが感情に身を任せ、反論しようとする――寸前。
『咲夜、指を折りなさい』
――演奏者の魂が、へし折られる。
『ほら。これだけで貴様はもう楽器も演奏できない』
『その折った指、もう切り落としなさい。どうせ使い物にならないんだもの、いっそすっきりさせてあげるわ』
迷い亡きナイフが、折れ曲がった指の根元にあてがわれる。
リリカはつい反射的に許しを請ようと、吸血鬼の顔を覗いた――――紅の魔眼の深淵を、また、覗いてしまった。
単純な憎しみや怒りではなく、決定的に何かが歪んだ異質な凶笑。
魂を締め付けられそうな恐怖に、全身の毛を逆立たせるリリカ。
脅迫的な観念に襲われたリリカの、頭の中が真っ白に染まる。
全てが消えてどこかへ飛んでいくような、不思議な感覚。
リリカの指が、魂が――切り離される。
『これが、貴様への第一の罰よ。貴様は支配してやる。骨の髄、神経の末端に至るまでな。
復讐したいのならば、いつでもかかってきなさい。その時は……もっと強い恐怖で支配してやる』
吸血鬼は負の予言を告げ、静かに屋敷を去っていった。
吸血鬼が去っても、心臓の鼓動は尚収まらず、思考も一向に定まらないリリカ。
そんなリリカが、まず行おうとしたのは……想起だった。
吸血鬼の恐怖を和らげようと、過去に逃避しようとしたのだ。
リリカが想起したのは、器具庫で演奏したルナサとメルランとリリカの奇跡のライブ。
殺し合いに参加させられてから初めての安らぎと言っても過言ではない、あの最高の騒音劇。
……ライブ会場は紅魔館。
ルナサの、しっとりと聴かせる曲で聴く者の気持ちを落ち着かせる弦楽器の欝の音。
メルランの、感情の変化が激しい曲で聴く者の気持ちを昂揚させる管楽器の躁の音。
ルナサとメルランは感情の起伏を再現し、リリカは残りの想いを曲にする。
想いは幻想に繋がり、三姉妹が合わさった騒がしさが曲霊を生む。
三姉妹の幽玄なるライブは、過去のどの演奏よりも盛り上がった。
至高の演奏に心を震わされ、客席からは最高潮の熱狂が撒き散らされる。
なのに……リリカは異変を感じていた。
観客の反応からいって最高のライブではあるはずなのに、リリカには違和感があった。
奇跡のライブに比べ、今回のライブには、なにか大切なものが欠けているように、感じた。
その大切なものが何か、リリカは僅かの思考の後に、理解した、理解してしまった。
――……私の〝幻想の音〟が聴こえない。
ありえない、想像したこともない最悪の理由に、魂が凍りつくかのような衝撃を受けるリリカ。
ライブの記憶は、はっきり残っているのに。
ルナサの欝の音も、メルランの躁の音も聴こえるのに。
大切な人からのギフトでありこの世でリリカが一番慣れ親しんだ、リリカだけが出せる〝幻想の音〟だけが、聴こえない。
リリカの幻想の音が無ければ欝と躁の音が纏まらない以上、必ずこのライブには幻想の音は流れているはずなのに、何故かリリカにだけは聴こえない。
――あの時の曲なら私はこう……………あれ。
そして、リリカは、もう一つ、気付いてはいけないものに、気付いてしまう。
――この曲って、どうやって、弾いてたんだっけ?
キーボードの弾き方が、感覚が、思い出せない。
演奏を試みようとすると……途端に頭の中がまっしろになってしまう。
リリカが奏でる自然に無い音、幻想の音、この世に無い音、死を迎えた音。
そのどれもが、捉えられぬ霧の向こう側に、姿を隠していく。
リリカの顔色が、絶望に染まる。
騒霊とは、幻想の音、欝の音、躁の音等の騒音を生み出す存在。
音楽の本質とは音が出ることであり、音こそが騒霊の命。
――じゃあ、今の私は、なに?
自分の音を生み出せず、聴こえもしない騒霊は、騒霊であると、生きていると言えるのか。
思考と自己が一致しない。妙な不安が高まってきて――不意に、全身が怖気に包まれる。
リリカは、震える自分の体を抱きしめる。
暖かい。肉体の感触はまだ、ある。
だけどリリカは抱き締めるのをやめない。
もし、やめてしまえば、自分はこのまま消えてしまうのではないか。
一度でもそう思ってしまったら、恐くて、たまらなくて、手を離すなんてできなかった。
自分が消えてしまうのが、こんなにも恐ろしいなんて思ったこともなかった。
不安と恐怖は消えることなく増え続け、未熟な心から今にも溢れ出しそうだ。
朦朧とする意識の中、ただ震える自分を抱き締め続けるリリカ。
誰も来なければ、ずっとこうして永遠に自分の中に閉じこもっていただろう。
それはそれで、この世界ではまだ幸せの類に含まれるかもしれない。
だが結果を先に言えば、リリカは逃避をしなかった――いや、できなかった。
ギ、ギキィィィ。
老朽化した扉から、軋みが響き渡る。
レミリアという悪魔を招き入れた扉が、今一度、招かれざる客を受け入れようとしているのだ。
リリカは、全てを諦めたかのように、理解した。
この屋敷には、もうレミリアはいない。
だが、自分の魂は今も尚、あの運命の吸血鬼に握られているのだ、と。
◇ ◇ ◇
扉が開き、訪れたのは赤い山伏風の帽子を被った少女。
リリカとは仕事上の関係で友人になった天狗――伝統の幻想ブン屋、射命丸文。
「大丈夫…………じゃあないようですね」
文の視界に映るリリカは惨たらしいものだった。
涙で汚れた顔をくしゃくしゃに歪ませ、床に痛々しく座り込み、自分の体に縋りつくように抱き締めている。
乱れた着衣も整えられていない他、腹部には血が滲んでいるし、指も一本、切断されたのか見当たらない。
能天気でちゃらんぽらんないつものリリカの見る影もない、陰惨な有り様だった。
「………………出てって、よ」
か細く震える声で、文を拒絶するリリカ。
友人の来訪だというのに、リリカは座りながら自分を抱きしめているだけだ。
目の焦点も碌に合っておらず、本当に文を見ているかすらもわからない。
とても会話を望める状態ではない。
下手に歩み寄っても拒絶が激しくなるだけだろう。
文は少しの間考え込み……口を開き始める。
「……わかりました、貴方が望むのならば私は今すぐにでも出て行きましょう。
ですが、一度だけでいいので心して聞いてください。
私には貴方に伝えなければいけないものがあるのです」
反応しないリリカに構わず、文は口上を続ける。
「――ルナサさんから遺言を預かっています」
「彼女は死の間際、貴方達にこう言っていました」
文は一呼吸置き、ゆっくりと。
「――どんなことがあっても、生きてほしい、と、ただそれだけを」
ルナサの遺志を言霊に宿す。
「あ……」
涙が、頬をつたう。
「……彼女の最期の遺志、確かに伝えました。
ああ、あと休むのならばお部屋に戻ってからの方がまだ安全だと思いますよ。
見つかりにくい場所で静かにしていればそうそう気付かれる事はないでしょう
では、またいずれ訪れようと思いますが、今はおいとましますね」
射命丸は一礼し、踵を返し、入ってきた扉に手を掛ける。
このままいけば、そのまま外へ出て行くだろう。
このまま、行かせても、いいのだろうか。
文を否定するということは――ルナサも否定するということなのに。
「……ま、まって」
リリカは、自分を抱き締めた手を離し、つい射命丸文へと手を伸ばした。
自己の全てを失った今でも……姉さんだけは、失いたくなかったのだ。
◇ ◇ ◇
二人は階段を上り、二階の一室へと舞台を移す。
……女性の部屋なのだろう。
いささか古めかしいが華やかな色合いの壁紙と飾り物が、柔らかな安堵感を来客者に与える。
まめに掃除されているのか、差し込む日光を吸い込んだ骨董品の絨毯は、ふわふわとした感触が心地よい。
「リリカさんの部屋ではないみたいですね」
「……よくわかったわね」
「だって部屋が散らかってないじゃないですか」
「……見てもいないのに人の部屋を散らかってるって決め付けないでよ」
「でも散らかってるんでしょう?」
「…………騒霊の部屋が散らかってて何が悪いのよ」
リリカの心は、短い時間で多少解けてきていた。
濃密過ぎる非日常に疲れきっていたリリカにとって、悪びれなく踏み込んでくる文の接し方が心に沁みるのだろう。
「ところでリリカさんの部屋じゃないということは、ルナサさんの部屋ですよね。
あなたはともかく私が入っちゃっていいんですか?」
メルランの部屋という可能性は、リリカと同じ理由で除外されている。
プリズムリバー演奏隊は三姉妹。二人を除外すれば残るは長姉、ルナサ・プリズムリバーしか残っていないはずだ。
「薬箱がここにしかないのよ。
…………私達には本来必要ないものだから」
だが、ここはルナサの部屋でもないようだ。
リリカは誰の部屋なのかは言葉を濁しながら、棚から古ぼけた薬箱を取り出す。
中身にはたいした物は入ってなく、せいぜい止血と包帯による治療程度しかできないだろう。
リリカは包帯を取り出し、巻き始めるも、なかなか捗らない。
音楽を失った象徴である指が欠けた手を見るのが……不快で、苦痛で、仕方ないのだ。
収まらない激痛と震えも手伝い、どうしても包帯を取り落してしまう。
「……なんなら私がやりましょうか?」
リリカは無言で、そっと……腕を文に預ける。
しゅるしゅると、手早く器用に包帯が巻かれていく。
「…………姉さんについて教えてくれる?」
リリカは患部を眼に入れないよう天井を見上げ、気を紛らわせる為に会話を要求する。
文としてもリリカの腕の震えを止めるのに不都合は無く、表情を引き締め、説明を開始する。
「あれは早朝、私が人里に立ち寄ってまもなくの出来事でした――」
人里を歩いていたらルナサの奏でる欝の演奏が聞こえてきた事。
演奏の方向から稗田家から少し離れた場所から窓を覗いてみると既に死んだ阿求、そして刀を持った霊夢がルナサを切る――。
と、そこでリリカが、眼を白黒させて、文の独白を遮る。
「は……? 霊夢、霊夢って言ったよね。
あの霊夢だよね。別の霊夢じゃないよね?」
「他に霊夢さんがいるなら教えて欲しいくらいですね」
「嘘、じゃないんだ、よね?」
「嘘をつくのなら、もうちょっとましな嘘をつきますよ。
まぁ……私も最初は信じられませんでしたけどね。
あの光景を見た時は、ルナサさんが霊夢さんを襲ってその返り討ちにあったんじゃ、とか一瞬思わなくはなかったです」
「ルナサ姉さんがそんなことするはずがないわよ!」
「わかってますよ。
阿求さんの死因もルナサさんと同じ刀傷でしたし、なにより……霊夢さんの表情が異常、いや、異常じゃなかったですからね
縁側でお茶飲んでたりしてるいつもとたいして変わらないんですよ、あれはちょっとしたホラーでしたね」
「……そう、なんだ」
まだ混乱しているのか、リリカはそれだけ言うと押し黙った。
文は会話が一旦止まったを確認してから、再度続きを話し始める。
「状況に混乱しながらも、急いで現場に向かいました。
ですが、覗いてた場所がいささか遠かったのが仇になって霊夢さんは中には既にいませんでした。
仕方なくそこらへんを調べるだけ調べておこうと思った、その時です――ルナサさんの声が聞こえたのは」
――どんなことがあっても、生きてほしい、と、あの子達、に……。
「――正直、驚きました。
身体が上下に真っ二つに切られたのを見た時点で私も諦めてましたから。
姉妹愛、ってやつですかねぇ。私にはそういった人はいないので……うらやましいです。 っと、はい、包帯も巻き終わりました」
リリカは恐る恐る自分の手を見やる。
固く撒かれた包帯は見掛けだけならば繋がっているようにも見える。
だがリリカがいくら指を曲げようとしても……やはり、動く事はなかった。
分かっていた事とはいえ、どうしても心は沈む。
それでも、形だけでも繋がった事とルナサの話により、リリカは多少は落ち着き始めていた。
「…………ありがと。
で、結局あんたは何の用なのよ? どうせなにか下心でもあるんでしょ」
悪態交じりに文の用件を聞くリリカだが、その表情には照れが僅かに滲んでいる。
レミリアの呪縛を一時だけでも解いてくれた文に感謝しているのだろう。
「否定はしませんけど人聞きが悪いですね。
私の用事は三つ。遺言の伝言と私のカメラ探し、それと取材ですね。
もう少しリリカさんが落ち着いてから切り出す予定でした。
……あんまり思い出したくないものもあるでしょうからね」
「…………取材、ねぇ。こんなところでもするものなの?」
「今回の異変は、幻想郷全てを手玉に取れるようなお人の仕業です。
そんな異変で私にできる最善は何かと考え、情報を集めてばら撒く事、つまり新聞に至ったわけです。
今生きている人がどうしているのか、どこに何があるのか、そういった情報は皆の為になるでしょうからね」
「生きている人……ねぇ。
……私、たいした情報持ってないわよ」
「なんでもかまいませんよ。 情報とは見る人を変えれば別の情報へと変容するものです。
一つでは意味がなくとも多面的に観れば、そこから何かが判明することもあるでしょう。
……別に今すぐにじゃなくてもいいですよ、落ち着いてからの方が話も聞きやすいですし」
文の提案に、リリカは躊躇する。
ヤマメを殺し、紅魔館を惨劇に導いた悪夢を素直に話したとして、文がどう思うのか。
……見捨てられるかもしれない。
運命を左右する選択に、リリカは、顔を伏せ、悩みに悩みぬき。
「……今、話す。
ただ、その代わり、一つだけ、頼みを聞いてくれないかな。
……〝新聞記者〟としてじゃなくて、〝友人〟としての文に聞いて、答えてほしいんだ」
凄惨で思い出したくもない過去を伝える決断を下した。
嫌な思い出であっても……このまま自分が消えてしまって、全てを忘れ去られてしまうのは嫌だった。
「……約束するわ」
新聞記者としての口調から素の口調に戻す文。
リリカは……懺悔を呟き始める。
時折、言葉を濁したり、嗚咽を交えながらも、当時の心情や情景を、怯えたような小さな声で陳述していく。
紅魔館の一室に降り立ち、ヤマメ、そして映姫と出会い篭城を始めた事。
紅魔館に訪れたレミリアの魔眼に睨まれ、混乱し、ヤマメを意図せず殺してしまった事。
八坂神奈子に唆され、人質の振りをして神奈子と共にレミリア達を攻撃し、結果、神奈子とキスメが死んだ事。
紅魔館から離れたところで気絶し、咲夜に家まで運ばれた事。
死んだ姉の儚い奇跡の励ましで立ち直ったが、訪れたレミリアと咲夜によって指を切り落とされ全てを否定された事。
……演奏ができなくなったことだけは、結局話せなかった。
存在意義の消失について自分の口から出してしまえば、今度こそ本当に自分の存在が消えてしまいそうな気がしてしまったのだ。
話し終えたリリカが、沈鬱な表情で俯きボソリと呟く。
「……私はただ、必死だっただけなの。
…………レミリアなんていなければ、よかったのに」
リリカの言葉を聴いた文は、僅かに悩む様子を見せてから、何かを思い付いたのかリリカに向き直る。
「……無理に傷を抉る気はなかったんだけどね。
まぁ、望み通り〝友人〟として応えさせてもらうとしようかしら」
文は、リリカに告げる。
「――貴方は罪に向き合おうとしていない」
暴き出されるは、弱者の罪業。
「貴方は被害者よ、それは間違いない。
でも、だからといって罪が消えるわけじゃないわ」
「……っ!」
リリカは、ヒッと怯え、文から目を伏せる。
「罪人であるのなら犠牲者であるヤマメ、キスメ、閻魔様、そしてレミリアにも、ちゃんと向き合って謝って償うのが筋ってもんよね。
なのに貴方は、それをせず、姉と客に報いる為に幻想郷にただ帰るだけという聞こえのいい未来に縋り付こうとしかしていない。
これじゃあ逃げている、もしくは自己満足と言われても、まぁ、間違ったものではないわね」
淀みなく閻魔のように罪を述べていく文。
「…………ちょっと、まってよ」
そこにリリカは、剣呑に口を挟む。
「どこか間違ってたかしら?」
リリカの剣幕にも、しれっとした態度を崩さない文。
「……レミリア以外は、まだわかる。
でも……レミリアにだけは、嫌だッ!!
元々、ヤマメを殺してしまったのだってあいつのせいなのに。
私を、殺そうとしたり、私の指を……切ったり、音だって……。
もういやなんだよ。 もう、あいつとは……あいたくない」
怨敵の想起に威勢を一瞬取り戻すも すぐに萎縮してしまうリリカ。
今のリリカの姿は、まるで部屋の隅で怯えながら必死に威嚇する子猫のようだ。
「まぁレミリアにも非は結構あるけどね。
だからといってやっていいことと悪いことはあるわよ」
文は、そんな姿に呆れながらも追撃の手は緩めない。
「……考えてもみなさい。 貴方が山の神様にいいように扱われて皆を裏切ったせいで、自分が保護してた幼い子供を死に追いやられた。
そりゃあ色々許せないわよね。 あの子、下手な人間以上に人間らしい心と吸血鬼の気高い誇りを兼ね備えてる難儀な子だし」
「っ……でも、私はっ」
リリカは、もう、反論できない。
それでも天狗は弱者に容赦しない。
「――二ヶ月前のパーティーでのライブで、あの子がどんな表情してたか思い出してみなさい」
魂の奥底まで、土足で踏み込む。
「え……?」
リリカはしばらくの間、呆け……やがて、ふと、思い出した。
殺し合いに参加させられてから思い出す余裕もなかった、幻想郷での日常。
プリズムリバー楽団は宴会やお祭り、そして――パーティに呼ばれライブを開いてきた。
パーティーが行われるのは、幻想郷でも紅魔館だけだ。
リリカは当然、知っている、覚えている。
紅魔館の主は、吸血鬼、レミリア・スカーレット。
パーティーを開く度に呼び出してくるお得意様。
レミリア・スカーレットは、いつも偉そうで、いつも騒いでいて、いつも――笑っていた。
どんな声で笑ったのかも、どんな顔で楽しんでいたのかも、これ以上ないくらい鮮明に思い出せる。
ああ……そうだ。
レミリア・スカーレットは、決して生来からの悪魔ではない。
悪魔へと変貌したのは、リリカと神奈子が、壊してしまったからだ。
レミリアの笑顔を奪ったのは――私なんだ。
「貴方だって意識せずに目を逸らし続けてただけで本当にわかってたんでしょう?
そうじゃなきゃ、私に友人として打ち明けるなんてしなかっただろうし」
「……そう、だよね。
大切な人を、殺されたらそりゃ怒る、よね。
私だって、姉さんを殺されたら、怒るもん」
紅魔館で最初会った時、睨み付けてきたのは今でも許せない。
だが、あの後閻魔と話していた辺り、敵対する意思までは無かったのだろう。
レミリアにも非は多いが、それを免罪符にはしてしまってはいけない。
「はは。私ってば、ほんと卑怯者だよね……」
リリカは自分の醜さに顔を伏せ、耐える様に唇を噛み、自分の体を強く掻き抱いた、
辛い事も、歯を食い縛って乗り越えてきたつもりだったのに、それは所詮、偽りに過ぎなかったのだ。
……リリカが今にも潰れそうな、その時。
射命丸文は、独り言のように小さく儚く呟く。
「――――……卑怯者だって、いいじゃない」
リリカは驚き、顔を上げる。
小声すぎて文が何を言っているのかが、よく聞こえなかった。
「っ……卑怯者だって、逃げたって、別にいいじゃない。
一度も逃げたことのない人妖なんて、それこそどこかの閻魔様ですらありえないわよ。
ヤマメが死んだのも殺意はなかったわけだし、他の罪も山の神様に騙されたものでしかない」
文は感情を乗せた優しい声音で続ける。
「私は罪を自覚してほしかっただけで、追い込むのが本意ってわけじゃないしね。
それに……今度レミリアに出会えば貴方は間違いなく殺される。
貴方は罪を犯したけれど、それは命を捨ててまで償わなきゃいけないほどの罪じゃない。 私はそう思ってるわ」
そこまで聞いてリリカは、ようやく理解できた。
「…………それじゃあ、納得できないかしら?」
――射命丸文は、リリカ・プリズムリバーを受け入れる。
そう、言ったのだ。
「……そう、だよね」
透き通るように安らかな許しの囁きに、リリカの心が優しくくすぐられる。
ああ、そうだ。
逃げてしまえばいい。
誰も彼もが、罪を背負って歩けるような英雄ではない。
負ってしまった責務を捨ててしまっても、誰も責めない。
もう苦しまなくていいのなら……それでいいかもしれない。
受け入れたい。
生きたい、逃げ出したい、救われたい、楽になりたい。
色々な想いが、執拗に駆け巡る。
だけど…………声は、とうとう、出なかった。
リリカは小心で矮小でちっぽけな騒霊でしかない。
嫌なものにはつい眼を瞑りたくなってしまう臆病者だ。
でも、そんなリリカにだって譲れないものは、ある。
『でも私達の事は忘れないで欲しいな。』
……リリカは三姉妹を、プリズムリバー楽団の名を、背負っているのだ。
『その手を故意に汚す事もしては駄目。』
大切な二人の姉に卑怯者の汚名を、被せるわけにはいかない。
それに、もう一つ。
文のお陰で思い出せたものがある。
倉庫室で夢見た姉二人との奇跡のライブ。
あのライブも、二ヶ月前と同じく紅魔館で開催されていた。
なら…………きっと、あそこにはいたはずなのだ。
「でも、できれば、レミリアから逃げたくない、な」
――あそこには笑顔のレミリアがいなきゃいけないんだ。
『私達の分まで生きて、お客さん達に笑顔を与えてあげて頂戴。』
『『それが私達の励みになるから。』』
「……ごめんね、文」
せっかく文が差し伸ばしてくれた手を、振り払ってしまった。
友情を否定で返すのは心苦しいけど……嘘になんて、したくない。
あの奇跡の演奏は、真実でなきゃいけない。
「…………謝ることなんてないわよ。
自分で選んだんでしょう。 なら、胸を張りなさい」
珍しく僅かに沈んだ声音で答える文。
その横顔が、いつもと違う寂しい微笑みに見えるのは、ただの光の悪戯なのだろうか。
寂しい微笑みは刹那の後に消え、文はいつものように話を続けようとする。
「それで、これから貴方はどうするの?
すぐにでもレミリアに会いに行く?」
「え……いや、それは…………」
どうしよう。
笑顔にしたいとは決意しても、方法なんて一切合財思いついてない。
今会っても、間違いなくリリカがただ殺されるだけで終わるだろう。
レミリアはなんとかしたいけど……何もできずに死ぬのは、嫌だ。
それに……やっぱり怖いものは、怖い。
自分の臆病さに、リリカの顔がまたもや曇る。
「――レミリアをなんとかする方法、思い付かないこともないわよ」
呆れた文が、助け舟を出す。
「……え?」
リリカは顔を上げ文を見つめる。
……そんな都合のいいものがあるというのか。
「実現するかも微妙だし、かなり危険なものだけどね。 それでもいいなら、聞く?」
リリカは僅かに躊躇するも……コクリと頷く。
例えなんであろうと、もうリリカには縋る他ないのだ。
「謝ればいいのよ」
…………。
リリカは文の言葉を噛み砕き、必死に理解しようとするも理解できない。
いや、理解自体はできている。だが意味があるとは、とても思えなかった。
「レミリアに謝って解決するならこんなことになってないわよ……」
期待外れだ、とリリカはがっくりと項垂れた。
「でしょうねぇ。
話を聞く限り、あの子の態度は自身を律する為みたいだし、謝罪じゃむしろ逆効果ね」
「文、ひょっとして私をおちょくってる?」
「早とちりしないの。
私はレミリアに謝れなんて言ってないわよ」
リリカは、文のもったいぶった言い方に若干イラつきながらもう一度考えてみても、やはり意味が分からない。
やきもきしているリリカを尻目に、文は言葉を続ける。
「――キスメとヤマメに謝ればいいのよ。
彼女達が許してくれるかは貴方次第だけど、成功すれば大体の問題は解決するわよ」
キスメがリリカを許せば、レミリアの心は確実に揺れる。
一瞬だけでも笑顔を取り戻せれば、和解のチャンスだってくるかもしれない。
ヤマメにしても、許してくれるかはわからないけど謝りたいと思っている。
たしかに有効な案かもしれない。
だが、文の案には大きな欠点がある。
「……どうやって謝れって言うのよ。
虚空に向かって謝って、それでレミリアも私も納得するわけないでしょ」
落胆を隠さず文句を吐き捨てるリリカ。
当然だ。聞き入れるべき相手は既にこの世から去った。
舞台から降りた者に、舞台上から謝ることなどできるはずがない。
「さっきの懺悔で貴方が言ってたじゃない」
不貞腐れるリリカに構わず、文は本題を提示する。
「――ピアノを弾いていたら死んだ姉さん達と一時的に話せた、ってね。
それを、ヤマメとキスメに置き換えて、もう一度再現してみればいいのよ」
――死者との会話。
夢なのか能力なのかは定かではないが、リリカの記憶にはっきりと残っている。
あれをもう一度再現して、舞台を降りた者を引っ張り出せと、文は言うのだ。
文の意見は理論も保証もない、結果から無理矢理筋を通しただけの暴論だ。
レミリアがまともに演奏を聴くとは思えない。リリカが速攻で殺される可能性の方が明らかに高い。
だけど……道筋としては細くても、可能性自体は、残っているとは言えなくもない。
……リリカに幻想の音の演奏ができれば、だが。
リリカは葛藤する。
演奏ができなくなった事を他人に話していいものなのか。
自分が、消えてしまわないのか、どうか。
リリカは悩みに悩みの末。
「……実は――」
覚悟を決め、自分の存在を常に意識しながら、自身の窮状を告白する。
……幸いにして、リリカが消えることはなかった。
「…………存在意義の、消失、か」
聞き届けた文は、失妙な顔で悩みだす。
「恐らく心の許容量以上の恐怖で魂を丸裸にした上で、指の切断=演奏不可のイメージを強烈に刷り込まされたせいね。
普段なら『手足を使わないで演奏する程度の能力』があるから指を切られたって演奏ができないイメージにはならなかったんだろうけど」
文は、粛々と推理を述べ続ける。
「問題なのは深度。騒霊から音を奪うなんて、まず間違いなく魂の根源にまで食い込んでるわね。
この悪質な呪いを狙ってやったのかは……あの子だから微妙なところかしら」
「……もう、治らないのかな」
文の導き出した推理は納得のいくものだったが、聞けば聞くほど、治らない気がしてくる。
文は落ち込むリリカを無視して――解決策を出す。
「治療手段四つぐらい思いついたけど聞きたい? 実現できるかは無視してるけど」
「……えっ、そんなにあるの!?
聞かせて、なんでもいいから聞かせてちょうだい!」
さらっととんでもないことを言う文に、思いっきり食いつくリリカ。
文は間近まで迫ってきたリリカを押しのけながら、治療方法を一つずつ話していく。
「第一、レミリアの恐怖を克服する。
まぁ、これはそのままの意味ね」
「努力はするけど、できる自信はあんまりないなぁ……」
「二番、時間に任せる。
幻想郷は六十年も経てば世界が一巡し、住む者全ての記憶がいずれは薄れていくわ。
周期的に次は180季だから、後57年ぐらいね」
「幻想郷じゃすぐだけど私は今すぐ必要なんだって」
「三手、八意永琳に治療を頼む。
彼女ならきっとなんとかできるわよ」
「私達、誰のせいでこんなことになってると思ってるの……」
「四弾、根源から組み直す。
騒霊は、肉体を持たず精神に全てを依存して生まれた存在。
自分の存在理由を考え直し、生まれた意味を、自己を、今一度ゼロから組み直せば戻るかもしれないわ」
文は四つの治療方法を語り終えた。
リリカは聞き終えてから、ずっと顔を俯き、動かない。
「まぁ……やっぱり無理よね。
気を持たせちゃったのは悪かったけど、でも実際それくらいしか思いつか――ってどこいくのよ、リリカ」
文がリリカに声をかけようとした時。
リリカは、突如、立ち上がり、部屋から出ようとドアノブに手をかける。
「…………ちょっと、私に付き合ってくれないかな、文」
◇ ◇ ◇
リリカの行き先は――倉庫室。
埃臭い雑多な収納部屋。
床には和洋の節操のない様々な楽器、棚には乱雑に置かれた楽譜や雑貨で埋め尽くされている。
鉄格子が嵌められたガラス製の天窓からは、光が差し込まれ部屋の光量を確保していた。
ルナサやメルランとの奇跡の演奏会の夢を見た場所でもあるここに、文を連れてきたリリカの用件はというと。
「え? 私の演奏を聴かせてほしい?」
「文って笛できたよね?
前に宴会で一度だけ龍笛の演奏を聴かせてもらった覚えがあるんだけど」
「あんなちゃちな宴会芸、よく覚えてるわね。
まぁ天狗にとっては嗜みのようなものよ。
うちのいけすかない同僚も、昔は源氏の若者に武術と笛を教えてたりしてたし」
天狗と演奏は古代より縁が深い。
天狗囃子や天狗太鼓と人々に恐れられるように、数多くのエピソードが残っている。
「……天狗ってなんでもできるんだね」
嫉妬と羨望を混ぜた眼を文に向けるリリカ。
リリカが失った能力を持っている文に、リリカは複雑な想いを抱いていた。
「そりゃそうよ。
天狗とは、自在に風を起こし、風の声を聴き、風の噂を掴む者。
風とは大気であり、音とは大気の波紋、それ即ち天狗の御業なり、ってね」
文はそう仰々しく語り、片手を口元にあてると……やがて、軽快なメロディが倉庫室に響き渡った。
『指笛』と呼ばれる技術だ。
高度な練習を重ねなければただの高音しか鳴らせないものだが、文のそれは音程やリズムすらも自在に操り一つの演奏として成立している。
だが、ただそれだけだ。
文字通り魂を揺れ動かす騒霊の演奏とは比べるまでもない。
本気でやる気もなかったのか数秒だけ軽く演奏すると突如打ち切り、リリカとの会話へ戻る文。
「でも所詮はこの程度の小手先の業よ。
貴方達、騒霊の演奏に比べれば私の演奏なんて所詮上辺だけの薄っぺらい風音に過ぎないわ。
それに……なんでもできるってのはいいことだけじゃないしね」
「えー、天狗って速いし強いし賢いし寿命も長いしで、いいことずくめに見えるんだけど」
「まぁ間違ってはいないけどね。
速さ、強さ、寿命の長さ、なにより社会すら形成できる理性的で柔軟な智慧が、私達を大妖怪たらしめているのは間違いないわ。
だけどね、賢しい故に天狗は知ってしまうのよ――――空が狭いということを」
鉄格子の嵌まった天窓を見上げ、大空を仰ぎ見る文。
「……はぁ」
意味が理解できず憮然とするリリカ。
幻想郷が隔離された狭い空間だということぐらいリリカですら知っている。だからなんだというのだろうか。
「ま、そんなどうでもいいことはさておいて、私は結局笛を演奏するだけでいいの?
私の演奏なんか聴いたって貴方の根源に近づけるとは思えないんだけど。
さっきの指笛だって別になんともなかったでしょ?」
「うん、聞かせてくれるだけでいいんだ。 後は……私の問題だから」
「そう……じゃあ笛でも探しましょうか。
あ、私は貴方達と違って楽器の幽霊は演奏できないから、普通ので頼むわね。
龍笛や篠笛あたりだと嬉しいけど、無ければ適当にフルートあたりでいいわよ。
どのへんにあるかだけ教えてくれたら取ってくるから」
倉庫室には、普通の楽器から幽霊の楽器、曰く付きの物から外の世界のものまで、ごちゃごちゃしすぎて何があるかさっぱり分からない。
騒霊は足を地に着ける必要がない故に、足の踏み場もほとんどないひどい有様だ。
「いや、私が取ってくるから文は座ってていいよ。
ここは私の家で私のお願いなんだし――っ!」
つい普段のように地面に手をつけて立ち上がろうとして、激痛に顔を引きつらせるリリカ。
「……まだ無理せずに休んでたら?
怪我悪化させても知らないわよ」
「これぐらいは……やらないと、私の意味がないから」
心配する文にリリカは無理に笑顔を作ってから、ゆっくりと立ち上がる。
「……はぁ、わかったわよ。無理はしないようにね」
説得を諦めた文は、リリカをただ見守ることにした。
リリカは、散らかった器具庫の中で不自然に整理された一画から、古ぼけた箱を取り出す。
「――これで、演奏してくれないかな、文」
大切そうに抱えられた箱から取り出されたのは――オカリナだった。
「……うーん、一度も扱ったことのないものだし、オカリナ(小さなガチョウ)という名前がどうも気に食わないんだけど。
それに、古そうだしちゃんと手入れされてないんじゃ……ってわけじゃあ、ないのね。
見た感じオカリナの幽霊でもないのになんでこんなに大事にしてるの?」
天狗の慧眼で鑑定してみたところ、オカリナは数百年程度の年季と魂の篭もった逸品と出た。
途方もない手間をかけて丁寧に手入れされているのか劣化の具合もほぼ見当たらない。
「……大事な、大事な人が使ってたんだ。
今はもう、誰だったのかすら記憶からも薄れちゃったけどね」
オカリナを、そっと優しく本当に優しく……撫でるリリカ。
「……はぁ、仕方ないわね。やればいいんでしょう。
で、私はこのオカリナで何を演奏すればいいのかしら? リクエストが無いなら勝手にやるけど」
「あ、うん。 そこにある箱から選んでくれないかな」
「んー……これ、一杯あるけど全部外の世界の楽譜?」
リリカに指定された箱を開けてみると、楽譜がこれでもかというほどに詰まっていた。
文はその中から幾つかを取り出し、紙質から外の世界の楽譜だということを類推する。
「ええ、姉さん達が無縁塚へ流れ着いた子を拾い集めてるの。
誰だって……忘れられるのは、寂しいからね」
「……観測者が残っているかぎり、失われても、消えるものはない、か。
じゃあ私の手で一枚蘇生させてみましょうか」
文は楽譜の海を覗き……やがて一枚の楽譜を取り出す。
「……これで、いいかしら」
文は、静かに楽譜を読み、覚え始める。
「演奏できるかぐらい見てから決めた方がいいんじゃない?」
「どうせ全部知らないんだから、〝これでいい〟って選んだものの方が大体後悔しないものなのよ。
仮にそうでなかったとしても、自分でいいものにしてしまえば問題ないしね」
「まぁ、文がいいならそれでいいけどさ」
少々の時間の後、文は楽譜を読み終え、立ち上がる。
壁に背にした射命丸文は、双眸を閉じ、息を整え。
「――ご照覧あれ」
恋人のようにオカリナを、そっと寄せ、口付ける。
先程までのおふざけはいずこやら、流麗なる佇まいは楚々たる桜を思わせる。
構えたまま、静まり返る凪の如く静止した文。
一流の演奏者であるリリカすら息を呑むざるを得ない、堂に入った構え。
如何なる雑音、騒音でも、今の文を揺るがすことは叶わないだろう。
やがて、たおやかな唇が揺れ――――音が、生まれる。
眠りし者の夢を覚ますかの如く高音で紡がれる旋律、
それらは悠久なる時の流れを揺蕩い、不意にリリカの元へと流れ着く。
訪れた音は周囲をただ流れすぎ、やがて遥か遠くに夢幻の如く霞み消えていく。
何者にもただ生まれては消えるだけの、誰の目にも見えない故の形容できない美しさ。
どこか物悲しく、玲瓏な響きは、まさしく誰しも幼き頃から慣れ親しんだ“風の音”であった。
言霊が描く風は、いとも容易くリリカに侵入して、耳の奥を甘く刺激していく。
騒霊の本能に刺激されたリリカに、この〝音〟に、応えなければならない衝動が湧き上がる。
音を出したい、思いっきり奏でたい、こころゆくまで騒ぎたい。
でも、今のリリカは、音の素晴らしさを理解する感性は残っていても、演奏者としては鍵盤を触ればなにかしら音が出るというのを知っているだけの素人以下でしかない。
近場のオルガンに座ってみてはみるものの、やはり演奏しようとすると頭の中がまっしろになってしまう。
なら、この素晴らしい演奏を、汚してしまっては、いけない。
だけど。
それでも。
リリカは、想いを篭めた指先で、ゆっくりと……鍵盤に、触れる。
……生まれたのは、幻想の音とは比べるまでもない、ただ単音を鳴らしただけのつたない騒音。
リリカ自身にはそれすらも聴こえないが、文の演奏する繊細なる風の音が、リリカの騒音で響きを曇らせているのは理解できる。
心が、酷く痛んだ。
だけど……安心した。
――私は、ここにいるんだ。
幻想の音でもなんでもない、ただの騒音なのに。
ただ、それだけでこんなに嬉しいなんて、思いもしなかった。
胸の中で暴れるこの熱い想いは、抗いようがない程に強かった。
自分を思い出せたリリカは、もう止まらない。
風の音を汚す罪悪感があっても、痛む指の感覚があっても、ここで諦めるなんてできない。
ただ悪戯に、鍵盤を思いっきり掻き鳴らす!
欲しかった玩具を初めて買ってもらった幼子のように、生まれた意味を、想いを、音符に刻みつける。
風の音を台無しにする無尽の音が扉を揺らし、窓を震わせる。
まさにリリカは今、体中を流れる気持ちを発散するだけの、騒霊(ポルターガイスト)だった。
音の屋敷の下、演奏と騒音がはしゃぎ続ける。
永遠に終わらぬ舞踏会に酔いしれるように。
…………。
けれど、それももう終わる。
文の演奏が、一つリズムを刻む度に小さくなっていく。
リリカが追随すべき演奏は、もうすぐ終曲を迎える。
リリカの胸が、軋む。
痛いとか、苦しいとか、そんな生易しい表現では追い付かないくらいに、切なくなる。
騒霊としていられる時間が、終わってしまうなんて、発狂しそうだ。
でも文の演奏無くしては、リリカには自分の騒音すら自覚できない。
名残惜しいけれど……諦めるしかない。
……また、やりたいな。
そんな小さな願いを篭めて掲げられた手が、最後の音を叩き出すべく、鍵盤に吸い込まれる。
その瞬間――プリズムリバー邸に〝一つの風の音〟が響き渡った。
「あ……」
目には映らない音と音の波紋の共鳴。
それが、リリカの耳には〝一つ〟の美しい風の音に聴こえた。
さっきまでまでは騒音に荒らされ、風の音の体を成してなかったのに。
最後の一音だけ、リリカの騒音は、風の音に、協奏できたのだ。
偶然に過ぎない。
偶然触れた鍵盤が、偶然文の風の音と合致する音を出したに過ぎない。
だけどリリカには、何故だかその風の音が、リリカのまたやりたいという願いに、応えてくれたように聴こえた。
…………。
静寂に戻った倉庫室。
リリカは疲れきったのか、椅子に座ったままオルガンの鍵盤に上半身をもたれこんでいた。
時折、体が鍵盤に触れるが、やはりリリカにその音は聞こえない。
だけど聞こえていなくても彼等は応えてくれていると知ったリリカは、口元を自然とあどけなく綻ばせていた。
「……ありがとう、文」
鍵盤にもたれこんだまま首だけを曲げ横を向き、文に礼を言うリリカ。
文はオカリナを口元にあてたまま顔を上げ、格子越しの天窓から、空をじっと呆けたように眺めていた。
やがてリリカの声と視線に気付いたのか、文も天窓からリリカへと向き直る。
「……どういたしまして。
で、治る兆候はあるの?」
「まだだめみたい。
でも……すごく楽しかった。
演奏の邪魔しちゃって、ごめん」
「別に構わないわよ。
心の動く音楽が、例え騒音でも一番いい音楽。貴方が昔言ってたことじゃない」
「……ありがとう。
あのさ、文、ちょっとお願いがあるんだけど」
リリカがおずおずと文に語り掛ける。
「……あんたについていって、私も取材に参加させてもらってもいいかな?」
「ついてくるのはいいけど……取材に参加するの?」
「協力したいってのもあるけど……取材して〝音〟を集めたいんだ。
キスメはヤマメはもちろん、他の皆の音も、できれば全員の音を」
「音……?」
意図が掴めず、聞き返す文。
「文についていって、この殺し合いで死んでいった人を知ってる人達から聴きたいの。
だれが、なにを、どうして、なにを想って死んでいったのか、その生涯を。
できるなら、殺し合いの前の皆の歴史も何もかも含めて、〝死者の音〟の全てを聴きたいんだ」
「…………〝幻想の音〟の一つである〝死者の音〟を集めることで、能力の復活を願うってこと?」
リリカの強い意思に気圧された文は、リリカの言葉から現実的な推論を述べる。
「そうじゃないとは言えないけど、ちょっと、違うかな」
リリカは一息、置き。
「――……鎮魂歌(レクイエム)を、作曲したいんだ」
しんみりと、でも揺るぎない意思を秘めた決意を詠う。
文には、リリカのその姿が、風に雲を吹き払われた星のように、煌めいて見えた。
「文は生きてる人の情報をメインに扱うって聞いて思ったんだ。
なら、死んだ人は、どうなるんだろうって」
そう、始まりはあの時だった。
「……どんなフィナーレを迎えるかはわからないけど、この殺し合いはいつかは終わる。
でもどんなラストを迎えても…………死んだ皆は、もう帰ってこないじゃん。
幻想郷は忘れられた世界だから、もしそこからいなくなったら、もうその人を新しく知る人は出てこなくなっちゃう。
今知っている人だって、いずれは歳月の流れで幻想郷が一巡したら、皆の記憶から薄れていっちゃう」
リリカは知っている。
自分が消えるというのは、どれだけ怖いものなのか、寂しいことなのか。
「だから、私は皆を楽譜に包み込みたい。
楽譜なら幻想郷が一巡しても、物質として幻想郷にずっと残ってくれる。
もし私がいなくなったとしても、いつかだれかが奏でてくれる。
そうすれば……皆は、いつだってそこにいるんじゃないかなって、そんな夢を見たいんだ」
リリカは知っている。
自分がここにいると実感できるのは、どれだけうれしいものなのか、大切なことなのか。
「……皆、幸せに生きて、幸せに消えたのならまだ、いい。
でもこんな理不尽に全てを壊されて、いつか忘れ去られて消えてしまうなんて……とっても寂しいと思うの」
だからリリカは願う。
私達は、ここにいる。
もう忘れられることはない、と。
「…………道は、険しいわよ。
死者について詳しく教えてくれる人妖なんてどれだけいるか。
特にヤマメやキスメの友人がいた場合、貴方が聞き出すのは至難の業でしょうね。
他にも聞かれたくない話だったり、取材対象が実は嘘をついてたりするかもしれない。
死者の音なんて、それこそ幻想にしかないかもしれない」
文が、重々しく苦言を呈す。
「……わかってる。
だけど、私は〝これでいい〟って思ったんだよ。
なら……仕方ないじゃん」
何かを悟ったように怯えを見せながらも、決意は緩める様子は見えない。
思いがけない悪意がリリカを蝕もうとも それでもきっとその身が果てるまで尽くすのだろう。
「……そう。
まぁ、私もできる限りは協力するわ。
リリカの取材もするとなると、これからどこへいこうかしら」
文は話を早々に切り上げ、次の話題に切り替えようとする。
「あと、さぁ。
もう一つ、文に聴いてほしい願いがあるんだ」
だがリリカは、いまだ自分のペースを崩そうとしない。
「……私はいつか幻想の音を取り戻してみせる。
でさ、文っていい音出してたじゃん。
だからさ、ほら、さっき演奏、私、色々迷惑かけちゃったじゃない、だからさー」
色々理由をつけたりしながら決心を少しずつ固め、文に正面から向かい合い。
「曲が完成したら――……私とデュエットしてくれない?」
どこか照れくさげで冗談めいた声音だったけれど、リリカの視線はあまりにも真っ直ぐに、文に向いていた。
それだけで、リリカがいかに真剣であるかを、文には理解できた。
文になら魂すら預けられる。
リリカは、そう心の底から、信じていた。
「…………評価してもらうのは嬉しいけどね。
身勝手な風の曲ならまだしも、鎮魂歌みたいに誰かの為に演奏するなんて私には向いてないわよ。
私と演奏したって人の心を揺さぶるようなものには絶対にならないわ」
だがリリカの真摯な誘いに、文は理由をつけて婉曲的に断る。
「え、そんなことないでしょ?
だって、文って新聞記者じゃない?」
文の返事に焦ったリリカが、必死に食い下がる。
「は? なんでそこで新聞が出てくるの?」
リリカの意図が理解できず、呆け顔で問い返す文。
「文は新聞を書いてお客さんに配ってるんだよね??」
リリカには、文が誘いを断ったことはともかく、文が誘いを断る為に使った理由がまるで理解できなかった。
「――なら自分で創ったもので誰かが楽しんでくれるって、とってもうれしいでしょ?」
だから、ただ素直で純粋な想いを、文にぶつける。
「…………それ、は。
まぁ…………演奏については、考えておくわ」
言葉を詰まらせた文は、渋々ながらも受け入れざるを得なかった。
了承を得たリリカは、目を瞬かせ、やがて大きく見開き、椅子から勢いよく立ち上がる。
「おーけー、じゃあ文は今日からプリズムリバー楽団の臨時メンバーね!」
「えっ、ちょ」
狼狽する文を無視して、言質を拡大解釈しまくったリリカが、口元を思いっきり綻ばせた満面の笑顔を咲かせる。
殺し合いに来てから久方ぶりに見せたその笑顔は、とても愛らしく、きらきらと輝いていた。
「これでようやく私にも下の人ができたわよ、文、もといプリズムリバーさんの一番下の方」
「……三年前のこと、まだ根に持ってたのね、プリズムリバーさんの旧一番下の方」
「うふふ、プリズムリバー楽団の魂である音を、姉妹以外の人の音に触れさせるなんて初めてのことなのよ。
そんなレアな権利をあげちゃうなんて私ってえらいでしょ?」
「ああ、うん。じゃあ演奏の約束が終わったら音楽性の違いで抜けるわね。
ライブなんて私の柄じゃないし新聞記者で忙しいし」
「えー、いいじゃん。
ノリ悪いなー、そんなんじゃうちでやってけないよ――あっ」
興奮しすぎたのか、安心したからか、ふらっと体が倒れかけるリリカ。
「しばらく休んだらどう?」
「文はどうするの?」
「まぁ私もちょっと疲れたし、ここらで休憩しようかしら」
「……寝てる時に誰か、来ないかな」
「そうなったら起こすわよ。
意識を薄く保ちながら休息する術ぐらい心得てるし」
「天狗ってほんとなんでもできるんだね」
「そうよ、私は天狗だからね」
「じゃあ任せるわね。
うーん、まくらがないと寝にくいなぁ」
「自分の部屋に戻ればいいじゃない」
「……やだよ、ここがいいんだもん」
「はいはい、じゃあこの本でもまくらに使いなさい」
文は支給品の袋から図書館から失敬した絵本を取り出し雑に投げ渡す。
「えーと……ニルスのふしぎな旅?
いや、それはどうでもいいんだけどこのまくら硬い……まぁ、いいか」
不満より眠気が勝ったのかリリカはくぁ、と可愛くあくびをして、絵本を枕に子供のように寝転んで眠りについた。
◇ ◇ ◇
リリカが眠り、一人になった文は、思考に耽る。
思考の内容は――リリカに接触し利用する計画の推移。
……リリカに見せた文の意思は、真実ではない。
殺し合いは既に半日経過し、参加者は幾たびも出会いを重ねているだろう。
性質上、殺し合いに反対する人妖は複数で、殺し合いを承諾した人妖は一人で行動する場合が多いと予測できる。
そんな状況で誰かに取材をするとして、一人と二人、どちらが相手の信用を得られるかなど、わかりきっている。
だからこそ、文はリリカを裏切らない同行者として仕立て上げた。
ただ、それだけだ。
(今回の計画は、まぁ……及第点ってところかしらね)
リリカを同行者に仕立て上げる計画の結果に自己評価を下す文。
些か想定外な進み方も多かったが最終的にはそれなりの形に落ち着いた。
失点としてはリリカを調子の乗らせてしまったことだ。
あそこまでリリカが光り輝くとは文も予想外だった。
(……あれが若さって奴なのかなぁ)
無知故に、未来に夢を抱いたリリカは、その夢の輝きで人妖を集めるのだろう。
元々プリズムリバー楽団としてあれだけの人望を集めていたのだから、素質はあるはずなのだ。
いつかきっと、沢山の人妖が、光彩陸離たる星の光に惹かれ、集うのかもしれない。
けれども、文だけは決してリリカに惹かれはしないのだろう。
――空が狭いと、知っているから。
夢の翼を得たリリカは、傷だらけになりながらも空を翔るだろう。
弱音を吐きながらも、意思を、願いを貫く為に、ひたすら高く、高く、空を飛び続けるだろう。
だがリリカは知らない。
空は狭いということを。
天蓋に阻まれ、大地に叩きつけられて、その身を砕く未来を。
夢は 醒めるもの。 それが、自然の運命(さだめ)なのだ。
だから射命丸文は、最初から夢を見ようともしない。
天狗の賢しさ故に、避けられない天蓋を飛ぶ前から知ってしまうから、最初から飛ぼうともしない。
強い者には礼儀正しく、弱い者には強気に出る天狗として、大地をただ卑しく這い続ける運命を選んだのだ。
(……空を飛べない私には、この小さなガチョウがほんと、お似合いよね)
手元のオカリナを弄りながら皮肉げに苦笑する文。
いつから……こんな天狗になってしまったのだろうか。
もう記憶は薄れきっているが、昔は、文もリリカみたいにやんちゃしていた頃はたしかあったはずだ。
いつか倭国だけじゃなく全ての大陸の空を、風を、制覇しようみたいな馬鹿げたことを公言していたような、気がする。
文は、天狗は、昔と比べて随分変わってしまった。
見渡せないほどに広くて流動の激しい外の世界。
あの頃は、いつまでも飽きる事無く魅せてくれる世界を心行くまで楽しんでいた。
幻想郷に来てから天狗は変わった。
流動の少ない幻想郷はあまりにも閉鎖的で狭すぎた。
天狗は、幻想郷をずっと見守ってきた。
天狗程、幻想郷を見てきた者も居ない。
天狗程、幻想郷に詳しい者も居ない。
真実を見る観察者として抗えぬ籠の中で過ごし、六十年毎の幻想郷の一巡を繰り返した結果、いつしか天狗は適応してしまった。
好奇心を失った天狗はいつしか翼を出さなくなっていった。
自分達はちっぽけな存在ではないと、ただ他人に見せつけるために組織で内輪に引き篭もって自分達を統制し始めた。
外敵なんていないのに、偉そうに強者面だけは欠かさない、ただのちっぽけな一妖怪に成り果てた。
天狗の中でも人一倍好奇心の強い文は、それでも必死に足掻こうとした。
けれど、結局は無駄だった。
いつからか自分でも気付かない内に、自慢の黒い翼を自然と表に出さなくなっていた。
その後も諦めず、いっそ逆の考えで、幻想郷を内側から広げようと新聞を始めてみたものの、ちっとも広くならなかった。
新聞を取って貰えてる人妖自体ほとんどいないし、むしろ段々減っていくし、書くのに時間は使うし、まったく意味は無かった。
今ではもう……惰性で続けているだけでしかない。
――でも自分で創ったもので誰かが楽しんでくれるってとってもうれしいでしょ?
ついリリカの妄言を思い出してしまった文は、すぐに脳裏から雑念を振り払う。
(……なーんで今更、こんなことを思い出してるんだか)
自嘲している文自身、薄々と理由は理解はしている。
……あんな演奏を、してしまったせいだ。
演奏なんてどうでもよかったのに、楽譜の海に、かぜというタイトルの欠片を見つけてしまった、気がついたら演奏していた。
風を荒らす騒音相手に、むきになって、つい数十年ぶりに本気で演奏してしまった。
風が、空が、これほどまでに恋しかったなんて、ずっと忘れていた。
椛のことを執拗に知りたくなったりした件といい、よくない兆候だと文も自覚している。
自分以外の全ての参加者の死という目標を果たすのに、感傷に浸っていても、害しか生まない。
射命丸文とは、死を尊ぶような殊勝な少女であってはならない。
無駄にリスクを負う真似はせず、ばれる可能性がないルナサの遺言を捏造する狡猾さ。
自分を棚に上げた正論を罪悪感を匂わさず、堂々と言い切り、心へと潜行させた話術。
笑顔を保ちながらも、心の中では全ての参加者の死亡をただ望む冷酷さ。
暴虐の化身としての悪魔のレミリアとは異なる、御伽噺に描かれる卑劣なる悪魔。
天蓋に包まれた世界で大地を這いずって生き残る為には、そういう少女でなくてはならない。
たとえ翼があろうと、飛べない翼に、意味はないのだから。
【C-2 プリズムリバー邸 一日目 真昼】
【リリカ・プリズムリバー】
[状態]腹部に刺傷(大よそ完治)、右手人差し指切断、失語症(自身の演奏関連のみ)
[装備]なし
[道具]支給品一式、オレンジのバトン、蓬莱人形、霊撃札(12枚)、白紙の楽譜、ニルスのふしぎな旅
満月のバイオリン、巻き貝のホルン、海ユリのベル、潮騒のハープ、嵐のマリンバ、珊瑚のトライアングル、夕凪のオルガン、遠雷のドラム
[思考・状況]全ての人を笑顔にさせたい
[行動方針]
1.全ての人妖の魂に捧げる鎮魂歌を作曲し、レミリアに、皆に、聞かせる。
2.死者を含む人妖の音(情報)を集めながら死者を弔いたい。
3.霧雨魔理沙を探しその動向が脱出であれば協力する。
【射命丸文】
[状態]健康
[装備]短刀、胸ポケットに小銭をいくつか
[道具]支給品一式、小銭沢山、様々な本、霊撃札(12枚)、レイラのオカリナ、かぜのさかなのうたの楽譜
[思考・状況]情報収集&情報操作に徹する。殺し合いには乗るがまだ時期ではない。
1.リリカを同行者として利用する、邪魔になれば……始末する。
2.燐から椛の話を聞いてみたい。
※妹紅、天子、リリカが知っている情報を入手しました。
※本はタイトルを確認した程度です
修正ついでの裏話。
実は予約期限切れで没になった時のものとは割と別物、時間があるって素晴らしい。
タイトルは我ながらいいものに仕上がった自信がある。
いつもの通り書き終えてからタイトル決めようとして、文初登場リリカ再登場の東方花映塚(かえいづか)に偶然今回のSSのコンセプトに合致する文字を当て嵌められた時は感動した、塚とかそのまま流用できたし。
ちなみにコンセプトはwiki=楽譜が残っている限り、東方ロワ=参加者はきっといつまでも忘れられることはないって話、wikiってすげえ。
実際には長い年月を経れば忘れられちゃうんだろうしwikiも無くなってたりするんだろうけど、それでもきっと、幻想には残っててほしいな。
最終更新:2014年03月07日 08:34