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魔法戦争32

最終更新:2017年08月22日 17:54

jelly

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Chapter32「フレイと竜人1:竜人族の娘」



 仲間たちは新たな味方を求めて方々へと出向いていった。
 出発していく仲間を見送ったあと僕は神竜アルバスの大神殿を出て、そのままアルヴの集落に向かった。何もかもが雲でできているあの街に。

 建物、橋、オブジェにモニュメント。あらゆるものが雲でできているこの街は、アルヴァニアと呼ばれているそうだ。
 雲ばかりだとはいっても、一面真っ白で目が痛くなるというようなことはない。ここには雲を染色する技術があるらしく、雲の街は思ったよりもカラフルだ。

 街の中心部にあるのがアルバスの大神殿で、その周りを囲むように竜人たちの集落が広がっている。その外円部には竜人以外の住人の居住区があり、そのさらに外側には起伏のある雲の丘や山が広がっている。

 ここアルヴには竜人の他にもワケありでここに流れ着いた者たちも住んでいるらしい。それが外円部の住人たちにあたり、彼らの中にも僕たちに協力してくれる者がいるかもしれない。が、今は竜人たちと会うのが先だ。

 このアルヴを拠点に竜人たちを率いてトロウと戦うことになったが、竜人たちがどれほど戦えるのかを僕は知らない。それにいきなり外の世界からやってきた者が指揮官だと言われても、そんな見ず知らずの者の指示に従おうとは思うまい。
 だからまずは彼らのことを知る必要があった。

「竜人たちは僕の話を聞いてくれるかな」

 ここまで同行していたヴェンに声をかけた。
 仲間のうち、竜くずれのヴェンと氷竜のフィンブルはアルヴに残っていたが、フィンブルはクエリアのことが心配になったのか、少し遅れてその後を追っていってしまった。だから今はヴェンだけが残っている。
 大神殿にいてもやることがないからと、ヴェンも僕についてきたのだ。

「オれももともとは竜人だ。ダから参考マでに言うが、オれは竜に近い姿ダから竜はソれほど警戒しナい。が、ニンゲンのほうは警戒が強い」

 竜でも人間でもない竜人は、そのどちらからも迫害されてきた歴史を持つ。そのため、彼らはそのどちらにも警戒心を持つ。しかし竜か人のどちらかに姿が近い者は、そのいずれかの中に紛れて竜人であることを隠しながら暮らしてきたため、自分と姿が近いほうに対しては警戒心は薄いらしい。

「じゃあ僕の場合は、まずは人に近い姿の竜人から声をかけていって、少しずつ彼らに信用してもらうのがよさそうだ」

 人に近いほうの竜人は、ツノや翼、尾などがある以外は人と変わらない外見をしている。僕にはそのどれもないので、アルバスに言わせるとかなり稀なパターンの竜人らしいのだが。

 街には竜人たちの姿がちらほらと見える。周囲を見回して人に近い竜人を捜したが、見える範囲にはそういった竜人は見当たらなかった。

「まあ人に近い竜人なラ、大抵は正体を隠して人の輪の中で暮らシているはズだ。オれももとは大樹の近くにある地竜たちの浮島で暮らシていたからな」

 そういえばアルヴは迫害を逃れるために竜人たちが作った里だ。となると、人にも竜にも近くない竜人が多いのも当然か。
 もちろん、きれいに人間50%竜50%というようなド真ん中の竜人というのも、遺伝の特性上そうそういるもんじゃない。だから必ず人か竜かのどちらかには傾いているはずだ。ただそれは例えば43%と57%のように中間値に近い割合で人と竜の両方の特徴を引き継いでいるので、パッと見では判別が難しそうだ。

「何かどっち寄りの竜人か見分ける方法はないかな」
「それナら簡単だ。脚を見るといい」

 竜の特徴が強い竜人は骨格上、かかとが地面につかない。直立二足歩行ができるのが竜との違いではあるが、どっしりとした獣に近い脚付きをしている。また尾が太く立派なのも特徴だとヴェンは説明した。
 つまり、いわゆる怪獣体型だ。

「逆に脚が細いのがヒト寄りだ。鱗があろうと、顔つきが竜似ダろうとな」
「なるほど。そういうことなら一人心当たりがある」

 すぐに僕はゲルダのことを思い出した。
 アルヴに来てから最初に声をかけてくれた紫の竜人。
 そういえばゲルダの脚付きはヒトのものとそう変わりはなかった。すらりと伸びた長い足とくびれた腰つきに思わずどきりとしたのをよく覚えている。
 顔つきが竜に近かったので竜寄りだと思っていたが、ヴェンの説明に当てはめるのなら彼女は人寄りということになる。

(竜人なのに彼女を見ていると胸が高鳴ったのは、身体つきが人に近かったせいなのかもしれないな)

 しかしそういうことなら話は早いかもしれない。
 すでにゲルダとは知り合いだ。まあ、アルバスを除けばこのアルヴでの唯一の知り合いではあるけど、ゲルダはこのアルヴの竜人たちと知り合いだ。
 だからゲルダから僕のことを竜人たちに紹介してもらえれば、向こうも見ず知らずの僕だけがいきなり現れるよりは打ち解けやすいんじゃないだろうか。

 そうとわかれば、最初に誰に会うべきかは決まったようなものだ。
 もう一度ゲルダに会おう。

(思ったより早く再会することになったな。たしか彼女と会った場所は……)

 ゲルダと会ってから僕は大神殿に戻りアルバスと話し、その後に出発していく仲間たちを見送ってからここへ来た。時間はそれほど経っていない。だから、まだあそこにゲルダがいるかもしれない。そう思ってゲルダと会った場所に向かうことにした。

「やることは決マったみタいだな。ならばオれはここまでだ」

 するとヴェンは、僕が向かおうとするのとは別の方向に歩き出した。

「一緒に来ないのか?」
「オれは外円部に行く。もとはオれも竜人とはいえ、今はこンな竜くずれだ。竜人たちと共には暮らせナい。だがワケありの住む外円部ならオれの居場所もあるかもしれナい」
「そうか、それじゃここで。あとでそっちにも顔を出してみるよ」
「好きにシろ」

 ここでヴェンと別れた。



 例の場所に向かってみると、ゲルダはまだその場にいた。
 川にかかる橋から揺れる水面をじっと見つめているようだ。

 雲ばかりのアルヴにも川がある。水蒸気で出来ている雲も魔法で固定されると水とは分離されるらしく、雲の層の中に浸み込んでいくことなく水が流れている。
 どこで暮らすにしても水は不可欠なものだ。この川は生活のために人工的に引かれたもので、アルヴにはそういった水路がいくつもある。こういう作りは、大樹をくり抜いて水路を設けているユミルと少し似ている。

 物思いにふけるゲルダは近づいてもこちらには気付かない。邪魔するのも悪いかと思って声をかけかねていると、そのとき水面で何かが跳ねた。

「あっ」

 薄桃色の丸い生き物。尾ヒレがあり頭には先端が渦を巻いた触角がある。
 それは空にいる同じく薄桃色の生き物メーによく似ているが、メーは水の中では生きられないはずだ。
 メーに似た生き物は川を遡って泳いでいった。

「あれはね。メフィアっていうんだよ」

 水面を目で追っているとゲルダのほうから声をかけてきた。

「あ、ああ。ごめん、声をかけようと思ったんだけど、さっきの生き物が気になってね。あれはメフィアというのか」
「うん。みんなそう呼んでる。どこからどうやって来たのかわからないけど、いつの間にか現れて、最近この川に棲みついたんだよ」

 メフィアはメーによく似ていた。それに昔はいなかったのに、最近になって姿を見せ始めたというのもメーと同じだ。メーの亜種か何かなのかもしれない。
 そんなことを考えていると、ゲルダは突然抱きついてきた。

「それよりも……また会えたね、フレイ! わたしに会いに来てくれたの?」
「わ、わわっ、と! ゲ、ゲルダ。そ、そういうのはちょっと、その!」

 ゲルダは顔つきは竜に近いが、身体つきはしっぽがある以外はほとんど人間の女性と変わらない。ヴェンに説明されたことで、よりそのことを意識してしまう。
 そんなゲルダが抱きついてくるのだから、人間の文化に染まっている僕にはそれは刺激が強すぎた。なんせ竜人には衣服という文化がないのだから、これじゃあまるで裸の女性にいきなり抱きつかれたような感覚だ。
 フリードなら大喜びするかもしれないが、こういうのは、ちょっとその、18年程度しか生きていない僕にはまだ早い経験だと思うんだけど!

「どうしたの、フレイ?」
「い、いやあの。僕の住んでる国には、なんというか、こういう習慣がなくてね。ど、どんな反応をしたらいいのか、その、困るというか」
「そうなんだ。これはアルヴのあいさつなんだよ。親しい相手には誰でもこうするの。ぎゅってされたら、ぎゅってお返しする感じかな」
「な、なるほど……。僕には少し難しいな。ま、またこんど練習しとくよ……」

 そしてそっとゲルダから一歩離れた。
 まずは彼女に会いに来た理由を話すべきなんだろうけど、今のが原因でどきどきしてしまってまっすぐゲルダの顔を見ることができなくなってしまった。

 お、おかしいな。僕はユミルで育った。つまり人間の文化の中で人間として育ってきたわけだから、竜人を相手にこんなに照れることになるとは思わなかった。
 竜だって衣服の文化はない。だからといって例えば竜の姿のクルスやクエリアを見てもとくに何も思うところはない。もちろん、人の姿に変身したクルスたちが裸だったらそれはそれで大問題になるけど、それはあくまで少女の姿だからだ。
 ゲルダは竜人だし、服を着ていないのが彼女の文化にとっては当然なのかもしれないけど、なぜかこう、これはなにかいけない気がする。
 体型が人に近いからなのか。それとも僕に流れる竜人の血がそう思わせるのか。とにかく今のゲルダを見ていると、目のやり場に困ってしょうがない。

「どうしたの、フレイ?」

 再びゲルダが訊いた。
 ああ、もうだめだ。これ以上はがまんできない。

「と、とりあえずこれを」

 僕は羽織っていた自分のローブを彼女に差し出すことにした。

「これは? くれるの?」
「あげる。あちこち行ったせいで少し汚れてて申し訳ないけど……」
「わぁ! じゃあプレゼントなんだ。ありがとう」

 そういうつもりで渡したわけではないんだけれど、喜んでいるようなので、まあそういうことにしておこう。
 ゲルダはさっそくローブをまとってくるくる回ってみせた。

「どう、似合う?」
「(目のやり場のことを思うと)いいと思うよ」
「やった! これを着てフレイはいろんなところに行ったんでしょ。これでわたしもいろんなところに行った気分になれるね」

 そういえばゲルダはアルヴの外の世界を見るのが夢だ、と話していたのを思い出した。今は嬉しそうな顔をしているのでわるい気はしない。
 ともあれ、これで緊張せずにすむ。落ち着いたところで、僕はゲルダに会いに来た理由を話した。アルバスに頼まれて竜人たちを率いることになったこと。そのために竜人たちのことをもっとよく知りたいということ。そして、それをゲルダに手伝ってほしいということを。

「フレイはもっと竜人たちと仲良くなりたいってこと?」
「そんなところかな。お互いをよく知らなければ僕だって竜人たちを率いることは難しいし、僕は神竜様に聞かされて初めて自分に竜人の血が流れていると知った。だから竜人のことを知ることは、自分のことを知ることにもつながるからね」
「そういうことなら、わたしに任せてよ。じゃあまずは、わたしのことを知ってもらおうかな! ついてきてっ」

 そういうなりゲルダは僕の手を引っ張って走り出した。

「わっ、ちょ、ちょっと待って。あ、危ない危ない」

 見た目は同い年ぐらいの女性なのに、走るのはやけに速かった。竜人は人間に加えて竜の血が入っている分、人間よりも体力に優れているのかもしれない。僕はなんども転びそうになりながら、引きずられるようにゲルダについていった。

 ようやくゲルダが止まってくれたのは、あの橋から少し行った先のひとつの雲の家の前だ。アルヴの建物はそこに住む様々な姿の竜人に合わせて作られているので大小様々だったが、目の前の家はユミルの城下街でも見たような、僕にとってはもっとも家らしいイメージをした家だった。

「ここは?」
「わたしの家だよ。どうぞ、あがってあがって」

 ゲルダの家だって! まだ会ってそんなに経っていないというのに、年頃の女性の家にもう上がりこむだなんて! それはさすがにまずい。ゲルダが許しても、自分の気持ちの整理が追いつかない。

「いや、その……迷惑じゃないかな。こんな突然お邪魔しちゃって。急にアルヴの外の人をつれてきたりなんかして、家族もびっくりするといけないし」
「平気だよ。ここにはわたし一人で住んでるから、誰も迷惑しないよ」

 それならよかった。いや、よかったのか? それはつまり、ゲルダと二人きりになるということであって、でも僕たちはまだ会ったばかりなんだから、そういうのはもっとこう手順を踏んで、例えばまずは手をつなぐところから始めて……ああ、手はもうつないだか。一方的に引っ張られてただけだったけど。
 なんて思い悩んでいると、

「はい、どうぞどうぞー。一名さまごあんな~い」

 背中を押されて、とうとうゲルダの家に上がりこんでしまった。申し訳ない、父上、姉上。でも決して僕はそんな不純な動機ではなくて……。

 考えがまとまらないままゲルダに促されて、部屋の奥へと入った。
 ゲルダの家は一部屋しかない小さな家だったが、空色に染色された雲の壁が開放感を与えてくれるので狭いとは感じなかった。
 話に聞いていたとおり、アルヴではテーブルも戸棚も、あらゆる家具が雲でできているようだ。勧められて腰を下ろした雲の絨毯はふわふわして座り心地がいい。

「とりあえず飲み物出すね。雨茶でいい? それとも雷ソーダが好き?」

 どっちも知らない。雷は危なそうな気がしたので、とりあえず雨茶をもらうことにした。少し塩味が効いているが、飲みやすくて意外とおいしい。

「何か食べる? 晩ごはんには少し早いけど、簡単なのでよかったら何か作るよ」
「そんな、わるいよ。だったら僕も何か手伝おうか」
「ほんと!? じゃあお願いしちゃおっかなぁ」
「料理はあまりやったことないけどね。だから指示を任せるよ」
「はいは~い。それじゃあ始めるよ。今日の献立はメーのフライとキュアル草のサラダで~す」

 ゲルダは雲の冷蔵庫から冷凍メーとキュアル草という野菜? それからレモンによく似た形で赤い柑橘系の果物を取り出した。
 ユミルでもメーを料理することがあるので、これは安心して食べられそうだ。メーは淡白であっさりとした味をしている。食感は弾力の強い肉といったところだ。
 キュアル草とは薬草の一種で滋養強壮効果があり、少し苦味があるので酸味の効いたソースをかけて食べる。大神殿付近にたくさん生えているらしい。
 赤い果実はトラモントというらしい。夕焼けの果実という意味だそうだ。

「じゃあわたしはメーをさばくから、フレイはソースを作ってね」
「この赤いのを搾ればいいのかな」
「固いから両手で思いっきりやっちゃって。そのあとはそこに調味料を加えてね。そっちのビンのやつだよ」

 流し台の横には緑色のビンが数本並んでいる。見たことのない調味料だが、何本も置いてあるところを見ると、アルヴでは一般的なものなのだろう。
 隣ではゲルダがまな板に置いたメーに包丁を立てている。

「よし。やってみようか」

 赤い実をひとつつかむ。試しに軽く握ってみると、実がしっかりと詰まっているのか少し重い。大きさはレモン程度だが皮は厚めで、夏みかんのような感じだ。

「これ、皮は剥かないのか?」
「そのままいけるでしょ。使うのは汁だけだから、剥くまでもないよ」

 素手で夏みかんを搾るなんて発想はなかった。そのままいけるって、それ竜人の力を基準にしているような気もするけど。
 いや。しかし僕も竜人ではあるらしいから、もしかしたら僕にもそれだけの力が潜在的にあるのかもしれない。とにかくまずは試してみることにしよう。

 両手でトラモントを握り締めてぐっと力を込める。すると実は少し変形したが、うなってもひねっても自分の力ではとても搾れそうになかった。

「貸して」

 しょうがないなぁ、といった顔で手を伸ばすゲルダに赤い実を渡す。するとゲルダは片手で実を握りつぶしてしまった。トラモントが破裂して果汁が飛び散った。

「こんな感じ」
「え、いいのそれで。だいぶ飛び散ったんだけど」
「平気平気。わたし水の魔法使えるから、あとで集められるよ」
「いや、それ一回床に落ちたやつなんじゃ……」

 そんな心配をよそに、ゲルダは次々とトラモントを搾って(?)いく。

「握りつぶすのが難しかったら、台に置いて両手で叩きつぶしてもいいし」

 赤い実が弾け飛び、まな板が割れた。

「面倒だったら壁に投げつけてもいいよ。あとでこそぎとればいいから」

 投げつけられた赤い実は、壁にまるで血痕のような染みを残した。

「あとは調味料だね」

 そしてキュアル草をそのままわしづかみでひとやま皿に盛ると、ゲルダは呪文を唱えて飛び散った果汁を空中に集めた。
 続いて調味料のビンをひとつつかむと、まるで生卵でも割るような感覚でビンを頭突きで割ってしまうと、こぼれた調味料を同じく魔法で空中のトラモント果汁に混ぜ合わせていく。
 空中に浮かんだ真っ赤な水球がすぅーっとキュアル草の皿の上に移動すると、それは滝のように一気に降り注がれた。ほとんど皿からこぼれて床が汁まみれになったが、ゲルダは何食わぬ顔をしている。

「はい、キュアル草のサラダ。完成で~す」
「ず、ずいぶん豪快な調理方法だね……」
「そう? 別にふつうだよ」

 そう言いながら、ゲルダはメーの下ごしらえを再び始めた。たしかメーをさばくと言ってた気がするけど、あれはどうみても包丁を叩きつけて輪切りにしているようにしかみえない。

「あっ、手元が狂った」

 切断されたメーの首が宙を舞い、天井に貼り付いた。メーの生首はうらめしそうな顔でこちらをにらみつけている。

「……あの。ゲルダさぁ」
「ああ、ごめんねフレイ。指示を忘れてた。じゃあフライの生地を作って。はいこれ、材料の粉と卵ね。水でとくだけだから難しくないと思うよ」
「いや、そうじゃなくて」

 すでにゲルダは鼻歌混じりで二匹目のメーを叩き切り始めている。メーには体液がないので赤い実のように何かが飛び散ることはないが、さっきのソースの滝がゲルダの羽織っているローブにいくつも赤い染みを作って、まるで返り血を浴びたようになっている。その光景は少し怖さを感じる。

「生地できた?」
「あ、うん。できたけど……。ところでゲルダ、もしかして本当は料理……」
「じゃあ貸して」

 ゲルダは生地の入ったボウルにどかどかと一気にメーの切り身を放り込んだ。
 そして鍋を用意すると、そこに油をなみなみいっぱいに注いでいく。

「ちょ、ゲルダ!?」

 止める間もなく、ゲルダはそんな鍋に生地につけたメーの身を全部投入する。油があふれて部屋いっぱいに飛び散った。

「あとは火をつけるだけ~♪ わたし、火の魔法はちょっとしたもんなんだよね。見ててね、呪文なしでやっちゃうから。そぉ~れ」
「うわっ! それはダメだって――」

 ゲルダの家に大きな火柱が立った。




「ごめんね。失敗しちゃった」
「……それ以前の問題だと僕は思うな」

 しばらくして僕たちは、跡形もなくなったゲルダの家の前に呆然と立っていた。
 雲でできている家は燃えることはなかったが、高熱によって雲が蒸発して水蒸気になってしまい、ゲルダの家は消滅した。

「せっかく初めてわたしの家にお客さんが来てくれたと思って、ちょっと張り切りすぎちゃったみたい。実はね、フレイ。本当はわたし、ちゃんとした料理ってあまりやったことがなくて」
「うん、知ってた……。これからどうするの? 家」
「雲を魔法で固めればまた作れるけど、何日もかかりそう」

 火事はゲルダのめちゃくちゃすぎる料理が原因だとはいえ、彼女は僕のために何か料理を作ろうとしてくれたのだから、責任の一部は僕にもあるといえる。だからこのまま見過ごしておくわけにもいかない。
 家はアルヴに雲大工をやっている竜人がいるらしいのでそちらに任せるとして、その間ゲルダには寝泊りできる場所が必要だ。

「仕方ないな。じゃあ家が直るまでの間、僕たちのところに来る? 船だから、雲のふわふわの家ほど居心地はよくないと思うけど」
「ほんと!? フネってフレイがムスペやニヴルを旅したっていう、あの!?」
「魔導船グリンブルスティ。友達からもらった大事な船なんだ。これがなくなると僕も困るからね。火事にしないって約束できる?」
「するする! 約束する! やったね。こんどはわたしがフレイのお宅訪問だ」

 どうやらゲルダは船を早く見たくて堪らない様子で、火事のことはあまり反省していないようだ。
 今日はいろいろあったけど、とりあえずゲルダのことは少しわかった。彼女はすごく純粋で天真爛漫だけど、少し常識はずれなところもある娘(こ)のようだ。

「早く見たいな~、グリンブルスティ。ねぇ、案内してよ」
「わかったわかった。ほら、落ち着いて」

 ゲルダは嬉しそうな顔をして僕の腕にしがみついてきた。
 僕はまだどきどきしていたが、こんどのはゲルダの容姿が原因ではなかった。

(頼むから、船は壊さないでくれよ……)

 日が暮れてきた。今日はここまでだ。
 子どものようにはしゃぐゲルダをつれて、街の外れに停めたグリンブルスティへと戻ることにした。


Chapter32 END

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