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魔法戦争20

最終更新:2017年07月10日 22:09

jelly

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Chapter20「隠れ里アルヴ」



 辛くもニヴルヘイムを脱出したグリンブルスティは、そこから南西の空を航行していた。船の後方には火竜(セルシウス)と氷竜(フィンブル)が続く。
 故郷がトロウの手下のエーギルに乗っ取られ、さらには愛する母親とも離れ離れになってしまい、クエリアは深い悲しみに暮れていた。甲板のへりに座り込んだまま、じっとして動かない。

「お譲ちゃん、ずっとああしてるな」

 そんな様子をフリードとクルスが心配そうに見つめている。

「仕方あるまい、クエリアはまだ幼いからのう。まだ親の愛情が必要な年頃じゃ。それに目の前であんなことがあったのでは、ショックも大きいじゃろう」
「女王さまからクエリアを頼むと言われた。母親の代わりにはなれないかもしれないが、せめて寂しい思いをしないようにしてやらねえとな」

 一方、合流したセッテはムスペルスの現状を語った。
 フレイたちと一旦別れてセルシウスが回復したそのあと、セッテたちは一度ムスペルスへと向かった。到着してみるとそこには火竜の姿はすでになく、数多くの兵士や魔道士が王城を占拠していた。同じくトロウの手下である魔道士ヴィドフニルの襲撃をきっかけにムスペルスは陥落し、ユミル国の占領下に置かれた。
 玉座を押さえたヴィドフニルは国号を火竜の国ムスペルス改め、煉獄の国スルトを宣言しているという。セルシウスの故郷もまた乗っ取られていたのだ。

「噂では火竜王様もやられちまったらしいっす」
「なんだって! あの火竜王が!?」
「セッちゃんは大丈夫だと言ってるっすけど、実の父親を殺されているわけですから、きっと辛いに決まってるっす。この仇はいつか絶対討つっすよ……」

 互いの情報を交換し合い、初めて顔を合わせる者どうしは互いに名乗りあった。
 とりわけ竜くずれのヴェンに関しては、最初にその姿を見かけたオットーが「船に魔物が乗り込んでいる」と警戒し、事情を知らないフリードが危うくトドメを刺しかけるなど、案の定ちょっとした騒ぎになった。
 セッテが飛び出して二人を説得し、オットーとフリードが頭を下げてなんとか事態が収集するに至る。

「申し訳ない、ヴェン殿。弟の知り合いでしたか。セッテもなかなか顔が広いな」
「……構わん。こういう反応には慣れていル。どうせオれは嫌われ者だ」
「そ、そんなことは。我々はヴェン殿を歓迎しますよ」
「余計な気を遣ってもラわずとも結構だ」
「そ、そうですか(絡みづらい相手だな……)」

 その外見からは真っ先にドラゴンゾンビという印象を受けるが、フリードはすぐにヴェンが竜人であると見抜いた。これから向かうアルヴには竜人族が数多くいるという。アルヴから傭兵としてやってきたフリードは竜人を見慣れている。

「それならヴェン。あんたもアルヴに来ればいい。あそこは変わり者が集まる場所だからな。誰もあんたを化け物とは呼ばないし、差別もしない」

 隠れ里アルヴ。人にも竜にもなりきれない迫害された竜人族の最後の楽園。
 そこにならフレイたちの力になってくれる者もいるかもしれない。フリードの雇い主というのも気になっていたので、一行はアルヴへと船を進めていた。


 その道中一頭の氷竜が船に近寄ってくると、甲板にいるクエリアに声をかけた。

「クエリア! よかった。あなたは無事なのね」
「姉上!? た、大変なんだ。母上が、母上が……」

 ニヴルヘイムの第一王女イシュタム。クエリアはその氷竜を姉と呼んだ。

「まさかニヴルヘイムがあんなことになっているなんて。一体何があったの?」
「わ、わたしのせいなんだ……。わたしがエーギルを凍らせたりしなければ……」

 あのときその場にいた四人は、ニヴルヘイムで起こったことを説明した。
 銀魔将エーギルは今やニヴルヘイムの氷そのもの。もはやニヴルヘイムには近寄ることさえ難しい状態になってしまった。

「エーギル……あの氷の魔道士が。あの男にどこにそれほどまでの魔力が……」
「姉上、あいつのこと知ってるの?」
「少しね。それにしても私がいない間になんてことを」

 しばらく考える様子を見せたイシュタムは、まずクエリアを保護してくれたことに礼を言い、行かなければならないところがあると告げて背を向けた。

「行っちゃうの?」
「クエリアは彼らといなさい。あなたを助け出してくれた彼らなら、きっとこれからもあなたを護ってくれるはず。私にはやらなければならないことができたわ」

 別れを告げるとイシュタムはまっすぐ南のほうへと飛んだ。南といえば大樹ユグドラシルのある方角。ユミル国のある地。すなわちトロウのいる場所に。

(話が違う。力を貸せば故郷には手を出さないはずじゃなかったの? 漆黒の魔道士め。一体どういうつもりなのか。問い詰めてやらなくては!)

 ニヴルヘイムの第一王女。
 またの名を第二竜将イシュタム。

 その男、トロウを問い詰めるため、氷の王女はユミルへと向かう。




 一方その頃、バルハラ城のとある一室。
 トロウは机の上に置かれた水晶球を眺めていた。そこに映るのはこちらに相対して攻撃を仕掛けてくる地竜の姿。その視点は地竜の攻撃をかいくぐり懐に飛び込んで急所を突こうとするも、突然あたりが氷に覆われて視界が真っ暗になったところで映像は途絶えた。

「ふん。ヴァルトめ、またしくじったか。せっかくの機会を無駄にするとはどこまでも使えん奴め。やはり風竜は頭が悪いようだな。それに比べて……」

 トロウが手をかざすと、水晶球には別の映像が映し出される。それはフリードたちと戦うエーギルの姿だった。
 初めは圧倒されてばかり手も足もでないエーギルだったが、ニヴルヘイムの氷と同化したことによって、瞬く間にニヴルヘイムを制圧してしまった。

「こちらはなかなか順調のようだ。やはり人のほうが役には立つな。魔力こそ弱いが、それを使いこなすだけの知恵がある。力さえ与えてやれば、しっかりと仕事をこなしてくれる。くっくっく、そうでなくてはね……」

 映像は寸でのところでニヴルヘイムから脱出するグリンブルスティを見失ったところで途絶えた。

「フレイ王子一行は悪運だけは強いようだな。いつの間にか仲間も増えたらしい。蒼い剣士とあの頭だけ水竜なのは……竜人族か? それにセルシウスもまだ生きていたとは。さてさて、王子様は次はどこへ向かうのかな」

 以前やったようにトロウは水晶球に向かって呪文を唱える。

「天地を見渡し言伝運ぶ魂の石、ラタトスクよ。汝が位置を示せ」

 しかし今回はそこには何も映らない。黒いもやのようなものが水晶球の中に充満して、そこに映るべきものを覆い隠してしまっているような具合だ。
 再び呪文を唱えてみたが結果は変わらなかった。トロウは水晶球を振ってみたり別の水晶球に取り替えてみたりしたが、やはり黒いもやが映るだけだ。

「ふむ? これは一体……」

 そして虚空に向かって叫んだ。

「アリアス! ラタトスクの調子がおかしい。ちょっと見なさい」

 すると部屋の隅に禍々しい漆黒の魔方陣が展開され、そこから漆黒の竜が姿を現した。続けて竜の姿が闇に溶けると、一瞬にして竜は人に姿を変えた。
 その姿は間違いなく最初にトロウの洪水に襲われていたフレイたちを助けてくれた、あの密偵を名乗る男と同一のものだった。

「そんなはずはない。ラタトスクは大樹の樹液を固めたものなんだ。大地の精霊の力の結晶とも言える。壊れたりするような代物じゃないはずだが」
「ではこれはどういうことだ。何も映らないではないか」
「おそらく精霊の力の届かない場所に入ったんだろうな。あるいは何者かの魔法によって妨害されている可能性もあるが……それができるとすれば、精霊と同等か、それ以上の魔力が必要になる。少なくともニンゲンの仕業じゃない」
「ふっ、『ニンゲン』の仕業じゃない……ねぇ」

 にやにやと笑いながらトロウは少しの間アリアスを顔を見つめていたが、すぐに視線を水晶球に戻して言った。

「それで? どうすればフレイたちの居場所がわかる?」
「何者かの魔法なら難しいが、精霊の力が届かない場所ならいくつか心当たりがある。時間はかかるが、そこを当たれば見つかる可能性はある。それに一時的にそういう場所に入っただけかもしれない。慌てる必要はないと思うぜ」
「ふむ。まあ、ムスペもニヴルも手に入ったんだ。もうフレイを泳がせておく必要もないからな。慌てるわけではないが、最終段階に入るためにはフレイの血を手に入れなればならないのでね。できれば早く手に入れたい」
「ならば竜将たちに捜索に当たらせよう。ところで前から思ってたんだが、フレイの血に何の意味があるんだ? あれはただのニンゲンじゃないのか」
「ふっふふふ。あれは少し事情が特殊でしてねぇ……。まあ、いずれ時が来たらおまえには話してやってもいい。だが成果を出すのが先決だ」
「ならば仕事に戻らせてもらうぜ」

 再び漆黒の竜の姿に戻ると、アリアスはバルハラ城を飛び出していった。
 暗雲立ち込める空に小さくなっていくその姿を窓から見送りながら、トロウは不適な笑みを浮かべながら独りつぶやいた。

「頼みましたよ、我が右腕。第一竜将アリアスよ……! さぁて、もうすぐ混沌の時代が幕を開ける。そのとき中心に立つのはこの私だ。ふ、ふふふ。くっくっく。あーっはははははァ!!」

 ユミル国には雷鳴が轟き、その中にトロウの高笑いが響いた。




 ラタトスクがフレイたちの居場所を感知できなくなったのは、グリンブルスティがアルヴに近づいたためだ。
 この隠れ里は入り方を知らなければ絶対にたどり着けないようになっている。偶然たどり着くような事態が起こらないように、その場所を隠すような防衛魔法も何重にも施されている。そのうちのひとつが、ラタトスクの力をも遮ったのだ。

 アリアスにお守りと称して渡されたこの小さな石ころが自分たちを監視していたとは露も知らず、そしてその監視から脱したことに気付くこともなく、魔導船は分厚い雲の中を突き進んでゆく。

 アルヴの場所を示すという緑の玉に従って進んだ結果、船は雷雲の中に突っ込む結果になった。雲の中は暴風が吹き荒れ、大粒の雨が叩きつけるように降り、今にも船に落ちてきそうな稲妻が何度も至近距離で走る。

 真っ黒な雷雲の中は一寸先も闇で、稲光がわずかな間だけその先を照らすのみ。もう船がどっちへ向いているのかも、ちゃんと進んでいるのかさえもわからない。

「本当にこのルートで正しいんじゃろうな!? これではいつ雷が落ちて黒コゲになるやもわからん。命がいくつあっても足りんぞ」
「前に通ったときはこんなに天気が荒れてなかったんだがなぁ。あっはっは」
「笑ってる場合か!」
「まあ心配はいらんさ。その緑の玉を持ってる限りは危険はないはずだ。それはアルヴへと導いてくれるのと同時に、所有者がアルヴの防衛魔法に引っかからないようにする効果もあるんだぜ」

 フリードがそういうのとほとんど時を同じくして、雷がグリンブルスティに直撃した。船体から炎が上がり、クエリアとフィンブルが水と氷で大慌てで消火にあたっている。

「危険がないと言ったばかりじゃぞ!?」
「まあ、雷は自然現象だしな。対象外なのかもな」
「ええい、ここで船が落ちたら末代までお主を呪ってやるからな!!」

 暴風をオットーが風の魔法で相殺し、暗闇の雲をセッテやセルシウスがなんとか炎で払おうとし、大きく揺れた船から落ちたクエリアをフレイがツタで救出する。各々の魔法を駆使しながら地獄のような時間を耐え切ると、ようやく船が雷雲の中を突破した。
 しばらくぶりに見る青空。雲ひとつない快晴。そこは非情に静かで、風のひとつも吹いていない凪(ナギ)の空間。その中央に純白の雲塊が厳かに鎮座していた。

 ここぞ隠れ里アルヴ。
 地図上はどこにも存在しない、しかし確かに存在する秘密の園。竜人族の国。




 船を下ろしてアルヴに上陸すると、フリードに案内されて一行はアルヴの中央にあるという大神殿を目指した。

 初めて訪れるアルヴは、これまでに知るどんな場所とも違う別世界だった。
 ユミルの城下街は王城を中心とした円形の街。計算して作られた景観は、街の形に合わせるようにして建物が作られている。ユミルは建物が街を作っていた。
 一方でアルヴは空間が街を作っているという感じだろうか。建物はまばらで、あちこちばらばらに点在しているといった印象。統一感なども見られない。しかし大小様々で形も異なる様々な建物の重なり合う影が、独特の雰囲気を形成している。

 アルヴの建物はすべてが雲でできていた。屋根も壁も扉さえも雲。ここでは雲を魔法で固めて加工する技術が発達しているらしく、フリードが言うには家具さえも雲なのだとか。

 住民の姿もまばらで、狭い空間に人があふれかえっているユミルとは正反対だ。広い空間に点在する多すぎない住民の姿。その空間の活用具合はむしろムスペルスに近いものがあるかもしれない。

 すれちがう住民の姿も様々で、その大部分は竜人族らしいのだが、以前フリードから聞いたようにその姿も千差万別で、ほとんど人間や竜と変わらない姿の竜人族はむしろ少数派のようだ。
 それゆえにフレイたちの姿がアルヴでは逆に浮いて見える。彼らの中では、竜くずれのヴェンが一番ここに馴染んでみえるほどだった。

 大神殿に近づくにつれ、雲で作られたオブジェやモニュメントが目立つようになる。このあたりには他に家はなく、閑静で神秘的な空気が感じられる。
 目的の大神殿に到着すると、フリードが先に中に入って「依頼主」にフレイたちのことを伝えにいった。

 見上げるとこの建物だけは他とは異質だった。雲だけでできた家々とは違って、神殿は大理石を加工して作られており、周囲にはアルヴにおいてはここだけにしか存在していない様々な植物や花がある。
 さらに特筆するのはその大きさだ。雲の家はそこに住む者の身体の大きさに合わせて作られているらしく、様々な姿の者が住むアルヴらしい設計になっている。だがこの神殿は明らかに大きく、あの風竜ヴァルトぐらいに巨体の竜でも余裕を感じられるほどの広さを誇っている。まさに大神殿の名の通りだった。

 しばらくしてフリードが戻ってくると、中に入るように促した。
 ここは竜人族の国だが、神殿の奥で待っていた「依頼主」は竜人族ではない。そこにいたのは竜。それもこれまでに見てきた竜とは明らかに異なる姿をしていた。

 目を引くのは純白の鱗。身体はこの巨大な神殿が狭く見える程に大きく、もし横に並べたらヴァルトでも子どもに見えてしまう程だろう。額には一本のツノ。それは水晶のように青く輝いている。そして最も特徴的なのは首の長さだ。純白の竜は首が異様に長く、その長さはなんと胴体の数倍はある。

 首の長い白竜は高い位置から神殿に現れた客人を見下ろした。

「話はフリードから聞いた。私の名はアルバス。皆からは神竜と呼ばれている」

 アルバスはかなり老齢の竜らしく、人間の目からは外見での判断が難しい竜族であっても、一目見れば年老いていることがよくわかった。
 下顎から伸びる白く首同様に長いひげが地面にまでついている。それはこの白竜がかなりの長い年月を生きてきた証拠だ。

「まずは無事にここへたどり着けたことを祝福しよう。ようこそアルヴへ。そしてそなたがフレイ王子かな。よくぞ来てくれた。私はそなたを待っていたのだ」

 神々しく澄んだ瞳でアルバスはフレイを見つめた。
 一方でフレイもこの白竜を見つめていた。そして思う。フリードはある筋からの依頼でクエリアやフレイを保護するように命じられたと言っていた。その依頼主が今、目の前にいる。

 だがフレイはアルバスとは初対面だ。それならばこの竜は一体どこでフレイを知り、そして何から何のために彼を保護するというのだろうか。
 フリードは自分からは話せないので依頼主に聞いてほしいと話していた。今その依頼主を目の前にして、フレイはずっと心の奥に引っ掛かっていたその疑問をようやく訊くことができる。

 フレイが問うと、白竜は「黒からだ」と答えた。

「黒とは?」
「漆黒の魔道士。たしかそなたらはそう呼んでおったかな」
「トロウのことですね。あの男はある時突然ユミルに現れました。思えばすべてがおかしくなったのはあいつが現れてからです。神竜様はトロウについて何かご存知なのですか?」
「うむ。すべての元凶は黒だ」

 この空の人と竜のバランスが今、大きく崩れているという。それはすべてトロウが原因だとアルバスは語った。そしてそれを看過することはできないとも。

「今やムスペルスもニヴルヘイムもあやつの手に落ちた。これ以上、黒の暴走を許しては秩序が崩壊しかねない。それはこの惑星フローティアの存続にも関わる」
「わ、惑星? スケールが大きすぎて話についていけない……。そもそもトロウというのは何者なのですか。あの絶大な魔力、まるで人間とは思えない」
「それはそうだろうな。トロウは人間ではなく竜なのだから」
「竜だって!? ずっと人間だと思ってた。そうだったのか、どうりで……」

 あの漆黒の魔道士の正体が竜であるのなら、フレイたちではまるで敵わないあの強大な魔力にも納得がいく。しかし、それにしてもトロウは力を持ち過ぎている。実際にその正体が竜だったとしても、竜族の国をふたつも陥落させるほどの力はもはや異常としか言えない。

「たしかにトロウが竜なら、ヴァルトのような竜族の手下を従えているのも納得できる。しかし、それだとなぜトロウは竜族の国を攻撃したのでしょうか」

 王を陰で操ってユミルを支配しようとするのはまだわかる。未だ、人間のことをよく思っていない竜も少なくはない。だから人間に敵対するのはまだ仕方ない。
 しかしそれならば、なぜムスペルスやニヴルヘイムまで支配下に置く必要があるのだろうか。そこは古来よりもともと竜族の地だったというのに。

 白竜はトロウの目的まではさすがにわからないという。ただ世界を滅茶苦茶にして面白がっているとも、力を誇示したいだけだとも考えられるが、それもあくまで推測に過ぎない。

「あやつが何をしたいのかはわからない。しかしこの世界において害悪であることだけは確かだ。あやつは黒い魔力に囚われておるのだ」
「黒い……魔力……?」
「これは今より遥か昔。数千年の過去のことなのだが……」

 太古の昔。人類がまだ地上で暮らしていたころ。人間という種族が誕生してまだそれほど間もない頃のことだ。

 空から燃え盛る漆黒の隕石が飛来した。
 それは空中で複数に割れ、黒い雫となってこの世界のあちこちに飛び散った。
 隕石の欠片は宇宙の強力なエネルギーを秘めており、触れたものに規格外の力を与えるという。

「太古の竜でその力に触れたものは不思議な力を使えるようになった。それが現在の魔法の始まりとも言われている。それらの魔法の始祖は魔竜と呼ばれている。そしてこの私もその魔竜のひとりなのであるが……」
「ではトロウも魔竜であると?」
「魔竜に似ている。が、魔竜とは異なる」

 例えるなら魔法剣と魔剣の違いだ、とアルバスは説明した。
 付呪魔法(エンチャント)により魔力を込められた剣が魔法剣。対して呪いが込められた剣が魔剣だ。
 どちらも手にしたものは誰でも魔法を扱えるようになるが、後者にはより強い魔力と引き換えに呪いというデメリットがついてくる。
 トロウはこの後者、魔剣に近い存在である。

 アルバスは漆黒の隕石について加えて説明した。
 飛来時に隕石に触れたものは魔力を持つに至った。
 しかし地表に落ちた隕石の欠片は、この惑星に存在する何らかの成分と反応して変化を起こした。それによって隕石はさらに強いエネルギーを秘めるようになったが、その副産物として呪いの力を生んでしまった。

 飛来時に隕石に触れた竜は魔法の力を得て魔竜になったが、その後に地面に落ちて変質した黒石に触れて力を得た者は呪いの影響を受けた。
 その呪いは、触れた者の怒りなどの負の感情を増幅させる。

「これも私の推測に過ぎないが、トロウはおそらくその黒石に触れて強力な力を得たのではないかと思う。魔剣は黒石を使って作られた剣で持つ者を暴走させるが、トロウは黒石から魔力を得て、その呪いによって暴走しているのではないかと」
「黒石の……呪い……」
「呪われた剣なら手放せばいいが、呪われた竜はそういうわけにはいかない。あやつを止めるには、あやつを倒すしかないのだ」
「トロウの正体が、呪われた竜……」

 一度に多くの情報をつきつけられて、フレイは混乱していた。
 隕石が落ちてきて、それに触れると呪われる? それがトロウだって?
 とにかくひとつだけ確かなことがある。トロウを止めるためには、やはりトロウを倒さなければならないということだ。

「では話を戻そう。そなたを保護するようフリードに命じたのは、トロウを止めるためなのだ。そのために、そなたの力が必要となってくる」
「僕の力? しかし僕はただのしがない魔道士に過ぎません。僕の力ではトロウに敵わないのはすでに痛感しています」
「もちろん一人では無理だ。そなたには、このアルヴの竜人族たちを率いてトロウと戦うために指揮をしてもらいたい。これはそなたが適任なのだ」
「竜人族を率いて? 僕が適任? お話がよく見えないのですが」

 アルバスはきょとんとした顔でフレイを見つめた。
 そして咳払いをすると、意外な事実をフレイに告げた。



「父親から何も聞かされておらんのか? そなたも竜人族であろうに」



 なんだって。竜人族がなんだって。
 フレイは言葉がでなかった。思考が理解に追いつくのに時間を要した。
 その場にいた誰もが驚愕の事実に目を丸くしていた。

「王子が!?」「フレイ様が!?」「こいつが!?」

 だがその中でただ一人、クルスだけはさも当然そうな顔をして言った。

「なんじゃお主ら、知らんかったのか? よもや本人も知らんとはのう」
「ちょ、クルスは知ってたんすか! なんで!?」
「なんでも何も、私は代々ユミル王家に仕える地竜の一族じゃからのう。フレイが生まれたときにも立ち会っておるし、ニョルズ王が生まれたときも一部始終を見届けておったぞ」

 思えばクルスがユミル王城内の事情に精通していたのも、王家に仕える地竜の一族であるのなら納得できることだった。
 初めてクルスに会ったとき、地竜は人に姿を変えてその生活にとけ込んでいて、王城の兵士の中にも地竜がいるといった。そんな彼らと情報を共有しているのは、クルスも王家に仕える地竜の一族であるからこそだった。

 フレイは深呼吸をして、混乱する頭を落ち着かせながらクルスに尋ねた。

「知っていて黙っていたのか」
「まさか自覚していないとは思っていなかった。お主の母親は早くに亡くなってしまったが地竜の仲間じゃったからのう。だからこそお主が大地の魔法に長けるのも当然のことで……」
「そういうことを聞きたいんじゃない! つまり、今までみんな黙っていたのか。父上も母上も、城のみんなも! なぜだ? 竜人族だからか? 竜人族は忌み嫌われる存在だから。だから隠そうとした? みんなで僕を騙していたのか!!」
「いや、そういうつもりではないと思うが……」

 ずっと自分は人間だと思っていた。
 隣にいる仲間たちと同じ血が流れていると思っていた。
 でも違った。自分は、人間ではなかった。

 フレイはショックを隠しきれなかった。
 めまいを感じてふらふらとよろめく。そんなフレイをオットーが支えたが、

「王子。だ、大丈夫……ですか?」
「うるさい! 触らないでくれ! 僕のことは放っておいてくれ!!」

 そんなオットーの手を振り払うと、駆け出して一人で神殿を飛び出していった。
 気まずい空気とともに、旅を共にしてきた仲間だけがそこに残された。


Chapter20 END

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