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F3 CP16

最終更新:2013年06月18日 04:04

jelly

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Chapter XVI「フレイの真実」

(執筆:日替わりゼリー)

 純白の空間、純白の部屋、そして純白の竜。
 アルヴの神殿最奥部へと招かれたフレイとクエリアは、その白き大神竜を前に緊張した面持ちで立っていた。
「それで私たちをここに呼んだ理由とは?」
 クエリアが問うと、大神竜は二人の目を深く覗きこみ、一人静かに頷いてからようやく口を開いた。
「ふむ……良い眼をしている。それなりに実力もありそうだ。アクエリアス姫、貴殿にも一役買っていただきたいものであるな」
「ど、どういう意味だ?」
 大神竜は答えない。ただ、クエリアの目を見つめるのみだ。
(うっ……なんだこいつ? ちょっと気味が悪い…)
 大神竜の眼は神々しく澄んでいる。が、クエリアはその奥底に得体のしれない奇妙なものを微かに感じ取った。その何かにある種の畏れを感じたクエリアは、おずおずとフレイの背に身を隠す。
 一方、フレイもこの白き竜を見つめていた。そして思う。フリードは、フレイたちと合流したときに「ある筋からの依頼でフレイ王子を保護する任務を請け負っている」と言っていた。その依頼主とはやはりこの目の前の竜なのだろうと。
 だが、それならばこの竜は一体どこでフレイを知り、そして何から彼を保護したというのだろうか。
 フリードは自分からは話せないので依頼主に聞いてほしいと話していた。今その依頼主を目の前にして、フレイはずっと心の奥に引っ掛かっていたその疑問をようやく訊くことができる。
 フレイが問うと、大神竜はニヴルの姫君からこちらに視線を移し、厳しい表情でフレイを見た。
 神々しいながらも突き刺すような鋭い視線だ。フレイの背に思わず厭な汗が流れる。
「まずは落ち着くがよい」
 戸惑うフレイの心を見透かしてか、大神竜は言った。
「先程、お主もフリードから聞いたと自身の口から言っていたことだが、お主を呼び寄せたのはお主を保護するため。決してお主に非があるわけではないので怯える必要はない。さて……質問は、何から保護するためだったのか、であったな」
「『だったのか』? では、すでに事後であると?」
「うむ。お主らはアルヴへ来てまだ半日と過ごしていないと感じているであろうが、実は外の世界ではすでに数ヶ月の時が流れている。ここアルヴは少し特殊な空間に存在しており、それゆえに時の流れが不安定でな。外の世界より早く月日が流れることもあれば、こちらでの数年が外ではわずか数日だったということもある。お主らはここへ入るときに、何か不思議な空間を通過したのではないかね?」
 フレイたちの魔導船はフリードの先導のもとにアルヴへと到着したが、大神竜に言われてそういえば、と思い出す。
 アルヴへと入るときに船は厚い雲の層を通過した。それは一見して積乱雲のようで、実際にその雲の中は雷雨が渦巻いており、打ち付ける暴風雨と激しい雷に幾度となく肝を冷やす思いをしたものだった。その際に船に乗っていた誰もが、一瞬の目眩のようなものを感じていたが、もしかするとそれが大神竜の言う不思議な空間だったのかもしれない。
「まるで浦島太郎にでもなったような気分だ。では、僕を保護する必要があったその何かは、アルヴの外ではもう過ぎ去ったということですね?」
「そうだ。万が一にもお主を失うことになれば我は困るのだ。そのために、我は外とは時の流れを異にする、言わば別世界であるこのアルヴヘイムにてお主を保護してやったというわけだ」
「にわかには信じ難い話です。まさか、時の流れが異なる空間なんてものが存在するなんて…。ところで大神竜様、そろそろ説明していただけませんか。一体何から僕を保護したというのですか?」
「そうであるな。もう危険は去った、話してもよい頃合いだろう。さて、どこから説明するか……」
 大神竜は目を閉じて静かに考えを整理すると、再び厳しい表情でフレイを見つめて話し始めた。
「すぐには受け入れられないだろうが、落ち着いて聞くがよい…」


 外の世界では大神竜の言うように、フレイたちがフリードに先導されてアルヴへ向かってから数ヶ月が経過していた。
 ここムスペルスヘイムでは、火竜たちが悲哀に暮れ、そして絶望の日々を送っていた。
 鎖に繋がれた火竜たちがムスペ城のある大火山を見上げながら呟く。
「ああ、ファーレンハイト様……どうして」
「まさか我らがニンゲンごときに敗れるなど誰が予想しただろう。おのれ、よくも我らが王を…」
「数ヶ月前からセルシウス様も行方不明だという。もしかして王子も奴らの手にかかって…」
 彼らには鎖を引き千切るには十分過ぎる力がある。にもかかわらず、彼らにはそれができない。なぜなら、その鎖はドローミが長い研究を重ねてついに開発した特殊なリング……クエリアを拘束していたものと同様のものを繋いで作られているからだ。
 小さなリングでは身体の大きな火竜を捕まえることはできなかったが、鎖状にすることでどんなに大きな対象でもその効果を問題なく発揮することができるようになった。そのリングは触れた者の魔力を封じ、さらに竜の力さえも封じてしまうのだ。
「黙れ! 汚らわしい化け物どもめ。無駄口が叩けるのも今のうちだけだぞ。すぐにそんな口がきけなくなるようにしてやる。貴様らはこれからトロウ様のためにしっかりと働いてもらうのだ……奴隷としてなぁ!」
 拘束された竜たちの鎖を引くのは、そんな火竜たちよりもずっと小さな人間。見たところ、ユミル国の兵士のようだ。
 兵士は悪態を吐く竜たちに罵声を浴びせながら、彼らを船に乗せて連行していった。
 それを最後にムスペからはすべての火竜が消えた。腕利きと謳われたあの男を除いては……
「これはいい眺めだ。すべての竜があのお方に仕えることになる記念すべき日になるのだからな」
 王のいなくなったムスペ城から、連れ去られていく火竜たちの姿を一頭の竜が眺めていた。
 船が上方へと昇り雲壁を抜けて外界へ出ていったのを見届けると、彼はかつてファーレンハイトが座っていた玉座にどっしりと腰を落とす。そして、まるで自分が王にでもなったかのように、ふてぶてしく不敵な笑みを浮かべる。
 王城には彼の他にはすでに竜の姿はなく、あちこちにユミル兵の姿が散見できる。兵士たちの顔色は悪く、それはまるで様子のおかしくなったユミル王の姿を彷彿とさせる。
 そんな兵士の一人が玉座の竜に声をかけた。
「報告します。ムスペ国制圧完了。全火竜の捕獲及び収容完了。お疲れさまでした、作戦完了です」
「ああ、よくやってくれた。実に簡単な任務だったな」
「まったくですね。恐ろしいのは火竜王だけ。奴さえいなくなれば、火竜どもなんて大したことありません」
「火竜王ファーレンハイト、か。ふっ、奴には感謝しないとな。まんまと俺を信用して情報を垂れ流してくれたのだから。そうだ、いくらか報酬金ももらっていたっけ。馬鹿な奴だ、それが自分の国を滅ぼす作戦のために使われていたとも知らずに」

 ファーレンハイトはある計画を企てていた。
 ムスペには氷の魔道士が襲撃に現れた。氷と言えば因縁深きニヴル。魔道士と言えばニンゲン共の国ユミル。
 どちらからの差し金かはわからなかったが、火竜王にとってはそんなことはどうでもよかった。ただ、それは口実としてはとても都合がよかった。
 彼は火竜たちが苦手な魔法を操るニヴルの者や、いずれ大きな力をつけて自分たちを脅かしかねない人間を目の敵にしていた。ムスペ国を脅かす存在はできるだけ排除しておきたい。それがファーレンハイトの狙いだった。
 アリアスを送ってフレイたちを呼び寄せようとしたのは、氷の魔道士を口実にフレイたちに責任を押し付けてユミルに宣戦布告するつもりだったのだ。結果としてフレイは現れなかったが、近年のユミル王ニョルズの不穏な噂など、他にもこじつけられる理由はいくらでもある。そこでファーレンハイトは座して次の計画を練った。
 フレイたちはそのままニヴルに向かったとの情報を得て、彼はニヴルとユミルが交戦を開始し、互いに潰しあってくれることを期待した。ニヴルにも炎の魔道士が現れたことを密偵を通じてファーレンハイトは知っていた。そのため、フレイがニヴルに赴けば間違いなく争いが起こるだろうと彼は踏んでいたのだ。
 だがその予想は外れた。
 フリードに出遭ったフレイは大神竜の思惑通りアルヴへと向かい、そして保護された。この事実をファーレンハイトはまだ知らない。さらに予想外なことに、争いはニヴルではなく自国ムスペで起こったのだ。
 突如としてユミル王ニョルズが火竜王ファーレンハイトに宣戦布告。ユミルとムスペの間で戦争が勃発した。
 虚を突かれた形でユミル魔道兵たちの先制攻撃を受け、あっという間に領土への侵入を許してしまった。火竜たちは魔道兵たちを相手に苦戦を強いられる。そこに突然不穏な影は舞い降りた。
「おやおや……これは大変、大変ですねぇ。必死に抵抗する赤い蜥蜴。しかし敵は自分たちの苦手な魔法で襲ってくる。炎しか扱えないのは不便でしょう。そこで私から提案があります。我々に降伏しなさい。軍門に下ると誓うなら、あなたたちの嫌いなニヴルの水竜も簡単に殺せるような魔法を教えてあげますよ」
 トロウは甘い声で誘惑する。しかし、プライドの高い火竜たちはニンゲンの誘いになど決して乗らない。
 当然この提案は退けられる。それはトロウも承知の上で言ったことだ。そして予想通り火竜がこれを断ると、待っていたと言わんばかりにトロウが叫んだ。「くはははは、馬鹿め! 大人しく従っていれば苦しい思いをすることもなかったものを。ならば力でねじ伏せるしかありませんねぇ……おまえたち、やれッ!」その顔には狂気に満ちた笑みが浮かんでいた。
 トロウが合図すると、ユミルの兵士たちは用意していた鎖を解き放った。そう、後に敗れて連行されることになるあの火竜たちを捕らえていたあの鎖だ。鎖は蛇のようにうねり、まるでそれ自体が意思を持つかのように竜たちに襲いかかる。そして力を封じられた火竜たちは成す術もなく崩れ落ちていったのだった。
 魔鎖に縛られ手も足も出なかったのは彼も例外ではない。
「くッ……貴様らァ! ニンゲン如きの分際で、よくもやってくれたな! やはりそうだ。それこそが貴様らの本性なのだ! 竜との共存だと? 笑わせるなッ! 体よく取り繕って我らの魔法を盗みながら、腹の底ではいつかこの空の世界を支配してやろうと企んでいたのだろう。他の竜たちの目は誤魔化せても、我が目は欺けんぞ。王の代を継いだときからずっと、私は貴様らが怪しいと思っておったのだ。そして見ろ、この有様を。とうとう本性を表したな、薄汚いニンゲン共め!」
 力強く咆えて見せるも、身体にはまるで力が入らず思うように動けない。鎖に囚われた火竜王はトロウの前にあられもない姿を晒している。王としての威厳はすでにそこにはなかった。
 不格好に這いつくばるファーレンハイトをトロウは満足そうに見下ろす。
「ふふふ、おしゃべりが過ぎますねぇ。あなたは私の計画の邪魔なんですよ。もう御託はいりません。とっとと死んでください。滅びゆく国の哀れな王として相応しい最期を迎えさせてあげますよ!!」
「おのれ! 覚えておれ……我がムスペルスヘイムは永遠に不滅! このファーレンハイト敗れようとも、いつか必ず我が息子セルシウスが、そして我が同胞たちがこの恨みを晴らしてくれようぞ! それまで恐怖に震えながら、せいぜい偽りの平穏でも貪るがいい……ッ」
 そのとき、トロウの両手から漆黒の瘴気が放たれる。闇が瞬く間に火竜王を呑み込んだ。そして彼を包んでいた闇が晴れた頃にはすでにファーレンハイトは息絶えていた。そこに残るのは物言わぬ火竜の白骨だけだ。
「さようなら、火竜王様。今まで散々邪魔をしてくれたお礼に、最後の餞別として教えておいてあげましょう……貴様の同胞はすべて我が手中に収めた! 貴様の信頼する側近どもは私の信頼する竜将たちが葬り去った! そして貴様の愛する王子も我が部下の手にかかって今頃はおそらくもう……くっくっく。はっはっははははぁ!!」
 静まり返ったムスペ城に漆黒の魔道士の高笑いが響く。
 後に『第一次魔法戦争』と呼ばれるユミルとムスペの戦いは、火竜王ファーレンハイトの死とムスペの陥落によって終結した。

 そして今、このムスペ城を守っているのはもう火竜王ではない。
 玉座に腰を下ろす竜は薬の入った小瓶を片手に、その丸薬をじっと見つめていた。
 熱気を帯びた赤い丸薬、電流ほとばしる緑の丸薬。色とりどりの様々な薬の中から、冷気を放つ白い丸薬を取り出して呟く。
「さて……次はニヴルか」
 言って一息にその丸薬を呑み込む。
 すると、火竜同様の赤い鱗で覆われていたその竜の体色がみるみるうちに変わっていく。そして、やや蒼みを帯びた白い鱗の氷竜の姿になった。
 そんな偽りの氷竜に兵士の一人が声をかける。
「次の任務に向かわれるのですね」
「ああ。おまえたちはこの城を守っていろ。万が一にもフレイや生き残りの火竜たちが城を奪還しようと攻めてくるかもしれんからな」
「承知しました」
「まぁ心配はいらんさ。竜どもは例の鎖でもはや敵ではないし、フレイ王子はまだまだ甘さが抜け切らないひよっこだ。よもや自国の兵士には手を出せまい。それがたとえ自分に攻めかかって来たとしてもな。せいぜい、何か誤解があったのだとでも思って説得を試みるのが関の山だろう。では俺はニヴルへ行ってくる」
「はッ! どうかお気をつけて……第一竜将アリアス様!」
 兵士たちは敬礼して、飛び立つアリアスを見送った。
 ニヴルが陥落したと空の世界中に知れ渡るのは、それから数日後のことである。


 そんな外で起こった事実を知って、二人は愕然とした。
「そんな……あの火竜王が……亡くなった!?」
「ニヴルまで……は、母上は!? 母上は無事なのか!!」
 取り乱すフレイとクエリアをなだめると、大神竜は淡々とした様子で続けた。
「制圧されたムスペとニヴルはユミルの統治下に置かれ、捕らえられた火竜や氷竜たちは各地の浮島に送られて、奴隷同然の扱いを受けている。今や、外の世界は人間の支配下と言っても過言ではないだろう。まったく厭な時代になったものだ」
「なんということだ…。僕たちからすれば、つい昨日まで平和とは言えないにしても、人も竜もそれなりにバランスを取って暮らせていたというのに。魔法戦争だと……なんて馬鹿な……」
 思わず頭を抱え込む。フレイにはすぐにその元凶が思い当たった。
 ある日突然現れて父王をおかしくした張本人。バルハラ城を抜け出す自分たちを待ち伏せして襲いかかって来たあの男。
(トロウ…。気味の悪い男だとは思っていたが、まさかこれほどまでに…。一体あいつは何者なんだ)
「我は空世界を揺るがすこの大戦乱からお主を護るためにフリードを遣わせたのだ。アクエリアス姫、お主が現れたのは想定外だったが、どうやら運が良かったようだな。もしお主がそのまま祖国にいたのなら、今頃お主はこの世にはいなかったかもしれぬ」
 それを聞いてクエリアは血相を変えた。
「運が良かった!? 馬鹿を言うなッ! 私の母上や姉上はどうなったのだ! 他の氷竜たちは! 国の者たちは無事なのか!? これを運が良かったで済ませると思うか……おのれ、ユミル! よくも、よくも……っ」
 クエリアはその場に力なく崩れ落ちた。その表情は涙に濡れてぐちゃぐちゃだった。
 大神竜は何も言わずにそんな彼女をただ眺めている。対してフレイは放っておけずに声をかけた。
「ク、クエリア…。気持ちはわかるけど、どうか落ち着いて。せめて君が無事なだけでも良かったじゃないか…」
「良かった!? おまえまでそんなことを……そういえば、おまえユミルの王子だったな! よくも母上を……よくも姉上を……! 返せ。返せよ…。私の家族を返せ! 私の仲間を返せ! 私の故郷を、平穏を、日常を返せよぉ……」
 フレイの胸を力なく叩きながら泣き崩れる。そんな彼女をフレイにはどうすることもできなかった。
 そしてクエリアに同情すると共に、その心の奥底に沸々と怒りの感情を湧き立たせていた。
 トロウは父上をおかしくしてしまっただけに飽き足らず、ムスペやニヴルまでをも不幸の底に突き落としたのだ。彼の目的はわからないが、ユミル王を操って戦争を起こし、世界中に不幸を撒き散らしていることだけは確かだ。このままトロウを放っておくわけにはいかない。許すわけにはいかない。これはもはや、ユミル国だけの問題ではなくなってしまったのだ。
 いつかは優しかったかつての父上に戻ってくれるのではないかと淡い期待を抱いていたのも事実だが、フレイは心のどこかで諦観してもいた。
 父上はおそらくもう、元には戻らない。あるいはもう死んだも同然と言っていいのかもしれない。そしていずれは自らの手で父を止めなければならない日が来るのではないか。もしそうなら、ユミル王子としてそれは覚悟しなければならない。王族として、国を預かる者として、王に代わって自分が責任を取らなければならない。
 そしてトロウがすべての元凶であるとするならば、それを止めるのが自分の責務だ。
「このまま彼を見過ごすわけにはいかない…。ムスペもニヴルも倒れた今、それができるのは僕だけか…」
「我としても、この事態を看過することはできぬ」
 大神竜は言った。
「そこでお主の出番というわけだ。お主らをアルヴへ招いたのは、何も保護だけが目的ではない。いや、そもそも保護した理由がそこにある。すなわち、我はお主であればこの世界を変えることができると信じておる。本当ならば未然に防ぎたかったのだが、過ぎてしまったことは仕方がない。しかし、お主の実力ならば今からでも状況を覆すことは可能なはずだ」
 フレイは驚いた。今まで会ったこともない大神竜から絶大な期待と信頼を寄せられ、さらに世界を変えるとまでいうのだ。そして自分の実力なら状況をひっくり返せる。そんな大神竜の言葉がフレイは腑に落ちなかった。
「お言葉ですが、僕は優れた魔術師でもなければ戦士でもありません。一体どこからどのような噂を聞きつけたのかはわかりかねますが、大神竜様は僕を買いかぶり過ぎているのではないでしょうか。僕はただの王子に過ぎませんよ」
「ふっ、ただの王子と申すか。どうやら人間たちの間では王子というものにあまり希少価値がないようだな」
 笑いながら大神竜は続ける。
「だが、我が期待をかけるのはそんな安っぽい肩書などではない。お主の能力、そしてその生い立ち。そこに我は期待している」
「どちらも心当たりがありませんが……能力はまだいいとして、生い立ちとは? 一体あなたは僕の何を知っているというのです」
「時にフレイよ。お主、母親の顔は覚えているかね」
「母上の……いえ。物心ついた頃にはすでにお姿はなく、父上からは僕が幼い頃に病に倒れたと…」
「ふむ。やはり知らされておらなんだか。たしかにお主が幼き頃、彼女は逝った。その事実に偽りはない。だが、不足はある」
 大神竜は過去を語り始めた。それはフレイがまだ生まれる前。ユミル王ニョルズの若かりし日の記憶。


 それはまだニョルズがフレイと同じぐらいの年頃だったときの話。先代ユミル王オルディンがバルハラ城と大樹を治め、ニョルズはまだ王子と呼ばれていた頃のこと。
 あるとき、オルディンはニョルズを私室に呼び出すと、唐突にこう訊いた。
「おまえもそろそろ成人となる年齢だな。追々はわしに代わっておまえがこの国を治めなければならん。それゆえに心得ておいて欲しいことがあるのだが……さて、ニョルズよ。王が国を守るために必要なものとは何だと考える?」
 若きニョルズはこう答えた。
「はい、父上。王たるもの、民の安全を第一に考え政策を行うべきです。国を構成するのは民たちですから」
 王が一人だけいても、それだけでは国にはならない。その王が守る領地に人々が暮らし、彼らが様々な役職をこなしてくれることで国はまわっていく。動きが無ければ進展などありはしない。ただ不毛に朽ち果てていくだけだ。
「うむ、それも重要だな。だが、心だけでは国は動かせんぞ」
 他に思い当たるものはないかとオルディン王は問う。
 するとニョルズが答える。
「では、やはり資金が必要ということでしょうか。どんなに素晴らしい政策であっても実現できなければ夢物語に過ぎません。そうだ、王とその心だけがあっても、そもそも領地がなければ国にはならない。土地も重要だな……ということは、資金や土地を含めたあらゆる必要物資、つまりは財産が欠かせないということですか」
「そう考えるか。無論、それも間違ってはいない。だが、いくら物があってもそれだけでは国は存続できんぞ」
「存続……ですか。では敵の侵攻から領地を守る兵? それとも国家間の信頼でしょうか」
 ニョルズは思い付く限りの回答を並べる。しかし、そのどれもがオルディンを納得させるには至らない。
 とうとう観念してニョルズは素直に訊いた。では、真に必要なものは何なのかと。
「それは、血を絶やさないことである」
 いくら優れた名君と言えど、人は不死ではない。いずれは老い、そしてこの世を去るのが定め。
 王を失えば民たちは混乱し、いずれは国が崩壊してしまう。そこで人々は新たな王を求めるだろう。しかし、その者が先王の意志を継いでいなければ、それはもはや新たに別の国が誕生したと言っても過言ではないのだ。ゆえに、王家の意向を伝え継ぐ者、王家の血を引く者が次なる王たるべきなのだとオルディンは語った。
「早い話が後継者のことだ。おまえも王となれば、できるだけ早いうちに嫡子をもうけたほうがいいだろう。人生というのは長いようで短い。油断しているとあっという間に老いが忍び寄ってくるのだ」
「もう後継者の話ですか。まだ父上が現役だというのに、いくらなんでも気が早いような気もしますが……」
「まぁ、つまりわしが知りたいのは、おまえがちゃんと後継者を得られるのかということだ。おい、ニョルズよ。おまえ、意中の相手はおらんのか?」
「はぁ……と言われましても、そんな急には」
「だろうな。おまえはそういうことに疎いところがあるからな。わしは心配しているのだ。おまえがちゃんと未来の王妃に然るべき相手を連れてくるのかをな。そこで、わしは父としてのささやかな後押しとして、今回もおまえに相応しそうな令嬢を数人見立ててきておる。どうだ、見合うてみるつもりはないか?」
「ああ、やっぱり…。またそのお話ですか。何度でも申し上げますが父上、それは余計なお世話というものです。私にとって然るべき相手は私自身で見つけてみせます。だから、どうか父上の都合の良い相手を押し付けないでください」
 オルディンはこのように度々ニョルズに見合い話を持ちかけてきた。あくまでこれはニョルズの将来を思っての行動であったが、ニョルズ自身は紹介されてくるどの見合い相手にも関心を持つことができなかった。
 それから月日は流れて、オルディンは王位を息子に譲り、ユミル国に新たにニョルズ王が誕生する。年老いたオルディンは病に伏せり、とうとうその長きに渡る人生に幕を降ろすときがきた。
「おお、ニョルズ……我が最愛の息子よ…。願わくば、最期に孫の顔を拝みたかったが、それも叶わぬ想いか。だが、わしは信じておるぞ。おまえなら、必ず正しい選択をしてくれると…。せめて天からおまえの幸福を祈って……うぐぅッ」
「父上…ッ!!」
 オルディン先王は眠るように息を引き取った。先王の亡骸は王家のしきたりに則って、地竜族の手によって大樹の幹へと埋め込まれ、母なる大地へと還って逝った。
 悲しみに暮れるニョルズを、先王を送った地竜がそっと慰める。
「あまり思い詰めるでない。すべての生命は大地に還り、そして再び新たな生命として生まれてくるのじゃ。縁があれば、お主もいつかオルディン殿の生まれ変わりに出逢うこともあろう。そんなときにお主がそんな顔をしていては、彼も悲しむじゃろうて」
「そう……だな。ありがとう、ジオクルス。おまえは種族が違うのにいつも私たちに良くしてくれるな」
「当然じゃ。我ら地竜族はオルディン殿やその前の王たちにも良くしてもらってきた。ユミル王家には大きな恩がある」
 王家に深い縁のあった地竜ジオクルスは、オルディンやニョルズ、そしてその更に以前の王たちにも力を貸してきていた。そして今、彼女はニョルズの嫡子フレイと共にある。これもまたユミル王家と地竜の不思議な縁というものであろう。
 さて。父を失った悲しみを忘れるためか、後にニョルズ王は信頼を置く数人の仲間を連れて、周辺空域を遠征の名目で旅に出たことがあった。
 王家専用の魔導船でとある空域を航行中、彼らは突然現れた巨大な嵐に巻き込まれることになる。激しい雨と雷が彼らの船を襲うが、有能な仲間たちの活躍や、ニョルズの名采配で辛くもこの嵐を抜け切った彼らが辿り着いたのは、奇しくもこの隠れ里アルヴヘイムだった。
 ニョルズはアルヴの神殿で大神竜に謁見しており、この隠れ里の在り方に理解を示したという。大神竜はニョルズにしばらくの滞在を許し、ニョルズはアルヴでの一時を過ごすこととなった。彼がユミルに戻ったとき外の世界では数ヶ月が経過しており、ユミル国は大きな混乱に苛まれていた。これが後に語られる『ニョルズ王の雲隠れ』の逸話である。
 これをきっかけに王としての立場を強く自覚し、また民たちからの期待と信頼を知り、その反省からニョルズは名君と称えられる存在へと成長したという。
 アルヴから帰ったニョルズは、遠征の間に知り合ったのであろう、一人の女性を連れ帰っていた。そして王として宣言する。「この者こそ、私が王妃として認める者であり、私が最も愛する者である」と。民たちはユミル人ではなかった彼女を拒むことなく温かく迎え入れた。フレイヤと名乗った彼女は美しい容姿と、深い慈愛の心を兼ね備えていたという。
 しばらくして二人は待望の嫡子を授かることになる。王子フレイの誕生である。
 ニョルズとフレイヤの授かった嫡子を見て誰もが息を呑んだ。
「おお、なんということだろう。先王オルディン様によく似ている。見よ、この痣を」
 フレイには左肩に竜のような形の痣があった。ユミルではこれを竜痕と呼んでおり、この印を持って生まれてくる者はその生涯において偉業を成し遂げると信じられている。これと同じものがオルディンの額にも現れていたそうだ。
 ニョルズは運命を感じた。以前ジオクルスが言ってくれた言葉を思い出してその考えに至る。これはもしかすると父の生まれ変わりの証なのかもしれないと。
 王家に縁が深かったジオクルスもこの嫡子の誕生には立ち会っていた。知らせを受けたジオクルスはすぐに駆けつけて幼きフレイと対面、そして確信する。この幼子は数奇な運命を背負う宿命にあると。思い出してほしい、ジオクルスがフレイに初めて会ったときに交わした言葉を。
『フレイ王子、近々この世界に大きな転機が訪れます。この世界の分岐点といってもいいでしょう。その時中心にいるのがフレイ王子、あなただと、私はそう思っています。私はそこで世界の行く末を見たい』
 クルスはフレイの運命に惹かれたと語っている。それにはこういった理由があったのだ。
 嫡子フレイは両親に見守られて元気に育って行ったが、不幸にもフレイヤは病に倒れ、我が子の成長を見届けることなく世を去った。


 父の、そして己の過去を聞かされ、フレイは深いため息をついた。
 そうだ。たしかに父は名君だった。”だった”のだ。しかし、今の父上にはもはやその面影はない。
 そして意外な事実に静かに驚いた。ここまで共に旅してきたクルスとはすでに出生時に対面していたということに。
「ではクルスは最初から僕のことを知っていたのか…。なるほど、彼女は最初に僕が来るのを待っていたと言ったが、その意味が今ようやくわかったような気がする。知っていたのなら、言ってくれればよかったのに」
「ここまでが人間側から見た真実だ」
 大神竜はそう告げる。
 人間側からの真実。ではそうではない真実があるというのか。
 その疑問を口にするよりも先に大神竜は語り始めた。すなわち竜側から見た真実を。
「もともと、このアルヴヘイムは人と竜の共存を唱えて作られた隠れ里だ。ここでは人間も竜も共に暮らしてきたが、実はそれだけではない。アルヴには竜人族という者たちも暮らしている」
「竜人族……?」
 初めて聞くその種族に首を傾げる。そんなフレイに代わって今までふて腐れていたクエリアが叫んだ。
「竜人族! 私知ってる! 知っているぞ! 竜人族はニンゲンと竜の間に生まれた種族で、人にも竜にもなり切れない憐れな存在だと聞いたぞ。互いの種族の掟を破って混血を犯したために、忌み嫌われた存在とも言われているのだ」
 難しい話ばかりで彼女にはあまり理解ができなかったところに、ようやく自分にもわかることが出てきたので、クエリアは明るい表情で元気よく答えた。以上のものは本から得た知識に過ぎないのだが、さも自分の手柄であるかのように自信満々に言ってのける。どうやらもう涙は止まったらしい。
「ク、クエリア…! 大神竜様はおそらくアルヴを治めている存在だ。そんなアルヴの住民を貶めるような物言いは…」
「何を言う。私は事実を言ったまでだぞ。私が悪いわけじゃない」
 心配して大神竜の顔色を窺う。が、どうやら気に障るようなことはなかったらしく、そのまま大神竜は話を続けた。
「まぁ、外の世界の常識ではそんなところだろうな。そうだ、竜人族は人間にも竜にも疎まれてきた。彼らに理解を示す者がいなかったわけではないが、ほとんどの者はそんな彼らを迫害したのだ。そこで居場所を失った彼らは、自身らを忌み嫌う者たちのいない、彼らだけの安住の地を求めた。そして辿り着いたのがこの地、アルヴヘイムなのだ」
 本来は竜人族が迫害を逃れるために設けた地。それこそが、このアルヴが隠れ里と呼ばれる所以である。
「ここへ来るまでに人間とそれほど大きさの変わらない竜を見ただろう?」
「たしかに……あまり見ない種類の竜だとは思っていました。そういえば、彼らは他の竜に比べると幾分か体格は控えめで、ほとんど二足歩行をしていた。ということは、あれが竜人族だったのですね」
 フレイが納得した表情をする。しかし大神竜は無言でそんなフレイを見つめた。その眼は、まるでその納得ではまだ不十分だとでも言いたげに。
「竜人族は竜と人の双方の特徴を兼ね備えている。多くの者は混血を嫌うが、場合によってはそれが竜や人よりも優れた力を発揮することもある」
「ふーん、つまり雑種だな。たしかに雑種は純血よりも長生きするからな。私が昔飼ってた霜蛇と雲ワニの子どもがそうだったぞ」
「……クエリア、その例えはさすがにどうかと思う。ええと、つまり竜としての強靭さに加えて、人の身軽さや道具の知識などを兼ね備えると?」
「正確ではないが、まぁそのようなものだ」
 大神竜が補足した。竜人族は竜の血が色濃ければ竜に近い姿になり、翼を持つので飛ぶこともできる。竜よりも小柄だが、それゆえに旋回能力や飛行速度で勝る。ただし寿命や体力では多少なり竜に劣る。人の血が色濃ければ姿はほとんど人と変わらないが、人間にしては強い魔力を持ち、強靭な肉体や長寿などの特性を持つ。ただし翼を持たないので飛行能力はない。
「人の姿に近い竜神族もいるのですか!? 同じ種族でありながら、そこまで姿が違うなんて…」
「厳密には固有の種族ではないからな。あくまで竜と人の血を引く者に過ぎんということだ」
「不思議なものだな…。それで、その竜人族が竜側から見た真実とどう関係があるのですか」
「うむ。先程ニョルズはアルヴを来訪したと言ったな。そのときに彼は竜人族というもの、そしてこのアルヴヘイムに理解を示した。お主がアルヴのことを知らなかったのなら、彼はこの里の存在を他言しないという我との約束をしっかりと守ってくれたことになるな」
 ニョルズは多くの者たちとは違って竜人族を忌み嫌ったり迫害したりはしなかった。もともと地竜族と親交の深かったユミル王家は竜族を親しい存在と捉えており、それらの血が交わることにそれほど嫌悪感を覚えなかったのだ。
 そしてアルヴでの滞在を終えると、ニョルズ一行はそのままユミルへと直帰した。そして、その後にフレイヤとの婚約を公表するに至る。
 ではフレイヤは一体どこから現れたのか。悩むまでもない。彼女はこのアルヴ出身で、ここで来訪したニョルズと知り合い親交を深めたと考えるのが自然だろう。互いに一目惚れのお似合いの二人だったと大神竜は語った。
「それが竜側の真実……つまり僕にはアルヴの者たちの血も流れているということになるのか」
「ほう、意外と察しが良いな。その通りだ。だからこそ、我はお主に期待している。お主なら父と同様、必ず我々のことを理解するはずだ。そしてお主の能力は必ずや我々の助けとなるであろう」
「なるほど。ようやく話が見えてきました。外の世界は今やトロウが支配する暗黒の世界。ムスペもニヴルも敗れ、世界のバランスは大きく人間の側に傾いている。それを元に戻す手伝いを僕にさせようというわけですね」
 フレイは思った。この大神竜という者、ずいぶんと知略に長けている。
 トロウは父ニョルズをおかしくし、ユミル国の名のもとにムスペやニヴルを征服するという蛮行をやってのけた。これはユミル王国の伝統に泥を塗る赦し難い行為。フレイとて王子としてこれを見過ごすことはできるはずもない。
 それに母フレイヤがアルヴの出身だったと聞かされたことで、もはやフレイがアルヴの関係者だという事実は不動のものとなった。
 どちらの面を見ても、フレイには大神竜の期待を裏切る理由がない。いや、受け入れざるを得ないのだ。
 大神竜はアルヴの街並みで見かけた竜人族と違い、竜相応の巨体を備えている。竜人族のことを大切に思っている一方でやはり竜は竜か、と密かに心の奥で思う。偉大な存在であることには違いないが、ある種の高慢さをそこに感じずにはいられなかった。
「断る理由はないはずだ。フレイよ、我々に力を貸すのだ。お主の力でトロウを打ち倒し、世界に再び光を。そして竜人族たちを迫害の下から解放するのだ。人と竜は解り合える。それはお主が最もよくわかっていることであろう?」
 たしかに断る理由はなかった。それにクルスやクエリア、セルシウスの件もある。彼らにはすでに幾度か助けられている。たしかにフレイは親竜派、人と竜が解り合えることは身に染みていた。
(この白竜、一体どこまで僕たちのことを把握しているんだ。少なくともこれまでの動向はお見通しのようだが…)
 フレイは心の底から大神竜を信頼することができずにいた。これほどまでに自分たちのことが筒抜けだと、まるで監視でもされていたかのような錯覚を感じる。そう、まるでこうなることが初めから仕組まれていたかのような。
 トロウの件はともかく、竜人族の解放は本来フレイにとっては無関係のはずだ。うまく利用されているような気がして、それがより一層この大神竜への不信感を増していく。
(だが、少なくとも目的は同じか。今は信じるしかない)
 そう自分に言い聞かせて、フレイは答えた。
「わかりました。僕としてもトロウを野放しにするわけにはいきません。そのためであれば、竜人族の解放に協力させていただきましょう」
「その答えを待っていた。必要とあればいくらかの兵力は貸してやろう。フリードを筆頭に実力ある者を揃えている。好きな者を連れていくが良い」
「ありがとうございます。ですが、最後にこれだけは確認させてください。生い立ちに関してはわかりました。ですがあなたは僕の能力も欠かせないという。僕は王子とは言えただの一介の人間に過ぎません。それなのに、どうしてあなたはそこまで僕に期待をかけるのですか?」
 たしかに目的は一致している。協力する理由もできてしまった。だが、どうも話がうますぎる。何か裏で仕組まれているのではないか、そう勘繰ってフレイは最後にそう確認したのだ。
 しかし、それは結果として驚くべき真実を引き出すこととなった。それはこれまでのフレイの立場を根底から覆すかのような、重すぎる事実。それこそが、竜側から見たフレイの生い立ちの真実。
「一介の人間? 何を寝惚けたことを言っておる。さっき自分でも言っておったろう、お主にはアルヴの血が流れていると。フレイヤはアルヴの竜人族。すなわち、人間のニョルズと竜人族の間に生まれたお主もまた竜人族、人と竜双方の力を備える者だ。それこそがお主に期待すべき能力である。もっとも人の血が濃かったために残念ながら人の姿を取っておるがな。お主は人間などではない。竜の血を引く者、すなわち我々の同胞なのだ」
「竜の血が……なんだって……!?」
「お、おまえが!?(やばっ、さっき竜人族のことを悪く言ってしまったぞ……お、怒ってないかな)」
 耳を疑った。クエリアもなにやら心配そうな表情でフレイの顔を見上げている。
 フレイは竜の血を引く者。竜のクォーターにあたる。
 王族ゆえに迫害されることはなく、またニョルズが秘密を守ったためにフレイが竜人族だと人々に知られることはなかった。しかし、一度その事実が知られれば多くの者は彼をも迫害するだろう。それは王族といえど例外ではない。それがこの世界の竜人族に対する風当たりだ。
「竜人族の解放は、お主自身の未来の解放でもあるのだ。ゆえにお主はやらねばならない。やるしかないのだ。判るな?」
 フレイの目を覗きこんで言う大神竜の表情は少し嗤っているように見えた気がした。
 目眩を感じる。まるで退路を断たれたかのような心境だった。
 それは半ば脅迫。大神竜はフレイの秘密を握る存在だ。もしその秘密を口外されればフレイの立場は途端に危ういものとなってしまうだろう。
「話はついたな。それでは改めて名乗らせてもらおう。我が名はロキ、アルヴを治め竜人族たちを束ねる大神竜である。ではこれからよろしく頼むぞ。我らが同胞フレイよ」
 そのまま続けて大神竜は執事のバールを呼んで今後のことを話し始めたが、もはやその会話はフレイの耳には届かなかった。
 ただ突き付けられたその真実の重みを、フレイは受け止めるのに必死だったからだ。
「僕が……竜人族……」
 震える両手を焦点の定まらない目でフレイは眺め続けていた。


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