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大いなる意志4A

最終更新:2013年06月02日 06:51

jelly

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第四章A「研究資料の護衛(キョク編)」


 各地に派遣された各調査団チームはそれぞれ、調査したグメーシス亜種の情報、そして一部の成功したチームは捕獲した亜種の研究サンプルをアルバールの研究本部へと持ち帰った。しかしその結果、この機関には十分な設備が不足していることがわかった。
 そこで本部は外部の研究所に協力を要請することを提案した。マキナやヴェルスタンドの本国には大陸最先端の技術がある。その力を借りれば、この未知なるグメーシスの亜種についての研究が進められるだろうと考えたのだ。
 アルバールに戻って待機していた調査団たちは命じられる。
「マキナのベイクーロ研究所へ研究資料を護送してほしい」
 この任務に指名されたのは調査団のキョクたちのチームだった。先の調査実績や諸々の理由から、彼らがこの任務に最適だと判断されたのだ。
「護送? ただ資料を持っていクだけなのに護衛がいるのか」
『今やこの大陸は、いつどこでグメーシス亜種に遭遇するかわかりませんからね。もちろん必要なことでしょう』
「わかった。グメーシスでもホルメーシスでもなんでもかかってこいだ。全部オレがやっつけてやる!」
 こんどこそ、自分の実力を見せつける時。周囲に、そしてメイヴに自分の存在を主張できる機会。
 ゲンダーの代用品ではない。自分はキョクだ。それをわからせてやる。
 キョクの頭の中にはそれしかなかった。
 そんなキョクをメイヴは少し心配に感じていたが、今は大陸を救うことが最優先だとして任務の話を続ける。
『では私たちは引き続き彼らに同行して、護送を手伝えばいいんですね?』
 メイヴが訊くと、任務を告げに来た男はこう答えた。
「いえ。それなのですが、ヘルツ殿から英雄様をお連れするようにと託っております。なんでも確認したいことがあるのだとかで…」
『私に? わかりました。では仕方ありませんね』
 英雄と聞いて、キョクはわざとらしくため息を吐いた。
「……また英雄か。あーあ、大変だよな。英雄様は忙しクて」
『キョク、私は英雄だからという理由だけで彼らに協力しているわけではありません』
「それで? メイヴは遠隔モニタだから、メイヴだけここに残ることはできないよな。遠隔モニタの出力装置はオレの身体についてるんだから。やれやれ、オレも残るのか。あーあ、オレも亜種と戦いたかったなぁ」
『……何をそんなに不機嫌になっているんですか』
 キョクは自身をゲンダーとは違うんだということをメイヴに知らしめたいと考えている。
 だが、もちろんメイヴはそんなことはよく知っていた。
(同じプログラムを組まれているはずなのに……なぜキョクはゲンダーと違ってこうも自分に固執するのでしょう。そしてなぜ私を目の敵にするのでしょう。ほとんど同じ、なのに違う。私のデータベースを以ってしても、私はどうやって彼に接したらいいのかわからない)
 ゲンダーとキョクは違う。
 ヘイヴに生み出されたか、ガイストに生み出されたかの違いはあっても、デザインが少し違っても、それは構造的には同じもののはずだ。にもかかわらず、ゲンダーとキョクは似て異なる存在だった。
(ゲンダーは機械でありながら感情を持ち備える特異な存在でした。あるいは、その感情が何らかの作用を起こすことで、構造的には同様でも、行動アルゴリズムに変化が生じるということなのでしょうか……)
 ゲンダーとキョクは何が違うのか。構造は同じなので、違うのは目に見えない部分ということになる。
 そこでメイヴは考えた。ゲンダーにあってキョクにないもの。それは積み重ねられた経験なのではないか、と。
『……いいでしょう。そんなに戦いたいなら、あなたは彼らと共に行ってください。遠隔モニタの出力装置を取り外せば私はここに残れます。アルバールの科学者たちに頼めばすぐにできますよ』
 イザールたちと共にキョクを行かせることで、彼に経験を積ませるべきだとメイヴは判断してそう言った。
 だが、ホルメーシスの一件からメイヴのことを誤解していたキョクは違った意味でそれを捉えたようだった。
「なんだよ。行きたければ勝手に行けって言うのか? ……そうだよな。オレは英雄じゃないから。ここに残っても役に立たないもんな!」
『い、いえ。キョク、私は決してそういうつもりで言ったのでは…』
「わかったよ。言われなクてもそうしてやる。オレはあいつらと行ク。メイヴじゃなクて、あいつらについて行クからな!」
『キョク…』
 アルバールの科学者に遠隔モニタの出力装置を取り外してもらうと、叩きつけるようにそれを置いて、キョクは出発の挨拶も言わずにイザールたちのもとへと行ってしまった。そんなキョクの背中をメイヴは複雑な思いで見送った。
『困ったものですね。ゲンダーの後継機だからと考えて、ゲンダーと同じように接してきたつもりでしたが、もしかすると私の対応は間違っていたんでしょうか…。願わくば、今回の任務を通して少しでも彼が成長してくれることを期待しましょう』


 アルバールを発った調査団一行は、エラキスの運転する装甲車でマキナへの最短ルートを走っていた。
 護送する資料の中には捕獲したグメーシス亜種も含まれる。あるいはそれに反応した他の亜種たちが近寄ってくる可能性もあった。
 そこで、彼らは最短ルートを通過して、亜種に遭遇する前に少しでも早くマキナへと向かう方法を選んだのだ。
「キョク君。良かったのかい? あんな喧嘩別れで出てきてしまって」
「そうよ。メイヴ様はきっとあなたの意志を尊重するために送り出してくれたんじゃないかしら」
 イザールやシルマが心配して声をかける。
「うるさいな。ほっといてクれよ」
 が、対するキョクはそんな二人にまるで取り合おうとしない。いくら声をかけても、自分の殻に閉じこもったままだ。
 次第に二人はキョクとの対話を諦めて、エラキスを交えて三人で会話を始めた。
 そんな三人を聞くでもなく見るでもなく、キョクは窓の外を流れていく景色を眺める。
(こいつら、いつの間にこんな仲良クなったんだろう。オレだってしたクて喧嘩してるわけじゃない。仲が良いに越したことはないんだ。けど、オレは実力を示さなクちゃならない。だから慣れ合いなんてしてられない。舐められたらおしまいだからな…)
 同じ車内に居ながら疎外感を覚える。キョクは複雑な心境だった。
 キョクとてメイヴが嫌いなわけではない。それでも彼に反発してしまうのは、もっと自分を見てもらいたいからなのか。あるいは、自分を認めてもらおうと必死になるあまりに焦っているせいなのかもしれない。ヴェルスタンドでのホルメーシスの一件によるメイヴへの不信感の影響もおそらくあったのだろう。
 彼は視野が狭かった。周囲が見えていなかった。
 だが彼自身はまだそのことに気が付けなかった。
 それはメイヴが考えるように、キョクにはまだ経験が足りなかったからなのだろう。
 ガイストはHiveMindの一件で精神体との戦いで失われてしまったゲンダーを、メイヴから提供されたバックアップデータをもとに再現したが、あくまでそれは構造的な面だけに過ぎない。
 なぜ機械が感情を宿すのか、そのメカニズムはガイストにもわからなかった。あくまで彼はデータをもとに再現しただけで、一から設計したわけではないのだ。
 ともあれ、ゲンダーを模してキョクが誕生することになったのだが、さすがのガイストもHiveMindの後すぐにキョクを作り上げたわけではない。
 もともとガイストは機械が専門の科学者ではなかった。そのため多少の心得があったとはいえ、キョクを完成させるのには長い年月を要した。
 実はキョクはまだ誕生してからそれほど多くの時を経ていない。ゆえに彼はまだ未熟だった。
 人間に例えるなら、情緒不安定な年頃とでも言ったところだろうか。キョクはまだ青かったのだ。
 さて、大樹の麓アルバールを出発した装甲車はマキナへ向けて北東へ進んでいる。フィーティンの草原を通過し、ヴェルスタンドとの国境沿いに北上、三国の国境が交わる平地を抜けてマキナ領内へと入る道筋だ。
 この三国の国境が交わる地点は、かつて三国が領地を巡って争いを繰り広げた場所であり、メイヴやゲンダーが活躍したマキナ-ヴェルスタンド戦争の決戦場でもある。この戦場跡地をヴェルスタンドでは「痛み」を意味するヴェルスタンド語から、シュメルツと呼んでいる。
 装甲車がシュメルツに差しかかった頃、三人の話題は自然と過去の戦争の話に移り、シルマからシュメルツについての説明が出たところだった。
「痛みが語源ねぇ。なるほど、いいセンスだね。フィーティンじゃ戦場にいちいち名前なんか付けないよ」
「Yeah. うちの歴史は争いばかりなんだよな。全部に名前なんて付けてたら地図が真っ黒になっちまうぜ」
「過去の過ちを忘れないように、という願いが込められているそうよ。そのおかげで、わたしたちが生まれる前の戦争のことでもちゃんとわたしたちは知ることができるの。その願いは地名に刻み込まれているわ」
 マキナ-ヴェルスタンド戦争では、ガイスト博士の発明した精神体理論を悪用した当時のヴェルスタンド大統領が、精神兵器『鯰』を使ってマキナに侵攻した。この『鯰』の攻撃によって、マキナの都市の半分が海に沈んだという。
「へぇ。ちゃんと考えてたんだね。ヴェルスタンドは自分の非を認めているんだ」
「もちろんよ。それに比べたら、今のヘルツ大統領はずいぶんマシなんだから」
「まぁ、あまりパッとしない感じだけどな。……っと、悪ィ。別にこれはヴェルスタンドのこと悪く言ってんじゃねーからな」
「いいのよ。大統領なんて時代で変わるものだし。大切なのは変わらない部分だと思うわ。伝統とか想いとかね」
 マキナを襲った『鯰』は当時のマキナ軍に壊滅的な打撃を与え、ついには人員不足から一般市民や研究者までもが戦場へと駆り出される惨状を引き起こしていた。当時は誰もが、マキナ国は滅びヴェルスタンドに併合されるものだと考えていた。
 しかし、猛威を振るった『鯰』はある日突然姿を消し、また当時のヴェルスタンド大統領が死去したことで戦争は終わった。
 大きな被害を出したマキナも、持ち前の技術力で一年とかからないうちに元通りに復興を遂げたという。
 後にこのシュメルツでは『鯰』の残骸が発見された。それは強烈な熱線を浴びてほとんど灰になっており、また残された大きな欠片の表面には酸で溶かされたような形跡も見つかったそうだ。
 明らかに人工的な手段でこの精神兵器はガラクタと化している。では、一体誰が『鯰』を倒したのか。
 マキナ-ヴェルスタンド戦争から2年後、ヴェルスタンドでは再び精神体に関する事件が起こる。
 それがあのHiveMind事件。そう、メイヴやゲンダーたちが英雄となったあの事件だ。
 これをきっかけに注目されるようになった彼らは、大陸の多くの者に知られることになる。
 それは『鯰』を研究する歴史学者の耳にも届いた。そして彼らは英雄の情報をもとにひとつの仮説を立てた。
「酸性の液を散布する攻撃手段を英雄ゲンダーは備えている。また『鯰』は英雄ガイスト博士に非情に関係が深い精神体から造られた兵器。だから実は『鯰』を倒したのも彼らなんじゃないかって噂だぜ。まぁ、マキナじゃ有名な話だけどな」
「ええっ! ってことは英雄たちは大陸を救う前に一度マキナを救っていたのかい」
「素晴らしいわね。まさに生きる伝説よ、ガイスト博士は! 同じヴェルスタンド人として誇らしいわ」
「Hey. ガイスト博士はマキナ人だぜ。そこんとこ間違ってもらっちゃ困るな」
「そ、そんなの些細なことだわ。彼が精神体を発明したのはヴェルスタンド国内よ。だから彼は祖国の誇りなの」
「何言ってんだ! ガイスト博士はマキナの誇りだろ!」
「ほらほら、喧嘩しないで。いいじゃないか、僕たちみんなの誇りってことで。大陸の英雄ってことでさ」
 そのまま話題は救国の英雄へと移る。
 輪の外で一人、キョクは苦い顔をしていた。
(何が英雄だよ……。オレはメイヴとは違う。ゲンダーとも違う! おまえらにわかるか? 方や英雄と呼ばれてもてはやされ、方やただの代用品と呼ばれるオレの気持ちが。わかるもんか、誰もオレの気持ちなんか……。だからこそ、オレは自分自身の力で示してやる。実力で英雄に並んでやる。いや、超えてやるんだ……)
 悔しさを噛み締めるキョクをよそに、三人の話は盛り上がりを見せる。
 それは彼らがマキナへ到着するまで続いた。


 一方こちらはアルバール。
 ヘルツに呼ばれた英雄メイヴは、大樹裏手のアルバール本部から少し離れた場所で彼に会っていた。
 遠隔モニタを通じて意思を伝える姿なきメイヴは自ら移動することができない。そこで、キョクから取り外された遠隔モニタ出力装置を受け取り、ヘルツ自ら彼をここに運んで来たのだ。
『それで、私に用とは?』
 単刀直入にメイヴが訊いた。
「ああ…。その前に確認しておきたい。その遠隔モニタの情報はどこか別のところで他人が見られたりはするのか?」
『私の本体はマキナの研究所にいます。と言ってもデータだけの存在ですけどね。そうですねぇ、私の出力情報はすべて私のデータベースに保管され、古いものから自動的に消去されていく方式になっているのですが……結論だけ言うと、他人が見ることは可能です』
「そうか。それはちょっとまずいな」
『いえ、心配には及びませんよ。データベースを支配しているのは私自身ですからね。この私が見せまいとロックをかければいいだけの話です。私のセキュリティは万全ですよ。保証します。なにより、こんな人気のない場所に呼び出すんですから、察しはついてます。何か秘密のお話があるんですね?』
「まぁ、そんなところだな…」
『聞きましょう。なんですか、もしかして実はその白髪はカツラだったとか?』
「真面目な話だ。茶化さないでくれ」
『冗談ですよ。今回の亜種問題に関連することですか』
「ああ。聞きたいことはふたつある。まずは、大統領としての私ではなくて、俺ヘルツ自身として聞きたい」
 ヘルツもまたメイヴと同じく英雄である。
 その名声と功績から彼はヴェルスタンドの大統領になった。
 最初は国民の期待に応えようと彼も一生懸命に日々の職務に励んだものだった。
 しかし、彼がいくら努力しようとも国民から返ってくるのは不満の声ばかり。
 英雄だからと期待されているのはわかる。が、彼にはその期待が重かった。
「メイヴ。おまえは英雄と呼ばれることをどう思ってる」
『ふむ? 別になんとも。英雄だろうが悪魔だろうが、たとえ勇者でも魔王でも関係ありません。私は私ですよ』
「ああ、聞き方を変えよう。英雄として人が寄ってくることをどう思う」
『はて? まぁ、それはつまり期待されてるってことじゃないんですか。期待されるのは悪いことではないでしょう』
「わかった、率直に言う。俺はまわりのやつらが英雄をうまいように利用してるんじゃないかと思ってる。期待をしておきながら、やつら自身は自ら何もしようとしない。そのくせ期待に沿う結果が得られないと文句ばかり言う」
 たしかにそれ相応の実力や功績があってこそ、彼らは英雄と呼ばれている。だからこそ、人々が期待をするのもわかる。
 だが彼らもそんな大勢の中の一人でしかない。一人ができることには限度がある。
 しかし、人々はそんな英雄に期待をかけるだけで何もしない。つまりは責任を押し付けている。ヘルツはそう感じていた。
「俺は英雄なんて肩書はいらない。俺は俺だ。本当は英雄の、大統領のヘルツじゃなくて、俺自身をもっと見てもらいたいな」
『ええ、あなたはあなたです。私が言ったことと何か違うのですか。私は愚痴を聞かされるために呼ばれたんでしょうか』
「ああ、すまんな。つい脱線してしまった。俺が言いたいのは、そう感じながらも大統領としての俺はおまえを英雄として利用してしまったんじゃないかと後悔してるってことなんだ。英雄というだけの理由でおまえを今回の一件に巻き込んでしまっただろう。迷惑に思ってるんじゃないかと思ってな」
『なんだ、そんなことでしたか。てっきり、その白髪は大統領業のストレスのせいでなったのかと思ってしまいましたよ』
「そんなことって、おまえ…」
『私は利用されてるなんてこれっぽっちも思っていませんよ。ガイストの代わりに来てみれば、大陸が大変なことになってるって話でしたからね。私はここを第二の故郷だと思っています。だから大陸を救う方法を考える。たまたま目的が同じだったのであなたたちに協力している。私がそうしたいからそうしている。それだけですよ。それが「私は私」という意味です。それに、もしガイストだったら、精神兵器のグメーシス亜種がうようよしてると知ったら、放っておかないでしょうからね』
「……そうか。やはり、おまえたちは強いな。俺とは違うらしい」
『そうですか? 「あなたはあなた」です。ただそれだけのことじゃないですか』
 自分は自分。メイヴはメイヴであり、ヘルツはヘルツ、キョクはキョクなのだ。
 それは自身の存在を無理に主張することでも、英雄という肩書にこだわることでもない。
 自分の意思を持つこと。その意志を貫くこと。それが自分は自分の意味だ。
 そして自分は自分、他人は他人。これは何も自己中心的になれと言っているのではない。自分には自分の、他人には他人の考え方がある。どれが正しくてどれが間違っている、ということはない。考え方はそれぞれ、十人十色なのだ。
 その考え方の違いこそが個性であり、その人自身である。
『期待に応えたいと思うなら応えればいい。そう思わないなら無理にそうする必要はない。その結果としてそれが正しかったかどうかは知りません。あとはその人の人間性の問題ですからね。ヘルツ、自分の考えがちゃんとあるなら、言ってやればいいじゃないですか。文句ばかりじゃなくて自ら動けって。大統領じゃなくてヘルツという人を見て欲しいんでしょう?』
 ヘルツははっとして息を呑んだ。
 文句ばかりじゃなくて自ら動け。果たして文句ばかりで自分から動かないのは周囲だけだっただろうか。
 それはヘルツ自身にも当てはまることだった。「責任を押し付けられている」と文句ばかりで、自分の思いを伝えない。ただメイヴを前に愚痴るだけ。自ら動いていないのは彼も同じだった。
 メイヴはヘルツの問いに答えるのと同時に、彼自身に向けても言ったのだ。文句ばかりじゃなく自ら動け、と。
 言われて始めてそれに気付く。そして、その結果がヘルツの心を動かした。
「おまえの言うとおりだ……! ああ、そうか……どうやら大統領や英雄の看板に隠れて大事なことを見失っていた。俺も同じだったんだな。それもそうだ、俺だって一人の人間なんだもんな…。まぁ、まさか機械に人間性がどうだとか言われるとは思ってもみなかったがな」
『自分の意見を言えばいい。なーに、それだけのことですよ』
 そう言いながら、メイヴは思った。結果として、この話はキョクにこそ聞いたもらいたい内容だったと。
 キョクを行かせたのは失敗だったろうか、と少し後悔した。
(まぁ、彼は彼。自分自身で乗り越えてくれると信じておきましょうか)
 思い直したところで、そのまま続けてメイヴは問う。
『それで、もうひとつの相談というのは?』
「ああ。おまえが迷惑に思ってないとわかったら、気にすることなく先に進める。こんどは大統領として問いたい」
 もう遠回しにはぐらかしたりしない。そうだ、自分の意見を素直に言えばいいのだ。
 ヘルツは単刀直入に訊いた。
「ガイストは今どうしている。どこにいるんだ? 今回来れなかったということは何か理由があるんだろう」
 するとこんどは、いつもはずばり率直に答えるメイヴが、珍しく答えをはぐらかした。
『彼は彼なりに頑張っていますよ。彼は自分の意思に従い、今もその意志を貫いています。それは彼が選んだこと、私は口出しできる立場ではありません』
「どういうことだ? はっきり言ってくれ。どこで何をしているんだ」
『……私から申し上げることはできません。それが彼の希望ですから。どうしても気になるのなら……ご自身の目で確かめてみてはどうですか』
 メイヴは決してガイストの居場所を言うことはなかった。
 が、彼は黙って遠隔モニタに一枚の地図を表示した。そこには印があり、それはマキナの都市を指している。
「捜せ、ということか。だが俺は一応ヴェルスタンドの代表だからな。ここを離れることはできない」
『それなら心配には及びません。私のデータベースにはしっかりとあなたの情報がありますから……』
 遠隔モニタから青い光が発される。周囲には複数のモニタが展開され、そのそれぞれから伸びる光は互いに交差し重なり合い、立体的な形を構成する。
 光は初めのうちこそ像がぼやけた様子だったが、次第にその輪郭がはっきりとつかめるようになり、ついにそれは人の形へと姿を変えた。
『まぁ、この程度のことぐらいならできますよ』
 そう言うメイヴの文字のモニタの隣には光でできたヘルツの姿があった。
 白髪、服装、雰囲気、そして動作までもがまるでヘルツそのもの。それはメイヴが作り出した光の虚像、ホログラムだった。
 ヘルツと再会したのは実に20数年ぶり。メイヴはここアルバールで彼に再会してから今に至るまでの僅かな時間で集めた彼の情報から、外見上はほぼ完璧なヘルツをホログラムで擬装したのだ。
 間近まで近づいて見れば少し透けているのがわかるが、離れた位置から見ればそれはまさにヘルツにしか見えない。ここまで精巧にできたホログラム映像は、現在の大樹大陸の最新技術を以ってしても成し得ないことだった。
「なんてこった! この程度と言っておきながらやることがこれか!? まったくおまえってやつは、計り知れないポテンシャルを秘めている」
『私には十分な音声発生機能がないので、ホログラムにしゃべらせることまではできませんが、これでもしばらくは大丈夫でしょう。幸い、あなたはずっとぼんやりしている様子でしたから、たとえ少しぐらい話さなかったとしても問題はありません』
「そ、そうか。役に立ったのならなによりだ…」
 ヴェルスタンドの大統領ヘルツは大樹の麓でぼんやりしている……ということにしておいて、本物のヘルツ自身はガイストに会うためにマキナへと向かう。そして、そこで旧友ガイストを見つけるのだ。彼はマキナのどこかにいる。
 マキナでは亜種ネメーシスが出現して、都市一面を火の海に変えて暴れ回ったという。
 それほどのことになっているのなら、当然ガイストは亜種の噂を聞きつけて解決のための行動に移ったはず。
 だがガイストは現れず、アルバールへ遣わされたのはキョクとメイヴだった。
 一体彼は今どこで何をしているのか。あるいはすでに行動を開始しているのか。そして彼がアルバールへ現れなかった理由とは一体何なのか。
 その理由を確かめるために今、ヘルツは行動を開始した。
 自身の意思に従って。その意志を貫くために。


第四章A 了

大いなる意志5
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