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  • ブラックボックス18

ブラックボックス18

最終更新:2017年02月28日 23:40

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第18章「The Catfish(『鯰』と呼ばれた兵器)」



 【大統領閣下の生命反応が途絶えました。最終コードの発動を確認。全精神兵器を無制限に解放。終末作戦を開始します。直ちに大樹大陸より脱出してください――】
 機械音声が冷たくその事実を告げる。
 地響きとともにどこかから咆哮のような唸り声が聞こえる。おそらく目覚めたのだろう、機械都市マキナの半分を一瞬にして消滅させてしまったあの兵器『鯰』が。
「そんな……ついに大統領を倒して戦争は終わったと思ったのに。これですべて終わったんじゃなかったのか!」
 ゲンダーは絶望の中にいた。大統領の作りだした精神世界からは脱したが、その代わりにこんどは絶望の渦の中に捕らえられてしまっていた。
「ヘイヴが還ってくるその日まで、メイヴを護り続けることがオレの願いだった。それなのに、それなのに! メイヴはオレのせいで……! 戦争も止められなかった。なんなんダよ。なんなんダ、オレは……ッ!!」
「ゲンダー、落ち着くんだ!」
 ガイストは我を忘れて取り乱すゲンダーに言い聞かせた。
「まだすべてが終わったわけじゃない。あの兵器を止めるチャンスはきっとある! メイヴだってまだ復活の可能性がなくなったわけじゃないし、僕も最大限の努力をする! だからゲンダー。諦めるには早すぎる! それにメイヴが言ってただろう。たとえ万にひとつでも、億にひとつだろうと、可能性があるなら勝算はある。0%でなければ、たとえどんなに可能性が低くても信じる価値があると」
「でも……そのメイヴは今こんな状態ダ。大統領との戦いダって、ガイストクッペルからの脱出ダって、思えばヘイヴの研究所からシャトルで飛び出すときから、オレはずっとメイヴに助けられてきてばかりダった。そんなオレが一人であの『鯰』になんて勝てるわけがないんダ。やっぱりオレは駄作ダったんダ……」
 ゲンダーは明らかに参っている様子だった。メイヴのことはもちろんだが、大統領との戦いで限界を超えて力を振り絞ったことも影響しているのだろう。いつものゲンダーらしくない弱気な言葉が次々と零れた。
「ゲンダー、君だけが頼りなんだ。僕はメイヴを復旧させるために手が離せない。君がやらなくてだれがやるんだ!」
「無理ダ。なんせ大陸の形を変えてしまうようなやつダぞ。仮にオレとメイヴの二人がそろっていたとしても勝てるかどうか。戦車でも引っ張ってこなければ相手にもならない……いや、戦車があったって歯が立つかどうか…」
「できるかどうかじゃなくて、『やる』んだろ! 戦争を止めると言い出したのは他でもない君じゃないか!」
「ああそうダ。でもそれはメイヴを護るために障害になると思ったからダ。メイヴがこんなになっちまったんじゃ、オレにはもう戦う理由も意味もない…」
 そう言うなり、ゲンダーは顔を背けて座り込んでしまった。
(これは相当参ってるな。やはりゲンダーは人間同様の感情をもっている。あるいはそれ以上に繊細な……いや、今はそんなことを考えている場合じゃないな)
 ガイストはマキナを発つときにスヴェン博士に言われたことを思い出していた。
(そうだ、今のゲンダーはあのときの自分と同じだ。メイヴは完全に壊れてしまったわけではないが、自分にとって大切なものを失い、しかもその原因は自分にあり、自分の無力さは痛いほど思い知らされて、そしてそれが悔しくて許せなくてどうしようもなくて……追い詰められているんだ、自責の念に。思い出せ、先生はあのときどうした?)
 それを思い出せば、思い当たるやるべきことはひとつしかなかった。
「ゲンダー、いいのか。君はそれで満足か。メイヴを護りたいんだろう。メイヴを信じるんじゃなかったのか!?」
「でも、メイヴはもう…」
「いい加減にするんだ!!」
「!?」
 気がつくとつい熱くなってゲンダーを一発殴っていた。かつてスヴェンが自分にそうしたように。
 ゲンダーの気持ちは痛いほどよくわかる。しかし、今ならスヴェンの気持ちもよくわかる。ゲンダーを殴った際に針が刺さって拳からは血が出たが、これはあのときのスヴェンと同じ痛み。今の自分にできることはこうしてゲンダーの痛みを分かち合ってやることぐらいだ。
(しかし僕は知っている。それが自分を追い込んでしまった者にとってどれだけの助けになるのかを)
 ゲンダーは殴り倒されたそのままの姿で横たわっていた。
「メイヴがどうしてあんな無茶をしてまで君を助けようとしたか考えたことはあるか?」
 返答はなかったが、ガイストはそのまま続けた。
「それは君がメイヴを信じたのと同じように、メイヴも君を信じていたからだ。君が大統領との戦いでピンチに陥ったとき、メイヴはとても焦っていたよ。機械のくせにね。科学者の僕が言うのもおかしな話だけど、もしかしたらメイヴも君と共に過ごすうちに感情のようなものが芽生えたのかもしれない。君がメイヴを護ろうとしていたように、メイヴも君を護りたかったんだ。だから、自身の危険を顧みずにあんな賭けに出た。ドームからレールを使って脱出するときだってきっとそうだったに違いない。そうまでして君を護ってくれたんだ。その君がメイヴに応えなくてどうするんだ!」
「メイヴ…」
 そして、少し間をおいてガイストは言った。
「いいのか? メイヴの想いを無駄にしても」
 やはりゲンダーは何も答えなかったが、こちらに背を向けたままゆっくりと立ち上がった。それは答えとしては十分だった。
「僕の知っているゲンダーはそんなに弱いやつじゃない! そうだろう」
「グメっ、グメメェーっ!」
 グメーもグメーなりにゲンダーを元気付けているようだ。
 しっかりと立ち上がるとゲンダーは、
「……すまん」
 と静かに一言だけ呟いて駆け出して行った。
 遠ざかっていくゲンダーの後ろ姿は、もはや自身を追い込んでしまった者の背中ではなかった。
「グメー。君もゲンダーについてサポートしてやってくれ。僕は僕のできることをやろう」
「グッッメェィァ!!」
 グメーは力強く敬礼をしてみせると、脇目も振らずにゲンダーの後を追って行った。
「よし……待ってろよ、メイヴ。必ず助けてやるからな」
 ガイストはゲンダーたちを見送ると、なんとかメイヴを復旧させられないか試行錯誤し始めた。
(しかしこれで二度目か。機械を叩いて直すなど科学者としてあるまじき……)
 痛む拳を眺めると苦笑が漏れた。


 ゲンダーとグメーは中枢タワーを飛び出すと、真っ直ぐに唸り声の聞こえたほうへと向かった。
 街を抜け、林を越え、マキナとの国境付近へとたどり着くと、『鯰』が近いのだろう、巨大なものが跳ね回るような連続した地響きが足を伝わってくる。
「やはりマキナを狙って進んでるようダ。大統領め、始めっから仕組んでやがったな」
「グメぇ?」
「自分の身に何かあったときは自動的に精神兵器がマキナを襲うように用意していたに違いない。きっとマキナが手に入らないぐらいなら、いっそぶち壊してしまうつもりダったんダ。どこまでも自分勝手な奴め」
 さらに先へ進み、唸り声と地響きを頼りにたどり着いたのは、ガイストクッペルから脱出するときに使ったレールを降りたあたりだった。そこにはあのときのレールがそのままの状態であった。
(あの時も、メイヴは無茶をしてオレたちを助けてくれた。こんどはオレたちがメイヴを助ける番ダ!)
「グメっ!? グメメメメェェェーーーーっ!!」
 突然グメーシスが慌てた声を上げる。
「……ようやく追いついたか、『鯰』!」
 地響きはどんどん大きくなる。ひと際大きく揺れたかと思うと、それは地平線の向こうからおもむろに姿を見せた。
 山のように大きな『鯰』の姿を模した兵器。それはあまりにも強大で、放置されていたレールの車体をいとも容易く踏みつぶしてスクラップにしてしまった。
『グォォオオォッ』
 金属の擦れ合う音なのだろうか、まるで恐竜のような唸り声を『鯰』は響かせている。
「こいつ、なんて迫力……! ダけど、オレは『やる』んダ! これはオレ自身との戦いでもある。いや、オレだけじゃない。メイヴの、ガイストの、グメーの……そう、オレたちの戦いダ。地震なんかに負けるもんか!」
『グォォオオォオォォオオォォォン!!』
 答えるかのように『鯰』は鋼の咆哮を上げる。
「上等ダ。不利ダなんて思わないぞ。機械VS機械、条件は対等ダからな!」
「グメェェーっ!!」
 負けるもんか、とグメーも咆え声を上げる。
 ついに今、最後の決戦が始まった。


 一方その頃、メイヴは見慣れない空間を彷徨っていた。
『ここは一体……私はまだ大統領の精神世界にいるのでしょうか。ゲンダー? どこですか、ゲンダー』
 様子を探るべく周囲をサーチしようと試みるが身体は言うことをきかない。それどころか、身体の感覚すら感じられない。はて、感覚…? 感覚とは一体何か。
 メイヴは知識として感覚を知っている。データベースには大抵のことが記されている。しかし、実際にその感覚がどういうものかは知らない。当然だ、彼は機械なのだから。にもかかわらず、今の自身の状況を説明するのに「感覚がない」という表現が自然と現れた。今や、メイヴは意識だけがそこに漂っている状態だった。
『私は「感覚」を知っている……いや、これはブラックボックスの……記憶?』
 するとブラックボックスから流れ込んでくる記憶が目前に映像となって再生され始めた。
『これは……ふむ。見覚えがあります。ヘイヴですね。隣の機械にも見覚えがあります。これは私……いや、私が生まれる前の私ですね。ヘイヴがブラックボックスを研究していた頃でしょうか。ゲンダーの姿はまだないようですね』
 しばらくすると映像がぼやけて別の場面に切り替わった。
 黒い石をブラックボックスに加工するヘイヴ。
 黒石の危険性についてヘイヴと論争する若き日のスヴェン。
 ヴェルスタンド西部の炭鉱から発掘される黒石。
 これはメイヴが誕生するよりもさらに前の出来事だ。どうやら時間を遡りつつ、ブラックボックスの記憶が呼び起こされているらしい。巻き戻しの映像を早回しで見ているような光景が眼前に広がっている。
 炭鉱に降り注ぐ流星。大気圏で発火し複数に割れる黒い雫。星の海を飛来する隕石。隕石は黄昏の惑星を通り過ぎ、猛毒の大気の中を抜け、炎と砂と水の嵐を越え、時には巨大な宇宙生命体の体内を通り抜け、小惑星群と爆発性のガスを潜り抜け、常闇の惑星の上空を通過し、しばらく宇宙空間を彷徨った後に、漆黒の惑星から飛び出す。
 再現される映像はめまぐるしく切り替わり次第に再生速度を速めていく。やがてメイヴはそれらの情報を整理しきれなくなっていった。
『ま、待ってください。これ以上は……やめろ、やめてくれ! 入ってくるな!! も……もう、たく、さ…ん………だ……。ああ、ゲンダー……』
 メイヴの意識はそこで途絶えた。


「えっ?」
 思わずゲンダーは振り返った。
 その隙を見逃さず『鯰』の強力な一撃が入る。痛恨の一撃、ゲンダーは弾き飛ばされて地面に激突した。
「うぐ……っ、油断した…」
「グメぇ!?」
 グメーが心配そうにゲンダーの顔を覗き込んでいる。
「大丈夫ダ。たダなぜか急にメイヴに呼ばれたような気がしたんダ…」
 さすがに気のせいだろうと考えたが、どうにも胸騒ぎがしてならない。
 しかし、敵はそんなことはお構いなしと言わんばかりに攻撃を続けてくる。『鯰』は容赦なく鰭を模したアームを振り降ろす。ドスンと重い一撃は大地を揺らし、地面に深い穴を空ける。ゲンダーたちはこれをギリギリのところでかわしたが、体勢を整える間も与えずに『鯰』は飛び上がり、その山のように大きな巨体でゲンダーを押し潰しにかかる。
「や、やばい! 汁一本!!」
 冷静になれ、落ち着けと自分に言い聞かせて集中、右腕に力を溜める。
 凝縮された一撃が放たれる。一瞬遅れて大爆発が起こり、爆風によってゲンダー吹き飛ばされ、その勢いを利用して『鯰』の攻撃から逃れた。続けて『鯰』さっきまでゲンダーのいた場所を踏みしめる。局所的な揺れがゲンダーを襲う。少しでも遅ければ今頃は奴の下敷きになっていただろう。一方で『鯰』は汁一本をほとんど零距離で食らったにもかかわらず、傷一つついていなかった。
「まるで歯が立たない……汁一本すら通用しない。何か……何かないのか!? 汁一本を上回る攻撃方法は…」
 『鯰』が跳ねる。落ちる。揺れる。そのたびに足をとられて立っているのも難しく、集中して考えている余裕などとてもなかった。
 グメーも精一杯たいあたりをぶつけるが、特殊な素材でできているのか『鯰』はグメーに触れても粉のようになって消滅してしまうようなこともなかった。
 決定的な一撃どころか、かすり傷すら与えられないまま戦いは続く。


「これはまずい…!」
 一方でガイストも苦戦していた。大統領執務室にあったPCを拝借してメイヴのシステムに侵入し、なんとかブラックボックスの暴走を止められないかと奮闘していたが、メイヴのプログラムは目にも止まらない速さでブラックボックスに上書きされていく。そのせいなのか、パフォーマンスが目に見えて低下し、自己修復機能によるのバックアップの復旧速度が徐々に落ち始めている。上書き速度が復旧速度をうわまろうとしている。このままではあと数分ともたないかもしれない。
 それだけでなくブラックボックスの侵蝕が激しく、ついにはメイヴへのアクセスが弾かれるようになってしまった。こうなってはもうお手上げとしか言いようがない。
「僕の力では及ばないのか!? こんなときに師匠が……ヘイヴいてくれたら。くそっ、仕方ない。そういう約束だったからな……すまない、メイヴ」

――それは溯ること数十分前――

『ガイスト博士、お願いがあります』
 ゲンダーが精神世界で戦っている最中、メイヴが何かを決意した様子で話し始めた。
「どうした、改まって。何かゲンダーを助けるいい作戦でも思いついたのか?」
『ええ。どうやら私はゲンダーのいる空間に直接干渉することはできないようですが、幸いにもゲンダーの本体はここにいるので、このゲンダーに干渉することで間接的に空間内に影響を与えることができます。つまりゲンダーがこちらとあちらの空間をつなぐ唯一の架け橋というわけです。私がゲンダーのシステムに侵入してリミッターを解除すれば、ゲンダーを劇的にパワーアップさせることもできるでしょう』
「そんなことができるのか! それなら大統領にも勝ち目があるかもしれない」
『ええ、おそらく勝てるでしょう。しかし、ゲンダーの意識は精神世界のほうに行っています。たとえリミッターを解除しても、誰かがそれをゲンダーに知らせてあげなければ意味がありません』
「それは困ったな。精神世界に入れるのは精神体だけ。あらゆる生き物には精神体が存在するが、それでも自由に入れるわけじゃない。少なくとも、大統領自身が呼び込まない限りはな。存在そのものが精神体のようなグメーなら侵入は容易いだろうけど……」
「グメーメ?」
「言葉を話せないから、伝えるのは厳しいか」
『いいえ、方法はあります。そこでお願いなのですが…』
 ブラックボックスの力を解放すればメイヴの性能をブーストさせて精神世界のゲンダーに干渉することが可能になる。ただしブラックボックスの強力すぎるエネルギーを制御し切れずに暴走してしまう恐れもあるという。
 まさに両刃の剣。危険な賭けになる。しかし、それが唯一の方法だった。
『いいですか、よく聞いてください。私はブラックボックスの力で私のプログラムを一時的に書き換えます。ゲンダーと連絡を取るためには必要なことです』
「そんなことをして君は大丈夫なのか」
『あとでプログラムを元通りに書き戻せば問題はないはずです。しかし当然ながらシステム上、想定されていないことを行うわけですから、どんな不具合が起こるかは予想もつきません。もしかするとシステムがクラッシュしてすべての記録が飛んでしまう可能性だってあります』
「すべての記録が……それは、君にとっての死を意味するのではないのか!?」
『さぁてね。まだ死んだことがないので、私にはわかりません。しかし記録が飛んでもバックアップがありますし、なんとかなると信じたいですね。まあバックアップから呼び戻された私が「今の私と同一の私」であるかどうかは判断しかねますが。ただ心配なのはプログラムを書き換えた上での正常なリカバリーができるのかという点、そしてブラックボックスには未解明の部分が多いので何が起こるかわからないという点です。もちろんこの作戦を成功させるためにはそれを私が制御する必要があるのですが……いえ、大丈夫です。なにより、ゲンダーを救うためにこれは必要なことなのです。これしかないんです! もう決めました。私はやりますよ。やってみせます! もちろん……協力してくれますよね?』
「正気なのか!?」
 そして作戦は決行され、ゲンダーは見事に大統領を打ち倒すことになる。しかし、この話にはまだ続きがあった。

『ガイスト。これはできれば起こってほしくないことなのですが……』
 メイヴはおもむろに話し始めた。
『もちろん私はこの作戦を成功させるつもりです。いや、成功させなければならない。ですが、もし失敗した場合……そして、もし私の記録がすべて失われてしまった場合、そのときは私はもう残念ながらゲンダーの役には立てないでしょう。もしそうなったときは、私を分解してブラックボックスを取り出してください』
「分解!? 一体何を言い出すんだ」
『ブラックボックスははっきり言って謎だらけです。私のデータベースをもってしてもほとんど何もわかりません。しかし、これがとても大きな力を秘めていることだけはわかります。ですからガイスト、もしそのときは私を分解して、ブラックボックスを使って何かゲンダーの助けになるものを作ってあげてください。ブラックボックスの力はきっと役に立ちます。部品が足りなければ私の部品を使うといいでしょう』
「ま、待ってくれ! メイヴ、なんてことを言い出すんだ! それでは君が……君は、どうしてそこまで!?」
『壊れた機械は何の役にも立てません。役に立たない機械など意味がない…。私はゲンダーの役に立ちたい。それだけですよ』
「だ、だが……僕は君を大切な仲間だと思っている。長くはないが共に過ごしてきた仲だ。科学者の僕が言うのも変だが、僕は君やゲンダーを友達だと思ってる! 今ならヘイヴがゲンダーをなぜ発明したのかもわかるような気がするよ。そんな僕に友達を解体させるつもりなのか!? だめだ、そんなことはできない。いくらなんでも、そこまでする必要はない!」
『ガイスト…。辛いかもしれませんが、どうかわかってください。なに、気にすることなんてありませんよ。私は機械であなたは技術者。技術者が機械を分解するのはいつもの仕事のうちでしょう?』
「メイヴ、それが君の望みなのか。それが君にとって満足に値することなのか」
『ゲンダーは感情をもった機械という非常に稀な存在、その価値は計り知れません。決して失うわけにはいかない……私はそう判断しました。そのために役立つなら、この身がどうなろうと本望です』

「これが……君の望みなんだな、メイヴ?」
 メイヴはもう何も答えない。PC画面にはメイヴのプログラムの99.9%がブラックボックスに侵蝕されてしまったことが示されている。
「本当にすまない。僕にもっと力があればこんなことにはならなかった…」
(気にしないでください。これは仕方ないことでした。あなたは悪くありません)
 そう聞こえたような気がした。もちろんメイヴはしゃべれないし、遠隔モニタは消えてしまって久しい。
「ふっ、都合のいい妄想か…。落ち込んでいてもメイヴはもう還ってこない。それならせめてメイヴの最期の望みを叶えてやらなければならない」
 ガイストはメイヴの解体に取り掛かった。一度、スヴェンの地下研究所でメイヴの修理を行っているので、解体するのはそう難しいことではなかった。
 部品を外して胴体前面を開く。液晶モニタを持ち上げて、その下から取り出したのは黒い球体だ。大きさのわりには両手にずしりと重い。
「これがブラックボックス……本当に真っ黒だな」
 こんなボーリング球程度の大きさの球体がすごい力を秘めているという。球体はその漆黒の中に妖しい輝きをみせている。そして神秘的だった。もしかしてこれはメイヴの心臓のようなものなのではないか。そう思うと、球体が脈打っているような錯覚すらしてくる。
「しかし、すごい力があると言われてもこれをどう使えばいいのか…」
 ブラックボックスには大きな力が秘められている。ガイストが知ってるのはそれだけだ。
「何か情報はないのか?」
 ガイストはメイヴのデータベースへのアクセスを試みた。ブラックボックスを取り外したことで暴走状態が止まったためか、今度は問題なくアクセスすることができた。どうやらデータベース内の情報に関してはそのままの状態を保持しているようだ。
 データベースにはこの世のありとあらゆる情報が保存されており、いわば巨大な百科事典のようなものだ。システム的なものや重要な情報はブラックボックスの内部に記録されているようで、とくに参考になりそうなものは見つけられなかったが、以前にガイストクッペルで暴走したときに流入したブラックボックスからの情報の一部がデータベース内に残されていた。
「これは……ヘイヴの研究記録? ブラックボックス……黒石…………スヴェン!? なぜ先生の名前がここに? 先生も黒石の研究に関わっていたのか、知らなかった。だがそうとわかれば、こうしてはいられない!」
 ブラックボックスだけを取り除いた状態でメイヴを元通りに閉じると、ガイストはブラックボックスを手にタワーを飛び出した。
 先生なら何か知っているかもしれない。そう考えてマキナのスヴェンの元へと急いだ。


 『鯰』が飛び上がる。落ちる。衝撃が大地を揺るがす。
 そしてまた跳ねる。落ちる。振動。
 ゲンダーは『鯰』の攻撃をかわすだけで精一杯だった。
「逃げてばかりじゃ勝てないのはわかってる。でもこれじゃ勝ち目なんかないぞ。せめて、相手に隙を与えることさえできれば…」
 グメーシスも一生懸命、『鯰』に攻撃を仕掛けるが残念ながら全く戦力にはなっていなかった。
「汁一本も効かないとなると、もっと威力のある攻撃を仕掛けないとダメか。しかし、あれ以上の力を溜めようとすればオレのほうが限界を超えて自爆してしまう。汁一本は連射も利かないし、一発撃ってから二発目をチャージするのに時間がかかって……待てよ、二発? そうダ!」
 何かを閃いたゲンダーはグメーシスに提案する。
「グメー、少しでいい。あいつの注意をオレからそらしてくれないか」
「グメっ!」
 任せろ、と言わんばかりに胸を叩いてみせると、グメーは深く息を吸い込み、大声で咆えた。
「グメェェェーーーーーーっ!!」
 『鯰』の攻撃の狙いがグメーに移る。ゲンダーはそのわずかな隙を見逃さない。
(両腕から放つ二発の汁一本…その力をひとつにすれば…!)
 覚悟を決めた表情で両腕を『鯰』に向ける。
 汁一本を放つ要領で波動の内圧を高めていく。圧力を徐々に右腕に集めていく。同時に左腕にも。
 千の衝撃波を高速で放つ力が今、そのふたつの両極に集中していく。汁一本が単発で汁千本の1000倍の威力なら、単純に計算しても両手でその二倍、2000倍の威力だ。
 右腕が内側からの圧力で破裂しそうになる。しかしまだ耐える。
 続いて左腕も悲鳴をあげる。まだだ、耐えてくれ。
 さらに力を凝縮。
 二点集中。限界まで高く極限まで鋭く。
「もう抑えられん! い、今ダっ!! これがオレの極限の一撃っ! うおおおおっ!! 汁 一 極 !!」
 凄まじい轟音。激しい閃光。音が聞こえるよりも速く、限界を超えた一撃は敵を貫き大爆発を起こした。さらに『鯰』の頭と片方の鰭を一瞬のうちに跡形もなく吹き飛ばした。
 周辺は空襲でもあったかのように草木は焼け、大地は大きく抉られて、いかにその衝撃が凄まじいものだったかを如実に物語っている。
 一方ゲンダーも想像を遥かに超える反動でただではすまない。ずいぶん長い距離を吹き飛ばされ、いやというほど地面に身体を打ちつけた。すでに何度か汁一本を発射していた右腕は、とうとう衝撃に耐えかねて大破してしまい、使い物にならなくなってしまった。
「うぐぐ……さすがに無茶ダったか。ダがこれが今のオレにできる最大の攻撃。どうダ、やったか!?」
 その問に答える者はだれもいない。しかし、もしメイヴがこの場にいたのならこう言っただろう。
――ゲンダー、それはやってないフラグですよ――
 地響きが。土煙の向こうから地響き伝わってくる。
 土煙の向こうから姿を現したのは頭を吹き飛ばされ、内部の配線が剥き出しなってもなお跳ね続ける『鯰』だ。
「な、なんてことダ。まだ動けるのか」
 『鯰』は大地を揺らしながら、少しずつゲンダーに近づいてくる。跳ねるたびにあちこち壊れてパーツを周囲にばら撒いているが、そんなことはお構いなしに標的と定めた相手を押し潰すことだけを考えて迫り来る。
「あいつ化け物か!? まるでゾンビみたいダ」
 このままでは踏みつぶされてしまう……逃げなくては。
 しかし、汁一極の反動でゲンダーは仰向けに倒れたまま立つことすらままならない。
 汁一極の衝撃でどこかへ吹き飛ばされていたグメーが戻ってきた。事態を把握したグメーは動けないゲンダーをなんとか避難させようとゲンダーの右腕を必死に引っ張るが、グメーが掴んだ部分は粉のようになって風に飛ばされてしまった。触れたものを消滅させる特性のせいでグメーはものを掴むことができない。
「無理するな、グメー。オレのことは大丈夫ダ。おまえだけでも早く逃げろ…」
 しかし、誰の目にも無理をしているように見えるのはゲンダーのほうだった。グメーはうろたえている。
 そんな間にも、『鯰』はどんどん距離を詰めてくる。たとえ敵の姿が見えていなくても、大きくなる揺れがそれをいやでも感じさせてくれる。
 わかる。もうすぐそこまで迫っている。
(こんどこそおしまいダな。すまない、メイヴ。やはりオレには……)
 仰向けに倒れたゲンダーの視界を影が覆う。最後に視界に入った『鯰』はもはや原形を留めていなかった。
 グメーは最期のそのときまでゲンダーのそばを離れようとしない。その小さな身体で震えながらも必死にゲンダーを庇おうとしている。
(グメーもすまない。頼んダわけでもないのに、おまえは最後までオレについてきてくれるのか。でもいいんダ。もういい、グメー。おまえまで一緒にやられることはない)
 最後の力を振り絞って、辛うじて動かせた左腕でグメーを叩き飛ばした。これで左腕も消滅してしまったが、もうそんなことはどうでもいい。せめてグメーだけでも無事であってくれればそれでよかった。
 叩き飛ばされたグメーが草むらに落ちるのとほぼ同時に、ドスンという鈍い音が響く。
 ゲンダーが倒れていた場所には、『鯰』だったものの残骸が重くのしかかっていた。
「グ……グメェェェエエェェェーーーっっっ!!!」
 グメーの悲痛な叫びが虚しく響き渡る――


第18章 了

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