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  • 魔法戦争12

魔法戦争12

最終更新:2017年06月25日 02:21

jelly

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Chapter12「蒼の勇者と青の竜」



 意識が朦朧とする。目が霞む。
 私は一体……。私の身に一体何が起こったのだろうか。頭がぼんやりして前後の記憶がはっきりしない。ついさっきまで気を失っていたようだ。

 身体が上下に揺れている。手足にはまるで力が入らないが、周囲の風景はひとりでに後ろへと流れていく。
 どうやら私は運ばれているらしい。でも一体誰に?

 ああ、頭が痛い。どうして私はこんなところにいるのだろうか。
 薄暗い景色が次から次へと通り過ぎていく。ここは私の知っている場所ではないようだ。

 耳に響くのはカン、カン、と鉄を踏みしめる音。身体が上下に揺さぶられ、少しずつ上に上がって行くのがわかる。そうか、階段を登っているのか。

 少しずつだが、だんだんと身体の感覚が戻って来た。
 腹部にぬくもりと、背中に手を添えられているのを感じる。私は誰かの肩に担がれているようだ。

 だが私は竜だぞ。
 そんな私を肩に担ぎ上げられるなんて一体どんな巨体の持ち主なのだろうか。

 視界も少しずつはっきりしてきた。段だ。目の前に階段の段差が見える。段差はひとつずつ、音が聞こえるのと同じ数だけ前に、進行方向の逆へと流れていく。頭を後方に、うつ伏せに担がれているらしい。
 顎を引くと私を担いでいる者の背中が少し見えた。蒼い鎧を身にまとっている。このシルエットは……ニンゲンか。

 はっ、ニンゲンだと? あの小さな生き物がどうやって私を担いでいるのだ。
 ああ、どういうわけかまた頭が痛くなってきた。

 どこまでも続くように思えた階段は、響く足音が変わったの同時に終わり、続いて扉を開く音が聴こえた。外からの眩しい光が私の目に突き刺さる。

「あ……ああッ!!」

 その瞬間、私は思い出した。

 そうだ! 私は見たぞ、眩しい光の向こうに映る人影を!
 そして次の瞬間には身体の自由が奪われて意識が遠のいて……そうだ。私はニンゲンどもに捕らえられたのだ!!

「き、貴様っ! 何をする、私を離せ!!」

 このままではロクな目に合わない。それにこの私を軽々と運ぶこのニンゲン、なんと力強い。悔しいが今の私はこいつには勝ち目がないだろう。深手を負わされる前に逃げなくては。

 私は力の限り暴れてやった。すると油断していたニンゲンめは私を拘束する手を緩めた。屋外に出た今がチャンスだ。さっさと大空に飛び立ってしまえば翼をもたないニンゲンなど追ってはこれまい。
 よし、今だ――


 鈍い音が耳に響いた。
 頭がガンガンする。口の中には土の味が広がった。にがい。

「ううっ、ぺッぺッ! しまった、翼も拘束されていたのか!?」

 どうやら頭から地面に激突してしまったらしい。足下が草地だったので怪我を負うことはなかったが、それにしてはやけに頭がずきずきと痛む。
 おかしい、私には鉄よりも固い鱗があるはずなのに。

「やれやれ。こいつはとんだおてんばさんだぜ」

 私を運んでいた男の声が真上から降って来た。
 まずい、このままではまた捕まってしまう。いや待て、上から聴こえただと。まさか、そんなはずはあるまい。だって相手はニンゲンだろうに、この男は巨人だとでもいうのか。そもそも私は竜よりも大きなニンゲンの話など見たことも聞いたことも――

 不意に身体が浮かび上がった。

「ひゃァうっ!?」

 あまりに驚いてヘンな声が出てしまったではないか、このニンゲンめ!
 水竜なのに顔から炎が出そうになったぞ。

「貴様、一体どんな魔法を使って……」
「お嬢ちゃん。もうちょっとじっとしてくれないと、お兄さん困っちまうぜ」
「なッ……お譲ちゃんとは馬鹿にしおって! これでも私は貴様なんぞより百年は長く生きておるのだぞ!」
「へいへい、そいつは悪うござんしたね。だがここはまだ敵地だ。ここを抜けきるまでは静かにしててもらうぜ」

 そう言って、この男は再び私を肩に担ぎ上げた。身体が浮かんだのは、どうやらこいつに持ち上げられたかららしい。なんという怪力、そしてなんという巨体だ。こんな化け物がいるなんて私は知らなかった。

 ああ、また頭がくらくらする。そもそもこいつの担ぎ方が悪い。レディーを肩に担ぎ上げるとは何事か。もっとこう、方法があるだろう。これでは頭に血が昇っていかん。

 目の前には憎たらしい蒼い男の背中が見える。悔しいからちょっと爪でも立てておどかしてやろうか。
 そう思って手を伸ばしかけたときだった。

「ふ、ふにャああぁぁああァッ!!?」

 すごく驚いて奇妙な声が出てしまったがそれどころではない。

「な、な。な。ななな、なんだこの手は!? 私の鉤爪はどこへ行った! 美しいマリンブルーの鱗は! というかなんだこの細くてか弱い腕は! これじゃあメーの一匹も狩れんじゃないか!!」
「んん? どうしたお嬢ちゃん。大事な付け爪でも落としちまったのかい」
「ば、馬鹿言え! こ、これは……これじゃあまるでニンゲンの手じゃないか!」
「ああ、そうだな。俺にもついてる」
「ああそうだな、じゃなーいッ! 貴様ァァァッ! 私に何をしたのだッ!!」
「俺が聞きたいぜ。一体何が何だって? マリンブルーがどうとか……ああ、俺も蒼い色は好きだが」
「いいから離せッ!」

 無理やり蒼い男の腕を振り払って男の手から逃れる。
 よし、こんどはちゃんと着地してやったぞ。
 そして身をひるがえしてこの蒼い男と対峙する。
 ふむ、顔はなかなか悪くない……じゃなくッて!

「やい貴様。どうやらこの私を怒らせてしまったようだな。死にたくなければ素直に答えろ。おまえは誰だ。ここはどこだ。私に何をした!」
「やれやれ。勘弁してくれよ、お嬢ちゃん。遊んでる時間はないんだ。俺は暇じゃないんだぜ」

 こいつめ、まだ自分の立場がわかっていないらしい。たとえ体格で劣っていようとも、どんな怪力の持ち主であったとしても、私はニンゲンなどには屈しない。ちょっぴり勝てそうにないとか思ってしまったが、さっきのあれは撤回だ。
 ぼんやりしていた頭もようやくはっきりしてきた。私の魔法にかかればこんなやつ、ものの数ではないからな。

 だがこの男はまだ私を子ども扱いしている。
 仕方ない、侍女たちが泣くほど恐れた私の睨みを見せてやる。

「むん!」

 真っ直ぐ蒼い男と目が合った。決まったな。これで今にやつも泣いて詫び……

「むーん? どうした。腹でも痛いのか」

 ば、馬鹿な! 私の睨みが効かない!
 こいつ、正真正銘の化け物というわけか。

「むむん!」
「おうおう、あんまり力むとミが出ちゃうぜ」
「こ、ここ、こいつめぇぇぇッ!」

 もうこうなったらなり振り構ってなどいられない。少々この美貌が崩れてしまうが仕方ない。本気で睨み付けてやろうではないか。もう泣いて謝っても遅いのだ。私は悔しくて少し目が潤んだが、断じて泣いてなんかいないんだからな!

「あー、やれやれ。しょうがねぇお嬢ちゃんだ。わかったわかった、説明してやるよ。お嬢ちゃんでも理解できるといいんだが……」

 蒼い男はようやく折れたらしい。私の恐ろしさをやっと理解したようだ。鈍いやつめ。いつの時代でも勝つのは必ず正義だとそーばは決まってるのだ。
 く、苦しい戦いだった……ぐすっ。

 さて、観念した男はようやく事の次第を話し始めた。

「あー、さて。どう説明したらわかってもらえるかねぇ。まず俺のことか。俺は……うーん、そうだな。まぁ、蒼き勇者とか呼ばれてるから、お嬢ちゃんもそう呼んでくれたらいい」

 蒼き勇者。ふん、これが噂に聞く『ゆーしゃ』というやつか。たしかに顔は悪くないが、性格はイマイチだ。

「それからここはどこか、だったな。んー、なんて言やいいかな。お嬢ちゃん家から遠いところ……か? そういやお嬢ちゃんの住んでる場所は……」
「ふっ、その手には乗らんぞ。おおかた私の家を聞きだして身代金でも要求するつもりなのだろうが、それは甘い。なぜなら私は一人でも十分に強いのだ。いいか、私の手にかかれば、おまえなんかあっという間に、けっちょんけちょんのぐっちゃぐちゃのぼっこぼこのべろんべろんの……」
「やれやれ。俺は依頼されてお嬢ちゃんを助けに来ただけなんだぜ。俺が名乗ったんだから、そっちも名乗るのがレディーのマナーってもんなんじゃないのかねぇ」
「う……。そ、それは一理ある。しかし、まさか私を知らない者がいようとは。所詮ニンゲンはニンゲンか。よかろうっ、耳の穴かっぽじってよぉーく聞くがいい。私はかの大国ニヴルヘイムの偉大なる姫君アクエリアス様であるぞ! どーだ驚いたかっ! そこ、頭が高いぞ。ひかえおろー」

 自信満々に胸を張って名乗りを上げてやる。
 おまえは手を出す相手を誤ったのだ。今さら後悔して泣いて謝っても遅い。でも私のしもべになるというなら、トクベツに許してやらんでもないがな。

 まさか一国の王女に手を出してしまったとは思っていなかっただろう。さぞや、この男は驚いた表情をしているだろうとその顔を見上げると、なんと意外なことにそいつは平然とした様子でこう答えたのだった。

「ああ、知ってた」
「……えっ?」

 こいつめ、私のことを知っていたとは。ということはつまり…………。
 ふっ、私も有名になったものだな。そう思うと悪い気はしない。

「だがお嬢ちゃん、お姫さまならもっと言葉遣いには気をつけるもんだ」
「なッ、うるさいな! まるでじいやと同じようなことを言うんだな。まったく、どいつもこいつも皆して同じことばかりガミガミと……。それよりおまえ、さっき私を助けに来たと言わなかったか?」
「そうだが? なんだ、もしかして助けられてる自覚がなかったのか。なるほど、こいつは大物だ。さすがはお姫さまだな」
「なんだ、おーもの?? 意味はよくわからないが、なんとなーく馬鹿にされてるような気がする」
「滅相もありません、お姫さま。これは褒め言葉です」
「そ、そうなのか? わかった、ならいい。それなら今までの無礼は水竜の名において特別に水に流してやる」
「そいつはご丁寧にどうも」

 続けて蒼き勇者はこの場所について説明した。
 どうやらここはニヴル、ムスペ、ユミルの三国を結んだ三角形の内側にある、三国どの国からも最も遠い位置にある浮島のひとつだそうだ。
 ある筋からの依頼でこの男は、この浮島に作られた秘密研究所に捕らえられた竜たちを解放し、怪しげな研究を行う敵勢力を壊滅させるためにやって来たらしい。
 どうやら私もその秘密研究所とやらに捕らえられており、この男が助けに来たときには無事だった竜はどうやら私だけだったらしい。

「なぜニンゲンのくせに竜を助ける。他の竜たちはどうした?」
「そういう依頼だからだ。他のやつらは……研究所内にいくつか竜の骨が転がっていた。だから、おそらくもう……」
「そうか……」

 そして秘密研究所を制圧したこの男は、唯一無事だった私を連れて脱出した。その道中で私が意識を取り戻し、今に至るというわけだ。
 しかし許せん。おのれ、ニンゲンめ。私の大切な仲間をよくも。
 私がニンゲンに恨みを募らせていると蒼き勇者は言った。

「相手の良いところはなかなか見つからないが、悪いところはよく目立つもんさ」

 たしかに怪しい研究を行い、私を捕らえ、私の仲間を殺したのもニンゲンだが、私を助けてくれたのもニンゲン。この目の前にいるちょっとキザな蒼い男である。

 どんな種族にも良い面と悪い面がある。よく目立つ悪い面ばかりを見て、あれは悪い種族だ危険な種族だと考えてしまいがちだが、その種族の者すべてがそうであるとは限らない。どうやらこの男は竜にもニンゲンにも、善いやつもいれば悪いやつもいるということが言いたいらしい。

「たしかにムスペの竜は悪いやつだが、ニヴルの竜は善い竜ばかりだもんな」
「まぁ……まだなにか勘違いしてるみたいだが、だいたいそんなとこだ。だから、相手のある一面だけを見てだめだと決めつけるんじゃなくて、もっとじっくり付き合って相手の良いところを探してやるべきだぜ。相手を本当の意味で愛するっていうのはそういうことだ」

 なーにが愛だ。やはりこの男はキザである。
 少しハナについたのでひっかいてやろうか、と思って腕を伸ばしかけたところでもうひとつ気になっていることを思い出した。

「そうだ、うっかり忘れてた。私の爪や鱗はどこへ消えたんだ? こんなわけのわからない色じゃ、私の美貌が台無しじゃないか。それになんかこう、変にぶにぶにしてるぞ。こんなんじゃ簡単に怪我をしてしまう」
「わけのわからないって……。色はともかく人というのはそういうものだ。だから鱗の代わりに鎧をまとう。爪の代わりが剣だ」
「ふぅん。ニンゲンどもは魔法も何かと不器用だし不憫だな。それに翼もないし。さっさと爪なり鱗なり生やせばいいのに。ああ、尻尾もない。おまえたちはどうやって歩くときバランスを取ってるんだ。というか、早く私をもとに戻してくれ」
「でもその分身軽だろう? どうやらお嬢ちゃんはあまりお城の外のことは知らないようだな。それも魔法だ。たぶん、おまえをさらったやつが運びやすいように姿を変えたんだろう」

 蒼き勇者の言うように、竜は強大で打たれ強いがその分動きは遅い。逆に人は竜より小柄で打たれ弱いが動きが速い。
 人の身軽な性質を利用して、潜入や諜報などの際には人化魔法が使われることもある。ユミルの地竜たちがまさにその例だ。それに人の姿でいるほうが身体が小さい分、消費するエネルギーや魔力が少なくて済むので疲れにくいらしい。

 逆の発想で人々も竜化魔法を生み出そうとしたがうまくいかなかったのと、人という生き物は本能的に変化というものを恐れるためか、竜化魔法の研究はあまり浸透せず今ではほとんど廃れてしまっている。

「うまいやつだと翼だけ残したりして化けてるのを見たことがある。俺ももし翼があったら空は飛んでみたいと思う。尾はいらん。あんなの邪魔なだけだろ」
「なるほど。よくわからんが、とにかく魔法でどうにかなるのか。よしわかった。それじゃあ、さっそく治せ。このままではどうにも落ち着かない。私はやっぱりこの手が蒼くないとどうにも変な感じがする。いや、その前に翼を返せ。この私に歩けというのか? ものすごく不便だぞ」
「悪いが俺は魔法使いじゃない。俺はこの剣と共に生きることを誓ったんだ。だから魔法は使えない」
「なんだ、使えないやつか。今どき剣とは古くっさいやつだなぁ。剣士をやってるなら、せめて付呪魔法ぐらいはできるんだろうな」
「エンチャントのことか。大丈夫だ、拠点に戻れば俺の仲間がやってくれる」
「まるで使えないな。まぁいい。それじゃあ、早くその仲間の魔道士のところに連れて行け。これは命令だぞ」
「こんなときだけはお姫さまみたいだな。はいはい。わかりましたよ、大アクエリアス姫様」

 ため息をつきながら蒼い男は私を持ち上げると、最初のように肩に背負い上げて歩き始めた。

「だから! その担ぎ方はやめろ! もっと方法があるだろうに……。そうだな、私はお姫さまだっこがいい」
「やれやれ、注文の多いお嬢ちゃんだぜ」




 一方その頃、アクエリアスたちの進む森の先では、フレイたちが船を停泊させてこの浮島に上陸したところだった。
 まさかドローミの研究所がこんなところにあるとは知る由もなく、ここなら追手にも見つかるまいと船の修理のためにこの島を選んだのだ。

「森があってよかった。船はもちろんのこと、追手から僕たちの姿も隠せる」
「しっかし見渡す限りの森っすねぇ~。大樹以外にもこんな緑がいっぱいの場所があるなんて知らなかったっすよ」
「こういう無人島は手付かずの自然が残っているからな。我々が知らないだけで、意外とけっこうあるのかもしれん」
「うむ、これだけあれば資材は余裕じゃな。ではリンドヴルム、お主は風の刃で切断できるじゃろうから、木材を集めてくれ。それからセッテは金属を探すがよい。炎が使えるお主なら土を焼いて金属とそれ以外を分離させられるからの。そしてフレイ、お主は私とともに二人が集めてきた材料を使って船の修理じゃ。大地の魔法があれば木材も金属も加工は難しくはないはずじゃからな」

 手分けして船の修理を開始したフレイたち一行。ここなら船の修理に専念できると安心し切っていた。
 だがそんな様子を覗き見られていることには誰も気付いていない。いや、気付きようがなかった。なぜならずいぶん離れた位置にその覗きの犯人がいたからだ。

 バルハラ王城のとある一室。
 トロウは水晶球を取り出すとそれを右手に乗せ、その表面をなでるように左手を這わせながら呪文を唱える。

「天地を見渡し言伝運ぶ魂の石、ラタトスクよ。汝が位置を示せ」

 すると水晶球にフレイたちが船を修理をしている光景が映し出された。

「ほう、なるほど……。偶然にせよ、あの島にたどり着くとは悪運の強いやつめ。あれからドローミと連絡が取れないことを考えると、もしや奴らにやられたか? まあいい。ドローミがいなくとも、グレイプニルはすでに実用段階に達している。それよりも気になるのは竜姫の行方だ。奴らがドローミを倒したとすれば、竜姫も奴らと同行しているはずだが……ここには姿は見えないようだな。ドローミはいらんが、アクエリアスはニヴル攻略に必要だ。なんとか確認しておきたい。誰か適当な奴はいただろうか?」

 トロウが左手をかざすと魔方陣が現れて、そこから放たれた光が部屋の壁に陰影で地図を描き出す。それは大樹を中心としたこの周辺の空域の図だ。
 地図の上では小さな点がいくつも動き回っている。トロウはこうして自分の手下たちが今どこにいるのかをある程度は把握することができるのだ。
 そしてそのうちのひとつがドローミの島の近くにいるのを確認すると、再び視線を水晶球のほうに戻す。 

「おい、ヴァルト! 第五竜将ヴァルト、答えなさい!」

 水晶球に向かって呼びかけると、フレイたちのいる景色が消えて、こんどはどこかの青空が映し出される。そこに映っているのは、ムスペルスへ向かう前にフレイたちを襲ったあの風竜ヴァルトだ。

『ああん、トロウかァ? オレ様は言われた通りにやったぜェ。だから文句を言われる筋合いはねえと思うんだがなァァァ』
「ふん。失敗しておきながらずいぶんと態度の大きいことですねぇ……。まあいいでしょう。もう一度おまえにチャンスを与えます。ドローミのところにフレイたちがいます。今一番近いのはおまえなので、ちょっと行ってきなさい」
『失敗じゃねェェェ! あれはセルシウスの邪魔が入ったからだ! それがなけりゃァ、オレ様が勝ってたんだ! そんで? 今回もフレイをとっ捕まえりゃァいいのかい』
「それもありますが、ドローミのところにいた竜姫が消えましてねぇ。私の予想ではフレイたちと共にいるはず。捜し出して城まで連れてきなさい」
『何ィィィ? あいつ苦手なんだよ。実姉にやらせりゃァいいだろうが』
「ヴァルト。私はもう一度だけチャンスを与えると言っているのですよ。おまえに拒否権などありません。助手をつけてやる代わりに、今度こそ失敗は許しません。……よろしいですね?」

 そう言うトロウは無表情だったが、ローブの奥の眼光は有無を言わせぬ気迫を放っていた。水晶球の向こうにもこちらの様子が見えているのか、渋っていたヴァルトも素直にその命令に従う素振りをみせた。

『ちっ……。わァーったよォ! 行きゃァいいんだろ! まあ、行けば今度こそクルスの奴と決着をつけられるしなァァァ……』

 文句を言いながら、水晶球の向こうのヴァルトは飛び去って姿を消した。

「実姉に任せられるわけなどない。この件は彼女にも黙っているのだからね……。イシュタムは有能だ。ヴァルト、おまえとは違ってね。だからまだ手放すわけにはいかないのだよ。少なくともニヴルを落とすまでは、ね。ふ、ふふふ……」

 ムスペルスの次はニヴルヘイムに狙いを定めたトロウ。奇しくも、それはまたしてもフレイたちが次に向かおうとしている場所だった。先手を打ってフレイに協力しそうな勢力を潰す目的なのか、あるいは他に目的があるのか。そもそもこの漆黒の魔道士は何を目的に行動しているのか。それは今はまだこの漆黒の魔道士本人にしかわからない。

 ムスペルスに送り込んだ魔道士と同様、今度はトロウは背後に控えていた凍てつくように蒼いローブに身を包んだ魔道士に目で合図した。するとその魔道士は静かに頷き、「では作戦通りに」と告げてやはり転移魔法を使ってどこかへ――おそらくはニヴルヘイムへ――と姿を消すのだった。


Chapter12 END

魔法戦争13
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