atwiki-logo
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • このページの操作履歴
    • このウィキのページ操作履歴
  • ページ一覧
    • ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このウィキの更新情報RSS
    • このウィキ新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡(不具合、障害など)
ページ検索 メニュー
TPC@wiki
  • 広告なしオファー
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
広告非表示(β版)
ページ一覧
TPC@wiki
  • 広告なしオファー
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
ページ一覧
TPC@wiki
広告非表示 広告非表示(β)版 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー
  • 新規作成
  • 編集する
  • 登録/ログイン
  • 管理メニュー
管理メニュー
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • このページの操作履歴
    • このウィキのページ操作履歴
  • ページ一覧
    • このウィキの全ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ一覧(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このwikiの更新情報RSS
    • このwikiの新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡する(不具合、障害など)
  • atwiki
  • TPC@wiki
  • ブラックボックス17

ブラックボックス17

最終更新:2017年02月28日 23:31

tpc-document

- view
メンバー限定 登録/ログイン

第17章「Spirit of Brave(精神世界での戦い)」



 ゲーヒルン中枢タワーのところどころ崩れた階段を、ガイストは最上階を目指して走っていた。
 上階で起こった爆発騒ぎでずいぶんと時間を無駄にしてしまった。天井の崩落で同行していたメイヴとはぐれてしまい、タワーのスタッフと間違われて一度は守衛に半ば強制的に避難させられてしまった。騒ぎの混乱に乗じて侵入者だとばれずに済んだのは幸いだが、かなりの遅れをとってしまったのは大きな痛手だ。
 メイヴはもう先に飛び出していったゲンダーに追いついた頃だろうか。最上階の執務室に大統領がいるはずだ。避難した人々の中に奴の顔がなかったので、まだ上にいることは間違いない。もしかしたら、二人はすでに大統領と対峙しているかもしれない。
「僕も急がなくては」
 急ぎ足に階段を駆け上がるが、身体が言うことを聞かない。研究職ゆえの運動不足と体力のなさを実感するとともに、もう自分も若者と言える年齢は過ぎてしまったのかと痛感する。爆発の影響でエレベータが止まってしまってさえいなければ、こんな思いをすることもなかったというのに。
 息を切らしながらようやく最上階まで上り詰めると、前方通路の奥【大統領執務室】の扉が開け放たれている。やはりゲンダーたちはすでにその先にいるようだ。
 呼吸を整えてもうひと踏ん張り、通路を駆け抜けて執務室へ向かおうとしたそのとき、
「グメーっ! グメーっ!!」
 執務室の中から血相を変えてグメーが飛び出してきた。
「グメー? 二人はどうしたんだ」
「グッメッグゥメー! メッ。グメェ~っ!」
「ふむ、ふむふむ、なるほど。さっぱり分からん」
 しかし、なにやら大変なことが起こったということだけはグメーの様子からわかった。
 大統領は狡猾な男だ。騒ぎがあったにも関わらず理由もなく執務室に篭もっているようなことはしない。何か考えがあってのことだろう。あるいは侵入に気付いて罠を張っているという可能性もある。
「あるいは二人は大統領の策に嵌ってしまったか。なら僕がなんとかしなければ。行こう、グメー」
「グメーっ」
 慌てるグメーをなだめると、ガイストは執務室へと向かっていった。


 意識を取り戻すと目の前に一人の男の姿があった。
 明かりのないその空間は薄暗く、影しか見えない男の正体ははっきりとしない。
 よく見ると男は何か機械を弄っているようだった。横倒しになったドラム缶のような胴体に直方体の台座が底面に取り付けられている。
 知っている。ゲンダーはその機械のことをよく知っている。
 誰かがメイヴに手を加えている。その事実がゲンダーの朦朧とした意識を覚醒させた。
「おい、おまえメイヴに何してるんダ!」
 咄嗟に男に向かって叫んだ。その声に振り返った男の表情は驚きに染まっていた。
「馬鹿な。貴様、なぜ意識がある? まさか私の精神世界に侵入を許したなどとは!」
 その隙を逃さずゲンダーは相手に飛びかかった。
 完璧に虚を突いたはずだった。しかし既にそこに姿はなく、ゲンダーの不意打ちは虚しく空を切る。男の姿はメイヴごと消えてしまい、次の瞬間にはすでに別の場所にいた。
「そもそも機械に精神力が備わっていることが間違いなのだ」
 その声のする方へ顔を向ける。男は何事かを呟いていて、こちらを見ようともしていない。
 戸惑いながらもその男に向けて無数の衝撃波を放つ。なおも男はこちらを見ていない。そして攻撃が男に命中すると思ったときにはすでに男の姿はそこにはなく、別の方向から声が聞こえてきた。今度はもうしっかりとゲンダーを両目に捉えている。
「ど、どうなってんダ!?」
「ここは私の世界だ。私の思い通りになるのは当然のこと。だからこそ、君のようなイレギュラーは消しておかねばならん」
 男がゲンダーを指さし、消えろとつぶやくと、その直後、凄まじい風圧がゲンダーを襲った。その暴風に肉体だけでなく、意識すら吹き飛ばされそうになるのを必死に堪える。
「抵抗はやめたまえ。時間の無駄だ」
「お、おまえは何者ダ!?」
 男は呆れた様子で答えた。
「なんだ。貴様は標的の顔も知らずに忍び込んだのか? 私が何も気付いていないとでも思っていたのかね。フリードリヒから報告を受けている。それに貴様の精神を読ませてもらったぞ。貴様らのことは、すべてお見通しだ」
「ということは、おまえが大統領!」
「今頃気付くとはどこまでお粗末な奴だ。さすがは『駄作』のゲンダーだな」
「ぐッ……こ、こいつ! おい、メイヴから離れろよ! メイヴをどうするつもりダ」
「貴様の精神を読んで、これがヘイヴの黒石の情報を持っていることまではわかった。その情報が私にはどうしても必要なのだ。しかし、どうしてもこいつの精神は読めなくてな。まあ機械の貴様の精神が読めたことがそもそも驚きなのだが……とにかく精神が読めないなら仕方がない。物理的に分解して解析に回してやるだけのこと」
「分解!? そんなことさせるか! そういうことならオレも容赦しないぞ。食らえ、汁一本!!」
 フリードリヒを部屋ごと吹き飛ばして跡形もなく消滅させてしまったあの大技を躊躇なく放つ。
 しかし大統領は、その1000倍の一撃を片手でいとも容易く握りつぶして消し去って見せた。
「そんな、嘘ダろ……!?」
「無駄だというのがわからんのかね」
 そう言うと同時に再び激しい風圧がゲンダーを襲う。
「理解の悪い奴だ。ここは私の精神世界。すべての現象が私次第。だから消えろと念じれば、貴様など簡単に消し去ることができるのだ。身をもって味わわなければ理解できないのか?」
 その言葉と共に風圧も強くなる。このままでは吹き飛ばされてしまうのも時間の問題だ。
 吹き飛ばされてしまえばその後どこへ行くのか。そんなことを思うゲンダーの視界に横たわるメイヴの姿が入る。
(このまま飛ばされてしまえば、きっとそこにはメイヴはいない。このままあいつの好きなようにやらせてしまえば、オレはヘイヴに合わせる顔がない。そうダ、誓ったじゃないか。オレが護るんダって。ヘイヴが還ってくるの日まで。ダからオレが……オレが……!)
「オレが、メイヴを護るんダァァーーッ!!」
 己の決意を叫んだそのとき、身体の内から力が湧いてくるのをゲンダーは感じた。闘志がみなぎる。
 襲い掛かる風がかき消され、威圧するように今度はゲンダーから大統領に向かって風圧が発生した。
「ぬぅ……なぜ思い通りにならん? 私は大統領だぞ。命令をきかんかァ!!」
 再び大統領の体から衝撃波が発せられる。しかし今のゲンダーにはそよ風のようにしか感じられない。
「おまえが大統領ダ? それがどうした。大統領なら何をしてもいいのか? ふざけるな!!」
 態勢を持ち直して反抗的な表情を浮かべるゲンダーに対して、大統領の顔には苛立ちの色が浮かぶ。
「この世界で私の思い通りにならないことは何一つ無い。貴様以外はなァ!!」
「ダったらどうする」
「私が直接、この手で破壊してやる」
 その言葉を皮切りに、二人の闘いが始まった。


 メイヴは混乱していた。
 どうも意識を失っていたらしい。気がつくと薄暗い空間でゲンダーと男が対峙していた。二人の会話によれば、どうもあの男が大統領らしい。しかし、同時に大統領執務室で倒れているゲンダーの姿も意識の内に入ってくる。そちらは動くものがないためか、何も音は聞こえてこない。
(むむ。これはまるで夢と現実を同時に見ているようです)
 どうやらメイヴには精神世界と現実世界の光景を同時に認識することができたが、しかし身体は全く動かなかった。両方の世界を認識していながら、そのどちらにも干渉できないらしい。
(見ているだけしかできないというのですか)
 闘いは既に始まっていた。
 ゲンダーが大統領に向けて牽制の汁千本を放つ。しかし大統領はまるで意に介することもなくゲンダーの懐に飛び込み接近戦を仕掛けた。大統領の繰り出した拳を針だらけの腕で次々と払いのける。しかし大統領は針山の装甲もお構なしに連打を浴びせてくる。
 いつの間にか大統領の上半身は鍛え上げられた鋼のような肉体へと変わっており、鋼鉄の拳をこれでもかと言わんばかりに打ち込んでくる。「この世界で思い通りにならないことはない」というのは虚勢やハッタリなどではなく、実際に精神世界においては姿さえも自由自在らしい。
 接近戦では分が悪いと見たゲンダーは一度距離を取り、汁一本を放った。渾身の一撃を大統領は片手を上げ、虫でも払うかの如く易々と叩き落としてしまった。
「言ったはずだ。この世界で私の思い通りにならないことはないと。私はこの世界で最強の存在なのだ!」
 汁一本を放った腕は無事。精神世界では反動によるダメージはないらしい。それでも片手で振り払われたことはゲンダーに、そしてメイヴにも大きなショックを与えた。
(今の攻撃を凌がれては勝ち目は……)
 全力のゲンダーに対して、未だ余裕のある大統領。どちらが優位かは考えるまでもなかった。
 そのときもう片方の視界に動きが生じる。視界の端に何者の姿が映った。ガイストとグメーシスが執務室に現れたのだ。
「こ、これは!?」
 倒れたゲンダーとメイヴを見つけたガイストは驚嘆の声を上げた。
「ふ、二人ともやられてしまったのか! まさかメイヴまで…」
「グメー!」
 顔を上げると、向かいのデスクには大統領が俯いた姿勢で沈黙している。
「ぴくりとも動かない。死んでいる、のか? 一体何がどうなっているんだ」
 困惑するガイストになんとか状況を知らせようと、メイヴは遠隔モニタの展開を試みた。
 しかしどうもうまくいかない。辛うじてメイヴ本体の液晶パネルにメッセージを表示させることだけはできたが、
『……ガ……ト…………精………で……ダ……………で…!』
 ノイズだらけの文章を映し出すのが精一杯だった。
「グメぇっ!」
「ん? これは……メイヴ、無事なのか! しかしこれじゃよくわからないな。見たところ故障はないようだが、何か膨大な処理に手間取っているような……」
「グメ?」
「こういうときは再起動するのが早いが、そこまでメイヴの扱いを熟知しているわけじゃない。一体どうすれば…」
 少し悩んだ挙句、ガツンと一発。うっかり叩いてしまった。
「強い衝撃を与えることで瞬間的に無理やり処理を停止させてメイヴにリカバリーする隙を……って、さすがにこれはないよなぁ。我ながら科学者としてあるまじき…」
 グメーシスも呆れたような目でガイストを見ている。
『ところがどっこい。その一瞬が命綱です』
 ガイストがショックを受けているうちにメイヴが復活し状況を説明した。
「精神世界?」
『そういうわけでゲンダーがピンチなのです』
「一体どういうメカニズムなんだ。精神体技術の応用なのか? ともかく、おそらくゲンダーたちは肉体を超えた存在、つまり精神体としてその精神世界とやらで戦っているのだろう。そういった勝負では得てして想いが強いほうが勝つ。はっきり言って大統領は馬鹿だからな。これと信じたものは疑わないから、ああいった世界では馬鹿は強い」
 ガイストはまだなにか呟いているが、もうメイヴには聞こえていなかった。
 思考が冴え渡る。そうか、思い違いをしていた。
(大統領が最強だから思い通りに出来るのではなく、思ったとおりになるから最強というわけですか)
 大統領は自らが最強の存在であると信じている。その結果、最強といえる強さを手にした。しかし、上には上があるということを思い知らせてやればそこに隙ができる。
『ガイスト、お願いがあります』
 何としてもこれをゲンダーに伝えなければ。たとえどんな手段を使ったとしても。
 メイヴはゲンダーを助ける奇策を説明した。かなり無茶が過ぎる方法だったが、メイヴでなければできない芸当でもあった。そしてそれがゲンダーを助けられる唯一の手段だった。
「正気なのか!? 確かにそれが可能なら助けになるだろうが……」
『勝利につながるでしょう。なぜなら、思い込みが激しいという点ではゲンダーも馬鹿なのですから』
「そういうメイヴも相当な馬鹿なようだな。どうなっても知らないぞ」
『もとより覚悟の上です』


 精神世界ではゲンダーは苦戦を強いられていた。
「ぐッ……つ、強い……!」
「ふむ、それでおしまいか。さっきまでの威勢はどうした」
 膝をつくゲンダーに、まるで疲れの色を見せない大統領がゆっくりと近づく。
 先程から防戦一方でなんとか攻撃をしのいでいる状態だ。いくら攻撃しても大統領にはかすりもしない。一方であちらからの攻撃は、こちらの動きが予知されているのではと思うほど、どれだけ回避に専念しても確実に狙いを定めてくる。
(そういえば精神を読めると言ってたな。まさかオレの行動は全部読まれてるのか? ズルいダろ、そんなの…)
 もはやここまでか。そう思うほど、力がどんどん抜けていくような気がする。これではやられるのも時間の問題だ。
「ほう、苦しそうだな。じっとしているがいい。今ラクにしてやろう」
 大統領の手がゲンダーに向かって伸びる。
 身体に力が入らない。ゲンダーは動けない。
(万事休す、か)
「グメーーっ!」
 そのとき虚空から何かが飛び出し、大統領に飛びかかった。
「グメーシスだと! どこから現れた!?」
 精神体を基にして構成されているグメーシスは精神世界に進入することが可能。グメーは大統領にまとわりつくように体当たりを繰り返すが、大統領も簡単には当たらない。しかしそれが時間稼ぎとなって、ゲンダーに反撃の機会を与えた。
「ダァーッ!!」
 汁千本……いや、力が思うように入らず汁十本程度にも満たない威力のものではあったが、苦し紛れの反撃は大統領の顔に命中した。
 精神世界では無敵の大統領でも、ただの人間であることには変わりない。顔への攻撃は反射的に小さな恐怖とともに相手を怯ませる効果がある。すべてが思い通りになる世界では、何も利点だけが思い通りになるわけではない。思い込み補正が具現化して反映される精神世界では、小さな恐怖はより大きな恐怖へ。怯みはより大きなものとして大統領を辟易させた。
「うわっ! 何だ? 目が、目がぁッ!!」
 その隙にメイヴはようやくゲンダーに言葉を伝えることができた。
『ゲンダー。見えていますか?』
「メイヴ! 無事か、よかった」
『だいたいの状況は把握しています。大統領の支配が弱まっている隙に、やっと介入することができました』
「ダが、オレの最強の一撃もあいつには通じなかった。もう打つ手が……」
『時間がありません。手短に言います。できればこの手段は使いたくなかったのですが……今から私はゲンダーをハッキングして一時的にあらゆるリミッターを解除、機体性能の限界を突破させます。そうすれば大統領など楽勝でしょう』
「本当にそんな劇的なパワーアップが可能なのか」
『本来なら、ゲンダーにも私にもリスクが大きすぎます。機体からのタスク処理が膨大になり過ぎてCPU(=精神)がパンクしてしまうでしょう。しかし、そこは精神世界。そこでは精神の性能は現実世界の何倍にでもなります。その状態なら限界を超えた処理も捌き切れるはずです』
「オレはいい。でもメイヴは大丈夫なのか」
『また私が暴走しないという保証はありません。しかし今回は、今回に限っては必ず制御しきって見せます』
「おいおい、本当に大丈夫なのか?」
 一瞬の間。
『ゲンダー、私を信じてください』
 文字だけだがメイヴの想いはしっかりと伝わってくる。自分なら……ゲンダーならできると確信しているからこそ、危険を冒してまでの作戦を提案してきたのだ。メイヴは無茶なことをするやつだが、仲間に無茶を強いるようなやつではないことをゲンダーはよく知っている。
 なにより、メイヴは自分を信じてくれているのだ。ならば、それに応える言葉はもう決まっている。
「わかった。おまえを信じる。やってくれ!」
『合点承知ですよ!』
 遠隔モニタに大量の文字列が凄まじいスピードで流れていく。そしてまもなく表示された一文。

 - Complete -

『さあ、こちらの準備は整いました。あとはゲンダー次第です』
「さほど何も変わってないように感じるが……これで限界突破したのか」
『今のあなたは最強です。自分を信じてください』

「ええい、うっとうしい蝿めが。喝ッ!」
「グメぇっ……」
 大統領の手から閃光が放たれ、グメーは避けるすべもなく弾き飛ばされてしまった。
「ふん、手こずらせおって。無駄な足掻きだ。いい加減あきらめてはどうだね」
 再び止めを刺すべくゲンダーを見る。と、つい先程とは打って変わって異様な気配に包まれていた。
「オレは最強ダ……」
 この短時間に何があったのか、思わず大統領はその闘気に押されていた。まるで闘気自身が目に見えているほど……
「オレは最強ダ」
 いや、確かに蒼い霧のようなものが見えている。そしてゲンダーの姿にも変化が。その姿に大統領はたじろぐ。あれは、あれはまるで……
「あの姿、まさかサムソン!! フィーティンの軍将がなぜここに!?」
 姿形はこの世界ではどうとでもなる。
 悪を滅ぼさんとするゲンダーの思いは自らの姿を最強の存在へと変えた。その姿は各々が思い描く最強の存在としてその目に映り、見る者によって異なる。それが大統領には英雄アルフリード・サムソンに見えた。
 跳躍。ゲンダーは大統領の頭上に飛び上がる。
 最強の存在を前にして、大統領は怯んで動けない。『最強』という前提である以上、それより強いものは絶対に存在することができない。それを目前にしている以上、それを見ている自分は最強足り得ることは決してないからだ。
 集中。ゲンダーの手に蒼い霧が集まりその手に剣を形作る。
 その蒼きオーラは静寂の精神世界に波紋を広げていく。それは圧倒的な存在感として、あるいは強力な覇気として、対峙する相手の目を釘付けにさせて離さない。例えるならば、蛇に睨まれた蛙。それは畏怖なのか恐怖なのか、そして精神世界の法則によって増幅されたそれは、絶対に相手が目を離せなくさせて完全に身動きを封じてしまう。
 抜刀。蒼霧の剣、幻影の刃は実在するものではないが、精神がそれを本物だと信じ込んでしまえば、精神世界に限っては本物になる。
「うおおおッ! オレは最強ダァァァッ!!!」
 一刀両断。
 必殺の一撃。
 その幻影の一太刀はあらゆる攻撃を弾いた大統領の体をいとも容易く斬り裂いた。
「ば、馬鹿なぁぁあぁぁッ! この私が……この私がァ! わ、私は……最強のはず……わた、私、は……だ、大統、領……うう、私が一番偉いんだ。私が一番正しいんだ。誰よりも、誰よりも……」
 真っ二つになり崩れ落ちた大統領は、最後まで自分を正当化するように呟きながら、灰のようになって消えていった。
「おまえがそう思うんならそうなんダろう。おまえの世界ではな…」
 静かに蒼い霧が消えていくと、それに同調するかのようにゲンダーの意識も闇の底へと沈んでいった。


 再びゲンダーが意識を取り戻すと、そこは来る前とほとんど何も様子の変わらない大統領執務室の中だった。
「オレは……夢を見ていたのか?」
 機械の自分でも夢を見るのか少し考えていると、ガイストの声が聞こえてきた。
「ゲンダー! どうやら君は無事のようだな、よかった……還ってきたということは大統領を倒したんだな」
「やったのか……こっちの世界の大統領はどうなった?」
 見るとデスクの向こうにいる大統領は、この部屋に入ってきたときのまま、俯き加減に座っているだけに見える。
「君は精神体を消滅させたんだ。言ってしまえば意識だけを殺したようなものだ。身体はまだ生きているけど、おそらくもう大統領が意識を取り戻すことはないだろうね……だが、あの男のやってきたことを思えば、当然の報いさ。とにかくこの戦い、君の勝ちだ。これでもうマキナが脅かされることはない」
 勝利を称えるそんなガイストの声は、しかしどこか憂鬱な色を含んでいる。
 何かあったのかと問うと、ガイストはメイヴの無茶すぎる奇策を説明し始めた。
「どういうわけか君は精神世界に入れるようだが、メイヴはそうじゃなかった。いや、むしろ君のほうが特殊だと言わざるを得ないが……そういうわけで、膨大な処理を制御するためにブラックボックスの封印を解放したんだ。メイヴによるとブラックボックスはヘイヴが研究していた黒石という超エネルギー物質でできているそうなんだが……たしかに黒石は限界を超えた処理をこなすのに十分すぎる性能を発揮したよ。ただ……」
「細かい話はいい。まさかメイヴは……構わないから、結論から言ってくれ!」
 隣を見ると、メイヴはまだ目を覚ましていない。ガイストの話しぶりから何かいやな予感はしていた。
「ブラックボックスの強力すぎるエネルギーがメイヴを飲み込んでしまった。あらゆるデータが吹き飛んでしまったみたいだ」
「そんな! ならメイヴは元に戻らないのか!?」
「自己修復機能があるから大丈夫だとメイヴは言っていたが……バックアップから復旧が行われているようだけど、復旧したそばからブラックボックスがメイヴを上書きしていっている。おそらくこれも暴走しているということだろう」
 難しい話はわからないがどうやら深刻な状況らしい。
「そのブラックボックスが原因なんダろ!? じゃあ、それを取っちまえばメイヴは助かるんじゃないのか」
「ああ、万が一のときはそうしてくれとメイヴにも頼まれた。しかし、ブラックボックスはメイヴの動力であり、記憶媒体のひとつでもある。動力は別のものを用意するにしても、これを取り外してしまえば記憶が失われて、今までのメイヴとは違ったものになる可能性もある。できる限りのことはやってみるが……覚悟はしておいてくれよ」
「そ、そんな…」
 悲観に暮れる一同。
 せっかく戦いに勝ったのに、これではあんまりではないか。なんて大きすぎる代償。
 そこに追い討ちをかけるように、機械音声がさらなる混乱を告げる。
【大統領閣下の生命反応が途絶えました。最終コードの発動を確認。全精神兵器を無制限に解放。終末作戦を開始します。直ちに大樹大陸より脱出してください。繰り返します――】


第17章 了

ブラックボックス18
「ブラックボックス17」をウィキ内検索
LINE
シェア
Tweet
TPC@wiki
記事メニュー

◆ メニュー

トップページ
はじめに
プロフ
伝言板



文章作品庫
・ 『フローティア』
├ F0『黒い系譜』
├ F1『Black Drop』(完結)
├ F1『プランティア』(放置)
├ F2『ブラックボックス』(完結)
├ F3『魔法戦争』(進行中)
├ F4『竜の涙』(完結)
├ F4『メタディア』(放置)
└ F5『黒き果てに』(未定)
・ 個人作品
├ 「古代ゼリー文字」
└ 「イグリスのチラシの裏」
・ 旧作
├ 旧『BlackDrop』
├ 原作版『メイヴの謎』
├ 旧メイヴ続編『Hive Mind』
├ Hive Mind続編『大いなる意志』
└ 合作版『魔法戦争』
資料関連
・ 資料庫一覧
├ 作品時系列
├ 『メイヴ』合作メモ)
└ 参考資料
・ TPCメンバー向け
├ TPC定例出席録
├ 勲章システム
├ 外伝2 資料庫
├ 総合資料庫
├ リレー小説
├ リミット大戦
└ 編集練習、実験用ページ






記事メニュー2



◆ 更新履歴

取得中です。
最近更新されたページ
  • 1766日前

    トップページ
  • 2795日前

    魔法戦争65
  • 2795日前

    魔法戦争64
  • 2795日前

    フローティア3『魔法戦争』
  • 2803日前

    魔法戦争63
  • 2828日前

    魔法戦争62
  • 2841日前

    魔法戦争61
  • 2849日前

    魔法戦争60
  • 2849日前

    魔法戦争59
  • 2849日前

    魔法戦争58
もっと見る
最近更新されたページ
  • 1766日前

    トップページ
  • 2795日前

    魔法戦争65
  • 2795日前

    魔法戦争64
  • 2795日前

    フローティア3『魔法戦争』
  • 2803日前

    魔法戦争63
  • 2828日前

    魔法戦争62
  • 2841日前

    魔法戦争61
  • 2849日前

    魔法戦争60
  • 2849日前

    魔法戦争59
  • 2849日前

    魔法戦争58
もっと見る
ウィキ募集バナー
急上昇Wikiランキング

急上昇中のWikiランキングです。今注目を集めている話題をチェックしてみよう!

  1. 遊戯王DSNTナイトメアトラバドール攻略Wiki@わかな
  2. SDガンダム Gジェネレーションオーバーワールド 攻略Wiki
  3. 20XX @ ウィキ
  4. 役割論理専用wiki 
  5. トリコ総合データベース
  6. モンスター烈伝オレカバトル@wiki
  7. ファイアーエムブレム用語辞典
  8. NIKKEぺでぃあ
  9. 機動戦士ガンダム EXTREME VS. MAXI BOOST ON wiki
  10. ホワイトハッカー研究所
もっと見る
人気Wikiランキング

atwikiでよく見られているWikiのランキングです。新しい情報を発見してみよう!

  1. アニヲタWiki(仮)
  2. MADTOWNGTAまとめwiki
  3. ゲームカタログ@Wiki ~名作からクソゲーまで~
  4. 初音ミク Wiki
  5. ストグラ まとめ @ウィキ
  6. 機動戦士ガンダム バトルオペレーション2攻略Wiki 3rd Season
  7. 検索してはいけない言葉 @ ウィキ
  8. Grand Theft Auto V(グランドセフトオート5)GTA5 & GTAオンライン 情報・攻略wiki
  9. 機動戦士ガンダム EXTREME VS.2 INFINITEBOOST wiki
  10. モンスター烈伝オレカバトル2@wiki
もっと見る
新規Wikiランキング

最近作成されたWikiのアクセスランキングです。見るだけでなく加筆してみよう!

  1. MADTOWNGTAまとめwiki
  2. MadTown GTA (Beta) まとめウィキ
  3. フォートナイト攻略Wiki
  4. 首都圏駅メロwiki
  5. Last Z: Survival Shooter @ ウィキ
  6. まどドラ攻略wiki
  7. 駅のスピーカーwiki
  8. ちいぽけ攻略
  9. ソニックレーシング クロスワールド 攻略@ ウィキ
  10. 魔法少女ノ魔女裁判 攻略・考察Wiki
もっと見る
全体ページランキング

最近アクセスの多かったページランキングです。話題のページを見に行こう!

  1. 【移転】Miss AV 見れない Missav.wsが見れない?!MissAV新URLはどこ?閉鎖・終了してない?missav.ai元気玉って何? - ホワイトハッカー研究所
  2. ブラック・マジシャン・ガール - 遊戯王DSNTナイトメアトラバドール攻略Wiki@わかな
  3. 真崎杏子 - 遊戯王DSNTナイトメアトラバドール攻略Wiki@わかな
  4. ブラック・マジシャン・ガール - アニヲタWiki(仮)
  5. 魔獣トゲイラ - バトルロイヤルR+α ファンフィクション(二次創作など)総合wiki
  6. 参加者一覧 - MADTOWNGTAまとめwiki
  7. 参加者一覧 - ストグラ まとめ @ウィキ
  8. ミッション攻略 - 地球防衛軍6 @ ウィキ
  9. 鬼レンチャン(レベル順) - 鬼レンチャンWiki
  10. リリーバイス - NIKKEぺでぃあ
もっと見る

  • このWikiのTOPへ
  • 全ページ一覧
  • アットウィキTOP
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー

2019 AtWiki, Inc.