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Black Drop5

最終更新:2017年04月23日 03:29

jelly

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五番星「黒い雫」



 クロガネから南方には森林帯が広がっている。この一帯を梨子(ナス)と呼ぶ。なぜナスなのか、茄子がたくさん採れるのか、そういう名前の何かが住んでいるのか、異郷の俺にはよくわからないが、とにかくここは梨子の森という名だった。過去形。そう、今はもう森ではない。なぜならここには……
 森を抜けて最初に目に入ったのは、直径数千メートルにもわたるほどの大穴だった。墜落した隕石が作った巨大なクレーターだ。
「とりあえず、ここをナス穴とでも呼ぼうか。いや、アナナスがいいかな」
「ここにインセキがあるの?」
 穴の底を覗き込んでみる。あまりにも巨大な穴は深く、見えない底は深遠の闇……とでも言えばちょっと詩的でロマンがあるかもしれないが、実際のところはべつにそんなことはなく、すり鉢状の削れた岩盤の中心に黒い石片が突き刺さっているのがはっきりと見えた。
「あった…」
「あったね」
「なんだ。ずいぶんとあっさりしておるではないか。それならば話は早い。さっさと用事を済ませて次にやるべきことに取り掛かろうではないか。ほれ、行った行った」
 わがままな自称王女に尻を叩かれるいわれはないが、あれはたしかに故郷の長老に調査を命じられた隕石だった。もっと長い旅になるかとも思っていたが、この様子だと今日中に帰路に立てそうだ。
 えぐられた岩盤は砕けた岩やひっぺがされた木々の根などによって、大蛇の背中の鱗道なんかよりもかなり足場が悪くなっている。俺はちびたちをクレーターの外に残して穴の底へと降り立った。かなり深くえぐられた様子で、底にたどり着くまでに結構歩いたように感じる。足場が悪いことによる歩きにくさが、さらにそれを助長させたような気もする。ともあれ、ようやく中心にたどり着いて突き刺さった石片の隣に立った。
「村のジジイは調査をしてこいと言ってたが、さて。どうしたもんかな」
 上から見ていた感じよりも大きく感じる。隣に立った俺の背丈よりもまだ少し大きい。が、これでも石片、カケラなのだ。
 飛来した隕石はどうやら空中で割れて、いくつかのカケラに分離して降り注いだようだ。なるほど、スサの村もこんなに近くに隕石が墜落したのに無事だったわけだし、被害がこの程度で収まっているのも地上に落ちたのが隕石の一部だけだったからなんだろう。
 しかし、カケラひとつでこの大穴。もとの隕石そのものはよほど巨大なエネルギーをもっていたんだろう。隕石の飛来を境に未知の生物が現れたやら山が染まったやら謎の現象も起こっているが、これもその巨大エネルギーが原因なんだろう、たぶん。いや知らん。俺は科学者じゃないからな。そもそもこの時代にまだ科学なんてなかった。だから隕石のせいで今は問題ないということにしておこう。それがだめなら精霊でも悪霊でも、長老が納得しそうな理由でも考えればいいだけの話だ。
「そうだなぁ。呪術師のばあちゃん風に言うと『隕石が星の海から黒い悪霊を運んできた。原因は全部そいつのせい』……うん。こんな感じだろ」
 俺は専門家でもなければ、隕石というものを見るのも生まれて初めてだ。調査と言われても大したことはわからない。今自分にできる調査といってもこの程度だろう。
「どれ。あとは隕石の欠片でも持って帰れってやれば、頭の固い長老サマも満足してくれるはずさ」
 隕石のカケラの欠片を採取しようと石片に一歩近づいた。そのとき足に奇妙なぬめりを感じて、そこで初めて隕石のすぐ下から黒い液体が湧き出していることに気がついた。とても冷たく、同時に熱くも感じる。足が重いような、それでいて浮かんでいるような不思議な感覚。
「うへぇ。なんだこりゃ。きもちわりぃ……洗ったらちゃんと取れんのか、な、コレ……あ、あれ、ぇ?」
 そこで……急にめまいを感じたかと思うと、意識が、遠く、なっ――


「ふりーどおそいね」
 なかなか戻らない保護者を心配してか、あるいは待つのに飽きたのか、みーぎゃはそわそわして落ち着かない様子だった。
「よもや、自分の仕事が終わったのをいいことに、我らを置いてさっさと帰ってしまったのではあるまいな。いや、あの男ならあり得る。ふむぅ、少し心配になってきた。様子を見てくるか」
 ここで待てと言われたが、痺れを切らした仔竜たちはクレーターの底を覗き込んでフリードの姿を捜した。
 穴の中心に黒い石が突き立っているのがまず見えた。そして石からは黒い液体が染み出しているのが次に目に入った。液体は徐々に湧き出しつつあるようで、クレーターの底にさっきはなかった小さな黒水の泉を形成している。さらによく目を凝らしてみると、同じ黒色でわかり辛かったが、泉の中に人影のようなものが見えた。
「なんだ、ちゃんとおるではないか。おーい、野蛮人! なにをぼーっと突っ立っておるのだ。用が済んだのならさっさと帰ってこんか」
 呼びかけると、こちらに気付いた人影はすぐに仔竜たちのもとへと走り寄ってきた。
「ふりーど……?」
「待て。何か様子がおかしい」
 初めは遠くにいるから陰で黒く見えるのだと思っていた。だが、どこまで近づいてきてもその人影は黒いままだった。そして人の足にしてはやけに走りが速かった。まるで影だけがこちらに向かってくるかのように、それはあっという間に目の前に現れた。
 たしかにそれは人の形をしていた。たしかにそれはフリードの顔をしていた。しかし目は血のように赤く、雰囲気はまるで違う。そして声も。
「アア゛待タセタ、ナ…。少シ…メマイ、ガ、シテ、ナ…」
「なんだお主は。本当にフリードか?」
 影はそれには答えず、一人うわ言のように続けた。
「ナゼ、ダ、ロウ…。スゴク、身体ガ、軽イ。風ヨリ、軽イ。ナノニ、スゴク、飢エテ…」
「何を言ってるのだ」
「オマエ、ウマソウダナ……イイ気ヲ、感ジル、ゾ。オ、ヲオオォォ……オマエラ、ノ、チカラ、ヲ、ヨコセ!」
 黒いフリードは突然すうっと宙に浮かぶと、そのまま仔竜たちの周囲を旋回し始めた。
 だらりと垂れた両手からはぱちぱちと火花のようなものが散っているのが見える。
「ふりーど! どうしたの。ボクがわからないの?」
「よせ、危ないぞ! 近寄るでない」
 引き止められたみーぎゃの目の前に稲妻が落ちる。それは紛れもなく、黒フリードの手から発せられたものだった。
 フリードと全く同じ顔をしたそれは、ただ無表情なままに、赤い目で足元をちょろちょろと動き回る獲物を凝視するだけだ。手からはばちばちと電流が走り、いつでも次の一発が放てることを物語っている。
「よくわからんが、化け物のようだな。あの大蛇としゃべり方の特徴もよく似ておる。フリードに似ておるのが気に食わんが仕方ない。襲ってくるなら返り討ちにしてやるまでよ!」
「やめてよ! フリードかもしれないのに」
「あれがお主の知っているあの男か。あやつがお主に向かって攻撃してきたことがあったか。あやつは一番とかなんとか抜かしておったが、私に言わせればただの阿呆じゃ。ましてや空なんて飛べないし、あんな能力も持ってはおらぬ! それでもあれをフリードと呼ぶか」
「でも……っ」
「もういい。それならお主は逃げるか隠れるかすればよい。私には祖国を継ぐという使命がある。誰よりも強くなくてはならぬ。売られた喧嘩は買ってしっかりのしをつけて礼まで返す。それが誇り高き火竜族というものよ!」
 再び襲い来る稲妻を跳ね避けて、あーぎゃは黒フリードをしっかりと視界に捉える。宙をふよふよと予測のつかない動きで飛び回られるのは少し厄介だったが、幸い動きはそこまで速くないので狙いをつけるのはそれほど難しくない。
 ここだ、とアタリを決めて火の能力で発火。一瞬火花が散ったかと思うと、続いて勢いよく炎が吹き上がり黒フリードを飲み込んだ。しかし次の瞬間には油に弾かれる水のごとく、炎が弾かれて四散してしまった。
 ならば、と次は狙いを少しずらして敢えて黒フリードの少し手前へ。移動するその先を予測して、その空中の一点に熱を集中させ、熱により膨張し始めた空気に一気に点火。押し固められた空気が弾けて爆発を起こした。
「どうだ! これが私のホンキだ! 私に楯突いたこと、いまさら後悔してももう遅いぞ」
 黒い飛沫があちこちに音を立てて飛び散り、まるで返り血のようにそれはあーぎゃの顔に黒い染みを作った。
「ふん、粉微塵になったか? 参ったなら参ったと言え。今なら特別に許してやってもよいぞ」
 しかし返って来た答えは稲妻だった。不意を突かれたあーぎゃは稲妻の直撃を免れなかった。まともに電撃を受けたあーぎゃは痺れてその場に崩れ落ちた。
「くっ…。馬鹿な、爆破されて生きておるとは……。あんな黒くてぶよぶよしたやつなど、イチコロだと思ったが…」
 爆風は黒フリードの表面の黒液をほんの少し吹き飛ばしただけで、敵本体にはまったく有効打とはならなったようだ。
 黒液が吹き飛ばされて、黒フリードの中身の一部がほんの一瞬だけ露出した。それは弱点でも隠すかのように周囲の黒液に覆い隠しされてすぐに見えなくなってしまったが、それが見覚えのある装飾だったのをみーぎゃは見逃さなかった。
「あのもよう……ふりーどがみにつけてた布切れだ! やっぱりあれは……。あーぎゃ! だめだよ、あれはやっぱりふりーどだよ!」
「関係ない! いや、あれがフリードだとしたらなおさら許せぬ! 私のホンキの炎がまったく効いてないだと。そんな馬鹿なことがあるか! こんな屈辱があるか!! こんなこと絶対に許せん。認められん。火竜のプライドに賭けてここは退けぬ……私の全力を懸けた一撃をお見舞いしてくれる。そのあとがどうなろうと知ったことではないわ!!」
「あーぎゃ、やめて! ボクのはなしをきいてよ」
「ええい、黙れ黙れェ!! 」
 まだ痺れが抜けず重い身体を引きずりながら辛うじて立ち上がると、重い足取りでようやく一歩踏み出し、空中から考えの読めない表情でこちらを凝視している化け物を正面に見据えた。
 そのとき一歩踏み出したその足が、地面に飛び散っていた黒い染みを踏みつけていたことには誰も気付いていない。
 あーぎゃは心の底から熱い想いとともに力が湧いてくるのを感じていた。それが怒りによるものなのか、黒い染みの影響によるものなのかはどうでもよかった。ただ心にあるのはひとつの意志だけだ。
 悔しい――ムスペルスの火竜は非常に誇り高い。火竜にとっては力こそすべてであり、強い者こそが賞賛される。そこには性別も年齢も関係ない。弱者は敗者でしかない。
 あーぎゃは思った。自分こそが王座を継いで祖国をより強大にする。他の種族や隣国ニヴルヘイムの氷竜に負けない強い国をつくる。それが私の夢だ。そのためには、こんなよく知りもしない土地で、こんなわけのわからないやつなんかに引けを取っている場合なんかじゃない。この程度で膝をつくようでは国を継ぐなど夢のまた夢だ。
「私は負けられぬ。たかが化け物一匹。憎きニヴル国との戦争に比べればこんなもの遊びのようなもの。私はこんなところで遊んでいるわけにはいかないのだ! 私の道を邪魔するでない。消え去れ、化け物めッ!!」
 湧き上がる想いと力に任せて、持てる力すべてを解き放った。
 凝縮された鉛のように重く渦巻いていた気が、弾け出すように身体の奥底から飛び出していくのを感じた。どこを狙ったのかもわからない。何をやったのかもわからない。ただ無我夢中で、そして全力ですべての力を放出した。
 途端、身体からすべての熱と力が抜けてしまったように感じて、めまいとともにふらついて倒れそうになったところをみーぎゃになんとか支えられた。
「くっ……やったか!?」
 あーぎゃ渾身の一撃の影響で、地響きとともに地面が揺れ始めた。
 激しい揺れに立っていることもできず、仔竜たちはクレーターの穴の中へと転げ落ちた。あちこちで地割れが発生し、クレーターの穴にも幾筋もの亀裂が走っていく。穴の底、石片の周囲に溜まっていた黒水が割れ目から流れ落ちて、泉が見る見るうちに枯れていく。そして地鳴りが次第に遠のいていく、と感じた次の瞬間。
 耳をつんざくような爆音。そして熱風がクレーターの上を吹き抜けた。また新たに隕石が落ちたのかと思う衝撃だった。見上げると空は真っ黒な煙に覆われている。そして遠方にその山頂を覗かせている山からは激しく炎が吹き上がっていた。
「噴火……した…」
 すべてを懸けた一撃。強い念の篭ったエネルギーは、クロガネから遥か東、この島でもっとも大きな紫柴(シシバ)の山を眠りから覚ますほどの力を秘めていた。たしかにそれは凄まじい力だった。しかし――
 化け物は風でも吹いたか、という表情で平然と宙に佇んでいる。山を噴火させたところで、それがこの化け物に対して攻撃なるわけでもないし、なにより距離が遠すぎた。狙いはまるで見当違いすぎたのだ。
 それがわかった瞬間、あーぎゃの身体からは完全に力が抜けてしまい、とうとう支えられていても立っていられなくなってしまった。
「そんな…。私のすべてを懸けた一撃だったのに、こんなことって……。私の夢もここまでか…」
 へたりとその場に沈み込むあーぎゃ。これを好機と、待ってましたと言わんばかりにダメ押しの稲妻が飛んできた。
「にげなきゃ! またビリビリがくるよ」
 しかし、あーぎゃはもう動けない。すべての力を使い果たしてしまった。そして心が折れてしまった。動く気力をすべて失ってしまった。そんなことはお構いなしに稲妻は迫って、もう目の前に火花が散っているのが見える。
 ――ボクがやるしかない。
 ためらっていた仔竜は決意した。
 自然を操る能力でひび割れた地面を隆起させると、壁を作って稲妻から赤い仔竜を守る。そのまま岩のドームに発展させて仲間の安全を確保すると、黒い何かに取り憑かれてしまったもう一人の仲間に立ち向かう覚悟を決めた。
 大地から植物のツルを幾本も生じさせると、それを空中の黒フリードに向かって次々と伸ばしていく。
 倒さなくても、戦わなくても、フリードを助ける方法が何かきっとある。今、本来のフリードの意識は気を失っているはず。だとすれば、フリードが意識を取り戻せばもとに戻ってくれるかもしれない。
 希望を捨てないみーぎゃは、伸ばしたツルで黒フリードの動きを封じようと試みながら、必死に呼びかけ続けた。
「ボクのことわすれちゃったの? たしかにまだあったばかりだけど、それでもこの数日間だけでもいろんなころがあったでしょ。それもぜんぶわすれちゃったっていうの? ふりーど!!」
 決して素早くはない動きだったが、最小限の動きだけで黒フリードはいとも容易く巻き付こうとしてくる何本ものツタをかわしてしまう。なんとか相手に触れることができても、表面を覆う黒液がツタを絡め取ってしまい、逆にこちらの動きが封じられてしまう。
「おかあさんをさがしてくれるって約束したよね。それに、あーぎゃの国にもいつかいくんでしょ。それもおぼえてない?」
 それでもみーぎゃはツタを飛ばすのをやめなかった。動きを封じられなくてもいい。相手の注意をツタのほうにそらすことができるなら。そしてみーぎゃは呼びかけ続けた。声で闘い続けた。フリードの心にこの想いが届いてくれることを祈りながら。
「おねがい! めをさまして、ふりーど!!」
 そうして呼びかけ続けていると、徐々に相手の動きが鈍くなり始めた。相変わらずツタで縛り付けることはできなかったが、宙に浮かぶ高度も下がり始めて、ついに地面に降りきってしまうと、黒フリードは頭を抱えながら苦しみ始めた。
「「ウウ…。ヤ、メろ。頭、ガ、痛イ。オ、俺ハ、俺は……」」
 化け物のしわがれた声の裏に、聞き慣れたフリードの声が重なって聴こえ始めた。
 効いている。そう確信したみーぎゃはさらに呼びかけ続けた。
「「うぐグ…。く、苦シイ。俺は、俺ハ……うぁァ、ああぁァあぁ……ッッっ!」
 すると突然、苦しむ黒フリードの両手から黒液が水飴のように伸びて、目にも留まらぬ速さで迫ってくると、あーぎゃを守るために作った岩のドームの壁にみーぎゃの四肢を張り付けて固定してしまった。
 迂闊だった。地上に引き降ろしたことで成功したと思い込んでいた。結果ツタで翻弄するのを忘れて、結果的に自分のほうが動きを封じられてしまった。
「うう、ふりーど…」
「「はァ、はぁ…。く、苦しイ。チカラ、ヲ、もっト補給しなケレば。おマエのチカラ、を、もらウ、ゾ…」」
 四肢を捕まえている黒液が少しずつ腕や脚を上り始めた。ずぶずぶと黒いぬめりが身体を侵蝕し始めている。
 みーぎゃは大蛇と戦ったときのことを思い出した。あのときもこれに似た黒いぬかるみを踏んで、その途端すごい力が湧いてきて、あっという間に大蛇を倒してしまったのだ。そして今も同じだった。
 黒液の中に身体が沈みこんでいくほどに、身体の奥底から熱いものがこみ上げて来る。頭の中から恐怖や不安といった余計な気持ちが薄れていって、なんでもできるような気持ちが高まってくる。気味が悪くて恐ろしい状況のはずなのに、なぜか心地良ささえ感じてしまう。そんな状況が焦燥感を煽り、頭の中ではこれはまずい、危険だと警鐘を鳴らし続けているのに身体が言うことを聞かず、侵蝕を続ける黒液に自ら身を任せてしまいそうにさえなる。鼓動は早くなり、上気して意識もぼんやりし始めている。
 この隕石から染み出してきた黒い液体が何なのかはわからない。ただすごい力を秘めているのと同時に強烈な毒であるとも感じた。生命に関わるような毒ではないが、精神に強く作用する毒だ。正体のわからない何かに洗脳でもされているかのような、そんな危険を含んでいるのだと瞬時に理解した。
 例の大蛇や砂丘で対峙した黒砂蟲も、おそらくこの黒い液体に触れて侵蝕されて末に暴走したのだろう。そしておそらくフリードも。
(にげなきゃ……)
 このままでは取り込まれて、自分もフリードと同じようになってしまうかもしれない。すぐにでも脱出しなければ。
 それなのにもう身体の自由が利かない。まるで自分の身体ではなくなってしまったかのように、もう黒い液体の中に溶け込んでしまったかのように、なにもできないし、どうすることもできない。絶体絶命だった。
「お、おねがい…。ボクのしってるふりーどにもどって……」
 頬を涙が伝う。
 しかし黒液は無慈悲にもその涙もろとも、みーぎゃの顔を呑み込もうと覆いかぶさった。視界が遮断され意識がより一層と闇の底へと引きずり込まれていくような感覚。ずるずると黒液が口の中へも入り込もうと蠢いている。もうフリードに呼びかけることさえできない。ついに希望も断たれた。
 頭の中が黒一色で塗り潰されていってとうとう何も考えられなくなってきた。ああ、自分という存在がこうして塗り潰されて消滅してしまうんだな。と、みーぎゃは微かに残る朦朧とした意識でそう思った。
 唯一、侵蝕を免れた一滴の涙が最後に地面に落ちて散った。
 ぽつり、と。
 落ちた涙が作った水の痕のとなりにもうひとつの水滴が落ちた。
 一滴。もう一滴。そして続けざまにひとつ、ふたつ。いくつも。
 空には噴火した火山の灰を含んだ黒い雲がいくつも折り重なっていた。灰を含んで重くなった雨雲は、蓄えていた水分を雨として放出した。少し黒ずんだ雨が地上に降り注ぐ。
 怒りと悔しさ。希望と絶望。二匹の仔竜の涙が呼んだのは天の涙だった。


 頬に当たる雨水の冷たさで目を覚ました。
 火山灰を含む濁った雨は少しべたべたしているが、あの黒い液体に比べれば気にならない程度だ。
 ぼんやりする頭で仰向けのまま空を眺めていると、心配そうな顔をした仔竜たちがこちらの顔を覗き込んできた。
「う……おまえたち…?」
 なぜ自分はこんなところで寝ているのか、なぜこんなに心配されているのか。記憶の糸を辿っても何も覚えていない。隕石のカケラを調査していたことは覚えているが、それ以降のことを全く思い出せない。
「ふりーど! いきてる?」
「ふん、マヌケなやつよの。まったく村で一番が聞いて呆れる。心配したではないか。この馬鹿者がっ!」
 降り注いだ雨はフリードやみーぎゃに取り憑いていた黒液をすべて洗い流してしまった。なぞの黒い液体、その弱点は意外にもシンプルに水だったのだ。黒液の侵蝕を受けてそれほど時間が経っていなかったため、完全に侵蝕されて身体を奪われてしまうまえに黒液を洗い流して、無事にその呪縛から逃れることができたというわけだ。
 みーぎゃは黒液の恐ろしさ、危険性を懸命にフリードに伝えた。まだ幼くてうまく表現できないために伝わらない部分もあったが、フリードも真摯にその理解に努めた。
「なるほど。きっとこれが呪術師の予言にあった『黒い雫の災い』ってやつだな。ただの隕石かと思ったら、石そのものがとんだ化け物だったってわけだ。どこからかは知らないが、厄介な液体を運び込んできてくれたもんだよなぁ。それでその隕石は?」
 クレーターの中央に、もう例の石片はなくなっていた。黒い液体も染みひとつなく雨で流されてしまっている。
「うむ。地割れの底に落ちていったと見える。地震が起こったり、山が噴火したりと色々あったのでな」
「そうか。全然覚えてないけど、じゃあ、もう危険はなくなったんだな。いやぁー、最後に俺の活躍っぷりを見せられなくて残念だぜ。惜しい惜しい」
「あれだけ暴れておいて何を言うか。そもそもお主の不注意のせいでこんなことに…」
「はい、すいませんでした。ま、まぁホラ。体を張った調査ってことでここはひとつ」
「まったくこいつは。減らず口だけはたしかに村に一番のようだな」
 隕石のカケラを持ち帰ることはできなかった。しかし、それ以上に貴重な情報をフリードの体を張った調査もとい不注意から知ることができた。予言の答え、そして隕石の正体と奇妙な現象の原因まで突き止めてしまったのだから、長老への報告としてはこれ以上ない成果だろう。さらに偶然とはいえ、その原因の除去にまで成功している。調査は大成功と言ってよかった。
 もしかしたら次期長老の座とか約束されちゃったりして。なんて淡い期待を抱きながら、ようやくフリードたちはカルスト村への帰路に着いたのだった。


五番星 落星

Black Drop6
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