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  • 竜の涙17

竜の涙17

最終更新:2012年06月03日 08:36

jelly

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 まだ静けさの残る早朝。
 陽も昇らぬこの時間に、小さなひとつの光が舞う。
 光は意思を持ったかのように真っ直ぐとある一点を目指して飛ぶ。
 その行く先は闇。
 同じ王宮の一室でありながら薄暗く陰湿なその場所へ。心に闇を抱えたその者のところへ。


Chapter17「脱獄」



 朝陽もまだ顔を出さないというのに、目の前が眩しい。
 まるでオレンジ色の太陽に翼が生えて飛んできたのだとでも言うように。
 熱くはない。が、温かさは感じる。
 その存在を感じてまどろみの底から意識が呼び覚まされる。
 目を開く――と、目の前にはオレンジ色の光の球体が浮かんでいた。
 ここはバルハラ王宮の牢獄の中。
 鉄格子は壊れているが、魔法で作られた光の壁がしっかりと僕が逃げ出さないように見張っている。
 もちろん、外から入ってくることもできないはずだ。
 では、この光は一体?
 ティルの目前に光球が浮遊する。
 それは二度三度と上下すると、ふわりと床に着地した。
 それと同時に閃光が放たれる。
「!?」
 思わず顔を背ける。
 再び見ると光球は消えており、そこには……
「ウィザ…?」
 見知ったオレンジの翼をもつ鳥人族の姿があった。
「見ーつけたっと」
 壁を見回す。
 どこにも新たに破壊された様子もなければ、光の壁には傷一つもない。
「どうしてここに? どうやって!?」
「へへへ、転移魔法でね。魔障防壁が張られてたけどちょろいちょろい」
 転移魔法。すなわちワープの魔法だ。
 光を媒体とする高位の魔法で瞬時に場所を移動することができる。その距離が遠くなればなるほど、術者は高い精神力を要求されるという。
「でも、あの光の壁はあらゆる魔法さえも通過しないはず…」
「そんなこと。ボクは同じ手には二度も引っかからないよ。砂漠のときと同じさ」
 砂漠でティルが捕まっていたときに張られていた魔法の壁は底がなかった。
 それと同じことがこの壁にも通用したのだ。
 この光の壁は牢屋のかつての鉄格子があった一面だけを封じていた。他の面はまるでがら空きなのだ。
 転移魔法に物理的な壁は全く問題にはならない。なぜなら、光が存在しない場所などほとんどないからだ。
 光がない場所。それは光が全く届かない深海か真の闇の中だけだ。
「まさに、”ソコ”を突いたってね」


 数日前までウィザは転移魔法を扱うことができなかった。
 しかしティルを助けられず、ようやくすべてが終わったと思ったのに再びティルをさらわれるというその悔しさから、この数日の間にウィザは魔法の猛特訓を密かに行っていたのだ。
 ウィルオンがケツァル王国復興に振り回され、ナープが火竜王セルシウスに呼び寄せられ、リクが哀しみと悔しさに暮れていた頃、ウィザはかつての師匠のもとを訪れていた。
 最初にティルがさらわれたときに水門の城で再開したウィザの師匠イーグル。
 水門の城の崩壊によって行方が知れなくなっていたが、どうやらルーンに身を寄せていたらしい。
 ティルが砂漠にいると突きとめたのと同様に師匠の居場所を知ると、ウィザはすぐにそこへ向かい、そして頭を下げて言った。どうか転移魔法を指南してほしい、と。
 同じく弟子であったディサは反対した。しかし、事情を説明するとイーグルは黙ってウィザを受け入れてくれた。
「なるほど、あのときの仔竜がのぅ…。わしにも責任はあるように感じておる。わかった、光の転移魔法をおまえに教えよう」
「でもイーグル様、こいつは…!」
「黙らぬか、ディサ。たしかにウィザには魔法の才能というものがあるようじゃ。おまえやわしよりも…な。それを妬む気持ちはわからんでもない。だが、だからと言って足を引っ張ってどうする。大きく花開くべき蕾を刈り取ってしまっておまえに何の得がある。ともに修行した仲間、友ならばそれを一緒になって喜んでやるべきじゃろう!」
「わ、わかったよ…」
「ありがとう、お師匠様。ディサも」
 イーグルは厳しい修行になると忠告した。
 転移魔法は光の魔法の中でもほとんど最高位に近いものだ。
 並大抵の魔力ではペン一本をほんの少しの距離ワープさせるだけでもやっとのことだという。
 ウィザは炎や雷の魔法を得意としていたので、それに近い属性である光の魔法を扱うことができる可能性は高かったが、ウィザの魔力では転移魔法はとても困難だ。
「今のおまえでは厳しいぞ。知識としては知っているが、わしとて未だに成功したことがない魔法じゃ。わしはおまえにこの魔法の知識を教えてやることはできる。だが、あとはおまえ自身の努力次第となるぞ」
「それはわかっています。でもボクはやらなくちゃならないんだ。ティルのために。大事な友達のために!」
 痛感していた。ラルガとの闘いを通して、そして魔竜ストラグルやウェイヴの戦いを目の前にして。
 自分の力ではとても及ばない。これではこの先まったく通用しないと。
「あれに勝たなくちゃとは言わない。勝てなくたっていい。でも、せめてティルを救ってやれるだけの力がなくちゃ……! ウクツに頼まれたんだ。魔法が使えるボクだけが頼りなんだって」
 ウィザはウィルオンやナープ、リクよりもずっと早くに決心していたのだ。
 そしてその日から血の滲むような修行が始まった。
 魔力とは精神の力。魔力を鍛えるには精神を鍛えなければならない。
 師匠やディサの放つ魔法をわざと受けてそれに耐える修行。
 魔力の続く限界まで魔法を放ち続ける修行。
 嫌いな野菜を残さずに全部食べる修行。
 苦手な虫を面と向かって至近距離から睨み続ける修行。
 腕立て、腹筋、うさぎ跳び300回。精神統一。お約束の滝に打たれる修行もやった。
 そして夜を徹しての転移魔法の実践。
 この数日間がまるで何カ月ものように感じられた。
 そしてついに――

「やった……。できたぞ!」
 ウィザの歓喜の声が響き渡る。
 雲岸に立ったウィザが転移魔法を唱える。
 と、次の瞬間にはディサの頭の上にはひとつのリンゴが。そのリンゴはさっきまでウィザが手に持っていたものだった。
「まさかたった数日間でやり遂げてしまうとは……。まったく将来が恐ろしいもんじゃのぅ、ほっほっほ」
「ちっ、悔しいがおれも認めてやるよ。ウィザ、おまえは……なんだ、その。やればできるやつだ」
「ありがとう、お師匠様、ディサ。二人のおかげだよ」
 精神力とは精神の力。
 精神とはすなわち意思。
 意思の力が強いほど精神の力もまた増すのだ。強い意思をもって修行に励めば、自ずと効果は大きくなる。
(今度こそボクがティルを助けるんだ……!)
 ウィザのその仲間を想う気持ちが意思の力となり、それが修行の成果に現れたのだった。
「よくやった、ウィザ。おまえはわしの誇りじゃ。この調子で修行を続ければきっと素晴らしい賢者になれる。さぁ、日も暮れてきた。今日の修行はこのへんにして、今日はもう休むといい」
 イーグルが称賛と労いの言葉をかけるが、
「いいえ、お師匠様。ボクの目的は賢者になることじゃありません。ボクはティルを助けるために転移魔法を学びに来たんです。それを習得したなら、すぐにでもボクは助けにいかなければならない。大事な友達を!」
 ウィザは今にも飛び出さんばかりの様子だった。
「待ちなさい、ウィザ! おまえはまだ転移魔法の基礎を学んだだけじゃ。物に転移魔法を使うのと生き物に転移魔法を使うのとは違う。失敗したらどんな恐ろしいことになるか……おまえはわかっていない」
 転移魔法は光によって対象を別の場所に送るというものだ。
 転移中の物質は一時的に光に変わる。それによって光の速度での移動を可能とする。
 対象は指定した場所でもとの姿に戻るのだが、もし失敗すると不完全な姿で戻ってしまう。
 例えば転移の失敗によって、半分に欠けたリンゴ。あるいは捻じれて折れ曲がった棒。
 同時に送ったものが転移時に融合して、ひとつになってしまうという失敗も起こり得る。
 これが生き物に起こればどんな惨事になるかは想像に難くない。
「初めて魔法が成功して喜ぶおまえの気持ちはわかる。が、まだ実用には早い。使い方を誤れば命を落とし兼ねん危険な魔法でもあるんじゃぞ。それゆえに高位と呼ばれるのじゃ」
「でもお師匠様……!」
「もう少し我慢するんじゃ。もっと成功を重ねて、それから十分な経験を積んで……それからにするがよい。とにかく今日はもう休みなさい」
 イーグルに強く反対されてしぶしぶ戻るウィザ。
 もう東の空は真っ暗になっていた。

 ルーンにあるイーグルの新たな修行場。
 その一室を借りていたウィザは寝床から外を眺める。すぐ隣に大きな窓があり、そこから大樹を望むことができた。
 今まで夜は真っ暗闇だった大樹の頂上バルハラの王宮に明かりが灯っている。
 ウィザはティルの居場所はすでに特定していた。それがあの王宮だということはとっくに知っていた。
「ここから見える程の距離にいるんだ。そして転移魔法があればすぐにでも助けられるんだ。そしてその魔法がついに手に入った。なのにこうして眺めているだけなんてボクにはできない。のんびりしてたらティルが封印されてしまう!」
 窓を開け放つ。冷たい夜風が頬を撫でた。
 室内を振り返る。まだ二人には気付かれていない。
 窓辺に立つ。
 風は強くない。絶好の飛行日和だ。
 もう一度振り返る。
「ごめん、お師匠様。ディサはまた裏切ったって怒るかもしれないね。でもボクは――」
 力強く地面を蹴って飛び立った。
(ティル。今度こそ助けるよ……!)
 魔力とは精神の力。精神力とは意思の力。
 意思とは想い。想いとは心。
 ウィザは自分を信じた。
――大丈夫だ、絶対にうまくいく。そして絶対にティルを助け出す。もう自分が捕まるような失敗はしない。
 信じる心が力となる。想いの強さが力となる。
 もう振り返らない。
 失敗を恐れるな。自分を信じろ。
 ウィザの姿が光に包まれる。
「おい待て、まだ危険だ!」
 後方からディサの声が聞こえてきた。
 でも振り返らない。迷わない。この決意は揺るがない。
(待っててティル。今助けに行くから!!)
 光に包まれてウィザの姿は消えた。
 慌てて飛び出してきたディサの前にはオレンジ色の羽根が数枚、風に揺られて宙を舞うだけだった。


「逃げ出そう、ボクと一緒に!」
 そうしてバルハラの牢獄への侵入を成功させたウィザは、ティルに逃げようと持ち掛けていた。
 しかし哀しき魔竜はその申し出を受け入れることができない。
「僕は危険な存在なんだ。いてはいけない存在なんだ。だから封印されなくちゃならないんだ」
 リムリプスの強大な力は新たな争いの原因になる。戦いを生む。
 その力を狙う輩が次から次へと現れる。あのラルガもまたそのひとりだった。
「こんな力はないほうがいい。だから……」
 そんな魔竜にウィザは怒気を含んだ声で聞き返した。
「ティルはそれでいいの!?」
「……リクやウィルオンにも同じことを訊かれたよ。でも、これは仕方ないことなんだ。これで全てが丸く収まるんだ」
「そんなこと聞いてないよ。ティルの気持ちはどうなるの!?」
「僕の気持ちは関係ない。僕は危険な存在だから封印されるべきだ」
「なんでそうなるのさ!! たしかに記憶を取り戻してからのティルからはすごい魔力を感じる。ボクなんかじゃ全然比べ物にもならない。でも、だからと言ってそれが危険とは限らない。ティルがその力をコントロールすればいいだけの話じゃないか!」
「みんな魔竜の力を恐れてるんだ。みんなを怖がらせるぐらいなら封印されたほうがいい! もう争いが起こるのも見たくない!」
 ティルは譲らなかった。
 魔竜が存在する限り、その力を巡る争いは必ず起こる。
 自分が力を貸さなくてもどこかで争いが起こる。
 その力を求める者同士が、どちらが力を手に入れるのが相応しいかと勝手に争いを始めてしまう。
 たとえ勝手に争い始めたやつらが悪いと言われても、蒼き魔竜は自分のせいで争いが起こるのは堪えられないのだ。
 ならば、その原因そのものを無くすしかない。
 原因とはすなわち魔竜の力。この力に魅了されて争いが起こるというならば、その力そのものを……魔竜を封印してしまえばいい。魔竜がいなければ争いは起こらない。
 ティルはウィザにもリクやウィルオンたちにしたのと同じように魔竜を巡る争いのことを説明した。
 そして、そんな争いはもう嫌だということを。

「ティルは逃げてるだけだよ」
 静かにウィザが呟いた。
「逃げてる……って何から」
「自分から。みんながティルを恐れているんじゃない。ティルが自分を恐れてるんだ」
「そんなことない。争いが起こるのは僕の力があるせいだ。みんなが魔竜を恐れるから、その力を利用しようとする者だって現れるんだ」
「みんなってどこのみんなさ。ボクは少なくとも魔竜の存在なんてラルガに知らされるまでは聞いたこともなかった」
「でも争いは実際にあったんだ!」
「それっていつの争い? ボクはそんな戦争聞いたこともない」
「ウィザが生まれるよりもずっと昔だよ。僕の力を巡っていくつもの争いが起こってきた。ケツァルのときだってそうだった」
 初代ケツァルは新たな世界を生んだ神竜と呼ばれている。
 もっともその呼称でケツァルを呼ぶのは竜族だけだ。人間たちから見ればケツァルは悪魔に見えただろう。 
 かつて空の世界は竜たちの楽園だった。大樹はその中心に立つ象徴で、とくに地竜たちに大切にされていた。
 しかしあるとき、地上から人間たちがやってきてその大樹を奪ってしまった。
 温和な地竜たちは彼らを受け入れたが、ムスペの火竜たちのようにそれをあまり良く思わない者もいた。
 人間たちの持ってきた技術で竜たちの魔法はさらに発展し、それによって竜族も時代の流れだとして次第に人間を認めるようになっていった。これを第3世界、魔法文明メイジアと後に呼ぶようになった。
 だが、そんな魔法文明も滅びを迎えた。
 空を支配しようする人間が現れ竜たちに戦争を仕掛けたのだ。
 戦争は長きに渡り、最後には文明そのものが崩壊してしまった。これは後に魔法戦争ラグナロクと呼ばれた。
 中には共存を唱えて竜族と共に闘ってくれた人間もいたらしいが、それでも多くの竜族は人間を憎んだ。
 魔法戦争の後、再び大樹を取り戻すべきだとして立ち上がったのがケツァルだった。
 ケツァルはフェギオン、メロフィス、ストラグル、そしてリムリプスの強力な力を持つ竜たちを偉大なる魔竜と呼んで味方につけた。そして大樹に残る人間たちの残党を撃ち滅ぼし、そこにケツァル王国を建てた。
 人間から大樹を取り戻した英雄。それゆれにケツァルは神竜と呼ばれるようになったのだ。
 こうしてケツァル王国は誕生した。
 ケツァルはラルガの言ったように、たしかに調和を良しとする政治を行った。しかし、それはあくまで竜族のみを対象としたものに過ぎなかったのだ。
 一方で力ですべてを従わせようとしたストラグルはケツァルに敵対し、その結果封印されてしまったのだった。
「ちょっと待ってよ。ストラグルが封印されたのはわかるよ。見るからにやばそうだったもん。でも、それじゃあティルはどうして?」
「言っただろう。みんな魔竜の力が怖いんだ。ケツァルだってそうだったんだ」
 邪魔者であるストラグルを封印した後に、ケツァルは他の魔竜たちも同様に自分に敵対するのではないかと恐れた。
 とくにリムリプスはストラグルに継ぐ程の力を持っている。ケツァルも同等の力を持つが、もしフェギオンやメロフィスと協力されては手に負えなくなってしまう。
 そこで、ケツァルは邪魔になる前に残る魔竜たちを封印したのだ。先手を打って。
「ケツァルもティルの力を利用してただけってことか…。じゃあそいつが悪者なんじゃないか!」
「そうとも言えない。もともと大樹は竜たちのものだったし、先に戦争を仕掛けたのは人間のほうだったんだ。そんなやつらから俺は大樹を取り戻しただけに過ぎないとケツァルは言ってた」
「ティルはケツァルが憎くないの!?」
「恨んではいない。ケツァルに封印されたおかげでもう僕らの力が誰かに狙われることもなくなった。大樹を取り戻すときに多くの血が流れたのは悲しかったけど……でも、封印されればもう二度とそんなことは起こらない。……そのはずだった」
 しかし封印は解けてしまった。
 記憶を失っていたとはいえ、リムリプスは再び姿を現してしまった。
 あとはウィザたちの知っての通りだ。
「今だってそうだ。ラルガの件がまさにそうだった。僕のせいでウィザたちを巻き込んで……戦いが起こってしまった。ストラグルだって復活してしまった。僕のせいで……争いがまた起こった!」
「でもそれはティルのせいじゃない」
「いや、僕の封印さえ解けなければこんなことにはなってなかったんだ。争いは再び起こらなかったんだ」
「それは違う。ラルガが勝手にやったことでしょ」
「だったらなおさらケツァル王国を生み出してしまった僕の罪だ! だからこそ僕は封印されるべきなんだ。もう争いを起こさないためにも…」
「ティルがいなくたってどこかで争いは起こるよ!」
「でもこうしてみんなを巻き込んでしまった。やっぱり僕がいることで周りに迷惑が……」
「いい加減にしてよ!!」
 暗い牢屋の中に雷が落ちた。
 あるいは実際にウィザが『サンダー』を落としたのかもしれない。
 ウィザが怒鳴りながら言う。
「僕のせいで僕のせいで、ってそればっかり! 今までの明るいティルはどこにいっちゃったのさ!」
「でも……」
「迷惑をかける? そんなの当たり前だよ。ボクだって砂漠の遺跡では逆に捕まっちゃって仲間に迷惑をかけた」
「それは……でも、僕の場合は規模が違う…」
「もう”でも”も”だって”も聞きたくない。迷惑をかけるから何。迷惑をかけないやつなんてどこにもいない! そしてそれが生きてるってことなんだ! それを怖がってちゃ何もできない。もっと自分を信じてよ! ボクたちを信じてよ! 今のティルは生きてない。生きてるけど活きてないよ!」
「そ、それは……」
「迷惑ぐらいどんどんかけていいんだよ。そしてどんどん僕らを頼ってよ。それが友達ってもんでしょ。ティルにはわからないの? リクたちの優しさが!」
 ティルにとってリクたちが自分を助けようとしてくれることは、もちろん嬉しいことだった。しかし、それ以上に仲間に危険が及ぶことを避けたかった。
 これはティルなりの優しさだった。
「それは痛いほどわかるよ…。いや、むしろその優しさが痛いんだ。僕を助けてくれようとすればするほど、みんなは争いに巻き込まれる。それが嫌なんだ! だからごめん。気持ちはありがたいけど、もうこれ以上僕に関わらないで…」
「…………リクやウィルオンにも同じことを言ったの? みんなの想いをティルは無駄にするっていうの? どうしてここまでみんながティルを助けようとしてるかわからないっていうの!?」
「このままだと、みんなはゼロやムスペを敵に回してしまう。そんなことはできない。だから僕はここから逃げられない。僕は逃げてなんかいない!」
「まったく頑固なやつだね。記憶喪失の頃のほうがもっと素直だったよ」
 大きくウィザはため息をついた。
 これでは説得するなんてとても無理だろう。
 かと言って、このまま何もせずにティルを置いて帰るわけにもいかなかった。
「だったら……力ずくでも助け出してやる!」
「な、何を!」
 ウィザが呪文を唱えて翼を振るう。
「何をするつもりかわからないけど無駄だよ。ラルガにはうっかり操られたけど、ウィザの力じゃ僕に魔法をかけても効果はないよ」
 砂漠でラルガがティルにかけたのは『マニプレイション』、第3世界の失われた禁断の魔法だ。
 まずその魔法の存在を知っている者自体が稀で、しかもそれを実際に扱えるほどの力量をもつ者などほとんどいない。ウィザには扱えないのは言うまでもない。
 さらにそれは闇を媒体とする魔法であり、炎や雷を得意とするウィザには不向きな魔法でもあった。
 本来なら複数の属性の魔法を扱えるだけでも十分に魔法に優れていると言える。大抵はひとつかふたつの属性を扱えるぐらいが限界なのだ。
 またそれぞれの属性には相性というものがあり、相反する属性の魔法を習得することは極めて困難なことだった。全ての属性の魔法を極めることはほとんど不可能に近いだろう。
 今、ティルの意識ははっきりとしている。
 禁断の魔法ではないにせよ、魅了系の魔法を受けた様子はない。
「だから言ったんだ。悪いことはいわないから僕のことは…………えっ!?」
 たしかにウィザが唱えたのは精神に作用する魔法ではなかった。
 ティルは気付いた。身動きが取れなくなっていることに。
 見ると、脚から胴にかけてが硬直していた。
 ウィザが唱えたのは石化の魔法だったのだ。
「まさか…! 僕に効くはずが…」
 魔力とは精神の力。精神力とは想いの力。
 想いが強いほどに魔力は強くなる。
 たとえティルが何と言おうとも、たとえ抵抗されようとも、絶対に助け出してみせる。
 そんな絶対の意思が、強い想いが力となる。
 意思が力となりウィザの魔法は飛躍的に向上、一時的に魔竜の魔法耐性をも凌ぐものとなったのだ。
 それほどまでに、ウィザの想いは強い!
「今度こそ絶対にボクがティルを助け出すんだッ!!!」
「信じ…ら……れ………」
 ティルは完全に石化して静かになった。
 さらに風を媒体とする軽量化の魔法をかける。
 石になったティルは紙のように軽くなった。
 それをひょいと持ち上げると、
「ごめんね。しばらくの間だけガマンしてて」
 ウィザは再び光に包まれて消えた。
 後には元通りの静けさだけが残されていた。


Chapter17 END

竜の涙18
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