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ブラックボックス1

最終更新:2016年10月08日 00:54

jelly

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第1章「Escape from Heyve's laboratory(ガンガンいこうぜ)」


『始めまして、ゲンダー。私がメイヴです』
 そんな文章が突然、目の前の空中に浮かんで現れた。いや、よく見ると空中にホログラムモニターが出力されているのだ。その光を発している元を辿ると視線が行き着くのは、この秘密の部屋の奥に鎮座する謎の筒状の機械だ。
 筒状の機械の背丈はゲンダーよりずっと高い。サボテン型ロボットのゲンダーは1メートル程度の体高を持っており、開発者のヘイヴと並ぶとちょうど見上げた位置に彼の肩がある具合だった。対して、この目の前にあるこいつは2メートル近いと見える。まるで柱のようだ。今は少し離れた位置から眺めているので、その全貌を拝むことができるが、隣に立てば顔が見えないかもしれない。
 そう、その筒状の機械にも顔があった。先ほど破壊したリミットくんを名乗る奇妙な儚い機械とそっくりの顔をしていた。なんとも憎たらしいスマイルである。
「おまえがメイヴか。なぜオレを知ってる?」
 すると、目の前に浮かんでいた文字が消えて、ホログラムモニターに新たな文字列が表れる。それがゲンダーの問いへの返答だった。
『私はヘイヴに作られたシステムです。そして最初にこの部屋に入ってきた者をキョクゲンダーであると認識するように設定されていました。おそらくヘイヴは、彼自身が私を目覚めさせることはないと知っていたのでしょう』
「そうダったのか。それにしても、変わった会話のしかたをするやつダな。なぜ文字による会話なんダ」
『私にはアラート音のような単純な音を発するだけの音声出力機能しか備わっていません。あるいは、録音されたものを再生できる程度です。私の中にあるデータベースに保存された音声データを合成して、擬似的に発声することもできなくはありませんが、ひどくぎこちないものになってしまうので、私はそれを好みません』
「機械が好みを語るとは面白いやつダ。でも文字ダと面倒じゃないか。ちょっとその擬似音声とやら、やってみてくれ」
『面倒? そうでしょうか。音として流れて消えてしまう声よりも、文字として記録に残る上に、後から遡って読み返すことのできる文章のほうが、情報伝達としてもデータ管理の面からみても有用だと思いますが』
「いいからやってみてくれよ。口答えする機械なんて初めてみたぞ」
『急かす機械も初めて見ましたけどね』
 皮肉まで表示しながら、このポテンシャル高い筒状の機械改めメイヴから、キュルキュルと昔懐かしいカセットテープを巻き取るような音や、ディスクを読み取るような音が聴こえ始める。そしてずいぶんもったいぶった準備を終えてから、メイヴから合成音声が流れ始めた。
「ソレテ゛ハケ゛ンタ゛ーカイワヲツツ゛ケマシヨウカ」
 なんの抑揚もない棒読みのような発音で、さらにひどく聞き取りづらいものだった。
「オレが悪かった。さっきのでいい」
『なんでしたらモールス信号での会話も可能ですが?』
「余計に面倒じゃないか。遠慮する」
『ではこのまま遠隔モニタの文字での会話を続けましょう』
 さて、とメイヴは切り出した。ホログラムモニターのことをメイヴは遠隔モニタと呼んだが、そこに表示される言葉はどれも会話調で、まるで本当に会話しているように感じられる。感覚としてはメールでやりとりしているようなものに近いだろうか。
 機械であるメイヴには感情のようなものは備わっていないはずだが、皮肉や冗談まで交えてかなり口が達者な様子だ。少なくとも箇条書きや説明調でないのは、ゲンダーにとっても理解しやすくてありがたかった。
 遠隔モニタに表示される話は、ホログローブにあったヘイヴの遺言で見たものと同じ。いや、それ以上の情報まで含んでいる。
「なになに……マキナという国のスヴェン? そいつに会えばいいのか」
『スヴェン博士はヘイヴの古い研究仲間のようですね。おそらくヘイヴにとって信頼のおける人物なのでしょう』
 遺言の中では彼を危険から守るためだといって敢えて名前は明かしていなかった。必要な情報はあらかじめメイヴの中のデータベースに保存してあるのだろう。そういえばヘイヴの研究資料もすべてメイヴの中にあると言っていた。その資料が重要だからこそ、ゲンダーはメイヴを守り、そしてスヴェン博士のもとへと送り届けなければならないのだ。
 さらにメイヴはゲンダーの知らないことを話した。
『ではさっそく出発しましょう。研究所が爆破されるまで、もう2分ぐらいしかありません』
「え……? ちょ、ちょっと待て! 爆破って、おまえ。な、何を言ってるんダ!?」
『私の持つデータ以外の研究資料をすべて破棄するために、この研究所は爆破されます。ヘイヴから何も聞いていないのですか?』
「そういうことはもっと早く言え!」
 ゲンダーが怒鳴ると同時に、室内は警告灯の赤色に染まり、激しいアラーム音と警告メッセージが鳴り響く。
【封鎖プログラムが作動しました。80秒後に外部との連絡通路を全て爆破します。速やかに脱出して下さい。繰り返します。封鎖プログラムが作動しました……】
「80!? おい警報、おまえもそういうのはもっと早く言え!」
 研究所の人間はヘイヴ自身しかいないから、周知させる必要がなかったのでしょう。などとメイヴは悠長に解説している。爆破まで時間がないというのに、ずいぶんと落ち着いたものだ。一方でゲンダーは気も狂わんばかりに慌てふためくばかりで。
「ど、ど、どうすればいいんダ。このままじゃオレ、何の活躍もしないまま、ヘイヴの最後の頼みも果たせないままくず鉄になってしまう。というかヘイヴは!? ここが爆破されたらヘイヴは…」
『ああ、その点なら心配はいりませんよ。爆破されるのは外部への通路だけです。時間が来ればすべての出口が破壊されますが、研究所内に被害は出ません。ヘイヴ自身は無事ですし、万が一侵入者が研究資料を持ち出そうとしていたとしても、生き埋めにして絶対に持ち出させない。いやぁ、よくできた封鎖プログラムですねぇ』
「関心してる場合か! 閉じ込められたらやっぱりオシマイじゃないか」
 この研究所は山をくり抜いた地下に作られている。この封鎖プログラムは外部との連絡を完全に遮断し、研究所を地中深くに埋もれさせるプログラムだ。
 外部からの侵入はもちろん、内部からの脱出も不可能。研究所の管理システムの破壊により、電波や物理的な干渉もすべてシャットアウトされる。研究資料を守るというその一点に関しては完璧な封鎖だった。
「ま、間に合うのか!?」
 この秘密の部屋は研究所の最下層の最も奥まった場所にある。地上への出口に80秒以内にたどり着くことができないのだけは確かだ。いや、もう1分も残っていないかもしれない。となれば、他の出口から脱出するしかないが、そんなものあっただろうか。
『ご安心を。こんなこともあろうかと、ここからさらに奥の部屋に脱出用のシャトルが用意されています』
「よかった、地獄に仏か。でも時間はもうないんダろう。急ごう!」
『はい。ではゲンダー、案内しますので私を運んでください』
「え!? まさか動けないのか」
 柱のような姿のメイヴには脚がついていない。少なくとも歩けるような構造ではなさそうだ。手も足も出ないとはこのことか。
 慌ててメイヴの胴体を押してみる。2メートル近い金属の塊なので、その重量はなかなかのもの。同じく機械のゲンダーと言えども、押して運ぶのは難しかった。それにこの柱のような体型では下手をすればバランスを崩して倒れてしまうかもしれない。そうなったら、起こせられるか自信がない。
 追い討ちをかけるように警報は【残り30秒】を告げた。
「うわああああ! もうダメか!!」
 ゲンダーが頭を抱えたそのとき、メイヴの底面の台座から車輪が、上部の頭にあたる位置からは一本のアームが飛び出した。
『冗談ですよ。さあ、脱出しましょうか』
 なんと、メイヴは自走することができた。アームでゲンダーを摘み上げると、そのまま時速30キロ程度の速度で脱出用シャトルへと走り始める。大した速度ではないが、それでもゲンダーが足で走るよりは速かった。
「お。おお、おまえ!! もうちょっと時と場合を選べ」
『ふむ。おかしいですねぇ…。データベースによると、緊張した相手にはちょっとしたユーモアとジョークで和ませるのが有効だとあったのですが。情報が間違っていたのでしょうか』
「ダぁぁぁぁッ! これダから機械ってやつは!!」
 メイヴの部屋から少し走って扉をひとつくぐると、すぐに今までとは違う雰囲気の場所に出た。様々なスイッチや計器が並ぶこの部屋はいかにも操縦室といった趣きで、メイヴによると、すでにここがシャトルのコックピットなのだそうだ。地下研究所の隣にシャトルそのものが埋め込まれており、緊急時にはすぐに乗り込めるようになっているのだとか。
 メイヴは慣れた様子でシャトルの発射準備を始めた。操縦方法もちゃんとデータベースに入っているらしい。
 頭上から飛び出しているアームでいくつかのスイッチを入れ、レバーを引いて、計器を確認すると何かの数値を入力して調整していく。アームはワイヤーの先に白い手袋を装着したようなデザインで、思ったよりも繊細な動きができるようだ。
【10、9、8…】
 容赦なくカウントダウンを進める警報に焦りを感じながら、しかしゲンダーは準備を見守ることしかできない。
「おい、大丈夫なのか」
『これでよし。まず最初に起こる爆発はこのシャトルのブースターなんですよ。爆破と発射を兼ねてるんです。なんとも合理的ですね。そして爆破が始まれば、地上にある山の一部が崩れて隙間ができます。発射されたシャトルはその隙間を抜けて地下から飛び出します。あとは爆破の衝撃で出てきた穴が崩れて埋まり、私たちは見事に脱出。研究所は完全に封鎖といった具合ですね。さすがヘイヴの考えることは完璧です』
「そんな都合よくいくもんかよ。もし隙間が埋まらなかったら? いや、それよりもうまく隙間ができなかったら、オレたち結局閉じ込められるんじゃないか!」
『大丈夫。私を作ったのはヘイヴなんですから。ヘイヴを信じてください。そして…』
【3、2、1…】

『私を信じてください』

 カウントがゼロを告げる。と、同時に背面から身体の芯をゆさぶるような激しい振動と轟音が襲ってくる。
 今、ゲンダーは上を向いたシャトルのコックピットに腰をかけて天を仰いだ状態だ。地面に向かって引っ張られるような強い圧力を感じ、背中が座席に押し付けられる。重力と振動に翻弄されて、もう何が起こっているのかわからなかった。
 意識が遠のきかけたそのとき、ようやく揺れは収まって、座席に押し付けられるような圧力も感じなくなった。さっきまでの滅茶苦茶な衝撃が嘘のように静まり返っていた。
『もう目を開けても大丈夫ですよ、ゲンダー。無事、脱出成功しました』
 いつの間にか両腕で顔を覆い隠していたゲンダーは、恐る恐る手を退けてみた。すると目前には青空のパノラマが広がっているではないか。操縦室の計器類はどこへやらだ。
「これは…」
『驚きましたか。私の遠隔モニタを室内に展開して外の様子を映し出してみました。まるで空を飛んでいるみたいでしょう? まあ、実際シャトルで飛んでいるんですけどね。レーダーだけじゃ味気ないと思いまして』
 どうやら遠隔モニタは、メイヴを中心としてある程度の範囲内に複数展開させることができるらしい。シャトルの外に遠隔モニタを展開し、このコックピットに別の遠隔モニタを展開し、外のモニタがキャッチした映像がここに映し出されている。表示できるのは文字だけではないようだ。
 初めて見る本物の空の景色。初めて見る研究所の外の世界。
 静かに流れ行く雲に、西の空へと傾き始めた柔らかい太陽の日差し。
 さっきまでの慌ただしさとは打って変わって、とても穏やかな情景だった。
 ゲンダーは思わず安堵の息を漏らした。
「よかった。あとはこのままゆっくりマキナに着くのを待てばいいんダな」
『ええ、そうですね。ちゃんと着くといいですね』
「なんダよ。その希望的観測みたいな言い方は」
『実はですねぇ。このシャトル、一度発射されると一切の操縦を受け付けないようになっているみたいなんです。シャトルが発射されると目的地に向かって真っ直ぐに向かいますが、途中で目的地が変更されると重大なエラーが発生するため、アクセスがブロックされるようになっているみたいですね』
「で?」
『方角と座標は正しくセットしました。ただ……時間が足りなかったので、途中経路の障害のシミュレートを省略しました。ですから、もし何かトラブルがあれば正しく到着しない可能性もあります。ゲンダーがもう少し早く私にたどり着いてくれていればよかったのですが』
「くだらない冗談を言ってたおまえが悪い。でもあくまで可能性に過ぎないんダろ? 滅多なことは起きないさ。たぶん」
『ですが、ゲンダー。たとえ万にひとつでも億にひとつだろうと、可能性があるならリスクはあります。0%でないのであれば、どんなに可能性が低くても有事に備える必要があります』
「融通の利かんやつダ。まあ好きにしてくれ。オレはちょっと休むから、マキナに着いたら起こしてくれ」
 返答も待たずにゲンダーは操縦席の上にごろんと横になると、スリープモードに移行した。その隣でメイヴはもうひとつ別の遠隔モニタを展開させると、さっそく起こり得るあらゆる事態のシミュレートを始めた。


 次にゲンダーが目を覚ましたのは、陽が西の空へ沈みかけた夕暮れ時だった。
 正面には赤い空のパノラマが広がり、すぐ隣には青い画面を背景にたくさんの数字が流れては消えていく。
「0,0,0,1,0,1,1,0,0,1,0,0,1,1,1……ふむ。なんダこりゃ、さっぱりわからん。メイヴ、どんな感じダ?」
『正直に言うと苦戦しています。何しろあらゆるケースが想定されますからね』
「へぇ。例えばどんな?」
『現時点でわかっている範囲ですと……。機器の故障で墜落する可能性0.00003% バードストライクに遭う可能性0.0004% 嵐に巻き込まれる可能性0.000177% UFOにさらわれる可能性0.0000000000051% 突如目の前にブラックホールが発生する可能性0.0000000000000…』
「なんか全然大丈夫そうに思えてきた」
『じゃあ高めのやつで。マキナの隣国フィーティンの防衛線にひっかかって撃墜される可能性が20%』
「怖いこと言うなよ。心配しすぎダとオレは思うけどな。それ、あとどれくらいかかるんダよ」
『シミュレート完了までの予想時間は残り1339207秒です』
「秒じゃわからん」
『約15.5日です』
「計算が終わる前に着いちまうダろ!」
 それでもメイヴは計算を続けたが、目の前に広がる穏やかな景色から、大変な事態が起こるなどとはゲンダーには到底思えなかった。
 沈む夕日を背景に、ちょうどの西の方角の海上に影が見え始めた。
 島だ。遠くに島が見えてきた。
 あれがマキナ国があるという大樹大陸のはず。目印となる大樹は……あった。
 その大陸の中心あたりから巨大な大樹が天に向かって延びていた。樹というより、まるで塔のようなそれは、夕日を縦に真っ二つに割っている。てっぺんは雲を突き抜けてさらに上にあるらしく、ここからはほとんど幹の部分しか見えない。
 大樹にはこれまた巨大な蔦が絡まっている。蔦は雲を突き抜けてはいなかったが、幹の見える部分のほとんど上まで巻き付いている。もしもあれがもう少し成長したなら、あれを登って雲の上まで歩いて行けるんじゃないか……そう思った。
 シャトルは大樹大陸にどんどん近付いていく。
 そして大樹もどんどんシャトルに近づいてきた。
「あれ…? このまま行くと大樹とぶつからないか」
『大樹にぶつかる確率の計算を優先します………………はい、完了しました。大樹にぶつかる可能性は100%です』
「それ計算する必要あったか!? おい、なんとかならないのか!」
『確率が100%である以上、どうあがいてもこの結果は変わりませんよ。とっとと諦めて神にでも祈っててください』
 次の瞬間、シャトルを激しい衝撃が襲った。コックピットではあちこちの機器から火花が飛び散った。
 シャトルはメイヴの計算通り大樹に激突したのである。失速したシャトルは急激に高度を下げ始めた。
 そして二度目の衝撃。ついにシャトルは墜落。その反動でゲンダーはシャトルから投げ出されていた。自分は機械だから頑丈だと油断してシートベルトを締めていなかったのがまずかった。大樹のふもとの草原に転げ落ちて、何度も転がって木や岩にぶつかりながらようやく止まった。
「危ねえ。機械じゃなかったら死んでたぜ……。っと、そうダ。メイヴは!?」
 慌ててメイヴの姿を捜した。ヘイヴの遺言はメイヴを守ること。メイヴがいなくなってしまえば目的は失敗したも同然だ。
 大樹のすぐそばには墜落したシャトルの残骸が散らばっていた。胴体は二つに折れ、先端は地面に突き刺さり、もう半分は地面に叩きつけられて大破していた。
 ゲンダーは必死にメイヴを呼びながら残骸と化した破片をどけていくが、メイヴらしきものは一向に見つからない。
「メイヴ! メイヴ!? うそだろ…。まだ始まったばかりなのに。ヘイヴとの最後の約束なのに…。メイヴがいなくなってしまったら、これからオレはどうすればいいんダ……」
 まさかこんなことになってしまうなんて。こんなことならメイヴの忠告をしっかり聞いておくべきだった。メイヴを信じていれば、何か手伝えることがあったかもしれない。でもそんなことを考えてももう遅い。
 後悔の想いばかりが湧き上がってきて、落ち着いてこれからのことを考えることもできなかった。
 ゲンダーは頭を抱え込んでその場に屈み込んだ。すると、
『私を信じてください。……と言いましたよね?』
 突然目の前に文字が浮かび上がった。メイヴだ。
「よかった! 無事ダったのか!」
 メイヴの姿を探して地面に突き刺さったシャトルの周りをうろうろしていると、頭上から音が聞こえてきた。ブーンと扇風機の羽が回るような音だ。
 見上げるとメイヴが空から降りてくる。頭にはアームの代わりにプロペラのようなものがついていて、ヘリコプターみたいにそれを回転させて落下速度を緩めているようだ。
『あまりにもゲンダーが心配なので、天国から舞い戻ってきてあげましたよ』
「ば、馬鹿やろう。笑えない冗談はやめろって言ってんダろ」
 そのまま静かに着地するとプロペラはメイヴの中に格納されて、代わりにさっきまでのアームが再び顔を出した。
『こんなこともあろうかと、私には滞空システムが備えられているのでした』
 メイヴもまたシャトルが大樹に激突した際に、その衝撃で破損した隙間から空中に投げ出されていたという。そこでこの滞空システムの出番だった。自由に飛べるわけではなさそうだが、あの重そうなメイヴの胴体を滞空させるというのだから、ずいぶんパワーのあるプロペラだ。
「なんでもありダな、おまえ。便利そうでちょっと羨ましいぞ」
『欲しかったらゲンダーにもつけてあげますよ。ちょうど材料も散らばってることですし』
「そんなかっこ悪いのは遠慮しとこう。ガラクタ製はな…」
『リサイクルと言って欲しいですねぇ。ごみ処理も同時にできて一石二鳥なんですから』
「やっぱりごみじゃないか! そんなことより大樹大陸には着いたんダ。マキナを目指そうぜ」
 話をそらして遠隔モニタに大樹大陸の地図を表示してもらうと、どうやらここはフィーティンという国のはずれにあたるらしい。大樹というよく目立つ目印があったので、現在位置はすぐにわかった。
 大樹大陸には軍事国家フィーティン。研究大国ヴェルスタンド。機械都市マキナ。以上の3つの国があり、ゲンダーたちが目指す機械の国マキナは大陸の北東に位置している。大樹がだいたい大陸の中央あたりにあるので、ここからだと北のヴェルスタンドまたは南のフィーティンを経由してマキナへと向かうことになる。
『軍事国家のフィーティンは厄介かもしれませんね。私たちは正規のルートで入国したわけではないので、不法入国と判断されても仕方がありません。まあ、ヴェルスタンドでも同じですけどね』
「じゃあどうするんダ」
『機械なので法に問われないとは思いますが……ちょうどマキナが機械文化の盛んな国のようですから、マキナから来た機械のふりをして、フィーティンを経由して来ましたって風を装いながらヴェルスタンドに入国して、さりげなくうやむやにしてしまうのがいいでしょう。マネーロンダリングならぬ、これは何ロンダリングって言うんでしょうね』
「なんでもいいダリング。ええと、それじゃあ北のヴェルスタンドからマキナへのルートになるのか」
 北東に向かえばいずれはマキナに着くだろう。しかし大陸の半分を渡ることになるため、地図で見た限りではけっこう距離がありそうだった。
『せめて乗り物があれば。私にも某ロボットみたいにトランスフォームな機能でもあればよかったんですが』
「なんダそりゃ」
『知らないなら別にいいです……おや、あれは?』
 メイヴが指差す先には、一枚のドアがあった。
 こんな大樹以外に何もないような草原の中に、ぽつんと一枚。ドアだけがそこに立って。


第1章 了

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