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大いなる意志2A

最終更新:2013年07月06日 01:56

jelly

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第二章A「ホルメーシス」


 アルバールに集った各国首脳たちは、グメーシス亜種を調査するために各地へ調査団を派遣した。
 キョクたちの所属する調査団アルファチーム一行は装甲車に乗り込み北へ。メイヴの提案によってヴェルスタンドへとやって来ていた。
 グメーシスといえば精神体。精神体といえばヴェルスタンド。もしかしたら、ここにグメーシス亜種発生の原因に繋がる手がかりがあるのではないかと考えたからだ。
 アルファチームの車はヴェルスタンドの研究所帯ヒュフテに差し掛かった。
 周囲にはドーム状の建物がいくつも並んでいる。これらのドームはそれぞれが研究施設であり、それらはそのドームの責任者の名前にヴェルスタンド語でドームを意味する「クッペル」をつけた名で呼ばれる。例えば、精神体を研究していたガイスト博士のドームならガイストクッペルとなるわけだ。
『ですが……ガイストクッペルは失われていしまいました。過去の戦争でね』
 寂しそうにメイヴが言った。
 20数年前のマキナ-ヴェルスタンド戦争。その際にメイヴは相棒のゲンダーとともにガイストクッペルを訪れている。彼らと同様にHiveMindの英雄として数えられているガイストに初めて会ったのはその時だ。
 彼らがガイストと合流した後に、ガイストクッペルはミサイルによる攻撃を受けて倒壊してしまった。もうずいぶんと年月が経っているため、瓦礫はとうの昔に片づけられて、今はガイストクッペルがあった痕跡は何一つ残っていない。が、メイヴはそこにガイストクッペルがあったことをしっかりと記録している。いや、記憶していると言ったほうがいいだろうか。また、ここはHiveMind事件で暴走した精神体と闘った場所のひとつでもある。苦い思い出ではあったが、だからこそここは彼には忘れられない場所だった。
 当時の記憶を語るメイヴ(の遠隔モニタ)を隣にキョクはまたしても複雑な思いだった。
(マキナ-ヴェルスタンド戦争にHiveMind……か。それもゲンダーとの思い出なんだよな…)
 メイヴの思い出の中にいるのはいつもゲンダーだった。そこにキョクは登場しない。だからこそキョクは複雑な思いを抱えていた。自分はメイヴにとってその程度の存在なのか、自分は失われたゲンダーを模して造られたはずなのにそのゲンダーよりも劣るのか、と。
(オレは代用品じゃない、キョクだ! だけど…)
 キョクは自分がただのゲンダーの代わりとして見られることを嫌っていたが、その代用品としての役目すらも果たせていないのではないかと不安にも思っていた。
(もしかしてオレは代用品にすらなれないのか? ならないのではなくて?)
 自分を認めてはもらいたい。が、ゲンダーを模して造られた以上はその役目はやはり代用品なのだろうか。では代用品じゃないと主張することは役目を果たさないことになってしまうのだろうか。しかし自分はキョクだ。ゲンダーの代わりじゃなく、キョクとして見てもらいたい。そんな葛藤をキョクは抱えていた。
『何をそんな難しい顔をしているんですか』
 そんなキョクの胸中などまるで気にしない様子でメイヴは声をかける。
『私たちの任務はまだ始まってすらいませんよ。そんな様子では始まる前から疲れてしまいます。ほらリラックスリラックス』
「あ、ああ…」
『そんなときは景色を見るといいですよ。あ、ほら。あそこに見えるあれ! あれも懐かしいですねぇ。あのときのゲンダーったら…』
(ああ、ゲンダーゲンダーゲンダー。今に見ていろ。今回こそ、オレの実力を示して認めさせてやる。次はキョクキョクと言わせてやるんだ)
 何も知らずに気楽な様子のメイヴを見ながら、キョクは静かに決意する。この機会を逃すものか、と。周囲に、とくにメイヴに、自分はキョクでありそれ以外の何者でもないということをわからせるために。


 研究所帯ヒュフテの中頃まで進んだあたりで、アルファチーム一行は車を止めた。メイヴの提案で、まずはこのあたりでグメーシス亜種についての情報を集めることになった。このあたりには研究者が多く、亜種についての有益な情報を持っている者がいる可能性が高いと考えられるからだ。
 このあたりには多数のドームがあるが、そのすべてが常に稼働しているわけではない。それぞれのドームが異なった特色を持ち、それぞれの研究を行うための設備を置いている。そのため、そのときに必要な設備のある研究ドームが必要に応じて利用される。責任者の名にクッペルをつけたものがドームの名だと前述しているが、それゆえに研究内容によって責任者が変わればドームの名もその都度変わるのだ。
 確認するといくつかのドームが目に入るが、見える範囲で稼働しているドームはひとつだけだった。入口のプレートを見ると「ファルマクッペル」とある。
『選択の余地はないようですね。さっそく入りましょうか』
「ファルマクッペル…。たしか薬品会社だったはずですわ」
 シルマが言った。彼女はヴェルスタンド人、ヴェルスタンドのことには詳しい。研究者ではない彼女でも知っているということは、つまりファルマはヴェルスタンドではそれなりに名が知れているのだろう。
「さすがは研究大国だね。そこでは僕の美しさをもっと引き立てられる薬も作っているのかい?」
「Nonsense! そんなモンに頼って手に入れた自分なんてニセモノだぜ。もっとありのままの自分を誇れよ」
「やれやれ。君のような者にはわからないだろうね。美の追求っていうのはずっとずっと奥が深いんだ」
「なーにが美の追求だ。男のくせに軟弱なやつだぜ」
「ふん。野蛮な田舎者め」
 イザールとエラキスが互いに睨み合う。
『はいはい。おしゃべりはその辺にして、我々の仕事を始めますよ』
 見かねたメイヴが号令をかけた。いつの間にかメイヴがアルファチームの指揮をとっていた。が、メイヴが英雄としてよく知られていることもあってか、調査団員たちは誰もがそれには納得している様子だった。もちろん、キョクだけを除いて。
(どうしてみんなゲンダーやメイヴばかり見て…。クそっ、オレだって……)
 メイヴが続ける。
『みなさんが団らんしている間に、ちょっとこのドームの中枢データベースに侵入して情報を集めておきましたよ』
「Cool! さすがはメイヴだぜ。手回しがいいな」
『どうやらごく平凡な製薬会社のようですね。大したセキュリティもなかったのでちょろいもんですよ。まぁ、危険性はほとんどないでしょうから、まっすぐ正面から入って単刀直入にグメーシス亜種についてお話を聞かせてもらうことにしましょうか。ハッキングついでに概要はすでに向こうにお知らせしてありますので、そのまま遠慮なく入って行ってもらえれば結構ですよ』
「なんと、もうそこまで! さすが英雄様、段取りの時点からもう違うんだね」
「効率がいいわね。素晴らしいですわ、メイヴ様」
 さっそく十分すぎる活躍を見せたメイヴ。仲間たちはすぐに彼の働きを認め、誰もが彼こそリーダーに相応しいと頷いた。やはり、キョクを除いて。
(クそっ、またメイヴか。先を越された…。急いでオレも何か活躍しなくちゃ……大したことないやつだと舐められてしまう)
 焦りを募らせるキョク。そんな彼に、またしてもメイヴはお構いなしに声をかけた。
『ほらほらキョク、何をぼんやりしているんですか。うっかりしていると置いていかれますよ』
「わ、わかってる! オレは別にぼーっとしてなんか…」
『頼みますよ。今の私は遠隔モニタを通じて指示とサポートができるだけ。実際に動いてもらうのはあなたなんですからね』
「わかってるってば! うるさいな」
 鬱陶しそうな様子でキョクは何度も首を振った。


 ファルマクッペル内部へと進む。
 メイヴの手配のおかげでこちらの事情はすでに伝わっており、ドームの研究員たちは警戒することなくすんなりと彼らを奥に通してくれた。その先で彼らを出迎えたのは、このドームの責任者である女性ファルマ博士だ。
 顔を合わせるなりファルマはさっそく本題に入った。グメーシス亜種の調査の件もすでにメイヴから伝えられているらしい。
「ようこそお出で下さいました。私が責任者のファルマです。あなたたちがアルバールからいらっしゃった調査団の方々ですね」
 それにイザールが目を輝かせながら答える。
「ええ、そうですレディー。僕たちが来たからにはもう安心、危険なグメーシスなんてすぐに懲らしめてあげましょう。ところで、この後お時間はありませんか? もし良かったら僕といっしょにお茶でも飲みながら、ヴェルスタンドとフィーティンの友好についてでも語り合ってみませんか」
「おまえはいきなり何を言ってるんだ。ああ、そうだ。オレたちはグメーシス亜種の調査に来た。突然やって来てぶしつけですまないが、何か知っていることがあったら教えてクれ」
「グメーシスの亜種……ここ最近、問題になっているというあれですか」
「そうだ。各国のお偉いさんらが言ってたぞ。あっちこっちで被害を出してるから対策が必要だって。危険なやつなんだって。それでその対策を考えるために情報が欲しいから、オレたちはこうしてここへ来たんだ」
「危険なやつら……ですか」
 少し腑に落ちないような表情をしながらファルマは言う。
「ところであなたたちはホルミシス効果という言葉を知っていますか?」
「なんだ、いきなり? 知らないな」
『データベースを検索します…………ははぁ、これですね。私から説明しましょう』
 ホルミシス効果。すなわち本来は毒であるものも、少量であれば逆に有効に働くというもの。
 例を挙げるなら、宇宙飛行士は宇宙服を着て宇宙に飛び交う放射線から身を守るが、それでも完全にそれを防ぐことはできない。では、なんども宇宙へ行った宇宙飛行士は放射線の影響で身体を壊してしまうか。結論から言うと、これは必ずしもイエスではない。むしろ、宇宙飛行士たちはみんな健康状態を維持して次の航海へと向かっている。そこで考えられた説がこれだ。すなわち、確かに放射線は身体には有害だが、宇宙服による不完全な遮断を通して受ける少量の放射線はかえって身体に良い効果を引き起こすのではないかということ。それがホルミシス効果だ。
『まぁ、わかりやすい例で言えば……呑み過ぎると身体に悪いけれど、少量の飲酒はむしろ健康を促進する。というアレですね』
「そう。そのホルミシス効果です」
 ファルマが続ける。
「調査団が来た以上、隠しても無駄でしょうね…。ですから正直にお話ししますが、私たちはあなたたちの探しているそのグメーシス亜種の捕獲に成功しました」
 アルファチームの面々は揃って驚きの声を上げた。
「なんだって! ここにいるのかい、グメーシス亜種が!」
「We did it! もう任務はほとんど完了だな。楽勝だったぜ」
「それはよかったわ。そろそろ疲れて来たところだったのよ」
「……それじゃあ、その亜種について話してクれないか?」
 キョクが訊くと、ファルマは小さなため息をひとつ吐いた。
 そして、捕獲したグメーシス亜種の下へとキョクたちを案内しながら説明を続ける。
「あれは我々の研究に有用なので、できれば秘密にしておきたかったのですが……私たちはその特徴から、捕獲した亜種をホルメーシスと名付けました」
 グメーシスは触れたものを塩に変えてしまう能力を持っている。そしてその胴体に記された刻印は「罪」と「天」だ。亜種たちは、原種のものとは異なる能力と刻印をその身に宿している。
 このヴェルスタンドで見つかった亜種は「毒」の刻印を持っていた。触れたものを塩に変える原種と同様に、亜種も触れたものに何らかの効果を及ぼす能力を持つが、この亜種はその刻印が示すように触れたものを毒で苦しめる能力がある。体表面は毒の粘膜で覆われており、触れればたちまちその毒に身体を蝕まれるという。
「ですが、我々はその毒粘液を希釈して薬を開発することに成功しました。本来は毒であるものが、薄めることで薬になる。そこからホルミシス効果を想起し、我々はその亜種をホルメーシスと名付けたのです」
 そう言いながら、ファルマは立ち止まると目の前の扉を開いた。その先には研究室が広がっており、数々の機械や計器とともに円柱状のガラスの筒に閉じ込められたホルメーシスの姿を確認することができた。ホルメーシスは虚空を眺めながらガラスの中に浮かんでいる。
『ほほう。ガラスの檻で捕まえておけるのですか。なんでも塩にしてしまうグメーシスよりも扱いやすそうですね』
「触れさえしなければ問題はありません。それにいざというときのために、毒粘液から解毒剤も精製してあります」
『それは準備がよろしいですね。ところで我々はホルメーシスの調査のために来たわけですから、あれについての情報を提供していただきたいのですが。それから、もし差し支えがなければ譲っていただけるとありがたいです。さらに調査を重ねて亜種についての知識を深めたいところですし、他のチームが別の亜種を連れて来れば比較研究もできますからね』
 この提案に研究員たちやファルマは反対した。なぜならホルメーシスは大切な研究材料。対グメーシスの特別な設備も何もない彼女たちがそれを捕獲するのは容易いことではなかったからだ。それにホルメーシスから薬が作れることを発見したのは自分たちだ。その事実はまだ研究段階のため世の中には出ていない。なのに、それを簡単に余所の者へと渡してしまっては秘密が外部に漏れる恐れがある。そうなればせっかくの発見が尚早に知れ渡り、ともすれば自分たちの研究が奪われてしまうかもしれない。
 それに調査団が派遣されたということは、グメーシス亜種の問題を解決するためについに国が動き出したということ。つまりそれは遠くない将来にグメーシスの亜種が駆除されるということだ。そうなれば研究対象が失われてしまう。彼女たちとしては、そうなってしまっては研究に支障が出るので困るというわけだ。
 だからこそ、彼女たちはホルメーシスを引き渡すことに慎重になっていた。
「ホルメーシスは無害です。解毒剤もありますし、こうして安全に閉じ込めることもできます。ですから危険とは言えないでしょう? 他の亜種はどうぞ追い払ってくれて構いません。ですが、ホルメーシスだけは見逃していただけませんか」
 ファルマが頭を下げた。他の研究員たちも揃って嘆願する。
 しかしメイヴは冷淡に言い放った。
『安全かどうかを判断するのはあなたではありません。そして、もちろん私たちでもありません。それは国が決めることです。つまりはフィーティン王、マキナ首相、それからもちろんヴェルスタンドの大統領が。まさか国家に反してまでホルメーシスを渡さないと言い張るつもりではないんでしょう?』
「そ、それは……。ですが、それじゃあ今までの我々の研究はどうなるんですか! それに今までホルメーシスのためにかけてきた投資は!? あれがいなくなっては、すべてが無駄になってしまいます!」
『その点なら心配は要りません。あなたたちの研究成果はホルメーシスや、もしかしたら他の亜種の対処にも役立つかもしれません。それは結果としてこの大陸を救うことに繋がるのですから、無駄にはなりませんよ。あなたたちの研究が大陸を救うんです。名誉なことだとは思いませんか』
 メイヴは冷静だった。機械であるからこそ、非情に冷静だった。
 もちろんメイヴもゲンダーやキョクと同様に心を持つ特殊な機械だ。だがそれ以上に、計算高く現実的だった。
 感情を理解できないわけではない。しかし、グメーシス亜種の問題を解決するためには、ここでホルメーシスをサンプルとして手に入れておくべきだとメイヴは判断したのだ。そうするほうが効率的であり、問題解決の可能性がより高まるからだ。
 だからメイヴは感情よりも目的の達成を優先した。だからこそ、メイヴの交渉はシビアなものになった。
 キョクとは違って、メイヴは感情に振り回されたりはしない。
「わかりました。ホルメーシスの情報はすべてお話します。今後の研究で新たにわかったことがあれば、それもすぐにお知らせします。ですが、あれを持って行くのだけは勘弁していただきたいんです。あれがいなくなると我々は困るんです!」
『そういうわけにはいきません。私たちはホルメーシスだけじゃない、すべてのグメーシス亜種の脅威から大陸を救うために動いているんです。こうしている今にも、どこかで亜種の被害を受けて罪もない人々が苦しんでいるかもしれません。それを一日でも早く取り除くためには、悠長に新たな情報が送られてくるのを待ってなんかいられません。その目的に応じて精力的に亜種を研究する必要があるんです。薬の研究のついでじゃなくて、ですよ』
「でしたら、その目的に応じた研究を優先します。方法はそちらの指示にすべて従います。ですからどうか我々の手元にホルメーシスを置かせてください…!」
『それではラグが生じるので効率的とは言えません。そもそも薬は人々を救うものでしょう。それならば、大陸を救うことは人々を救うこと、つまり目的は同じはずです。それとも、あなたたちは人命よりも利益を追求することが大切だとでも仰るんですか?』
「そ、そんなことは……し、しかし我々も企業です! 研究員たちの生活もありますし、利益を出さないことには経営が成り立たないんです!」
『仕方ありませんね。権力を振りかざすようで、できればこの方法は使いたくはなかったのですが……』
 なおも食い下がるファルマたち。そこでメイヴは最後の手段に打って出た。
『そういえばまだ名乗っていませんでしたね。申し遅れましたが、私はメイヴと申します』
 すると研究室内には一気にざわめきが湧き立った。
「ま、まさかあの英雄の!?」
「過去に我が国を救ってくれたという、あの!?」
 各国のトップ。さらには救国の英雄までもが関わってくる。そのプレッシャーは計り知れないものだっただろう。
『では改めてお伺いしますが。グメーシス亜種の脅威から大陸を救うために、ホルメーシスを譲っていただけますね?』
「……わ、わかりました」
 彼女たちには、素直に頷く以外の選択肢はもはや無かった。
 悔しそうな表情をしながらも、渋々ファルマは研究員に命じてホルメーシスを調査団アルファチームへと譲り渡させたのだった。
『ご協力感謝します。このご恩は決して無駄にしないと約束します』
 ガラスケースに移されたホルメーシスを運びながら移動する。その道中には「これからどうすればいいんだ」と研究員たちの嘆く声がいくつも聞こえてきた。そんな通路を通りぬけてファルマクッペルを抜けると、アルファチーム一行はホルメーシスを装甲車に積み込んで、後味の悪い思いをしながら研究所帯ヒュフテを後にしたのだった。


 アルバールへと引き返す車内でキョクは言った。
「いくらなんでも、あれはなかったんじゃないか?」
 まるで無理やり強奪でもしてきたかのような気分だった。
 たしかに大陸を救うために必要なことかもしれないが、他にも方法はあったのではないか。せめて自分たちで別のホルメーシスを捕獲するか、補償金あるいは代わりのホルメーシスを研究員たちに渡すべきだったのではないかとキョクは口々に言った。
「仕方ないよ、キョク君。これが僕たちの仕事なんだ。理不尽に思うかもしれないけど、現実とはそういうものなんだ」
「そうだぜ、Cactasboy. 別に俺たちは悪いことをしてるわけじゃねーんだ。おまえが気に病むことじゃねーよ」
「心配しなくてもグメーシスの亜種はたくさんいるわ。ホルメーシスだってそうよ」
 仲間たちが次々に慰めるが、それでもキョクは納得できなかった。
(こんなの間違ってる。なんて冷たいやつなんだ、メイヴめ…)
 言われなくてもわかっている。あくまでメイヴは目的のために全力を尽くしたまで。悪意があってファルマクッペルからホルメーシスを取り上げたわけではない。そうだとわかっていても、どうしてもキョクは気持ちを割り切れなかった。
 遠隔モニタを通じて自分の意思を伝えているため、メイヴの顔は誰にも見えない。そのためにメイヴがどんな表情でそれを言っているのかが誰にもわからなかった。だからこそ、余計にメイヴの判断は冷酷に見えてしまうのだ。もしかしたら、メイヴは苦渋に満ちた顔で辛い思いをしながら仕方なく決断を下したのかもしれない。だが、そうだったのかどうかは誰にもわからない。
(それはわかってる。わかってるけど……)
 それでもキョクの心の内では、メイヴに対する不満の気持ちが高まっていった。
 あれからメイヴは黙ったまま何も言わない。果たしてそれは、ファルマたちの心情を考慮して心苦しく思っているからなのか、それとももうそんなことは忘れて、グメーシス問題を解決するための次の方策でも考えているのか。
(やっぱりこんなの納得できない。英雄がそんなに偉いのか? 英雄だったら絶対に正しいのか? オレはこんなの認めない!)
 車内は毒々しい空気に満ちていた。それはホルメーシスを運んでいるからだけではないだろう。
 重い空気とホルメーシスを乗せた装甲車はアルバールへと向かう。
 思い悩むキョクの顔を、ガラスの向こうからホルメーシスがじっと見つめていた。


第二章A 了

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