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  • 魔法戦争17

魔法戦争17

最終更新:2017年07月01日 03:27

jelly

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Chapter17「セッテの能力」



 氷の城を出ると、オットーとフリードが待っていた。
 どうやらフレイが戻ってくるのが遅いので、心配していたらしい。

「クルスに様子を見に行かせたのですが……。何かあったのですか、王子?」
「大丈夫だ、待たせてすまない。だけど交渉はうまくいかなかった」
「やはりだめでしたか。ムスペのときと同様、氷竜にも我々に協力するメリットがない。失礼ながら、今回も難しいだろうとは薄々感じておりました。クエリアの件があるのであるいは、と思ったのですが」

 ニヴルヘイムへ向かうことは自分が提案したのに、こんなことになってしまって申し訳ないとオットーは深く頭を下げた。

「君のせいじゃない。だめだったものは仕方がない。落ち込んでいる暇があったら次のことを考えないとね」

 そうオットーに言うと同時に、それは自分自身にも言い聞かせる言葉だった。クルスに諭されたフレイは、今はもう吹っ切れたような顔をしている。

「それでさっそくなんだけど、みんなを頼らせてほしい。ムスペもニヴルもだめだった。もう僕には心当たりがない。……これからどうしたらいいと思う?」

 この空にはムスペルスやニヴルヘイム、そしてユミル以外の国が存在しないわけではない。だがそれは、ここから遥かに離れた空域にある。ほとんど縁も交流もない国が、星の裏側にあるような遠国のユミルに手を貸してくれるだろうか。
 オットー、クルス、フリードの三人はそれぞれの意見を言った。

「王子、ここは発想を転換してみてはどうでしょう。国にこだわる必要はないのではと思います。例えば風竜のように国を持たない者もいる。地道で長い道のりにはなりますが、一人ひとりそういった者を味方につけていく方法もあります」
「ほう、たしかにその通りじゃ。どこかに我々の他にもトロウに反旗を翻そうと機を待っている者もいるかもしれん。それに人間とてすべてが奴に共感しているわけでもあるまい。無理やり従わされておる者もいるはず。そういった者を味方につけるのもひとつの手じゃな」
「それなら俺もひとつ提案させてもらうぜ。前に話したアルヴのことは覚えているか? そこには俺みたいな傭兵や、ワケありで身を隠しているやつ、他に行き場がなくて流れてきたやつなど、色んなやつがいる。もしかしたらあんたに共感してくれるやつもいるかもしれないぜ」

 そうだ、アルヴだ。この蒼い傭兵はそこから依頼を受けてやってきたと以前言っていた。人や竜の集まる場所に乏しいこの空に、まだ行ってない場所があった。そこに行けば何か可能性があるかもしれない。
 フレイはそう考えて、次の目的地をアルヴに決めた。

「フリードの依頼主っていうのも気になってたところだ。それじゃあ、アルヴへの案内をお願いしたい」
「よしきた。といっても場所を言葉で説明するのは難しい。まずは船に戻ろうぜ」
「そうしよう。ところでクエリアは?」
「お譲ちゃんはさすがにニヴルに残るだろ。あんなんでもこの国の王女様だっていうんだし、まだ幼いから親御さんも心配するだろうしさ」

 話がまとまったところで、四人は氷の地下空間を後にするとニヴルヘイムの地表へと出た。どこまでも氷の大地が広がっていて、その中にぽつんと小さな船が浮かんでいる。クルスが大地の魔法でツタのはしごを下ろして、それで船の上に登る。

「さてと。それじゃアルヴへの行き方なんだがな。正確には俺が案内するわけじゃないんだ。まずはこいつを見てくれ」

 そう言ってフリードは、首にかけた小さな袋から緑色の玉を取り出した。ビー玉ほどの大きさで覗きこむともやのようなものが見える。

「中に緑色のもやが見えると思う。そいつが偏っている方角に向かえばいい」

 アルヴは浮島ではなく、雲そのものを魔力で固めて作られた足場の上にあるのだという。そのため、その位置は風に流され常に一定ではない。
 どこにあるかもわからない、しかし確かに存在する雲の島。地図に載らない秘密の島。それが隠れ里アルヴだ。

「確かな場所がわからんのでは、自動航行はできんのう。仕方がない、このクルス船長が自ら舵をとってやろう。ほれ、その石ころを私に貸せ」

 緑色の玉を受け取ると、クルスは舵を取りに向かった。
 やがて魔導船グリンブルスティは、南西の空へと動き始めた。




 一方その頃、ドローミの島ではセッテが必死に介抱した甲斐もあり、セルシウスがようやく意識を取り戻していた。あくまで応急処置しかできず、まだ身体中にはいくつもの傷跡が残っているが、起き上がれる程度までには回復を見せていた。

「心配をかけたな、セッテ」
「なーに言ってるっすか! ムスペで修行してた頃は散々世話になってたっすからね。お互い様っすよ」

 屈託のない笑顔でセッテは答えた。

「それに困ってる友人を放っておけるほど、おれは薄情じゃないっすからね」
「友……か。私のことをそう呼んでくれるのは、おまえだけだな」
「兄貴に聞かれたら、一国の王子に対して礼儀がなってない! なーんて怒られそうっすけどね。でもおれは一緒に城を抜け出して食べた、ムスペまんじゅうのあの味は今でも忘れないっすよ」

 それは10年ほど前のこと。ムスペルスで炎の魔法の技術と知識を高めるために修行していた頃のことだ。
 その当時は人と火竜の交流は今以上に浅く、修行とはいってもムスペルスで研究を行っている学者や賢者たちから教えを請うというもので、基本的に人と火竜が交わることはほとんどなかった。

 しかしセッテは違った。
 あろうことにもムスペルス王城に一人で乗り込んでいき、そこにいた火竜をつかまえて、直接魔法の教えを請うたのだ。持ち前の好奇心というか、怖いもの知らずというか、そういったセッテの前向きな性格だからこそ為せた業だった。

 最初は馬鹿にして相手にもしない火竜たちだったが、しだいに面白半分で火竜の子どもたちがセッテの相手をするようになった。仔竜たちは力の差を見せつけてやれと言わんばかりに稽古と称してセッテに厳しく当たったが、そんな仔竜たちの炎の魔法をセッテは見よう見まねであっという間に修得してしまい、仔竜たちでは手も足も出ないほどの実力をつけるのに時間はかからなかった。

 その噂はすぐに広まり、火竜王は面白がって王子の訓練にセッテを参加させるように命じた。セルシウスとセッテが初めて出会ったのはそのときだ。
 それから数年を共にして、二人の間には強い絆が芽生えていくことになる。

 セッテはこう考えていた。
 孤独は心を冷たくする。間違った道に進んだとき、それを正してくれる者がいないこと、それは不幸だ。
 これは友人間の話だけではない。地位や種族にも言えることだ。
 身分が違うから、種族が違うからといって一歩距離をおいた付き合い方をするのは間違っている。逆だ。身分が違うから、種族が違うからこそ、お互いのことをよく知るためにより近い距離で接するべきだ。道に迷ったときは共に迷い、過ちを犯せばそれを教えるために。
 中にはそれをうとましく思うものもいるだろう。しかし人を問わず、種族を問わず、誰とでも友達になれるその性格は、紛れもなくセッテの長所の一つだった。

「私も忘れてはいない。忘れるものか。そのとき父上にひどく怒られたこともな」
「いやぁ、あのときのファーレンハイト様は超怖かったすよねぇ! あははは」
「ははは。まったくだ」

 二人してひとしきり笑ったあと、セルシウスがゴホゴホと咳き込んだ。

「おっと、安静にしてなくちゃだめっすね」
「すまんな……。私は故郷のことが心配だ。それに父上も。早く力を取り戻して、様子を見に行きたいのだが」
「無理しちゃだめっすよ。まだ空を飛べるほどの体力は戻ってないんすから。何か回復させる手段でもあればいいんすけど。薬草とか生えてたらラッキーっすけど、おれじゃ雑草と薬草の見分けもつかないし、うーん」

 しばらく首をひねっていたセッテは「そうだ!」と閃いて立ち上がると、突然走り出した。

「ちょっと待て。どこへ行くんだ?」
「フリードが言ってたっすよ。近くに水竜のおちびちゃんが捕まってた建物があるって。研究所らしいっすから、きっと回復薬のひとつぐらいあるはずっす。おれ、ちょっと見てくるっす!」
「一人で大丈夫か?」
「平気平気! セッちゃんはそこで待ってるっすよ」

 笑顔で手を振りながら、セッテは氷が溶け始めた森の向こうへと消えていった。




 蒼き勇者の襲撃を受けてから数日の時が流れたドローミの研究所だった施設。
 今や人の気配もなく、放置されたがらくただけが戻らない主の帰りを待つ。
 そんな廃墟も同然の建物に蠢(うごめ)くひとつの影があった。
 影は何かを探すように、がらくたの山をひっかきまわしている。

「何があっタのかは知ラないが、誰モいないなラ好都合だ。何かオれでも使えソうなモノはないダろうか……」

 肉が腐り落ちて骨がところどころ露出した異形の存在。それは以前ドローミのもとから逃げ出したはずの、あの竜くずれだった。
 ドローミの言っていたように、ボロボロになった翼では空を飛ぶことができず、ふらふらとこの浮島の中をさまよったあげく、結局またここに戻ってきた。
 今のままではどこへも行けない。この島に唯一ある建物はここだけだ。だから竜くずれは、島を出る手段を求めてこの場所に帰ってきたのだった。

 竜くずれはがらくたの中から薄汚れた魔道書を手にとって、適当なページを開いてみた。そこには手書きの文字と、魔方陣や幾何学模様の図が並んでいる。
 文字の文化を持たない竜には魔道書は読めなかったが、図の意味ならば少しは理解できた。

「これはオれの知っていル術式とは違うな。ニンゲンが独自に生み出シたものか」

 そもそも魔法とは一般的なものこそ広く知られているが、中には特定の誰かの手によって、あるいは特定の状況下で独自の進化を遂げたものも存在する。
 使用者の技量はもちろんのこと、その意志や想いが形となって具現化するというのが本来の魔法というものだ。

 人間はあくまで呪文によって精霊の力を借りて魔法を使っているだけに過ぎず、それゆえに行使できる力に限界がある。それが精霊魔法の限界だ。己の魔力に依存し、自身の想いを発現させる精神魔法こそが本来の魔法に近い。
 だがこの魔道書にあるのは、そのどちらでもないようだった。

 竜くずれの手に取った魔道書にある紋様は、例えるならば電気回路の増幅器を魔法で再現し、さらにその効率を高めたもので、この方法を用いれば魔力が弱い者でも強大な魔法を実現し得ることを示していた。
 これは魔法というよりも科学に近い。いや、魔法と科学の融合と言うべきか。

「こんナ方法を思いつクとは……。これはあいつが書いタのか? 頭のおかしい奴ダとは思っていタが、こレ程までとは。まるで悪魔のようナ男だ」

 しかしこの術式を実際に使うとなれば、使用者の受ける負荷は著しいことになるだろう。その魔道書が示していたのは、生命力を消費して魔力を増幅させる方法であり、使用者にそれに耐え得るだけの肉体を必要とする。もし使用者にそれだけの生命力がないのであれば、それ相応の代償を捧げなければならない。
――それがたとえ、他者の生命力であったとしても。

 ドローミは竜くずれたちを失敗作と呼ぶこともあった。
 それは実際に何かの実験を試みた結果の失敗作でもあったし、それ以上はドローミとっても不要な存在でしかなかった。

 だがドローミはその不要な存在に新たな活用法を見出した。
 失敗作とはいえ、竜は強靭な体力を持つ生き物だ。そう簡単に死にはしない。
 そこでドローミは失敗作を檻に閉じ込めて、その生命力を奪って新たな術式の研究に使っていたのだ。
 もちろん、死なせてしまうようなヘマはしない。死なない程度に生命力を奪ったら、あとは竜の頑丈な身体に任せて体力が回復するまで待つ。そうして十分な体力が戻ったら、再びその生命力を「回収」するのだ。

 そうして何度も生命力を奪われ続けていった結果、失敗作たちの身体はボロボロになり、とうとうゾンビのような外見へと変わり果ててしまった。
 ドラゴンゾンビ、竜くずれ。彼らはそうやって誕生したのだった。

「それほどマでの魔力を集めテ、奴は一体何を企んでいタんだ? 何にせよ、絶対に許せナい。いつの日か、力をつけたラ必ず復讐シてやル……!」

 力に任せて握り締めると、魔道書はぐずぐずに腐り落ちて床に染みを作った。
 ちょうどそんなときだった。竜くずれと別の存在がこの廃墟を訪れたのは。

「わ。な、なんすかあれ……。ば、バケモノ!?」

 よく目立つ赤いローブに身を包んだ青年。あれはセッテだ。
 回復薬を探しに来たセッテが最初に見つけたのは、散乱するがらくたの中を這い回る異形のドラゴンゾンビだった。

「魔道士か。貴様モあの男の仲間か?」
「げっ、こっち向いた。お、おれなんか食ってもうまくないっすよ!」

 目が合うと、セッテはがらくたの山の陰に姿を隠してしまった。

「何だ、まだガキではナいか。あんナのがあいつの仲間のわけもナいな。おい、そこのガキ。ここはおまエのような奴の来ルところじゃナい。すぐに帰レ」
「そ、そうしたいのもヤマヤマっすけど、おれはまだ帰るわけにはいかないっす。セッちゃんのためにここで回復薬を見つけないと……」
「薬ダと? そんナものを探しにどうシてわざわざこんナ所へ来る必要があル」
「おれの友達が……火竜のセッちゃんがひどい怪我で動けないんすよ。この島にはここしか建物がないみたいっすから、ここで何か見つけて帰らないと……」
「ほう? ニンゲンのクせに竜を助けルのか」
「人間とか竜とか関係ないっすよ! セッちゃんは大事な友達っす!」

 たとえバケモノが相手でもセッテは馬鹿正直に事情を話した。そんな愚直ながらも純粋なセッテの言葉に、竜くずれも思うところがあったのだろう。ついてくるようにと促すと、竜くずれは建物の奥のほうへとゆっくり歩いていく。セッテは少しためらったが、恐る恐るその後に続いた。

 少し進んで倒れた棚の前まで行くと、竜くずれはガラス瓶やくすんだ色の容器が散乱する中から何かを拾い上げると、ひとつセッテに向かって放り投げた。

「わっ、とと」

 なんとか落とさずにそれを受け取る。白い小さな小瓶だった。
 ラベルの文字はかすんでいて判別し辛かったが、どうやら傷を癒す類の薬だということはどうにか読み取れた。

「もってイけ。そしてすグにここを去レ」

 それだけ言うと、竜くずれはふいと顔を背けてしまった。
 セッテはしばらく受け取った小瓶を見つめていたが、ふと顔を上げて言った。

「あんたはどうするっすか」
「オれのことは忘れろ。おまエには関係ナいだろう」
「でもあんたもひどい怪我をしてるみたいっす。これはあんたも必要のはずっす」
「気にすルな。オれのはもう薬なんかじゃ治せナい。いや、きっともう何をやっても治らナいダろうな……。だからいい。そレはおまエにやる」

 そう言って背を向けて離れていく竜くずれをセッテは引き止めた。

「ううう……。ちょっと待つっすよ! お礼も言う前にいなくなってもらっちゃ困るっす。それになんかほっとけないっすよ!」

 散らばるガラス片を飛び越えて、セッテは竜くずれの手をつかんで引っ張った。竜くずれの手は奇妙な液体が滴り落ちていて、さらにぬめぬめしていた。それは簡単にセッテの手から滑り抜けてしまうと、引っ張った勢いでセッテはガラス片の上に肘から転んでしまった。

「お、おいガキ。大丈夫か」

 ゆっくりと立ち上がるセッテの右手からは血が流れていた。転んで手を付いたときにガラスで切ったのだろう。だが、それでもセッテは笑顔で言った。

「だったらおれが治し方を探してやるっすよ。だから、もし良かったらおれと一緒に来ないっすか?」

 そして鮮血が流れるままの手を差し出した。

「おまエは馬鹿か? 会ったばかりの見ず知ラずのオれにどうシてそこまですル。おまエは恐ろしくナいのか? オれは後ろからおまエを襲うかもシれないぞ」
「それはないっすね。わざわざ薬を見つけて投げてくれるような優しいあんたが、そんなことをするはずがないっす。だからわかった。あんたはいい奴っす」

 一片の疑いもないといったような純粋な笑顔でセッテは竜くずれを見つめた。
 少し悩むような素振りを見せつつ、竜くずれは差し出された手に自分の手を伸ばしかけたが、すぐに手を引っ込めてしまった。

「いや、やはり駄目だ。オれが触ったモノは腐ってシまう。なぜかはわかラんが、そうなルのだかラ仕方がナい。だかラその手を取ることはできナい」
「それじゃあ、おれの手を取らなくていいから自分で歩くっすよ」
「自分で歩け、ダと?」

 おそらくセッテは何か深い意味をもってそう言ったのではないだろう。だが竜くずれはその言葉を次のように解釈した。

 自分で歩けとは自分の意志で歩け。いつまでも迷ってないで一歩踏み出せ。
 その一歩を踏み出さなければ、いつまで経っても何も変わりはしない。
 だから自分で歩け。誰かに手を引かれるのではなく自分の足で。意志をもって。

「ふん。やはりおまエは馬鹿だな」

 そう言いながら、竜くずれはセッテのほうへと一歩踏み出した。

「へへっ、よく言われるっすよ」

 満面の笑みをもってセッテはそれを迎え入れた。




 戻ったセッテが回復薬を飲ませると、セルシウスの状態はすぐに良くなった。
 本来、服用薬というのは飲んですぐに効果が出るようなものではないが、そこは魔法の込められた薬である。「回復薬」とは回復の魔法を込めた錠剤であり、それを飲むことで回復魔法を受けたのと同様の効果が得られる魔具の一種なのだ。

「具合はどうっすか」
「ああ、だいぶ楽になった。礼を言うぞ。ところでひとつ聞いていいか?」
「なんすか?」

 さっきからセルシウスの視線は竜くずれに釘付けだった。
 友人が薬を探しにいったと思ったら、もれなく異形のバケモノがおまけについてきたのだから、それは気にしないほうが無理というものだ。
 竜くずれのほうも、冷めた視線でセルシウスをにらみ返している。

「なんと言ったらいいのか……。アレは、その、何なんだ?」

 どう形容すればいいのかわからないといった表情で、セルシウスはドラゴンゾンビを凝視している。驚けばいいのか、怖がればいいのか、しかしセッテがつれてきたのだから温かく迎えるべきなのか。セルシウスは混乱していた。

「新しい友達っすよ」

 そんな異形の存在をセッテは迷わず友と呼んだ。
 身分も種族も関係ない。外見に惑わされることなくその本質を見抜いて誰とでも友達になれるのは、純粋なセッテだからこそ持ち得る能力だ。
 呆れたような顔で「おまえらしいな」とセルシウスはため息をついた。

 セッテが認めた相手なら心配する必要はないだろう。そう考えて、セルシウスも竜くずれに対して敬意を表して名を名乗った。

「私はセルシウスという。貴殿の名は?」
「そういえば、まだ聞いてなかったっすね。なんて呼べばいいっすか?」

 竜くずれは自分には名乗る名前などないと首を振った。曰く、自分はすでに一度死んだようなものであり、もはや昔の名前は名乗れないという。

「あえて名乗るのであレば、オれはオれをこんナふうにした奴に復讐すルことを誓った。だかラ、オれは復讐者(アヴェンジャー)だ」
「アヴェンジャー? あんまり名前っぽくない名前っすねぇ。うーん、それじゃあアヴェンジャーのヴェンさんってことでどうっすか?」
「何でもイい。好きに呼べ」
「じゃあヴェンさん。で、ヴェンさんはこれからどうするっすか?」
「ついてこいと言っタのはおまエだ。今のオれの身体じゃ一人ではどこへも行けナい。だからしばラくはおまエに同行すル。ついてこいと言っタからには、責任は取ってもラうぞ」
「何でもいいっすよ。好きにするっす」

 こうして竜くずれ改めヴェンさんが仲間になった。

 いや、勝手に仲間にしてしまった。
 フレイたちと合流したときにちょっとした騒ぎになる未来が、セルシウスの目に浮かんでいた。


Chapter17 END

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