第九章「Great Flucht」
(執筆:日替わりゼリー)
ガイスト0番ラボ、それは冠状に位置する各ガイストラボの中心にありガイスト研究所本社でもある。本社の最上階、社長室では薄暗い部屋の中でひとつのモニターだけが光を放っていた。モニターの前には一人の影があり、そのモニターを通して誰かと会話しているようだった。
「どういうことです、大統領!話が違うじゃありませんか!」
大統領と呼ばれたモニターの向こうの男は厳かに答えた。
「君は本当によくやってくれたよ、ガイスト博士。まさか研究員まで実験材料にしてしまうとはな。実に研究熱心で感心だ」
「あれは…、部下たちが反乱を起こしたから仕方なく…!」
影はガイスト博士と呼ばれた。そう、この男こそガイスト研究所代表取締役、ガイスト・ズロイ・ドゥーフなのだ。
「部下たちは口を揃えて、解放された精神が兵器に使われているなどとわけのわからないことを言っていた。私は身の危険を感じてやむなく試作段階だった、プロウティスやレティスを使って部下たちを拘束、精神を解放した…。精神化してさらに意識を封じてしまえば、私に危害を与えることはないからな。おかげでこの研究所は私一人だけになってしまった…」
ガイスト博士は後悔していた。部下たちをすべて精神化してしまったことを。これでは研究を続けることができない。ガイスト博士は精神化こそ、本当に世界に幸福をもたらすものだと信じていた。精神体になれば、もう病や死の恐怖に怯えることもない。互いに物理的に干渉できないので、戦争も起きず環境にも悪影響を与えない…そう考えていた。
「しかし…大統領。申し訳ありませんが、政府のことを少し調べさせていただきました。部下たちは嘘を言っていなかった。まさか研究員の中に政府からの差し金が潜んでいたとはね…。プロウティスやレティスがその兵器のひとつだったとは私も驚きましたよ。灯台もと暗しとはこのことだ…。あんな偽の報告に騙されるとは私も研究者としてはまだまだのようです。それに、首都ではさらに強大な兵器が開発されているとか。おかしいとは思っていたのです。解放された精神量の計算が合わないと思ったら、まさか横流しをされていたとは…!」
政府からラボに送り込まれた研究員は密かに精神体を政府に横流しし、それを兵器開発に充てていた。精神体の転送は一部のラボの地下施設から行われていた。偶然その真実を知ってしまった研究員が反乱を起こしたのである。不幸なのは、その首謀者をガイスト博士だと勘違いしてしまったことだった。
ガイスト博士は地下施設のことは知っていたが、横流しやプロウティス、レティスの研究が行われていたことは知らなかった。プロウティス、レティスはマキナの侵攻を防ぐために開発されたものだと報告を受けていたが、まさか精神体を材料にしているとは、そしてそれが自身の研究所で開発されていたとは夢にも思っていなかった。
「私はただ、純粋に世界の幸福を願って精神解放の研究をしていたんだ!ヴェルスタンド、マキナ、そしてフィーティン間の戦争を防ぎたくて研究をしてきたんだ!…それが、まさか兵器を生み戦争を促す結果になるとは。私は…、私の今までの苦労は一体…。大統領…、私はあなたを…、政府を許さない…ッ!!」
「言いたいことはそれで全部かね?」
大統領はモニターの向こうで受話器を取ると、相手に何か一言伝えて受話器を置いた。
「さて、ガイスト博士。君は本当に有能だったよ。だが、どうやら君は私の理想を理解してくれないようだな。君はすべての者を精神化すれば幸福を与えられるなどと考えてているようだが、なぜ敵国にまで幸福をばら撒く必要があるのだね?」
「戦争を起こさないために決まっているでしょう!」
「何を甘ったれたことを…。隙を見せれば奴らは必ず私の領地を狙ってくる。言わば邪魔者でしかないのだよ、あいつらは!邪魔者は排除する…当然のことだろう?」
「大統領…。なぜ、あなたはそんなに彼の国を憎むのです。我々と同じ、生命ある者でしょう!?」
「ふん…。あんな下種どもと我々種族を同じにするな。やつらと我々は魂の価値が違うのだよ!」
「魂の価値…?精神はすべて平等です。なぜ、あなたはそれがわからない!」
「平等…だと?私が一番嫌いな言葉だ。私は大統領だぞ!私が誰よりも偉いのだ、誰よりも貴いのだ!…だから貴様は甘いのだ。マキナもフィーティンも新兵器で潰してしまったほうが、我々にとって幸福なのだよ。やつらの領地も財産も我々のものだ。そして、力をつけて他の大陸へ攻め込む。私は世界の覇者となる。これ以上の幸福などあるわけがないわ!」
大統領は勝利を思い浮かべて高笑いをしている。
「そんな…。それでは他国は幸福にはならない!」
「他国のことなど知ったことではない。そもそも他に国があるから戦が起こるのだ。国がひとつしかなければ戦争などなくなるのだよ。もっと未来を見て考えるべきだな、ガイスト博士。そんなこともわからぬとは…、所詮は余所者か。優秀だったからこそおまえを取り立ててやったのだ。その恩を忘れたか!」
「大統領…。あなたとは話すだけ無駄ですね…。私は私のやり方で戦争を止める。私はヴェルスタンドから去らせてもらおう!」
すると、大統領は静かに答えた。
「そうはさせない。言っただろう?邪魔者は…排除するとな!!」
そのとき、研究所内に警報が鳴り響いた。
「警報!警報!ガイストクッペルにミサイルが接近しています。至急対抗または避難してください。繰り返します、ガイストクッペルにミサイルが…」
「な、なんということだ…!」
「君は本当に役に立ったよ、感謝している。ではさらばだ、博士」
無慈悲に通信は切れた。
「どういうことです、大統領!話が違うじゃありませんか!」
大統領と呼ばれたモニターの向こうの男は厳かに答えた。
「君は本当によくやってくれたよ、ガイスト博士。まさか研究員まで実験材料にしてしまうとはな。実に研究熱心で感心だ」
「あれは…、部下たちが反乱を起こしたから仕方なく…!」
影はガイスト博士と呼ばれた。そう、この男こそガイスト研究所代表取締役、ガイスト・ズロイ・ドゥーフなのだ。
「部下たちは口を揃えて、解放された精神が兵器に使われているなどとわけのわからないことを言っていた。私は身の危険を感じてやむなく試作段階だった、プロウティスやレティスを使って部下たちを拘束、精神を解放した…。精神化してさらに意識を封じてしまえば、私に危害を与えることはないからな。おかげでこの研究所は私一人だけになってしまった…」
ガイスト博士は後悔していた。部下たちをすべて精神化してしまったことを。これでは研究を続けることができない。ガイスト博士は精神化こそ、本当に世界に幸福をもたらすものだと信じていた。精神体になれば、もう病や死の恐怖に怯えることもない。互いに物理的に干渉できないので、戦争も起きず環境にも悪影響を与えない…そう考えていた。
「しかし…大統領。申し訳ありませんが、政府のことを少し調べさせていただきました。部下たちは嘘を言っていなかった。まさか研究員の中に政府からの差し金が潜んでいたとはね…。プロウティスやレティスがその兵器のひとつだったとは私も驚きましたよ。灯台もと暗しとはこのことだ…。あんな偽の報告に騙されるとは私も研究者としてはまだまだのようです。それに、首都ではさらに強大な兵器が開発されているとか。おかしいとは思っていたのです。解放された精神量の計算が合わないと思ったら、まさか横流しをされていたとは…!」
政府からラボに送り込まれた研究員は密かに精神体を政府に横流しし、それを兵器開発に充てていた。精神体の転送は一部のラボの地下施設から行われていた。偶然その真実を知ってしまった研究員が反乱を起こしたのである。不幸なのは、その首謀者をガイスト博士だと勘違いしてしまったことだった。
ガイスト博士は地下施設のことは知っていたが、横流しやプロウティス、レティスの研究が行われていたことは知らなかった。プロウティス、レティスはマキナの侵攻を防ぐために開発されたものだと報告を受けていたが、まさか精神体を材料にしているとは、そしてそれが自身の研究所で開発されていたとは夢にも思っていなかった。
「私はただ、純粋に世界の幸福を願って精神解放の研究をしていたんだ!ヴェルスタンド、マキナ、そしてフィーティン間の戦争を防ぎたくて研究をしてきたんだ!…それが、まさか兵器を生み戦争を促す結果になるとは。私は…、私の今までの苦労は一体…。大統領…、私はあなたを…、政府を許さない…ッ!!」
「言いたいことはそれで全部かね?」
大統領はモニターの向こうで受話器を取ると、相手に何か一言伝えて受話器を置いた。
「さて、ガイスト博士。君は本当に有能だったよ。だが、どうやら君は私の理想を理解してくれないようだな。君はすべての者を精神化すれば幸福を与えられるなどと考えてているようだが、なぜ敵国にまで幸福をばら撒く必要があるのだね?」
「戦争を起こさないために決まっているでしょう!」
「何を甘ったれたことを…。隙を見せれば奴らは必ず私の領地を狙ってくる。言わば邪魔者でしかないのだよ、あいつらは!邪魔者は排除する…当然のことだろう?」
「大統領…。なぜ、あなたはそんなに彼の国を憎むのです。我々と同じ、生命ある者でしょう!?」
「ふん…。あんな下種どもと我々種族を同じにするな。やつらと我々は魂の価値が違うのだよ!」
「魂の価値…?精神はすべて平等です。なぜ、あなたはそれがわからない!」
「平等…だと?私が一番嫌いな言葉だ。私は大統領だぞ!私が誰よりも偉いのだ、誰よりも貴いのだ!…だから貴様は甘いのだ。マキナもフィーティンも新兵器で潰してしまったほうが、我々にとって幸福なのだよ。やつらの領地も財産も我々のものだ。そして、力をつけて他の大陸へ攻め込む。私は世界の覇者となる。これ以上の幸福などあるわけがないわ!」
大統領は勝利を思い浮かべて高笑いをしている。
「そんな…。それでは他国は幸福にはならない!」
「他国のことなど知ったことではない。そもそも他に国があるから戦が起こるのだ。国がひとつしかなければ戦争などなくなるのだよ。もっと未来を見て考えるべきだな、ガイスト博士。そんなこともわからぬとは…、所詮は余所者か。優秀だったからこそおまえを取り立ててやったのだ。その恩を忘れたか!」
「大統領…。あなたとは話すだけ無駄ですね…。私は私のやり方で戦争を止める。私はヴェルスタンドから去らせてもらおう!」
すると、大統領は静かに答えた。
「そうはさせない。言っただろう?邪魔者は…排除するとな!!」
そのとき、研究所内に警報が鳴り響いた。
「警報!警報!ガイストクッペルにミサイルが接近しています。至急対抗または避難してください。繰り返します、ガイストクッペルにミサイルが…」
「な、なんということだ…!」
「君は本当に役に立ったよ、感謝している。ではさらばだ、博士」
無慈悲に通信は切れた。
「繰り返します、ガイストクッペルにミサイルが接近しています。至急対抗または避難してください」
警報は本社に乗り込もうとしていたゲンダーたちにも聞こえていた。
「な、なんダ!?ミサイルって…これも防衛システムなのか!?」
『どうやら違うようです。地下で手に入れた衛星情報からこのドーム全域の様子を確認できますが、ミサイルはどうやらドームの外から飛んできているようです。ドーム諸共吹き飛ばすのは防衛システムとしては過剰です』
メイヴが表示したウィンドウに上空から見たガイストクッペルと、別ウィンドウでミサイルの着弾予想ラインの図が表示された。ミサイルは複数飛んできている。
「冷静に言ってる場合か!どうするんダ!」
『落ち着いてください、ゲンダー。これでドームごと研究データを吹き飛ばすことは自動的に成功すると予想されます。むしろ喜ぶべきでしょう』
「オレたちも吹き飛ばされてしまうダロ!!」
『ですね。脱出を急ぎましょう』
今いるガイストハイウェイからは本社を経由しないと地上に降りられない。ゲンダーは本社に駆け込んだ。しかしメイヴはホバークラフトの横から動こうとしない。
「どうしたんだ、メイヴ」
『ああ、失礼しました。ホバーと本社内部の地形データを比較していたのですが、ここからホバーを本社内に持ち込むのは難しそうです。どうしましょうか』
言われてみれば当然のことだった。建物の中を無理に運んでホバーに穴が開いてしまっては使い物にならない。しかし、せっかく手に入れた乗り物をここで手放すのも惜しかった。
「やはりトラックにしておけばよかったか…。多少無理して本社内を走り抜けても頑丈だから…いや、エレベータに入りきらないからダメか」
『では、最初にハイウェイへ上がったときの要領で私がホバーを地上に下ろしておきます。なかなか重量があるので、申し訳ありませんがゲンダーは本社を経由して地上を目指してください。私は滞空システムを使って、ホバーを下ろしたあとで直接地上へ向かいます』
「わかった。それじゃあ、本社の入り口の前で会おう。気を付けてな!」
『ゲンダーもお気をつけて』
「グメェー!」
グメーシスはメイヴと一緒にその場に残った。メイブを守ってくれるつもりだろうか。
メイヴを後にして、ゲンダーは本社の中へ今度こそ駆け込んだ。本社は6番ラボで見た以上にひどい有様だった。おかげで非常シャッターに穴が開いていて通ることができたのだが。
「なんなんダ、ここは。戦争でもあったのか?」
本社はさすがに広かったが、なんとかエレベータを見つけることができた。電気はどうやら生きているようだ。下行きのボタンを押す。
「まだ来ないのか…!ミサイルが来てるっていうのに」
この待ち時間が焦燥感を加速させる。
メイヴのことだから、ゲンダーが来るまでは『ここで合流するという命令を受けていますから』なんて言ってずっと本社入り口で待ち続けているだろう。もしゲンダーがやられてしまってもメイヴが無事なら、もしかすると誰かがメイヴに目を付けて研究してくれるかもしれない。そう、かつてのヘイヴのように…。しかしメイヴが失われてしまえばその可能性もなくなってしまう。それではヘイヴの願い、メイヴの謎を解き明かすことも叶わなくなってしまう。だからこそゲンダーは行かなければならなかった。
しばらくして、やっとエレベータが到着した。ずいぶん長く待たされたような気がする。ミサイルはまだ大丈夫なのだろうか。
扉が開くと驚くことに、エレベータにはすでに誰か乗っていた。エレベータに乗っていたそいつもゲンダーを見て驚いている。
「な、なんだおまえは…。まさかマキナの兵器か!?それとも私を逃がすまいと、もう刺客が現れたというのか…」
「何をわけのわからないことを言っているのダ。オレは四角くなんかないぞ。オレはマキナじゃなくて癒から来たゲンダーだ!おまえこそ何ダ!?」
「なんだと!おまえは私の言葉が理解できるのか!?一体誰がこんなすごいものを発明して…いや、それよりも早くここを脱出しなければ。さぁ、おまえも乗るんだ」
ゲンダーはそいつと一緒にエレベータに乗り込み下へ向かった。
警報は本社に乗り込もうとしていたゲンダーたちにも聞こえていた。
「な、なんダ!?ミサイルって…これも防衛システムなのか!?」
『どうやら違うようです。地下で手に入れた衛星情報からこのドーム全域の様子を確認できますが、ミサイルはどうやらドームの外から飛んできているようです。ドーム諸共吹き飛ばすのは防衛システムとしては過剰です』
メイヴが表示したウィンドウに上空から見たガイストクッペルと、別ウィンドウでミサイルの着弾予想ラインの図が表示された。ミサイルは複数飛んできている。
「冷静に言ってる場合か!どうするんダ!」
『落ち着いてください、ゲンダー。これでドームごと研究データを吹き飛ばすことは自動的に成功すると予想されます。むしろ喜ぶべきでしょう』
「オレたちも吹き飛ばされてしまうダロ!!」
『ですね。脱出を急ぎましょう』
今いるガイストハイウェイからは本社を経由しないと地上に降りられない。ゲンダーは本社に駆け込んだ。しかしメイヴはホバークラフトの横から動こうとしない。
「どうしたんだ、メイヴ」
『ああ、失礼しました。ホバーと本社内部の地形データを比較していたのですが、ここからホバーを本社内に持ち込むのは難しそうです。どうしましょうか』
言われてみれば当然のことだった。建物の中を無理に運んでホバーに穴が開いてしまっては使い物にならない。しかし、せっかく手に入れた乗り物をここで手放すのも惜しかった。
「やはりトラックにしておけばよかったか…。多少無理して本社内を走り抜けても頑丈だから…いや、エレベータに入りきらないからダメか」
『では、最初にハイウェイへ上がったときの要領で私がホバーを地上に下ろしておきます。なかなか重量があるので、申し訳ありませんがゲンダーは本社を経由して地上を目指してください。私は滞空システムを使って、ホバーを下ろしたあとで直接地上へ向かいます』
「わかった。それじゃあ、本社の入り口の前で会おう。気を付けてな!」
『ゲンダーもお気をつけて』
「グメェー!」
グメーシスはメイヴと一緒にその場に残った。メイブを守ってくれるつもりだろうか。
メイヴを後にして、ゲンダーは本社の中へ今度こそ駆け込んだ。本社は6番ラボで見た以上にひどい有様だった。おかげで非常シャッターに穴が開いていて通ることができたのだが。
「なんなんダ、ここは。戦争でもあったのか?」
本社はさすがに広かったが、なんとかエレベータを見つけることができた。電気はどうやら生きているようだ。下行きのボタンを押す。
「まだ来ないのか…!ミサイルが来てるっていうのに」
この待ち時間が焦燥感を加速させる。
メイヴのことだから、ゲンダーが来るまでは『ここで合流するという命令を受けていますから』なんて言ってずっと本社入り口で待ち続けているだろう。もしゲンダーがやられてしまってもメイヴが無事なら、もしかすると誰かがメイヴに目を付けて研究してくれるかもしれない。そう、かつてのヘイヴのように…。しかしメイヴが失われてしまえばその可能性もなくなってしまう。それではヘイヴの願い、メイヴの謎を解き明かすことも叶わなくなってしまう。だからこそゲンダーは行かなければならなかった。
しばらくして、やっとエレベータが到着した。ずいぶん長く待たされたような気がする。ミサイルはまだ大丈夫なのだろうか。
扉が開くと驚くことに、エレベータにはすでに誰か乗っていた。エレベータに乗っていたそいつもゲンダーを見て驚いている。
「な、なんだおまえは…。まさかマキナの兵器か!?それとも私を逃がすまいと、もう刺客が現れたというのか…」
「何をわけのわからないことを言っているのダ。オレは四角くなんかないぞ。オレはマキナじゃなくて癒から来たゲンダーだ!おまえこそ何ダ!?」
「なんだと!おまえは私の言葉が理解できるのか!?一体誰がこんなすごいものを発明して…いや、それよりも早くここを脱出しなければ。さぁ、おまえも乗るんだ」
ゲンダーはそいつと一緒にエレベータに乗り込み下へ向かった。
ハイウェイではメイヴがアームでホバークラフトを吊るして下に降ろそうとしていた。
『慎重に慎重に…。アームの耐久重量を少しオーバーしていますから、気を付けて下ろさなくてはいけませんね』
「グメェェー♪」
グメーシスは応援しようとしているのか、メイヴのまわりをぐるぐる飛び回っている。
『悪いのですが、気が散るのでやめていただけませんか…』
「グメメェー♪」
グメーシスには伝わっていないようだった。
そのとき、ガイストクッペルを轟音と激しい震動が襲った。ミサイルの一発がドームに直撃したようだ。
『こ、これはまずいで…す…ね…』
揺れが原因でメイヴがホバークラフトの重量に引っ張られる形で傾いていく。
『しかし、無事にホバーを下ろす約束です。手を離すわけには…』
そして、そのままメイヴとホバーはハイウェイの下へと落下していった。
「グ、グメェェェ!!?」
それを慌ててグメーシスが追った。
『しまった…、アームを出しているから滞空システムが出せません。最適な解決策を計算しま…』
メイヴは地面に叩きつけられた。
『慎重に慎重に…。アームの耐久重量を少しオーバーしていますから、気を付けて下ろさなくてはいけませんね』
「グメェェー♪」
グメーシスは応援しようとしているのか、メイヴのまわりをぐるぐる飛び回っている。
『悪いのですが、気が散るのでやめていただけませんか…』
「グメメェー♪」
グメーシスには伝わっていないようだった。
そのとき、ガイストクッペルを轟音と激しい震動が襲った。ミサイルの一発がドームに直撃したようだ。
『こ、これはまずいで…す…ね…』
揺れが原因でメイヴがホバークラフトの重量に引っ張られる形で傾いていく。
『しかし、無事にホバーを下ろす約束です。手を離すわけには…』
そして、そのままメイヴとホバーはハイウェイの下へと落下していった。
「グ、グメェェェ!!?」
それを慌ててグメーシスが追った。
『しまった…、アームを出しているから滞空システムが出せません。最適な解決策を計算しま…』
メイヴは地面に叩きつけられた。
一方、ゲンダーはエレベータに閉じ込められていた。
「なんダ、さっきの衝撃は!エレベータが止まってしまったぞ」
「ミサイルが当たったのか。一発は耐えたようだが、次は耐えられるかどうか…。脱出を急がなければ」
「しかしエレベータが止まってしまったぞ。どうすればいいんダ」
「これでも私は科学者だ。機械は専門ではないが…。だが任せておけ!」
その科学者は、エレベータ内の壁の機械を開くと中を調べ始めた。
「さっきのでどこか断線したか。ならばこれとこれを繋いでやれば…」
科学者は壁の中のコードを繋ぎ変えた。
「だめか…。ならばこれでどうだ!」
様々な組み合わせを試していく。ある組み合わせを試したとき、科学者が突然吹き飛ばされた。それと同時にエレベータが復活した。
「な、なんとかやったようだ」
「感電したのか!おかげで助かったが、無茶をするやつだな」
「ここで死ぬぐらいなら、これぐらい…どうってことはないよ」
エレベータは勢いよく下へ向かって行く。
「…それで、おまえは誰なんダ?」
「私はガイストだ。ここで騙されて研究をしてきた哀れな男さ…」
「おまえも博士なのか。騙されて…そうか。無理やり、プロジェクトなんとかをやらされてたんだな?精神の解放とかいう危険なやつダ」
「プロジェクトG…か。そうだな、危険なプロジェクトさ…。結果的に兵器を生みだすことになってしまったんだからな…」
ガイスト博士は自虐的に言った。
「じゃあ、ヘイヴ博士を知ってるか。オレを作ってくれたのはヘイヴ博士なんダ」
「ヘイヴ!?もしかして、あのヘイヴか!」
ガイストは目の色を変えた。
「知ってるのか!?」
「知ってるも何もヘイヴは私の先輩だ。私が科学の道を志したのもヘイヴの影響なんだ。そうか、彼は機械も扱えるんだな。さすがヘイヴだ!彼は元気にしてるのか?」
「それが…」
ゲンダーはヘイヴのことを説明した。メイヴをゲンダーに託して眠りについたこと。研究が狙われているということ。そしてマキナを目指しているということを。
「そうか…。それは残念だが、いつか彼が無事に目覚めてくれることを祈ろう…。しかし、研究が狙われているとはどういうことだ?」
「ガイスト博士でもわからないのか。博士…ヘイヴはその理由をオレには教えてくれなかった。もしかしたら、研究所が襲われることを知って急いでいたのかもしれない。だとしたら研究所を爆破して封印したのも納得できる。オレは博士に頼まれたメイヴの謎を解くことと、研究が狙われている理由が知りたくてマキナへ行くつもりなんダ」
「なるほど…、わかった。だったら私にも協力させてくれないか。ヘイヴは私の最も尊敬する先輩だ。その先輩のために私も力を貸そう!」
「それは助かる。メイヴが入り口のところで待っているはずダ。まずはメイヴと合流しよう!」
「なんダ、さっきの衝撃は!エレベータが止まってしまったぞ」
「ミサイルが当たったのか。一発は耐えたようだが、次は耐えられるかどうか…。脱出を急がなければ」
「しかしエレベータが止まってしまったぞ。どうすればいいんダ」
「これでも私は科学者だ。機械は専門ではないが…。だが任せておけ!」
その科学者は、エレベータ内の壁の機械を開くと中を調べ始めた。
「さっきのでどこか断線したか。ならばこれとこれを繋いでやれば…」
科学者は壁の中のコードを繋ぎ変えた。
「だめか…。ならばこれでどうだ!」
様々な組み合わせを試していく。ある組み合わせを試したとき、科学者が突然吹き飛ばされた。それと同時にエレベータが復活した。
「な、なんとかやったようだ」
「感電したのか!おかげで助かったが、無茶をするやつだな」
「ここで死ぬぐらいなら、これぐらい…どうってことはないよ」
エレベータは勢いよく下へ向かって行く。
「…それで、おまえは誰なんダ?」
「私はガイストだ。ここで騙されて研究をしてきた哀れな男さ…」
「おまえも博士なのか。騙されて…そうか。無理やり、プロジェクトなんとかをやらされてたんだな?精神の解放とかいう危険なやつダ」
「プロジェクトG…か。そうだな、危険なプロジェクトさ…。結果的に兵器を生みだすことになってしまったんだからな…」
ガイスト博士は自虐的に言った。
「じゃあ、ヘイヴ博士を知ってるか。オレを作ってくれたのはヘイヴ博士なんダ」
「ヘイヴ!?もしかして、あのヘイヴか!」
ガイストは目の色を変えた。
「知ってるのか!?」
「知ってるも何もヘイヴは私の先輩だ。私が科学の道を志したのもヘイヴの影響なんだ。そうか、彼は機械も扱えるんだな。さすがヘイヴだ!彼は元気にしてるのか?」
「それが…」
ゲンダーはヘイヴのことを説明した。メイヴをゲンダーに託して眠りについたこと。研究が狙われているということ。そしてマキナを目指しているということを。
「そうか…。それは残念だが、いつか彼が無事に目覚めてくれることを祈ろう…。しかし、研究が狙われているとはどういうことだ?」
「ガイスト博士でもわからないのか。博士…ヘイヴはその理由をオレには教えてくれなかった。もしかしたら、研究所が襲われることを知って急いでいたのかもしれない。だとしたら研究所を爆破して封印したのも納得できる。オレは博士に頼まれたメイヴの謎を解くことと、研究が狙われている理由が知りたくてマキナへ行くつもりなんダ」
「なるほど…、わかった。だったら私にも協力させてくれないか。ヘイヴは私の最も尊敬する先輩だ。その先輩のために私も力を貸そう!」
「それは助かる。メイヴが入り口のところで待っているはずダ。まずはメイヴと合流しよう!」
エレベータが一階に到着した。扉が開くなり、グメーシスが慌てて飛び込んできた。
「グメェェエエエッ!!」
「ど、どうしたんだグメーシス!」
グメーシスを見てガイストは驚いていた。
「こ、これは一体!?これも精神兵器…いや、それにしては意思を持っているようにも見える。私の知らないところで一体どんな研究がなされていたのか…」
グメーシスはゲンダーを外へ連れ出した。そこにはメイヴの姿はない。
「おかしいな、メイヴがいない。メイヴはどうしたんだ?」
「グメェ!」
グメーシスはゲンダーを誘導する。グメーシスに連れられて着いた先にはメイヴが地面に転がっていた。
「メイヴ!?どうした、大丈夫か!」
しかしメイヴの反応はない。本体のウィンドウの光は消えている。近くには大破したホバークラフトが落ちていた。
「まさかあそこから落ちたのか!メイヴ…。なんてこった…」
「これがメイヴかい」
ガイストが動かなくなったメイヴを覗き込む。
「メイヴの馬鹿やろう…。きっとさっきの振動のせいだ。ホバーを落とすまいと無理をしたに違いない…。ああ、この馬鹿やろう!」
(このゲンダーというのは感情さえも持っているのか!?ヘイヴ…あなたは天才だ。素晴らしすぎる…!)
ガイストはゲンダーの行動を見て感激していた。
「ゲンダー、心配はいらない。君の説明によるとメイヴとはヘイヴがブラックボックスの誤作動を防ぐために作ったシステムなのだろう。もしメイヴが破損しているならブラックボックスが暴走しているはずだ。だが、そんな様子はないから、メイヴはきっと無事だ。もちろんブラックボックスも壊れてしまっているなら話は別だが…」
「まだ希望はあるんだな!よかった…」
「私ならメイヴを直してやれるかもしれない。だが、今はここを脱出するのが先だ!」
そのとき、またドームを震動が襲った。二発目のミサイルが激突したらしい。
「そうダナ。ここで全滅しては、元も子もない。だが、脱出に使えると思って持ってきたホバーは壊れてしまった…」
「それなら大丈夫だ。説明は後でする。まずはエレベータへ走れ!」
ゲンダーたちはメイヴを立たせると、急いで本社のエレベータへ戻った。
ガイストによると、本社の地下には万が一に備えて脱出用のレールが準備されているという。エレベータで本社の地下5階を目指す。
「よし、もうすぐだな…」
地下4階に差し掛かったとき、突然明かりが消え真っ暗になってしまった。
「どうしたんダ!?」
「また被弾したのかもしれない。くそっ、電源系統をやられたか…ッ!」
そのとき、上のほうから何やらガラガラと音が聞こえてきた。
「こんどは何ダ?」
「いかん!すぐに降りるんだ!」
グメーシスがエレベータの扉を粉に変化させ、そこからエレベータを飛び出した。それとほぼ同時に瓦礫が降ってきてエレベータを潰してしまった。
「き、危機一髪ダァー…」
「上はもうだめだな…」
ドームの地上部分はミサイルによって瓦礫の山へと化してしまったに違いなかった。
「ここが崩れるのも時間の問題ダ。急ごう!他のエレベータか階段はないのか!?」
「他のエレベータもおそらく崩れてしまって使えないだろう…。そして、本社の地下には階段がない…。我々は完全に閉じ込められてしまった…」
ガイストが膝から崩れ落ちる。
「もうおしまいだ…。おのれ、私はこの国を恨むぞ…」
「諦めるなよ!まだ何かきっと方法が…」
「無理なんだ。仮に下へ行く方法があったとしても、電源がやられていては脱出用レールは動かない。それどころか、レールの先の扉も開かないから線路を歩いて脱出することもできないんだ…」
「そんな…」
地下室もゲンダーたちも闇に包まれていた。
「グメェェエエエッ!!」
「ど、どうしたんだグメーシス!」
グメーシスを見てガイストは驚いていた。
「こ、これは一体!?これも精神兵器…いや、それにしては意思を持っているようにも見える。私の知らないところで一体どんな研究がなされていたのか…」
グメーシスはゲンダーを外へ連れ出した。そこにはメイヴの姿はない。
「おかしいな、メイヴがいない。メイヴはどうしたんだ?」
「グメェ!」
グメーシスはゲンダーを誘導する。グメーシスに連れられて着いた先にはメイヴが地面に転がっていた。
「メイヴ!?どうした、大丈夫か!」
しかしメイヴの反応はない。本体のウィンドウの光は消えている。近くには大破したホバークラフトが落ちていた。
「まさかあそこから落ちたのか!メイヴ…。なんてこった…」
「これがメイヴかい」
ガイストが動かなくなったメイヴを覗き込む。
「メイヴの馬鹿やろう…。きっとさっきの振動のせいだ。ホバーを落とすまいと無理をしたに違いない…。ああ、この馬鹿やろう!」
(このゲンダーというのは感情さえも持っているのか!?ヘイヴ…あなたは天才だ。素晴らしすぎる…!)
ガイストはゲンダーの行動を見て感激していた。
「ゲンダー、心配はいらない。君の説明によるとメイヴとはヘイヴがブラックボックスの誤作動を防ぐために作ったシステムなのだろう。もしメイヴが破損しているならブラックボックスが暴走しているはずだ。だが、そんな様子はないから、メイヴはきっと無事だ。もちろんブラックボックスも壊れてしまっているなら話は別だが…」
「まだ希望はあるんだな!よかった…」
「私ならメイヴを直してやれるかもしれない。だが、今はここを脱出するのが先だ!」
そのとき、またドームを震動が襲った。二発目のミサイルが激突したらしい。
「そうダナ。ここで全滅しては、元も子もない。だが、脱出に使えると思って持ってきたホバーは壊れてしまった…」
「それなら大丈夫だ。説明は後でする。まずはエレベータへ走れ!」
ゲンダーたちはメイヴを立たせると、急いで本社のエレベータへ戻った。
ガイストによると、本社の地下には万が一に備えて脱出用のレールが準備されているという。エレベータで本社の地下5階を目指す。
「よし、もうすぐだな…」
地下4階に差し掛かったとき、突然明かりが消え真っ暗になってしまった。
「どうしたんダ!?」
「また被弾したのかもしれない。くそっ、電源系統をやられたか…ッ!」
そのとき、上のほうから何やらガラガラと音が聞こえてきた。
「こんどは何ダ?」
「いかん!すぐに降りるんだ!」
グメーシスがエレベータの扉を粉に変化させ、そこからエレベータを飛び出した。それとほぼ同時に瓦礫が降ってきてエレベータを潰してしまった。
「き、危機一髪ダァー…」
「上はもうだめだな…」
ドームの地上部分はミサイルによって瓦礫の山へと化してしまったに違いなかった。
「ここが崩れるのも時間の問題ダ。急ごう!他のエレベータか階段はないのか!?」
「他のエレベータもおそらく崩れてしまって使えないだろう…。そして、本社の地下には階段がない…。我々は完全に閉じ込められてしまった…」
ガイストが膝から崩れ落ちる。
「もうおしまいだ…。おのれ、私はこの国を恨むぞ…」
「諦めるなよ!まだ何かきっと方法が…」
「無理なんだ。仮に下へ行く方法があったとしても、電源がやられていては脱出用レールは動かない。それどころか、レールの先の扉も開かないから線路を歩いて脱出することもできないんだ…」
「そんな…」
地下室もゲンダーたちも闇に包まれていた。
どれだけ時間が経っただろう。真っ暗闇の中でどうすることもできず、いつ崩落して生き埋めになるかの恐怖に襲われながら、長い時間を過ごした。
しかし、そんなゲンダーたちを一筋の光が照らした。いや、正確には四角い形の光だった。メイヴの本体ウィンドウに明かりが灯ったのである。
『諦め手は行け増せん、現だー。望みハあります』
文字化けを起こしていたが、それはまさしくメイヴだった。
「メ、メイヴ!動けるのか、大丈夫なのか!?」
『地下誤解へ向かいま小。脱出用の霊るがありマす』
「だめだ、電気がなくて動かない…。私たちはここで死ぬんだ…」
ガイストが半ば諦めたように言った。
『電気は蟻ます。崩れる前に破約』
「ガイスト博士、行こう!メイヴを信じるんダ」
「信じてなんになるんだ…。そいつはもう壊れかけているじゃないか。この状況じゃ直すにも直してやれないし…。そんな状態で正確な判断ができるわけがない。動いているだけでも奇跡のようなものだ」
「ガイスト博士…。メイヴもヘイヴが作ったんダ。メイヴを信じるってことは、ヘイヴを信じることになるんダよ!違うか!?」
『わた塩、へいヴを信じて九打さ』
「グメェー!」
ゲンダーたちの必死の呼びかけにガイストは目を覚ました。
「ヘイヴを…信じる…!?」
「そうだ、ガイスト博士。ヘイヴを信じるんだ!ヘイヴに託された望みを叶えるためにも、オレたちはここで終わるわけにはいかないんダ!」
「そうか、メイヴを信じることはヘイヴを…。はは…、まさか君たちに教えられるなんてな。…よし、賭けてみようじゃないか、ヘイヴに!」
「よしきた!グメーシス、頼むぞ!」
「グメィェ!」
グメーシスはゲンダーに敬礼すると、床や瓦礫、機材などを粉に変化させて器用に段差を作った。それを階段のように使って地下5階へ降りる。メイヴはプロペラを出して段差を降りた。ゲンダーは途中でバランスを崩して落ちたが丈夫なのでなんともなかった。
地下5階には、銀色の車両があった。
「これがそうか」
「そうだ。これが脱出用のレールだ。しかしレールは電気がないと動かない。どうするつもりだ?」
『任せ 管』
さっきからメイヴの言葉、いや、ウィンドウに表示される文字が欠けてきている。大丈夫なのだろうか。
レールに乗り込み、運転席へ着く。メイヴが次の指示を出した。
『げんだ。腐葉 車両を切』
「…わかった」
メイヴの言わんとすることをなんとか理解して、ゲンダーは二号車以下の車両を切り離しにかかった。メイヴが辛そうだったので、敢えてその理由は聞かずにすぐに行動に移した。
「やってきたぞ。次はどうするんダ」
『綿 電力浸 てれいる出』
「すまないが、わからないぞメイヴ」
『動きます。綿紫電 使う』
「ガイスト博士、解読してくれ…」
「私は言語学は苦手だ」
次の指示がわからず混乱していると、
『信じて』
しかし、そんなゲンダーたちを一筋の光が照らした。いや、正確には四角い形の光だった。メイヴの本体ウィンドウに明かりが灯ったのである。
『諦め手は行け増せん、現だー。望みハあります』
文字化けを起こしていたが、それはまさしくメイヴだった。
「メ、メイヴ!動けるのか、大丈夫なのか!?」
『地下誤解へ向かいま小。脱出用の霊るがありマす』
「だめだ、電気がなくて動かない…。私たちはここで死ぬんだ…」
ガイストが半ば諦めたように言った。
『電気は蟻ます。崩れる前に破約』
「ガイスト博士、行こう!メイヴを信じるんダ」
「信じてなんになるんだ…。そいつはもう壊れかけているじゃないか。この状況じゃ直すにも直してやれないし…。そんな状態で正確な判断ができるわけがない。動いているだけでも奇跡のようなものだ」
「ガイスト博士…。メイヴもヘイヴが作ったんダ。メイヴを信じるってことは、ヘイヴを信じることになるんダよ!違うか!?」
『わた塩、へいヴを信じて九打さ』
「グメェー!」
ゲンダーたちの必死の呼びかけにガイストは目を覚ました。
「ヘイヴを…信じる…!?」
「そうだ、ガイスト博士。ヘイヴを信じるんだ!ヘイヴに託された望みを叶えるためにも、オレたちはここで終わるわけにはいかないんダ!」
「そうか、メイヴを信じることはヘイヴを…。はは…、まさか君たちに教えられるなんてな。…よし、賭けてみようじゃないか、ヘイヴに!」
「よしきた!グメーシス、頼むぞ!」
「グメィェ!」
グメーシスはゲンダーに敬礼すると、床や瓦礫、機材などを粉に変化させて器用に段差を作った。それを階段のように使って地下5階へ降りる。メイヴはプロペラを出して段差を降りた。ゲンダーは途中でバランスを崩して落ちたが丈夫なのでなんともなかった。
地下5階には、銀色の車両があった。
「これがそうか」
「そうだ。これが脱出用のレールだ。しかしレールは電気がないと動かない。どうするつもりだ?」
『任せ 管』
さっきからメイヴの言葉、いや、ウィンドウに表示される文字が欠けてきている。大丈夫なのだろうか。
レールに乗り込み、運転席へ着く。メイヴが次の指示を出した。
『げんだ。腐葉 車両を切』
「…わかった」
メイヴの言わんとすることをなんとか理解して、ゲンダーは二号車以下の車両を切り離しにかかった。メイヴが辛そうだったので、敢えてその理由は聞かずにすぐに行動に移した。
「やってきたぞ。次はどうするんダ」
『綿 電力浸 てれいる出』
「すまないが、わからないぞメイヴ」
『動きます。綿紫電 使う』
「ガイスト博士、解読してくれ…」
「私は言語学は苦手だ」
次の指示がわからず混乱していると、
『信じて』

…とだけ表示されて、メイヴが再び動作を停止してしまった。
それと同時にレールが動き出した。線路の先を塞いでいた扉が開かれレールは出発した。後方で激しく瓦礫の崩れる音が聞こえる。まさに間一髪の脱出だった。
しばらくして線路が地上に出たあたりで、レールは徐々に速度を落とし、ついに停止した。
「外だ!私たちは助かったのだな!」
「グメェ~!」
「やったぞ、メイヴ!おまえのおかげダ!」
しかしメイヴは何の反応も見せなかった。
「メイヴ…?おい、聞こえてるのか?メイヴ!?」
メイヴはレールの操縦機器にコードを接続したままの状態で動かない。
「ガイスト博士!メイヴが!!」
「なるほど…。感情のようなものを持つゲンダーも素晴らしいが、このメイヴも素晴らしいな。さすがはヘイヴだ」
なぜかガイストは動かないメイヴを見て感心していた。
「どういうことダ。一人で納得していないで、オレにもわかるように教えてくれ」
「メイヴは自身に蓄えられた電力をレールに流し込むことで、これを動かしていたようだ。メイヴにはそういう機能も付いていたのか?」
「それはわからない。ヘイヴもメイヴには未知の部分が多いって言ってた」
「そうか…。だが、その機能を使おうと判断したのはメイヴ自身だ。自らを犠牲にして仲間を救う機械…。こんなの前代未聞だ!ますますメイヴには興味が湧いてきた。なんとしてもメイヴの秘密を解明してみせるぞ!」
ガイストは一人で盛り上がっていた。どうやらガイストはゲンダーやメイヴを仲間というよりは研究対象としてしか見ていないようではあったが、メイヴの謎を解き明かすという意味では目的は同じだったので、ゲンダーは旅の仲間としてとりあえず認めておくことにした。
「さて、それでは約束通りメイヴを修理してやらないとな」
レールがたどり着いたのは、ちょうどヴェルスタンドとマキナの国境にあたる場所だった。
「マキナに私の実家があるんだ。ヴェルスタンドで働いていたが、私はマキナ出身でね。家には工具も材料もあるから、きっとメイヴを直してやれるはずだ」
「よろしく頼む」
「グメ」
ゲンダーはガイストに頭を下げた。グメーシスも一緒になってお辞儀をしていた。
「メイヴを正しく扱える者…。もしかして?」
ゲンダーはガイストに密かに期待していた。ヘンなやつだとは思ってるけど。
ヘイヴはまずは機械都市マキナへ向かえと言っていた。そのマキナが今、目の前にある。偶然にもマキナ出身の技術者ガイストにも会うことができた。ヘイヴのアドバイスはここまでだ。ここからはゲンダーが道を探っていかなければならない。ここからが本当のスタートラインなのだ。
「大丈夫。オレにはメイヴやガイスト博士がついてる。あとグメーシスもね。だからきっと答えを見つけられるはずダ。迷わず行けよ、行けばわかるさ!」
一行はついに機械都市マキナへ一歩を踏みいれた。
それと同時にレールが動き出した。線路の先を塞いでいた扉が開かれレールは出発した。後方で激しく瓦礫の崩れる音が聞こえる。まさに間一髪の脱出だった。
しばらくして線路が地上に出たあたりで、レールは徐々に速度を落とし、ついに停止した。
「外だ!私たちは助かったのだな!」
「グメェ~!」
「やったぞ、メイヴ!おまえのおかげダ!」
しかしメイヴは何の反応も見せなかった。
「メイヴ…?おい、聞こえてるのか?メイヴ!?」
メイヴはレールの操縦機器にコードを接続したままの状態で動かない。
「ガイスト博士!メイヴが!!」
「なるほど…。感情のようなものを持つゲンダーも素晴らしいが、このメイヴも素晴らしいな。さすがはヘイヴだ」
なぜかガイストは動かないメイヴを見て感心していた。
「どういうことダ。一人で納得していないで、オレにもわかるように教えてくれ」
「メイヴは自身に蓄えられた電力をレールに流し込むことで、これを動かしていたようだ。メイヴにはそういう機能も付いていたのか?」
「それはわからない。ヘイヴもメイヴには未知の部分が多いって言ってた」
「そうか…。だが、その機能を使おうと判断したのはメイヴ自身だ。自らを犠牲にして仲間を救う機械…。こんなの前代未聞だ!ますますメイヴには興味が湧いてきた。なんとしてもメイヴの秘密を解明してみせるぞ!」
ガイストは一人で盛り上がっていた。どうやらガイストはゲンダーやメイヴを仲間というよりは研究対象としてしか見ていないようではあったが、メイヴの謎を解き明かすという意味では目的は同じだったので、ゲンダーは旅の仲間としてとりあえず認めておくことにした。
「さて、それでは約束通りメイヴを修理してやらないとな」
レールがたどり着いたのは、ちょうどヴェルスタンドとマキナの国境にあたる場所だった。
「マキナに私の実家があるんだ。ヴェルスタンドで働いていたが、私はマキナ出身でね。家には工具も材料もあるから、きっとメイヴを直してやれるはずだ」
「よろしく頼む」
「グメ」
ゲンダーはガイストに頭を下げた。グメーシスも一緒になってお辞儀をしていた。
「メイヴを正しく扱える者…。もしかして?」
ゲンダーはガイストに密かに期待していた。ヘンなやつだとは思ってるけど。
ヘイヴはまずは機械都市マキナへ向かえと言っていた。そのマキナが今、目の前にある。偶然にもマキナ出身の技術者ガイストにも会うことができた。ヘイヴのアドバイスはここまでだ。ここからはゲンダーが道を探っていかなければならない。ここからが本当のスタートラインなのだ。
「大丈夫。オレにはメイヴやガイスト博士がついてる。あとグメーシスもね。だからきっと答えを見つけられるはずダ。迷わず行けよ、行けばわかるさ!」
一行はついに機械都市マキナへ一歩を踏みいれた。
Chapter9 END
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