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  • 神への冒涜1

神への冒涜1

最終更新:2012年04月21日 06:27

jelly

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 ――病院。
 それは怪我をした者、病を患った者を治療する救いの場だ。
 そこは最も信頼できて最も安心できる場所のひとつである。
 私はそう信じていた……”そのときまでは 。”
 そして、”それ”は私の運命を変えたのである。

――ははは…。そいつはできない相談だ。噛みつかれでもしちゃ、大変なことになるからなぁ!――


『神への冒涜』一人目「被検体 / The first of Episode」



 不可解な夢から目を覚ますとそこは見知らぬ病室だった。

「……ここ…は? 病院?」
 看護師がそれに気がついて声をかけてくる。
 曰く、私はどうやら事故に巻き込まれてここに運び込まれたらしい。病室は個室のようで、他の患者の姿は見えなかった。
「心配しなくていいのよ。うちの先生は最高の腕を持っているのだから。あなたは何も余計なことは考えずに寝ていなさい」
(事故に巻き込まれただって?)
 事故のことを思い出そうと記憶の糸を手繰り寄せるが何も思い出せない。自分の名前すらだ。これも事故の影響なんだろうか。
(そういえば、強いショックを受けて記憶の一部が飛んでしまうという話を聞いたことがあるような)
 そんなことをぼんやりとした頭で考えていたが、いつの間に眠ってしまっていた。
 次に目を覚ましたのは、担当医を名乗る医者に声をかけられたときだ。
「……なた。そこのあなた。ちょっといいかしら」
「……? え、あぁ……。あなたは?」
「私は八神。私があなたを担当することになりました。私も全力を尽くすことを約束します。だからあなたもつらいかもしれないけれど、それに負けないでいっしょにがんばっていきましょう」
 八神は無表情で励ますようなことばを言った。実際のところあまり励みにはならない。
「つらいとは…。私はそんなに悪いんですか」
「そうね…、少し長い期間の入院をしてもらうことにはなりそうね。だけど心配はいらないわよ。命に別状がないということだけは約束できるから。だから安心して。まぁそういうわけで、長いつきあいになりそうだから私を信用しておいてほしいの」
「そうですか…。わかりました。よろしくお願いします」
「それじゃあ、これからの治療の予定を説明するわ。まずあなたには各種の検査を受けてもらうことになります。詳しい治療方法はそれから検討することになりますが、外傷は目立たないので最初は投薬による治療が中心になると思います。それから……」
 八神は説明を続けた。
 八神は細身で背の高い女性だった。無表情で冷静で淡々としゃべる。
 いわゆるシゴトのできるオンナというやつだろうか。

「……以上ですね。何か質問は?」
 私は八神に一番の疑問を問いかけてみることにした。
「実はこの病院に来る前のこと全然思いだせないんですが…」
「…ふぅん。それはつまり記憶がない、と」
「事故に巻き込まれたと聞きました。これもその事故の影響でしょうか」
「…そうね。その可能性は高いわ。それも踏まえて治療計画を検討することにしましょう」
 八神はカルテにそのことを書き込むと、何かあったら看護師を通じて伝えてほしいと言い残して去って行った。
 記憶がない……と聞いたときに、無表情な八神が一瞬にやりと笑ったように見えたが気のせいだろうか。
 心配はいらない、安心しろと言われても、突然こんな状況に置かれてはそれも無理な話だった。
 そして、翌日から連日の検査、検査、検査。
 血を抜かれたり、レントゲンを撮られたり、よくわからない器具を装着させられたり。
 採血と体重の測定は毎日行われた。しかし結果がどうなのかはまだ教えてもらえないらしい。
 退屈な日々だった。


「久しぶりね。調子はどうかしら」
 ある日、再び八神が病室に現われた。
「まったく毎日毎日、検査ばかりでいやになってしまうよ」
「そう…。それは元気そうでなによりね」
 この頃には当初のような不安はなくなってきていた。慣れというものは恐ろしい。
 相変わらず八神は無表情で冷たい様子だったが、もともとこういう性格なのだろう。
「今後の方針が決まったわ。前にも説明したように、投薬による治療を行っていきます。それと確認なんだけど、今までに薬を飲んで何かアレルギーが出たことはないわね?」
「大丈夫です」
「ならいいんだけど。それから、これはこっちの都合で申し訳ないんだけど病室を移動してもらうことになったわ。案内するから私についてきなさい」
「こっちの都合とは?」
「ええ、その……。治療にあたって必要な設備がこの病棟にはないの。その設備があるほうの病棟に移ってもらう必要があるってわけよ。申し訳ないけどね」
 設備の都合なら仕方がない。八神に連れられて院内を移動する。
 他の患者の姿は検査のときもそうだったが、ちらほら見かける程度だった。
 知ってる顔はないかと捜したりもしたが、とくに知り合いを見かけることもなかった。
 続いて中庭を通り過ぎる。
 そういえば、病室で目を覚ましてから初めて外に出たような気がする。
 どうも見覚えのない病院のようだが、ここは一体どこの病院なのだろうか。それとも、事故のショックでそんなことすらも忘れてしまったのか。目を覚ましてから数日経つが、未だ記憶は闇の中だ。
 そもそも私は一体どんな事故に巻き込まれたというのだろうか。
 看護師たちに何度か聞いてはみたが誰もが答えてくれなかったり、話をごまかしたりした。もしかして、私は何か大変なことにでも巻き込まれているのだろうか。
 ……まさか。
 いくらなんでも考え過ぎだろう。いや、そうであってほしい。
 しかし、その願いはすぐに揺らぎ始めた。


「ここよ」
 着いた先にその病棟はあった。
 黒く薄汚れた建物で、壁は所々ひび割れている。白く清潔感のある、さっきまでいた病棟とはまるで対照的だ。
 重そうな鉄の扉を八神が開けて中に入る。
 中は薄暗く陰鬱な空気だ。病院特有の薬品の臭いとはまた違った異様な臭いが漂う。
「ここ…ですか…」
「オンボロで申し訳ないわね。古くなってきたから建て替えようという話も出てるんだけど、こっちにしかない設備をどう移動させるか、建て替え中に患者をその間どうするのか、などの問題があってなかなかね。これでも、ちゃんとしたうちの施設だから」

 当初のような不安はなくなってきていた……?
 否、当初以上の不安が襲いかかってきた。そんな不安を押しこらえて扉をくぐる。
 後ろから扉が重々しく閉じる音が聞こえる。まるで外界とこの空間を断ち切ってしまうかのように。
 階段をひとつ昇って、少し行った先に病室はあった。
 相変わらず薄暗い。清潔感とはまるで無縁な空間だ。窓は閉め切られていて、部屋にはベッドと机がひとつあるのみ。にもかかわらず閉塞感さえ感じる。
「それじゃあ、しばらくしたらまた呼ぶから」
 八神は、この病室でしばらく待つように言うと部屋を後にした。
「ああ、それから見ためボロボロだけど、一応これでもこっちは大事な施設なの。研究用の重要な施設なんかもあるから、あまりうろうろしないほうが身のためよ」
 最後にそう言い加えながら。

 八神が出て行ったあとはひたすら静かだった。その静寂がまたひどく不気味だった。
 重苦しい空気を払いたくて窓を開けてみようと試みたが、窓はどうやらガラスがはめ込まれているだけで、開閉できるものではないようだ。
 しばらく待てと言われても、とくに時間をつぶす手段もないので、ベッドに寝転がった。すると、ちょうど正面の壁にモニタ画面のようなものが設置されていることに気がついた。
 テレビだろうかと思って部屋を見渡すが、リモコンのようなものは見当たらない。直接電源を入れられないかと画面に近づいてみるが、そのようなものも見当たらない。
 仕方がないので、再びベッドに寝転がる。
 そしてそのまま不安に押しつぶされるかのように意識は遠のいていった。


「……経過はどう?」
「ここまでは順調ですね。事前の検査でも適性はあるとの結果はでていますが、あとは試してみないことにはわかりませんね」
(話し声が聞こえる…。八…神……?)
「そう。今回はうまくいくといいけど。そろそろ結果を出さないと上がうるさくてね…」
「申し訳ありません」
「私たちだけのせいじゃないわ。上がもっと研究費用さえ出してくれれば、こんなにも苦労することないのに…」
(もう一人は……誰…? ”上”…?)
「ところで、この前のアレはどうだったのかしら。たしか最終段階までは行ったと報告を受けているんだけど」
「いえ、その一歩手前までですね。そこまでの経過は良好だったんですが、そこに来て拒絶反応が出まして。暴走を始めたのでやむなく処分しました」
「そう…。残念だったわね。検査結果では、過去最高の適性を見せていたと思ったんだけど…」
(…適性? それに……処分!?)
「今回は2体…か。だんだん少なくなってきたわね…。こんなので本当に成果が出ると上は思っているのかしら。私は早くこの研究を終わらせなくちゃならないのに…!」
「ドクター八神…」
「私なら大丈夫よ。それよりも今は目の前のことに集中しないと。さぁ、良い結果を出してくれるといいのだけれど」
「研究班は今回こそはいけると言っていましたが果たして…。まぁ、我々の役目はこっちですからね。我々は我々のできることで常に最善を尽くすのみですよ。あとは祈りながら見守りましょう」
「そうよね…。それじゃあ、やってちょうだい」
「任せてください」

 突然の鈍い痛み。
 熱い。身体が熱い。まるで内側から焼けるような熱さだ。
 そして頭が痛い。平衡感覚が異常を訴えている。ひどいめまいだ。
 視界がぼやける。まぶしい。だが同時に真っ暗でもある。目が白黒する。
 浮かんでいるような、落ちているような、奇妙な浮遊感……。


「お、おまえたち、一体、何を……ッ!!」
「えっ?」
 気が付くと、最初に目が覚めた病室のベッドの上だった。
 看護師が心配そうに顔を覗き込んでいる。
「ずいぶんうなされてたようですけど…。大丈夫ですか?」
(……夢?)
 そこはすでに見慣れてしまったあの病室。薄暗さも、ひび割れた壁もない。
(そ、そう…だな。いくらなんでも、あんな薄汚い病室に患者を通す病院なんてあるはずがない。あれは、きっと不安が見せた幻に違いない)
 胸をなで下ろして、看護師に答える。
「大丈夫です、申し訳ない。少し奇妙な夢を見ただけで……え?」
 看護師の顔がぐにゃりとゆがんでいく。
「そレはヨカッた。心配シナクテイイノヨ。ウチノ先生ハ最高ノ腕ヲ持ッテイルノダカラ。アナタハ何モ余計ナコトハ考エ、考エ、カンガ…。ガ。ガ。ガ、ガガガガガ…」
「!?」
「おまえは、何も余計なことは考えなくていいんだよ! くひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
 看護師の顔が溶けてなくなり始めた。
 溶けて穴があいた顔の向こう側に見えるのは見覚えのあるモニタ画面。
 鼻を突くような異臭。押しつぶされそうに重い空気。
 白い病室の壁は、徐々に黒ずんでひび割れていく。
 ついに看護師は溶けてなくなってしまい……

「……!!」
 気が付くと、例の薄暗い病室のベッドの上だった。
(……ゆ、夢!?)
 そこは、移動させられた病棟の病室。明るさも、白い壁も、看護師の姿もない。
(今のが夢なのか? だとすると、研究がどうとか誰かが話していたあれは……。あれも夢か…?)
 まだ、頭がくらくらする。ベッドは汗で濡れていた。

「どうかした? 疲れた顔をして。怖い夢でも見たのかしら」
 しばらくして病室へやってきた八神は言った。
 当然、あんな不気味な夢の内容など話せるわけもない。
 おそらく不安が見せた夢なんだろう。笑われてしまうのがオチだ。
「だ、大丈夫だ! なんでもない!」
「あらあら、落ち着いて。薬の副作用かもしれないわね。統計では精神が不安定になることがあるみたいだから」
 薬と聞いて、例の研究がどうこうと話されていた夢が真っ先に頭に浮かぶ。
 夢では何か鈍い痛みを最初に感じたのだ。あれは何かを注射されたのではないか。八神は言っていたじゃないか、”投薬による治療を行う”と!
 それに、もしあの研究の話が夢じゃなくて事実だったとしたら。
(処分……)
 まさか、夢の中の会話が本当なのかどうかなんてばかなことを問いただすわけにもいかない。
 そもそも、そんなことが実際にあるわけがない、あってはならない! それこそ映画や小説の中だけなのだ、そんなものは。
「いや、あの…。そうだ、そろそろ教えて頂けませんか。私がここにいる理由を。看護師たちは誰も教えてくれなかったので」
 代わりにずっと疑問になっていたことを問いかけた。
「なんだ、そんなこと…。言わなかったかしら、あなたは事故に巻き込まれたのよ。だから、ここに入院しているの」
「そうじゃない。どんな事故に巻き込まれたのか、それからどんな怪我か病気かでここに入院させられてるのかってことだ」
「目立った外傷はない。でもあなた、自分で言ってたじゃない。記憶が曖昧だって。つまりはそれ。あなたは内的疾患を患っている。だからその治療のためにここにいる。…これで満足かしら?」
 まただ。また話をはぐらかされた。これは何か隠しているに違いない。
 ここぞとばかりに一気に八神に追求する。
「いや、まだです。たしかに記憶ははっきりしませんが、それだけのために投薬はしないでしょう。それに事故の詳細をまだ教えてもらっていません」
「……事故のことは、申し訳ないけど言えないわ。ちょっと……表沙汰にできないことなの。つまり…その、あれよ。警察のほうから口止めされているの。患者たちも口止めされていたはずよ。あなたは覚えていないかもしれないけどね」
「なんだと? それならあなたも関係者じゃないか! 口外できないとしても、関係者間なら口外することにはならない。隠さずに教えてくれてもいいだろう!」
「ああもう、しつこいやつ! あなたはそんなこと、知らなくていいのよ!」
 とうとう八神は怒り出してしまった。
「あなたは医者ですよね。患者は医者が何をするのかを知る権利があったかと存じますが?」
「うるさい! …これだから中途半端に頭のいいやつは嫌いなのよ! いい? あなたがそれを知ったところでなんの役にも立たないのよ! 世の中には知らないほうが幸せなことはいくらでもあるんだから!」
「それが記憶を取り戻すきっかけになるとしても…?」
「……記憶がないと言ったわよね。だったら、あなたはそれを思い出さないほうがきっと幸せよ。怖いとは思わない? もし、自分が大変なことをしでかしていたとしたら…」
「大変なこと? 待て。八神、何を知ってるんだ!?」
「うう……。こ、これ以上は言えないわ! あまり詮索しないほうがあなたの身のためよ!」
 これ以上は何も言うことはない、と八神は逃げるように病室を後にした。
 後を追おうと扉に手をかけるが鍵がかかっている。どうやら八神の仕業らしい。
 八神は明らかに動揺していた。
 私は確信した。ここはただの病院じゃない!

 こうしてはいられない。少なくともここは安全ではない。
 私はなんとかここから脱出することを考えた。
 扉には鍵がかかっている。窓はガラスがはめ込まれているだけで開くことはできない。ベッド前のモニタ画面にもとくに役に立ちそうな仕掛けはなかった。
(ベッドの下に隠れたり死んだフリで看守を騙して脱出しようにも、その看守がいないしな…)
 そう思いながらベッドの下を覗き込む。
「ん、これは…」
 ベッドの下には通気口ダクトがあった。都合良くダクトの蓋は壊れている。
(罠か、それとも以前にも私と同じように脱出を試みた者がいるのか…)
 しかし、いつまでもこの部屋に留まっていても解決の目途は立たない。私は通気口ダクトを進むことにした。
 ダクトは途中で道が分かれていた。どうやら他の病室につながっているらしい。使用されていない病室にうまく出られれば、扉は施錠されておらず脱出できるかもしれない。
 ほとんどのダクト出口は蓋がされていたが、ようやく蓋が外れている部屋を見つけた。
 部屋に誰もいないことを確認して通気口ダクトから這い出る。
「よし、まずは一歩…」
「だ、誰だおまえは!」
 しまった。ベッドの上にこの部屋の主がいたらしい。
(敵か!? それとも…)
 ベッドの上にいたのは一人の老人だった。私と同じ服装をしている。ということは、ここの患者か。
「驚かせてすまない。別に私は怪しいものではない」
「そんなところから出てきて怪しくないもクソもあるか! 場合によっちゃ人を呼ぶぞ!!」
「そ、それは困る! 危害を加えるつもりはない! ご老人、まずは落ち着いて私の話を聞いてほしい」
 私は自分の身の上と八神の不審な様子、夢で見た身体の異変や研究のことを老人に話した。無論、夢かもしれないということは伏せて。そして、ここはただの病院ではなく、直ちに脱出する必要があると。
 老人は意外にもすぐに私に同意してくれた。
「やはりか。わしもおかしいとは思っていたんだ…」
 老人はジェームスと名乗った。
 ジェームスは夢ではなく目の前で実際に例の注射を打たれたそうだ。例の異変については薬の副作用だと説明された。
「ふん、年寄りだから何もわからないと思ってばかにしやがって…。そりゃあ、まぁ、最近の治療はこういうものなのかと少し信じかけていたが……その研究とやらの話が本当なら、やはりおかしい気がしてきたぞ! よし、こんなところすぐに出て行こう!」
 ジェームスは真っ直ぐにドアを開けて出て行こうとする。
「ま、待て! 迂闊に歩き回るわけには…」
 扉には鍵がかかってた。
「ふん、クソったれめ。こんなか弱い老人を閉じ込めて何が楽しいというのだ、この変人どもめ!」
 ジェームスは扉を蹴飛ばした。もちろん、扉はびくともしない。
「お、落ち着いてくれ! やつらに見つかっては困る! 見つからないように脱出する計画を立てよう」
「わしがあと10年若ければあいつらなんか、この腕一本でぶちのめしてやったものを…。仕方ない、その計画とやらをさっさと聞かせろ」
 とても元気な老人だ。少なくとも脱出の途中で倒れられてしまうような心配はないだろう。

「…よし。それじゃあ、次に担当医があの忌々しい扉を開けたらわしがそいつに殴りかかって」
「いやいや! そこは私がやるから、あなたは扉を閉められないように押さえて周囲の確認を…」
「おまえのような若造に任せられるか! いいか、わしが若いころは…」
 あまりにも元気過ぎて、計画を立てるのも一苦労だった。
 そのとき、
「ジェームス! うるさいぞ、静かにしろ! …私だ、エイドだ。入るぞ」
 ご老人の担当医と思しき声が扉の向こうから聞こえてきた。
 まずい、まだ計画が完成していないのに…。しかし、やるしかない…!
(ジェームス、頼むからあいつは私にやらせてくれ。お願いだから周囲の確認を頼むよ)
(ふん、仕方ない。今回だけだぞ、次はわしがやるからな)
 次なんてあってほしくない。
「来るなと言ってもおまえは入ってくるんだろう。だったらさっさと入れ」
 ジェームスが担当医を呼び入れる。
 鍵の開く音が聞こえた。私は扉を開くその瞬間を待ちかまえて身構える。
(…今だ!)
 扉は開かれた。私は勢いよく扉の向こうにいる男に飛びかかる。
 しかし、
「おっと、残念だったな。おまえたちの様子は初めから監視されているんだよ」
 渾身の一撃はいとも簡単にかわされ、さらに担当医の後ろにいた助手たちに取り押さえられてしまった。
「大人しくしててもらおうか」
「一人じゃないのか! き、聞いてないぞ!」
「聞かれなかったからな。おい、ジェームスとついでにそいつも連れていけ」
 計画も空しく私とジェームスは研究員たちに捕らえられてしまった。


「…だから、わしに任せろと言ったんだ!」
「いや、そもそも監視されていたんだ。結果は同じだったさ…」
「まったく最近の若造はこれだ。すぐに言い訳をする。いいか、わしが軍隊にいたころはな…!」
 私たちは窓も家具も何もない狭い部屋に閉じ込められていた。なぜか拘束は受けていない。
『逃げようとしても無駄だ。すでに”処置”は終わっているからな』
 部屋の角に設置されたスピーカーから声が聞こえてきた。さっきのジェームスの担当医の声だ。
「処置…? なんのことだ。ここはただの病院じゃないな! おまえたちの目的はなんだ!?」
『それに答えてやる義務はない。おまえらは黙って最良の研究成果を見せてくれればそれでいいんだ』
「わしらに一体何をした! 場合によっちゃわしの上官殿が黙っておらんぞ!!」
『おまえが黙れ。どうせその上官殿はとっくの昔に退役している』
「ここから出せ! それに何だその態度は、男なら面と向かって話さんかい! 顔を見せやがれ、クソ野郎!!」
『ははは…。そいつはできない相談だ。噛みつかれでもしちゃ、大変なことになるからなぁ! ふん、とにかくもうおまえたちに言うことはない。以上だ』
 それっきりスピーカーはもう何も言わなかった。

「…くそっ、老い先短いジジイめ! どうせ、おまえはこの研究に耐えられない。あくまで様々なケースのデータを得るためだ。そううるさくわめいていられるのも今のうちだぞ!」
 エイドは監視モニタに拳を叩きつけた。
「ちょっと! 壊れたらどうするのよ! それに、お年寄りにそんなひどいことを言うもんじゃないわ…」
 八神もその場にいた。しかし、その様子は担当医として見せた無表情で冷静なものとは違っていた。
「おやおや、ドクター八神。あんたらしくない台詞だな。いつも担当の被検体にはあんなにも冷たくあたっているくせに」
「あ、あれは…違う! あれは本当の私じゃなくて…。仕事だから仕方なく…!」
「そうかい。それじゃあ、仕事の時間だ。おまえの処置した被検体には注目しているんだぜ?」
(ああ、ごめんなさい…。でも私は彼らに逆らえない)
 八神はこの《研究》に心を痛めていた。しかし、彼女にはどうすることもできなかった。
「各種センサー状態良好。いつでもOKです」
「こちらもオールグリーン。今回こそうまくいくといいですね」
「いつでも記録開始できますよ。この研究が成功したらお祝いに飲みに行きましょう」
 助手たちが二人に声をかける。
「さぁ、最高の結果を見せてくれ…」
 監視室にエイドの笑い声が響き渡った。

(め、目眩がする…。頭が…どうにかなりそうだ。こ、これは、あの夢のときと同じ……!)
 八神の”被検体”は再び身体の異変に襲われていた。
「ど、どうした若造! しっかりしろ、傷は浅いぞ! …たぶん」
 ジェームスはどうやら無事らしい。
『ほう、ドクター八神のほうが先か。やはり年寄りは効果が現れるのが遅くなるようだな』
(またあの声だ)
『被検体Yの体温上昇を確認』
『経過1をクリア。精神レベル異常なし、経過良好』
(別の声も聞こえる。一体な、何が…起こって、いると、い、うん、だ……!)
「が……ぐぅううう……!」
 被検体Yの筋肉が目に見えて急激に発達していく。上半身、とりわけ首や肩を中心に変化は見られた。筋肉の発達についていけず、服は破けて被検体の身体のあちこちから鮮血が溢れ出す。
 両手からは銀色の毛が生え始めた。それは徐々に被検体の全身を覆っていく。首筋も顔もすべてだ。
 同時にメキメキと激しい音を響かせながら被検体の腰が脚が、骨格が姿を変え始める。それに伴って衣服がずり落ちると、臀部からは太いブラシのようなそれが、すなわち尾が姿を現した。
 骨格の変化はそれだけに留まらない。被検体の鼻先と顎が突き出すように発達していきマズルを形成する。
「う……ぐぐぐ……」
 口元からは大きく発達した犬歯が顔を覗かせている。
 耳が頭頂部にぴんと立ち、それは大きく咆哮した。
「ウォォォオオオオオオオオオオオオオン!!」
 ジェームスはただそれを腰を抜かして見ていることしかできなかった。
「く、クソったれ…。こりゃあ、まるで……狼…男…!」
 ジェームスは目の前で起こったことが信じられなかった。
 だが、それは紛れもなく事実。彼を覆っている影は正しくその狼男によるものだった。
「グルルル…」
 狼男は舌と涎をだらりと垂らしながらジェームスにふらふらと迫る。
 この狭い部屋に怪物と二人きり。逃げ場も隠れる場所もない。
「こ、こいつは……まずい。戦時中に敵軍の中、一人残されたあのときと同じぐらいやばいぞ…」
 ジェームスに危機が迫る――

To be continued...

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