atwiki-logo
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • このページの操作履歴
    • このウィキのページ操作履歴
  • ページ一覧
    • ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このウィキの更新情報RSS
    • このウィキ新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡(不具合、障害など)
ページ検索 メニュー
TPC@wiki
  • 広告なしオファー
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
広告非表示(β版)
ページ一覧
TPC@wiki
  • 広告なしオファー
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
ページ一覧
TPC@wiki
広告非表示 広告非表示(β)版 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー
  • 新規作成
  • 編集する
  • 登録/ログイン
  • 管理メニュー
管理メニュー
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • このページの操作履歴
    • このウィキのページ操作履歴
  • ページ一覧
    • このウィキの全ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ一覧(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このwikiの更新情報RSS
    • このwikiの新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡する(不具合、障害など)
  • atwiki
  • TPC@wiki
  • F3 CP8

F3 CP8

最終更新:2012年06月02日 23:51

iglys

- view
メンバー限定 登録/ログイン

ChapterⅧ「王の血筋、国の意向」

(執筆:日替わりゼリー)

 時はフレイたちがファントムトロウやヴァルトに襲撃される少し前に遡る。
 ムスペ城からそう遠くない山道。そこに二頭の火竜の姿があった。
「ケルビン、ではあとのことは頼んだぞ」
「本当に行かれなさるのか…。このことがもし火竜王様に知れたらどんなことになるか、わかったもんじゃありませぬぞ」
 老竜が王子を案じて忠告する。
 しかしムスペ王子セルシウスはまるで意に介する様子を見せない。
「構わぬ。それにどうせ父上は私のことなど、そこまで気にかけてなどくださらぬさ…」
 直にフレイ王子がこのムスペ城へとやってくるというが、火竜王ファーレンハイトはセルシウスがフレイ王子に会うことを許しはしないだろう。
 ゆえに、セルシウスはムスペへ到着するよりも前にフレイ王子と接触する必要があった。
「じゃがのぅ、王子…。もしこのことがばれたら、あなただけではありませぬぞ。わしまで火竜王様の逆鱗に触れてしまいますのじゃぞ。それに従者たちにも迷惑をかけることになりますぞ」
 老竜はさらに心配した様子で忠告を続ける。事は彼自身の責任だけでは済まないのだと。
「ふむ、それがどうした。だったら、ばれなければよいだけではないか」
「そ、そう簡単に言ってくれますがのぅ…。わしは先々代王の時代からこの国に仕えておりますのじゃ。この老体にあまり無茶をさせるもんじゃありませぬぞ」
 ケルビンはなお頑なにセルシウスを引きとめる。
 昔話を始めれば周りは見えなくなり、一度言いだせば周りの話を聞かない。頑固な老中だった。
 だが頑固なのはこの老竜だけではなかった。火竜王はもちろん、歴代のムスペの王たちは皆一様に頑固であった。
 時にその頑固さはこの国独自の守りの堅さや戦略を生みだし、過去のニヴルとの度重なる戦において幾度も危機を乗り越えさせてきたものだった。
 あるいはそれが火竜の国の国風なのかもしれない。
 次期国王となるセルシウスもその例には漏れず、頑なに己の信ずる道を行くのだった。
「案ずるな、すぐに戻る。おまえは私がいない間に、それが父上に知られないよう立ち回ってもらうだけでよい」
 そう言い終わるが早いか、セルシウスは翼を広げると飛び上がり、瞬く間にムスペ大火山の噴煙の中へと消えて行ってしまった。
「よろしいですかな、王たる者とは時に大局を見据えて……って、お、王子!?」
 噴煙を抜け、ムスペを覆う雲を抜け、外へ。ムスペの大火山は見る見るうちに小さくなり、視界の下方へと流れて行った。
 後方からはケルビンが何やら叫んでいるのが聞こえたが、それぐらいのことでこの道を諦めるわけにはいかなかった。
「私は何としてもこの国を変えてやる。いつまでもニヴルといがみ合うなど、なんと愚かしいことか」
 頭の堅い父上には理解できないのかもしれないが、この空の世界にニンゲンたちが暮らし始めてすでに久しい。
 互いに争い合うより手を取り合ったほうがお互いにとって得策なのだ。ケルビンの昔話ではないが、それは確かに歴史が証明していることだ。
 竜はニンゲンに魔法を与え、ニンゲンは竜に地上の技術を与えた。魔法と技術の融合により、ユミル国は大きく栄えることになったのだ。
 それなのにどうだ。
 竜とニンゲンでさえ互いに共存できている国があるというのに、竜族同士で争い合うなど愚の骨頂ではないか!
 ニヴルの氷竜とムスペの火竜も互いに理解し合うべきなのだ。
「私にはわかる。父上は此度の騒ぎにかこつけてニヴルと再び戦争を起こすつもりなのだ。だが、そんなことはさせてなるものか!」
 ニヴルから送られて来たという氷の魔道師。
 それが本当にニヴルからの刺客なのかは私にはわからない。だが、それを理由に父上はニヴルを攻めようとしている。
 聞くところによるとユミルにも刺客が現れたらしいが、本当のところはどうなのかも私は知らない。
 だからこそ、会って確かめねばならない。フレイ王子に!


「――無事であったか」
 魔導船に火竜が舞い降りる。
 人化の魔法を唱えてフレイたちと同様の姿となった火竜は、フレイたちと同じ言語を用いて彼らに話しかけた。
 火竜の炎は第五竜将ヴァルトを退け、窮地に陥っていたクルスを救ったのだった。
「すまぬ。おかげで助かったぞ、礼を言う。して、おぬしは何者だ?」
 クルスが問いかける。
「ま、待つのだクルス殿。油断するな…! まだ、我々の味方と決まったわけでは…っ」
 オットーが、おそらく敵が落としていったのであろう剣を拾い上げて火竜に向けつつ、ふらふらと立ち上がる。
「無茶をするな。君はまださっきの戦いの傷が…!」
 フレイはそんなオットーを庇うように彼の前に立ち、いつでも応戦できるようにと身構える。
「いや、ちょっと待つっす二人とも。あれは…」
 セッテにはその火竜に心当たりがあった。
 かつてムスペで炎の魔法の修行をしていた頃、その姿はよく見かけていた。時々自ら魔法を指南してくれたこともあった。
 その火竜とは――
「「セルシウス」」
 セッテと火竜が同時にその名を口にした。
「セルシウスだって! ということは、あなたがムスペの王子!」
 王子と呼ばれた火竜は静かに頷いた。
「申し訳ありません。我々を助けてくれていながら……突然の敵襲だったもので、気が抜けなかったのです」
 フレイは構えを解くと、敵意を見せたことを素直に詫びた。
「いや、構わぬ。噂ではユミル王が戦を起こそうとしているそうではないか。我が国もその対象、言わば私はおまえたちにとって敵国の者だ。警戒されるのも仕方がないだろう」
 ユミル王の噂と聞かされて、フレイたちの間にはさらなる緊張が走った。
 もしかしたら、先手を打つために我々の前に現れたのではとつい疑ってしまう。
「……そうか。それでそのムスペの王子が、我らがユミルのフレイ王子に一体何の用だと言うのだ」
 気を抜くことのできないオットーは、まだ剣をセルシウスに向けたままだった。
「やめないか、オットー! ここで僕たちが戦ったところで互いに何の得にもならないぞ」
「そうっすよ! セルシウスはいいやつっすから!」
 今度はセルシウスが落ち着いた様子で詫びる。
「誤解を生んだなら謝ろう。ふむ、貴公がフレイ王子であったか。なんという巡り合わせ、これはちょうどよい」
 火竜はフレイに会いに来た目的を語り始めた。
 ユミル王と同様に火竜王ファーレンハイトも戦を仕掛けようとしている。因縁深きニヴルに対しての戦争だ。
 そして、ムスペにもユミルにも、そのニヴルからの刺客が送り込まれているという。
「そういえば、アリアスってやつがそんなことを言ってたんすよね」
「私はそれを確認したくて貴公に会いに来たのだ。ニヴルからの刺客の話は事実なのか?」
 それに答えてフレイが言う。
「たしかに、いつの頃からだったかトロウという魔道師が現れて父上に取り入るようになりました。それ以来父上は変わってしまわれた…。トロウは水の魔法で我々を襲ってきました。しかし、それだけでニヴルの者と断言することはできません」
「ふむ……確かとは言い難いが、可能性も捨てきれないか。ところでフレイ王子、貴公はユミル王の意向についてはどう考えておられる?」
 フレイは城を飛び出したあの日のことを思い出していた。
 父上に不審を抱き、噂の真偽を確かめに王の間の扉を叩いたあの夜。
 明らかにおかしい父上の様子を見て僕は確信したのだ。これはトロウが裏で糸を引いているのだと。そして、何としても奴を止めて見せると。
「父上はもはやトロウの言いなりです。戦が起こるという噂も、あの様子だとあながち間違いではないでしょう。しかし、そんなことはこの僕がさせない。させるものか! たとえどんな手段を使うことになろうとも、僕は戦争を止めるつもりです」
「そうか、それは安心したぞ。私はその言葉を期待していた」
 セルシウスの堅かった表情が少し和らいだ。
 戦争を起こさせたくないという点で、フレイたちとセルシウスの意向は同じだったのだ。
「私も貴公と立場は似ているのだ。私は父王のニヴルへの宣戦布告を阻止したい。貴公もムスペ王が戦争を起こすのを阻止したいのだろう。では目的は同じだ、どうか私に協力してもらえないだろうか」
「協力ですか」
「うむ。貴公と共に両国がニヴルへ攻撃を仕掛けるのを阻止するのだ。また我々が同盟を組むことによって、ムスペとユミル間での争いも防ぐ。これで三国で戦が起こることもないはずだが……力を貸してもらえないだろうか」
 火竜はフレイに向かって片手を差し出した。
 たしかに父王を止めたい、戦争を回避したいという目的は同じだ。目的が同じならば協力するのは互いに得策だ。
 フレイは頷き、その申し出に応えようと手を差し出しかけた。
「ほう…。話は聞かせてもらったが少し待て。ちと気になることがあるのぅ」
 黙って話に耳を傾けていたクルスはそれを制止した。
「フレイ王子。そなた、たしかアリアスという者に助けられ、話があるのでムスペに来るようにと言われておったそうだな」
「ああ、そうだけど……それがどうかしたのかい」
「おかしいとは思わんか?」
 クルスは横目でセルシウスを訝しそうに見ながら説明した。
 セルシウスの話ではムスペの火竜王はニヴルを攻めようとしているという。
 ニヴルからの刺客が来たのならば、反撃に出るという意味ではそれは別におかしな行動ではない。火竜王がフレイたちを呼び寄せているのはおそらく、同じくニヴルの刺客を受けたユミルを味方につけておきたいからなのだろう。
 フレイたちにとってもユミル王をおかしくしたトロウは倒すべき敵。そしてアリアスの言っていたように、トロウがニヴルからの刺客であるなら、ニヴルはフレイたちにとっても敵にあたることになる。
「ムスペと協力して敵であるニヴルを倒そう、というのなら話はわかる。しかし、そのニヴルと戦うなとこやつは申しておるのだぞ。どう考えてもおかしいではないか」
 フレイとオットーはそれはたしかにそうだと頷き合った。しかしセッテはいまひとつ理解できていなかったらしく、顔に疑問符を浮かべていた。
「えーっと……それはつまり、どういうことになるっすか?」
「ええい、物わかりの悪いやつじゃの。つまり、これは罠かもしれんということだ! 仮に敵がニヴルなのだとしたら、ムスペとユミルが手を組んで攻めてきたら困るじゃろうが。ならば先にムスペを騙ってニヴルに手を出さないことを約束してしまおうという魂胆に違いあるまい。相手が王族ならなおのこと信用してしまうだろうしのぅ」
 言って、クルスはセルシウスを睨みつける。
「そうか、奴もまたニヴルからの刺客! つまりは偽物のムスペ王子だということですね。クルス殿の言う通りだ、これは罠に違いありませんぞ、王子!」
 続いてオットーもセルシウスに再び敵意を向ける。
「でもニヴルは氷の国だろう。火竜がまさかニヴルの刺客だなんて…」
「いいえ、王子。さっきご自身でも言われていたはず。水の魔法を用いるからと言ってトロウはニヴルの刺客と断言はできないと。ならば火を使うからと言ってムスペの者だと断言することもできません。それに思い出してください。ファントムトロウは闇に土、氷と様々な属性の魔法を扱いました。火も操れる可能性が高い!」
「そういうことじゃの。私を助けてくれたようにも思えたが、もしかすると我らの信用を得るための敵の芝居かもしれぬからな」
 クルスもオットーも、もはや火竜を敵と見なしていた。
「な、何を言う。私はただニヴルとムスペの因縁を断ち切りたいだけで…」
 セルシウスが釈明するも、二人は頑としてそれを聞き入れようとしない。
「みんな何言ってるっす! 俺はセルシウスと面識があるんすよ。俺が言うんだ、間違いない。ここにいるのは本物のセルシウスっすよ!!」
「セッテ。おまえは黙っているんだ」
「あ、兄貴…」
 セッテが必死に弁明するが、それが二人を納得させることもなかった。
 フレイは悩んでいた。
 たしかにクルスやオットーが言うことにも一理ある。しかし、いつもは楽天的なセッテがここまで必死に食い下がっている様子も無視することはできない。
 もしムスペ王子に面識があったなら、自分もセッテと同じように火竜を信じただろうか。だが、僕はムスペ王子のことをよく知らない。
 もし火竜が本当にムスペ王子であったならこれほど無礼なことはない。だが、黒船の襲撃からの一連の流れを見ると、クルスの言うようにこれが敵の罠であるということも否定することができない。
「フレイ王子」「王子」「フレイ様、どうするっすか」
 三人がフレイの顔を覗きこむ。どうやら王子として決断をしなければならないようだ。
 フレイは目を閉じて考え込んでいたが、大きく息を吐いて目を開けると、静かに決意を口にした。
「セルシウス殿。僕も心苦しいのですが、状況が状況であるため、今はまだあなたを信用することはできません」
「そ、そんな。フレイ様まで…」
 悲しそうにセッテが呟いた。
「……ですが」
 フレイは続けた。
「もしあなたの言うことが真実なのであれば、僕は火竜王にお会いするわけにもいかない。たしかにトロウがニヴルからの刺客であるなら、ニヴルは僕たちの敵ということになります。ですが、それすらも確証がない。それに僕たちが倒すべき敵はトロウなのであって、それはニヴルではありません」
「王子!」
「いいか、オットー。もしこのまま火竜王と共にニヴルへ攻め込めばどうなる? もしトロウが本当にニヴルからの刺客だったのなら、それは結果的に僕たちの敵を倒すことになるかもしれない。もしかしたら、父上も以前のように戻ってくださるかもしれない」
 諭すようにフレイは言った。
「でもそれじゃだめなんだよ。それでは今の父上と同じなんだ。王子である以上、僕はユミル国を背負っているも同然。このままニヴルを攻めれば、噂通りにユミルがニヴルに対して戦争を起こしたということになってしまう。僕の身勝手な行動が祖国に泥を塗ってしまうことだってあるんだ。王族たるもの、それはしっかりとわきまえておかなければならない。……わかってくれるね?」
「王子…! 私としたことが迂闊でした。申し訳ありません」
「フレイ王子…。わ、私もすまなかったぞ。国を治める者だという立場も考えずに余計なことを言ってしまったようだのぅ」
 二人は申し訳なさそうに深く頭を下げた。
「いいんだ。どうか二人とも頭を上げてくれ。優柔不断な僕が悪かったんだ。もっと早くこのことに気づいていれば…」
「いや、立派なことだ。それでこそ王族の器、私も同じ王子として己の未熟さを恥ずかしく思わされる限りだな」
 感心したようにセルシウスは何度も頷いた。
 そして確信した。やはり彼ならば私の味方になってくれるだろうと。
「ではフレイ殿、どうするつもりなのだ? 先程”今は”私を信じることはできないと申されていたが」
「ええ、申し訳ありませんが”今は”まだあなたを信用することはできません。しかし、ユミル国としては戦争は望んでいないので、火竜王様にお会いすることもできません。”今は”ね。そこで、我々はこうしたいと思います」
 船首に歩み寄ると、フレイは遠く北の空を指して言った。
「我々はこれからニヴルへ行ってみようと思います」
「なんと! 王子、敵陣に乗り込むというのですか!?」
「あるいはそうなるかもしれない。でも、戦いに行くわけじゃないよ。まずは確認しようじゃないか、本当にトロウはニヴルからの刺客だったのかということを」
 火竜王は戦を望み、火竜王子はそれを望んでいない。
 父上は本意かどうかはわからないが戦を望み、僕はそれを望まない。
 同じ国の者であるからといって、すべてが同じ意向であるとは限らない。
 ある国の王が悪政を行っていたからといって、その国の民たち全てが悪であるとは限らない。
「敵はニヴルなのか? それとも敵はトロウなのか? 見極めよう、僕たち自身の眼で!」
「ふむ…。わかった、私もそれまで返答を待とう。そしていつの日か……フレイ殿、どうか私を信じてくれ」
「ええ、いつの日か。それに答えられる時が来たそのとき、またお会いましょう」
 大樹の王子と火竜の王子は互いに片手を差し出し、堅く握手を交わした。
 竜の姿に戻ったセルシウスは翼をはためかせ、朝陽を背後に大空へと消えた。
 いつの間にか夜は明けて、眩い光がフレイたちを照らしていた。
「ありがとう、フレイ様。セルシウスはきっと信じるに値するっす。俺が保証するっす!」
「まだ味方だと決まったわけじゃないぞ、セッテ。それにこれから行くところは敵の本拠地である可能性もある。気を抜くんじゃないぞ」
「ニヴル……氷の国か。私も初めて行くところなのでな、ちょっと楽しみじゃぞ。ちょっとだけな」
「よし、行こう。氷の国、ニヴルへ!」
 長かった夜は明けた。
 進路は北。目標、酷寒の地ニヴルヘイム。
 太陽に照らされる航路を魔導船が行く。


「――ほう。ニヴルへ向かったのか」
 ムスペ城に威厳のある声が響き渡る。
「はい。どうやらトロウがニヴルからの刺客であるということを確認しに向かうようですね」
「そうか、把握した。トロウについては何かわかったか?」
「いえ、それはまだ……」
「わかった。では引き続き調査に当たってくれ。もう下がってよいぞ、アリアス」
「はっ」
 一頭の竜がムスペ城から飛び去った。
 アリアスがいなくなったことを確認すると、火竜王ファーレンハイトは静かに独りごちる。
「ふん。ユミルの王子め、余計なことを勘ぐりおって…。だがまぁよいわ。我が国へ侵入してきた魔道師同様、トロウとやらもニヴルの者に違いあるまいのだ。我が国とユミル以外に、大国はあそこしかないのだからな」
 火竜王は数枚の写し絵を手に、それを眺めていた。その中には、ユミル王やフレイの写真もあった。
「フレイ王子……か。この私の招待を蹴るとは生意気なニンゲンの小僧め。しかし計画に狂いはない。むしろ手間が省けてよかったわ。このままニヴルとユミルで互いに潰し合ってくれればそれでよい。憎きニヴルやニンゲンどもさえ消えてくれればそれでよいのだ」
 人間が地上から空の世界へとやってきてから短くない時間が過ぎた。
 魔法を得た人間は、それを地上の技術と組み合わせて新たな技術を生み出した。
 それは時に我々竜族にとって脅威ともなるだろう。危険の芽は早いうちに摘み取ってしまわなければならない。
 それが我が国、ムスペを守ることに繋がるのだ。
 代々受け継がれてきたムスペの鉄壁の守り、我が代で終わらせるわけにはいかぬ。
「因縁深きニヴル。そして脅威的な技術を持つニンゲンども。……させぬ、させぬぞ」
 火竜王は火炎の息を吐きかける。写真は瞬く間に燃え尽きて塵となった。
「我が国を脅かそうなど、この火竜王ファーレンハイトが決して許さぬ!」
 ムスペ城に竜の咆哮が響き渡る。それに呼応するかのようにムスペ大火山は激しく噴火するのだった。


 酷寒の国ニヴル。
 雲上に大氷塊の佇むこの氷の地にもまた咆哮が響き渡っていた。
 怒気を含んだ咆哮は氷の洞穴を反響して、木霊のように繰り返される。
 大氷塊は雲上に見えているだけがすべてではない。さながら氷山の一角、雲に埋もれた部分に幅広い空洞が掘られ、多くの施設や集落、そしてニヴル城もその中にあった。
 大氷塊の最下層、ニヴルを治める氷竜ヘルの城。氷壁を彫り造られた美しい城だ。
 不純物を含まない透き通った氷塊は陽の光をよく通し、下層部の氷穴内であっても明るく照らしめる。
 夜はこの寒冷地に棲む独特の光虫によるランプが幻想的に氷の世界を照らし上げる。
 そんな美しい氷の城には似つかわしくない怒声が響き渡る。
「それは本当なのですか!」
 氷の女王の怒声が再び洞穴内に反響する。
 耳を塞いでいた兵士は恐る恐る、繰り返して報告する。
「は、はい。密偵の報告によりますと、ユミルの王子率いる船がこちらへ向かって来ているとのこと。先日捕らえたあの魔道師と何か関係があるのではないかと思われますが…」
 なんと、ユミルやムスペ同様、ニヴルにも刺客として謎の魔道師が現れていた。
 捕らえられたのは土や火を扱う魔道師。当然、氷の女王はユミルやムスペが怪しいと睨んでいた。
 そのうちの一方、ユミルの王子がこの国に向かって来るというではないか。
「おのれ、ニンゲンめ。一体何が狙いなのでしょうか。このような辺境の国にまで欲深く踏み込もうとは、なんと厚かましい。やはりユミル王の噂は本当だったというわけですか」
「女王様、いかがいたしましょう」
「水は土を相手としては分がよくありません。正面から迎え撃つのは得策ではないでしょう。まずは様子を見ます。兵を配備して万が一に備えなさい。敵意があると判断した場合は、直ちに攻撃を許可します。いざとなれば封印されし毒竜ニーズヘッグの解放もやむを得ません」
「あれを解放するのですか!? あれは言わば諸刃の剣……こちらの被害も大変なことになりかねません」
「どうしてもという場合は仕方がありません…。我らの被害よりも、民たちを守ることを優先しなさい!」
「はっ、了解しました!」
 氷竜の兵たちは、すぐに雲岸の警戒にあたった。
「ああ、どうして火竜もニンゲンも私たちを目の仇にするのでしょう。この国には氷以外に何もないというのに…」


 ニヴルにも現れていた謎の刺客。
 ユミル、ムスペ、そしてニヴル。三国をそれぞれ襲った魔道師たち。
 彼らの目的は一体何なのか。そして、ニヴルが黒幕でないとするのならば、一体誰が刺客を放ったのか。
 しかしそんな事実を知らないムスペはニヴルを憎み、ニヴルはユミルやムスペを恐れ、ユミルはそんなムスペやニヴルへ侵攻しようとしている。
「まったく愚かなものですな。頭の悪い竜どもは互いに潰し合ってくれることでしょう。そして、我々人間こそがこの大空を支配する……当然でしょう。ねぇ、ユミル王ニョルズ陛下」
「…………」
 蒼白い顔でユミル王はただ頷くだけだった。
 どこからともなく、世界の様子を監視していたトロウの嗤い声が空に響き渡る。
 そして、何も知らないフレイたちは誰の思惑か、ニヴルへと航路を執るのだった。


ChapterⅧ END

ChapterⅨ  「嵐の後、次なる目標」
「F3 CP8」をウィキ内検索
LINE
シェア
Tweet
TPC@wiki
記事メニュー

◆ メニュー

トップページ
はじめに
プロフ
伝言板



文章作品庫
・ 『フローティア』
├ F0『黒い系譜』
├ F1『Black Drop』(完結)
├ F1『プランティア』(放置)
├ F2『ブラックボックス』(完結)
├ F3『魔法戦争』(進行中)
├ F4『竜の涙』(完結)
├ F4『メタディア』(放置)
└ F5『黒き果てに』(未定)
・ 個人作品
├ 「古代ゼリー文字」
└ 「イグリスのチラシの裏」
・ 旧作
├ 旧『BlackDrop』
├ 原作版『メイヴの謎』
├ 旧メイヴ続編『Hive Mind』
├ Hive Mind続編『大いなる意志』
└ 合作版『魔法戦争』
資料関連
・ 資料庫一覧
├ 作品時系列
├ 『メイヴ』合作メモ)
└ 参考資料
・ TPCメンバー向け
├ TPC定例出席録
├ 勲章システム
├ 外伝2 資料庫
├ 総合資料庫
├ リレー小説
├ リミット大戦
└ 編集練習、実験用ページ






記事メニュー2



◆ 更新履歴

取得中です。
最近更新されたページ
  • 1766日前

    トップページ
  • 2795日前

    魔法戦争65
  • 2795日前

    魔法戦争64
  • 2795日前

    フローティア3『魔法戦争』
  • 2803日前

    魔法戦争63
  • 2828日前

    魔法戦争62
  • 2841日前

    魔法戦争61
  • 2849日前

    魔法戦争60
  • 2849日前

    魔法戦争59
  • 2849日前

    魔法戦争58
もっと見る
最近更新されたページ
  • 1766日前

    トップページ
  • 2795日前

    魔法戦争65
  • 2795日前

    魔法戦争64
  • 2795日前

    フローティア3『魔法戦争』
  • 2803日前

    魔法戦争63
  • 2828日前

    魔法戦争62
  • 2841日前

    魔法戦争61
  • 2849日前

    魔法戦争60
  • 2849日前

    魔法戦争59
  • 2849日前

    魔法戦争58
もっと見る
ウィキ募集バナー
急上昇Wikiランキング

急上昇中のWikiランキングです。今注目を集めている話題をチェックしてみよう!

  1. 遊戯王DSNTナイトメアトラバドール攻略Wiki@わかな
  2. SDガンダム Gジェネレーションオーバーワールド 攻略Wiki
  3. 20XX @ ウィキ
  4. 役割論理専用wiki 
  5. トリコ総合データベース
  6. モンスター烈伝オレカバトル@wiki
  7. ファイアーエムブレム用語辞典
  8. NIKKEぺでぃあ
  9. 機動戦士ガンダム EXTREME VS. MAXI BOOST ON wiki
  10. ホワイトハッカー研究所
もっと見る
人気Wikiランキング

atwikiでよく見られているWikiのランキングです。新しい情報を発見してみよう!

  1. アニヲタWiki(仮)
  2. MADTOWNGTAまとめwiki
  3. ゲームカタログ@Wiki ~名作からクソゲーまで~
  4. 初音ミク Wiki
  5. ストグラ まとめ @ウィキ
  6. 機動戦士ガンダム バトルオペレーション2攻略Wiki 3rd Season
  7. 検索してはいけない言葉 @ ウィキ
  8. Grand Theft Auto V(グランドセフトオート5)GTA5 & GTAオンライン 情報・攻略wiki
  9. 機動戦士ガンダム EXTREME VS.2 INFINITEBOOST wiki
  10. モンスター烈伝オレカバトル2@wiki
もっと見る
新規Wikiランキング

最近作成されたWikiのアクセスランキングです。見るだけでなく加筆してみよう!

  1. MADTOWNGTAまとめwiki
  2. MadTown GTA (Beta) まとめウィキ
  3. フォートナイト攻略Wiki
  4. 首都圏駅メロwiki
  5. Last Z: Survival Shooter @ ウィキ
  6. まどドラ攻略wiki
  7. 駅のスピーカーwiki
  8. ちいぽけ攻略
  9. ソニックレーシング クロスワールド 攻略@ ウィキ
  10. 魔法少女ノ魔女裁判 攻略・考察Wiki
もっと見る
全体ページランキング

最近アクセスの多かったページランキングです。話題のページを見に行こう!

  1. 【移転】Miss AV 見れない Missav.wsが見れない?!MissAV新URLはどこ?閉鎖・終了してない?missav.ai元気玉って何? - ホワイトハッカー研究所
  2. ブラック・マジシャン・ガール - 遊戯王DSNTナイトメアトラバドール攻略Wiki@わかな
  3. 真崎杏子 - 遊戯王DSNTナイトメアトラバドール攻略Wiki@わかな
  4. ブラック・マジシャン・ガール - アニヲタWiki(仮)
  5. 魔獣トゲイラ - バトルロイヤルR+α ファンフィクション(二次創作など)総合wiki
  6. 参加者一覧 - MADTOWNGTAまとめwiki
  7. 参加者一覧 - ストグラ まとめ @ウィキ
  8. ミッション攻略 - 地球防衛軍6 @ ウィキ
  9. 鬼レンチャン(レベル順) - 鬼レンチャンWiki
  10. リリーバイス - NIKKEぺでぃあ
もっと見る

  • このWikiのTOPへ
  • 全ページ一覧
  • アットウィキTOP
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー

2019 AtWiki, Inc.