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魔法戦争18

最終更新:2017年07月04日 03:06

jelly

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Chapter18「竜人族と侵入者」



 傷を癒し空が飛べるまでに回復したセルシウスは、セッテとヴェンを乗せてドローミの島を発ち、ムスペルスへと向かっていた。

 この負傷はムスペルスを襲撃した魔道士ヴィドフニルの手によるものだとセルシウスは話した。
 黒い炎に燃え盛る岩石を雨のように降らせて暴れまわったあの魔道士はあくまでただの陽動であり、その隙を突いて王城が謎の軍勢の襲撃を受けたという。それに気付いたセルシウスは城に急行しようとしたが、ヴィドフニルの追撃を受けて痛手を負った。
 辛くも逃げ延びたセルシウスは助けを求めて、なんとかフレイたちのいた島まで逃げ延びてそこで意識を失い、そして現在に至る。

 あれからもう数日は経ってしまっている。セルシウスは故郷のことが心配でならなかったのだ。

「人間にしては手強い魔道士だった。たった一人で火竜相手に互角か、もしかしたらそれ以上の魔力を持っているかもしれない」
「ふーむ。金魔将ヴィドフニルっすか……。ヴァルちゃんが第五竜将とかいう肩書きを持ってたから、それと同じようなもんっすかね。きっとトロウの手下っす!」
「よもや父上が人間に敗れるとは思わないが、無事を確認しないことには気が治まらない。私の事情に巻き込んでしまってすまんな」
「いいっすよ。おれだってムスペのことは気になるし、ヴェンさんはどこまでもおれについてくるって言ってるから、文句は言わないっすよ」

 竜くずれのヴェンは、好きにしろというような目でこちらを見つめている。
 あまり話さないのでセルシウスはこの竜くずれのことがよくわからなかった。
 セッテがつれてきたので危険な相手ではないのだろうが、常に鋭い目をして気が張り詰めたような態度を取っている。そんなヴェンを見ていると、見ているほうも緊張してしまう。

「ところでヴェン殿。見たところ貴殿は少なくとも火竜ではないようだが、ムスペルスは大丈夫なのだろうか。なんというかその……貴殿は……火が苦手そうだ」

 ドラゴンゾンビ然としたヴェンの姿は、まさにアンデッドそのもの。そういった反魂の存在は概して炎に弱いものである。

「……オれはもとは竜人族だ。だかラそのへんの得意苦手は、このガキと似たようなものだ。こいつが行って平気な場所ナら、オれも問題はない」

 ドローミの研究所に囚われていた竜は火竜、氷竜、地竜、風竜と様々だったが、とくに人と竜の交わりによって生まれるという竜人に強い興味を抱いていたドローミは、ヴェンのような竜人族もどこかから見つけてさらってきていたのだ。

 竜人族とはその名のとおり、竜と人の混ざったような姿をしているが、その姿は一様ではない。人の血が濃ければ、ツノや翼がある以外はほとんど人と変わらないような外見をしているし、竜の血が濃ければほとんど竜と同じ姿をしている。
 竜族と竜人族で明らかに違うのは、直立二足歩行が可能かどうかという点だ。


 火竜は大地をしっかりと踏みしめる四足に二対の大きな翼を持っている。いわゆるドラゴン然とした姿で、灼熱や高温に耐える頑丈な鱗を持っている。

 氷竜は細長く蛇のような胴体に翼と四肢を持ち、氷の結晶に似た優美なツノや飾りヒレを持つ。水竜はその亜種で、より発達したヒレと珊瑚のようなツノがある。

 地竜は強靭な後ろ脚を持つため二本の足で立つことができるが、直立できるわけではない点で竜人とは違う。前足が自由な分、手先が器用な者が多い。

 風竜は前足が翼になっているワイバーン型の竜で、高い飛行能力を持っている。飛ぶことに特化して竜にしては小柄の者が多いが、ヴァルトは例外のようだ。


 ヴェンは竜の血が濃いらしく地竜そっくりの外見をしているが、背筋がまっすぐ伸びているので竜ではないことがわかる。背丈はセッテより少し高いぐらいで、竜にしては明らかに小さいのも竜人である証拠だ。
 翼はあるがボロボロになっており、長い尾もほとんど骨だけになっている。頭上には二対のツノがあるが、片方は折れている。皮膚は体毛や鱗は確認できず、あちこちただれて腐臭を放っている。
 そんな強烈な外見をしているので、竜人というよりはドラゴンゾンビと言われたほうがしっくりくるぐらいだ。

「セルシウス、オれに気をつかう必要はナい。どうせオれはもともとバケモノだ。ニンゲンでも竜でもナい中途半端な存在だ。竜人族が嫌われてルのは今に始まったことではナい。だかラ、気にすルな……」
「う、うむ……」

 セルシウスは返す言葉が思いつかなかった。
 竜人族の立場は少し複雑なものがある。気にするなと言われても、そう簡単に割り切れるような問題ではないことを、この世界の誰もが知っている。

「まあまあ。難しい話はおしまいにするっすよ。ムスペではおれがバリアを張るんで心配いらないっす。ほら、そろそろムスペが見えてくるっすよ」

 重くなりかけた空気を明るく笑ってセッテが吹き飛ばす。そして指差す先には、見覚えのある雲塊が遠景に姿を見せ始めていた。




 時を同じくして、ニヴルヘイム上空を行く魔導船の上でも同様に竜人族のことが話題に上っていた。フリードが言うには、これから向かうアルヴにはその竜人族がたくさんいるのだという。

「もともとアルヴってのは、竜人たちが作った隠れ里らしいぜ。だから、わざわざ地図にも載らない場所も常に一定じゃないような島雲の上に存在してるんだと」
「なるほど。そんな場所じゃ不便そうだと思ったけど、それなら納得だ。竜人族は何かと差別されがちだからなぁ……」
「竜でも人もないってな。話してみると気のいいやつらなんだけどな。人の血が濃いやつだと、外見がほとんど同じだから言われなきゃわからんぐらいだ」

 どちらかの血が濃ければ、その外見はどちらかに寄った姿で生まれてくる。人の血が濃い竜人ならば、竜人であることを隠して普通に生活することもできるだろうし、竜の血が濃ければ身体が小さいことを馬鹿にされる以外は、竜族の中で生活することもできるかもしれない。

 だが最も苦しむのは、そのどちらでもない者だ。
 人にもなりきれず、竜にもなりきれず、外見上もそれらが混ざり合った中途半端な姿で、どちらの種族からも忌み嫌われる。

 人は純血を重視する生き物だ。竜の血が混ざった者はもはや人間じゃない、と彼らを迫害してきた。人は竜人の存在を快く思わない。
 竜は誇りを重視する生き物だ。人の血が混ざった者は竜としての誇りを汚している、と彼らを見下してきた。竜は竜人の存在を認めない。

 そうして世の中から爪弾きにされた竜人たちが、身を寄せ合ってできた集落こそがアルヴだった。位置の不確かな隠れ里は、立場の弱い彼らが唯一落ち着ける場所であり、周囲からの迫害から逃れることのできる場所でもある。
 いつしかアルヴは、そういった世界から見放されたものたちの集う、彼らだけのための安息の地となっていったという。

「島雲の特性に加えて幾重にも魔法を重ねてあって、そこに行き着く方法を知らない限りは絶対にたどり着けないようになっている。さっきの緑の玉もその方法のひとつってわけさ」

 フリードの取り出した玉はアルヴのある方向を示す魔具だ。今はクルスがその玉に従って船を進めてくれている。

「そんな厳重に隠されてる里に僕らなんかが踏み込んでもいいんだろうか」
「心配すんな。実は俺、会ってからずっとあんたらの様子を見張ってたんだ。だけどフレイたちなら信用できると思ったね。それに神竜さまも、あんたには興味があるみたいだったし……」
「神竜さま?」

 そう聞きかけたフレイの質問は、大きな物音に遮られた。
 船の中のほうで何やらドタバタとものが倒れたりするような音が聞こえる。
 何事かと二人で様子を見に行くと、オットーがそんな二人を出迎えた。

「王子、密航者がいたので捕らえておきました」

 そう言うオットーが両手でぶら下げているのは、見覚えのあるお譲ちゃんだ。

「はなせはなせェ~っ! 腕が痛いだろ。こら命令だぞ! すぐにはなせ~!」

 捕まえられた猫のようにクエリアはぶらんとぶら下がって、床につかない足を必死にじたばたさせている。

「なんだお譲ちゃん。ついて来ちまったのかい? そんなに俺が恋しかったのか」
「うるさい黙れ。家来のくせに勝手にいなくなるとはいい度胸だ。そんなおまえはお仕置きに、このわたしがぎったんぎたんのめっためたのべっこべこの……」
「はいはい。それでフレイ王子? この家出娘をどうしようと思う?」
「うん。すぐに連れ帰そう」

 船はまだニヴルヘイム上空を飛んでいる最中だ。引き返すのにそれほど時間はかからない。クエリアを送り帰す算段を話していると、オットーの手を振り払ったクエリアが船内から逃げ出そうと駆け出す。
 オットーが短く呪文を唱えると、風で扉が閉まりお譲ちゃんの逃走を阻止した。

「ぐぬぬぅ。お、おにょれぇぇぇっ」

 クエリアは開かない扉にがりがりと爪を立てている。

「それで? お譲ちゃんは密航してどこへ行こうとしてたんだ」
「ふーんだ! おまえに話してやる筋合いなどないっ!」
「じゃあ俺も理由を聞いてやる筋合いはないね。クルスに言ってすぐにニヴル城に引き返してもらうかな」
「わっ。ま、待て! そんなのずるいぞ! わ、わかった。話す。話すから……」

 しゅんとして大人しくなったクエリアは、静かに家出の理由を話し始めた。

「実は黙って城を出てきてしまったんだ。だから連れ戻されるのは困る。お母様に叱られてしまうじゃないか」
「子どもは叱られて大きく育つもんだぜ」
「ああもう、うるさいなぁ! わたしは城での生活はもううんざりなんだ。いつもいつも魔法とか歴史の勉強ばかり。外は悪い火竜がいっぱいいて危ないからって、城から出してもらえないし。だからわたしはずっと外の世界が見たかったんだ。フリードにさらわれたのだって、こっそり抜け出してフヴェルゲルミルの泉を見に行ったときだったし……」
「俺じゃなくてあの変態科学者にだろ。でもさらわれて、もう懲りただろ?」

 するとクエリアはぶんぶんと首を振った。

「それは違う! たしかにちょっぴり怖かったけど、あんなのへーきだ! 初めてニヴルを出て、初めてニンゲンを見て、初めて氷じゃない大地を見て、ずっと寝てたけど初めて火竜を見て、それから初めて風竜と地竜(クルス)を凍らせた!」
「お、おう」
「初めて空飛ぶ船にも乗ったし、初めて晴れてる空も見た! 何もかもが初めてですごく新鮮だった。すっごく楽しかった。外の世界はこんなに広いんだと思った。でも……城に戻ったら、そんなのもうひとつもない。わたしはそんなの嫌だ。もっとフリードたちといっしょにいたいと思った。だから……」

 必死にそう語るクエリアのことをフレイは理解できなくもなかった。
 たしかに幼い頃はフレイも同じようなことを考えていた。勉強も剣術や魔法の訓練もうんざりだった。だからこそ、よくセッテと城を抜け出しては城下街に遊びに行っていたのだ。
 しかし今なら、そうさせた親の気持ちもわかる。子どもに少しでも立派になってほしいから習い事をさせて、子どもが心配だからこそ自分の目の届く場所に置いておきたいと考える。それが王子や王女であるならば、なおのことだ。

「王子。まさかとは思いますが、クエリアはまだ幼いんですからね」
「わかってる。説得するよ」

 扉の前に座り込んでしまったクエリアを、フレイは優しく諭そうとした。

「たしかに今は退屈かもしれない。でもクエリア、それが未来永劫ずっと続くわけじゃないことはわかってるだろう? 女王だって悪気があって厳しくするわけじゃないんだ。もっと大きくなればいつかクエリアもわかる時がくるよ。だから今はガマンして、お母様に心配かけないようにしよう?」
「むう。いつかっていつだ? もう二百年ガマンしたのに……」
「にひゃく……!? ううん。さすが竜は桁が違うというか。ごめん、オットー。ちょっとこればかりは擁護できなくなってきたかも」

 説得失敗。代わってオットーとフリードがあの手この手で説得を試みるも、クエリアは扉の前から座り込んだまま頑として動かなかった。
 どうしたものかと悩んでいると、

「話はだいたい聞かせてもらった。ここは私に任せてもらおうかのう!」

 勢いよく扉を開けてクルスが現れた。

「ふぎゅッ!!」

 内開きの扉はクエリアを壁のほうへと弾き飛ばした。
 唖然として顔を見つめてくる三人に、クルスはただ首を傾げるだけだった。




 顔を真っ赤にして怒るクエリアをよそに、クルスは自分の考えを述べた。それは意外にもクエリアに味方するような提案だった。

「お主も竜ならば、自分の要求を通したいときには、自分の力で道を切り開くものじゃぞ。親がなんじゃ。そんなもの倒して屍を乗り越えていくぐらいのつもりで行け。それともお主はいつまでも親の言いなりになっておるつもりか?」
「そうか! たしかにお母様が死んだらわたしは自由になれるな。よーし、わかったぞ。すぐに船を戻せ。ちょっとお母様と一戦交えてくるっ!」

 何か誤解しているような気はするが、どうやらクエリアは納得したらしい。
 まだ幼いクエリアが母親の竜と戦って勝てるはずもない。それを見越した上で、クルスはうまく言い包めて、クエリアが城に戻る理由を作ったのだ。
 してやったりの顔で、どうだと言わんばかりにクルスは三人に目で合図した。

「それじゃあ、お嬢様のいうように氷の城へ戻るかのう。異論はあるまいな?」
「ああっ! 異論ありだぞ。またわたしを子ども扱いしたな!」

 ともあれクエリアの同意を得られたので、船は氷の大地の空を引き返した。
 しかし、しばらく行くと入国の際に引き止めたあの氷竜が、再びグリンブルスティを引きとめた。

「どうした? 知らぬ相手でもあるまいに」
「それが実は現在、侵入者の件で少しピリピリしておりまして……」

 氷竜が言うのを聞いてクエリアは慌ててフリードの背中に身を隠したが、話を聞いているとどうやら自分のことではないとわかって、ずかずかと前に出てくると命令口調でその氷竜に尋ねた。

「おい、フィンブル。何が起きているのだ? わたしにも聞かせろ」

 フィンブルと呼ばれた氷竜は、突然現れたクエリアに驚いて身を固くした。

「アクエリアス様!? どうして貴女がこんなところに」
「そんなことはどうでもいいだろう。侵入者とは何のことだ」
「はい。それが怪しいニンゲンが姿を隠して城の様子を窺っていたので、問い詰めたところ慌てて逃げ出していったので、警戒を強めているところでして」
「ふうん。面白そうだなぁ。敵は何人だ?」
「一人ですが……はっ。いけませんよ!? 危ないですから! 捜しに行こうなんて絶対にやめてくださいよ!」
「知ったことか! わたしが行くと言ってるのだぞ。どうしても止めるというのなら、わたしを倒してシカヴァネ? を乗り越えていくぐらいのつもりで行け」

 さっそく覚えたばかりの言い回しをちょっと間違えて使いながら、クエリアは勢いよく走ると船のへりから空中へと飛び出した。

「とうっ」

 そしてそのまま氷の大地へと落ちていった。

「…………あの馬鹿は何をやっておるのじゃ?」

 冷めた目で小さくなっていくその姿を追いながら、クルスは早く拾いに行ってやれと氷竜に言った。フィンブルは大慌てで落ちていくクエリアを回収しにいった。

 船の上に戻されたクエリアは不満そうなふくれっ面を見せている。

「むぅぅ~っ! 忘れてた。この姿じゃ空が飛べんじゃないか。おい、誰かわたしを早く竜の姿に戻してくれ。わたしの超絶びゅ~ちふるボディを返せっ」
「なーにがびゅーちふるじゃ。まさかお主戻り方も知らずに変身しておったのか」
「仕方ないだろ! さらわれてフリードに会ったときには、もうこうなってたんだから。最初に使い方の説明ぐらいあってもいいだろ。不親切だぞ」
「やれやれ、これだから最近の小娘は。チュートリアルなど不要、触って感覚で覚えていくのが基本じゃろうが。しょうがないやつじゃのう。一度しか言わんぞ」

 人の姿を取り人々の生活の中にとけ込んでいる地竜にとって、人化魔法はお手の物だ。クルスはわかりやすくクエリアのその方法を説明してやった。

「元に戻るのは簡単じゃ。まず自分の精神に意識を集中しろ。すると精神の形を心で認識できる。今は人の形をしておるのがわかるはずじゃ。そのまま体内の魔力の流れを解放し、人の器から溢れさせれば自然と元の姿で再形成される。逆に人の姿を取る場合は精神の形を丁寧に人の形に整えていって、さらにそれを壊さないように魔力を押し込んでいかねばならんから、ちとコツが要るがの」

 説明を熱心に聴くクエリアだったが、その顔には「?」が浮かんでいた。

「お子ちゃまには少し難しかったかのう。まあ、せいぜい練習することじゃな」
「う、うるさい! とにかく魔力を解放すればいいんだろ。えいっ!」

 クエリアは力いっぱい念じた。クエリアは爆発した。
 クルスは腹の底から笑っている。一方フィンブルはおろおろしていた。

 そんなくだらない寸劇をさらりと流してオットーは侵入者の特徴を尋ねた。フィンブルが言うには、侵入者は凍てつくように蒼いローブを被ったニンゲンだったという。それは言うまでもなくユミルの魔道士の特徴だった。

「魔道士……。トロウの刺客かもしれません。ここは私とフリードがクエリア姫を城へ送り届けますので、王子は船にいてください。追手の可能性もあります」
「わかった。何事もないといいけど、気をつけて」




 氷の地下空間への入口前に船を下ろすと、フレイとフィンブルをその場に残してあとの四人は氷の城エリューズニルへと向かった。
 歩きながらクエリアはうんうん唸っている。クルスに教えてもらった元の姿に戻る方法がどうしてもうまくいかないらしい。

「お譲ちゃん、ちゃんと前見て歩けよ。滑って転んでも知らないぜ」

 しかしよほど集中しているのだろう。フリードがからかってもクエリアは黙ったままで、まだうんうんと唸り続けている。

 アリの巣のように入り組んだ氷の洞窟は、ニヴルヘイム特有の光虫を使ったランプで青や緑、紫色などに照らされている。鏡のような氷の壁に反射されたランプの光は、まるでステンドグラスのように幻想的な色で周囲を染めている。
 身体の細長い氷竜が通れる程度の広さなので、他の竜からすれば洞窟は狭くて通れないが、人間からすれば十分な広さのトンネルだ。

「それにしてもなかなかに美しい景色だ。いつかフレイヤ様と二人でこういったところに来てみたいものだな……」

 小さな声でそっとオットーがつぶやいた。それを耳ざとく聞きつけてからかうのはキザな蒼い男だ。

「おっ。緑のお兄さん、誰だいそれは。お兄さんのコレかな?」

 そう言ってフリードが左手の小指を立てる。

「け、決してそういうアレでは。フレイヤ様はフレイ王子の姉上だ。私とは身分が違う。そんなフレイヤ様に恋をするなど、決して許されることではない」
「でも気になっちゃう。そう顔に書いてあるぜ。ナンだったら、俺が何かアドバイスしてやろうか? 蒼き勇者の恋愛テクニックその16! 高嶺の花を落とす方法」
「(き、気になる! ……いや、いかんいかん。今は任務中だ。そんな浮ついた考えは捨て置かねば) お言葉感謝する。だがやはり私のような者などフレイヤ様には似つかわしくない。気持ちだけありがたく頂戴しておこう」
「なあ、オットー。俺には表情と言葉が一致してないように見えるぜ」
「ハッ!?」

 雑談を交わしながら地下空間を奥へ進む。
 噂の侵入者を捜索する氷竜と何度かすれちがったが、オットーたちはすでに一度ここへ来ているのでとくに怪しまれることもない。
 鎖国中で基本的に氷竜や水竜しかいないこの国では、それ以外の存在というのは非情によく目立つ。そういった者の噂は瞬く間にニヴルヘイム全土へと知れ渡る。たった一人の侵入者が捕まるのも時間の問題だろう。

 やがて広いホール状の空間に出た。ここはいわゆる氷の洞窟の交差点のひとつ。通路が複数に枝分かれしているが、氷の城へ向かうならこのまま正面の道だ。

「よし、もうすぐ着くぞ。っておい。クエリアはどうした?」

 どうやら足並みが遅れているようだ。振り返ると少し離れた位置に、こちらに向かって走ってくる姿が見える。

「おーい! やったぞ。ちょっぴりだけど、うまくいったぞ」

 歩きながらずっと元の姿に戻る方法を試していたらしい。そして少しコツをつかんだのか、嬉しそうに走ってくるクエリアの姿は少しだけ変わっていた。

「あ、あれは……」
「あっはっは! いいぞ、お譲ちゃん」

 クエリアの姿は身体は少女のままで、顔だけが水竜になっている。翼は片方だけしか出ていないし、少女の身体には長すぎるしっぽをずるずると引きずっている。

「くぷぷぷ。ク、クエリア。それは全然うまくいっておらんぞ。なんとも中途半端でそれこそまるで竜人族みたいではないか! だ、だめじゃ。もうガマンできん。あはははは……!」

 よたよたと走ってくるクエリアは、何かにつまずくとすてーんと盛大に転んだ。そのまま氷の地面の上を、長すぎるしっぽでぐるぐる円を描きながら滑ってくる。巻き込まれたオットーとフリードは足を取られて転び、それを見たクルスはさらに大笑いした。

「いてて。やるなぁ、お譲ちゃん」

 頭をさすりながら三人はゆっくりと立ち上がる。
 氷の地面はつるつる滑るので、気をつけないとまた転んでしまう。案の定、三人のうちの一人が足を滑らせて再び転んで頭を打った。

「大丈夫か、リンドヴルム。意外とお主は間抜けじゃのう」
「え? いや、俺は二度は転んでいないが……」

 大の字になって伸びているクエリアを起こしながらオットーが返事をした。

「ではフリードか?」
「俺はなんともないぜ。じゃあ、転んだあいつは誰だよ」

 頭を押さえて悶絶する突然現れた第三者は、ゆっくりと振り返るとフードを外して顔を見せた。フリードが好みそうな真っ蒼なローブを着たその男は、恨みがましくクエリアのほうをにらみつけると、おどおどしながら何かをつぶやいている。

「お、おのれぇ。なんてツイてないんだ。いつまで待ってもヴァルトは竜姫を連れてこないし、氷竜どもには見つかるし、変なやつのせいで転んで頭は打つし」

 男は手から冷気を出して頭にできたコブを冷やしている。
 蒼いローブ。氷の魔道士。そしてニヴルヘイムにいないはずのニンゲン。
 クエリアが叫んだ。

「あいつが侵入者だ! フィンブルの言ってた特徴と同じだ!」

 蒼い魔道士は再びクエリアのほうをぎろりとにらんだ。

「な、なんだ。ニヴルに人間が? 大人二人にガキ一人と……あれは何だ、竜人族か? ふざけた格好をしやがって。だ、だんだん腹が立ってきたぞ。相手が氷竜じゃないなら、このボクが敵わないはずもない。よ、よぉし。あいつらでウサ晴らししてやる……」

 魔道士が両手をばっと広げると、氷塊が落ちてきて氷のホールから伸びる通路をすべて塞いで逃げ道を奪った。両手から凍てつく冷気を放ちながら、蒼い魔道士は宣言した。

「お、おまえたち、覚悟しろよ! ボ、ボクは銀魔将エーギルだ! おまえたちが誰かは知らないけど、なんかムカつくから、し、し、死んでもらう!」


Chapter18 END

魔法戦争19
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