第十一章「Mave revived」
(執筆:イグリス)
『電原 回複を く認。出力を確補し した。シス ムを再き土ウ ます』
メイヴの目に光が宿る。胸のウインドウにシステムの起動を促す命令文が目に追えないスピードで流れていく。やはりところどころ文字が欠けていることがわかるが、問題なく進んでいるように見える。そして最後にコンプリートの文字が表示され、
『おはよ ございます、ゲンダー。ご撫示のよう 何よりです』
「メイヴ!よかった。心配かけやがってこのやろう」
「信じられないな。こんなモノで機能を回復できるなんて。ゲンダー、君はこうなることが分かってたのかい?」
手放しで喜ぶゲンダーに対して、ガイストは訳がわからない、という顔をしている。
「全ては神の声に従ったまでダ。決して本能の赴くままに行動したわけじゃないぞ。決してダ」
口調は強いが、目は明後日の方を向いている。しかし、ガイストは気にも留めていない。いや、別のことに気が取られていた。
「作られた機械が、本能だって?へイヴは一体どんな技術を使ったんだ。全く、素晴らしすぎる」
「しかしまダ文字が欠けているな。大丈夫なのか?」
何かに取り憑かれたかのような表情でブツブツと呟いているガイストを横目にメイヴが空中に文字を表示させる。
『モニタ出力と言吾回路の一ブに門題が生じているようです』
メイヴの話はこうだった。高速道路から落下した際の衝撃で内部回路を破損したメイヴは一時的に機能を停止させ自己修復プログラムを起働、現状の回復に務めた。その後何事も起こらなければ完全に機能が回復するはずだった。しかし、ドーム脱出の際に脱出用レールに電力を供給したことでメイヴ自身のエネルギーが枯渇し、再び機能停止。自動修復プログラムもエネルギー不足のために起動できず今に至る、という訳である。モニタの破損は胴体モニタだけで、外部ウィンドウへの出力は問題なく、言語回路も文字の変換に異常があるだけとのことだ。
「つまり、エネルギー問題が解決した今、再び自動修復プログラムを実行すれば万事解決、というわけだね」
いつの間にか話を聞いていたガイストがメイヴに尋ねる。
『どうもそういうわけにはいかないようです。先程最記動した際にバックアップが甲親されたようで、自働修福による復期先が元在の状況となっています』
「つまり、自動修復プログラムではこれ以上の回復は望めない、ということか」
「大丈夫ダ、メイヴ。ガイストが直してくれるはずダ」
少し間を置き、今まで会話をしていた者を見てゲンダーに尋ねる。
『こちらの方は?』
違和感なく話していたが、メイヴはまだこの男のことを知らない。
メイヴの目に光が宿る。胸のウインドウにシステムの起動を促す命令文が目に追えないスピードで流れていく。やはりところどころ文字が欠けていることがわかるが、問題なく進んでいるように見える。そして最後にコンプリートの文字が表示され、
『おはよ ございます、ゲンダー。ご撫示のよう 何よりです』
「メイヴ!よかった。心配かけやがってこのやろう」
「信じられないな。こんなモノで機能を回復できるなんて。ゲンダー、君はこうなることが分かってたのかい?」
手放しで喜ぶゲンダーに対して、ガイストは訳がわからない、という顔をしている。
「全ては神の声に従ったまでダ。決して本能の赴くままに行動したわけじゃないぞ。決してダ」
口調は強いが、目は明後日の方を向いている。しかし、ガイストは気にも留めていない。いや、別のことに気が取られていた。
「作られた機械が、本能だって?へイヴは一体どんな技術を使ったんだ。全く、素晴らしすぎる」
「しかしまダ文字が欠けているな。大丈夫なのか?」
何かに取り憑かれたかのような表情でブツブツと呟いているガイストを横目にメイヴが空中に文字を表示させる。
『モニタ出力と言吾回路の一ブに門題が生じているようです』
メイヴの話はこうだった。高速道路から落下した際の衝撃で内部回路を破損したメイヴは一時的に機能を停止させ自己修復プログラムを起働、現状の回復に務めた。その後何事も起こらなければ完全に機能が回復するはずだった。しかし、ドーム脱出の際に脱出用レールに電力を供給したことでメイヴ自身のエネルギーが枯渇し、再び機能停止。自動修復プログラムもエネルギー不足のために起動できず今に至る、という訳である。モニタの破損は胴体モニタだけで、外部ウィンドウへの出力は問題なく、言語回路も文字の変換に異常があるだけとのことだ。
「つまり、エネルギー問題が解決した今、再び自動修復プログラムを実行すれば万事解決、というわけだね」
いつの間にか話を聞いていたガイストがメイヴに尋ねる。
『どうもそういうわけにはいかないようです。先程最記動した際にバックアップが甲親されたようで、自働修福による復期先が元在の状況となっています』
「つまり、自動修復プログラムではこれ以上の回復は望めない、ということか」
「大丈夫ダ、メイヴ。ガイストが直してくれるはずダ」
少し間を置き、今まで会話をしていた者を見てゲンダーに尋ねる。
『こちらの方は?』
違和感なく話していたが、メイヴはまだこの男のことを知らない。

「自己紹介がまだだったね。僕はガイスト。ヴェルスタンドでマキナを侵略する兵器を作らされたバカな科学者だ。機械の扱いも、専門ではないが心得ているつもりだ」
「ガイストはマキナ出身だ。メイヴ、マキナ出身の科学者だぞ。それにへイヴの後輩でもあるらしい」
ゲンダーが強調して紹介する。メイヴもその意図を察したようで、
『なるほど、あなたが。では、今からマキナへムかうのですね。現材値の場報が不促しています。ここはどの辺りでしょうか?』
辺りを見回しながら問うメイヴに今度はゲンダー達が答える番だった。
「実は……ここがマキナなのダ」
「マキナについた途端に大規模かつ局地的な地震が発生してね。壊滅状態だよ。私の研究所も潰れてしまったようだ」
『なんということでしょう』
周囲は機械都市の名にふさわしくない廃墟とかしていた。ほとんどの国民が徴兵され、前線へ送り込まれていたことが幸いしたのか、地震の規模に反して被害にあったものは少ないようだった。しかしこれでは復興などとても期待できるものではない。
「地震にしては不自然だった。ヴェルスタンドの兵器だと睨んでいるんだけど……」
「オレも変なモノを見た。少ししか見えなかったが、何か、鯰のようなものが向こうの方にいたんダ」
『不司全なことが多い、というわけですね。しかし、ガイスト氏の検求所も失くなってしまったとなると、困りましたね』
「そうダ。これではメイヴの修理ができないじゃないか」
機能的には特に問題がないようだが、このままでは話しづらい。早々に直して欲しいと思っていたが機材もなければ場所もない。これではたとえガイストでもメイヴを直すことは出来ないだろう。そう思いながらガイストの方を見ると、意外なことにガイストは余裕を持った笑みを浮かべていた。
「なに、研究所は一つじゃない。私のところはもう駄目だろうが、他に無事なところがあるかもしれない。とりあえず中央の方に向かってみよう」
曰く、都市の中央部に近づくほど住民の地位が高く、それに応じて建物の強度などがより高くなっているそうだ。もしかしたら無事な研究所もあるかもしれない。そんな思いをいだいて二体と一人は廃墟を後にした。
「ガイストはマキナ出身だ。メイヴ、マキナ出身の科学者だぞ。それにへイヴの後輩でもあるらしい」
ゲンダーが強調して紹介する。メイヴもその意図を察したようで、
『なるほど、あなたが。では、今からマキナへムかうのですね。現材値の場報が不促しています。ここはどの辺りでしょうか?』
辺りを見回しながら問うメイヴに今度はゲンダー達が答える番だった。
「実は……ここがマキナなのダ」
「マキナについた途端に大規模かつ局地的な地震が発生してね。壊滅状態だよ。私の研究所も潰れてしまったようだ」
『なんということでしょう』
周囲は機械都市の名にふさわしくない廃墟とかしていた。ほとんどの国民が徴兵され、前線へ送り込まれていたことが幸いしたのか、地震の規模に反して被害にあったものは少ないようだった。しかしこれでは復興などとても期待できるものではない。
「地震にしては不自然だった。ヴェルスタンドの兵器だと睨んでいるんだけど……」
「オレも変なモノを見た。少ししか見えなかったが、何か、鯰のようなものが向こうの方にいたんダ」
『不司全なことが多い、というわけですね。しかし、ガイスト氏の検求所も失くなってしまったとなると、困りましたね』
「そうダ。これではメイヴの修理ができないじゃないか」
機能的には特に問題がないようだが、このままでは話しづらい。早々に直して欲しいと思っていたが機材もなければ場所もない。これではたとえガイストでもメイヴを直すことは出来ないだろう。そう思いながらガイストの方を見ると、意外なことにガイストは余裕を持った笑みを浮かべていた。
「なに、研究所は一つじゃない。私のところはもう駄目だろうが、他に無事なところがあるかもしれない。とりあえず中央の方に向かってみよう」
曰く、都市の中央部に近づくほど住民の地位が高く、それに応じて建物の強度などがより高くなっているそうだ。もしかしたら無事な研究所もあるかもしれない。そんな思いをいだいて二体と一人は廃墟を後にした。
都市の中央部へ向かって進んではみるものの、地震の被害は甚大でどこも似たような廃墟となっていた。ガイストは中央に行くほど建物の強度は増すと言っていたが、地震の規模が大きかったのか、揺れに耐え切った建物は未だ見つからなかった。
「たしかこの辺りだったはずだ」
ガイストが何事かつぶやき、周囲を探し始める。「見つけた」という声に近づいてみると瓦礫の間に地下へと続く階段があった。その先には金属製の重厚な扉がある。
「私の先生の研究所だ。変わった人でね。研究所を他人に知られるわけにはいかないと言ってこんな所に作ってしまったんだ」
「しかし最早バレバレダ」
元はうまく隠れていたのだろうが、周りの建物が崩れて階段は剥き出しになっていた。さらに扉の前では怪しい老人が何やらいじっている。
『早束慎入社がいるようですね』
「いや、あの人は……」
ガイストが階段を駆け下り、老人の背中に声をかける。
「先生!スヴェン先生、ご無事でしたか」
どうやら先ほど話に出ていたガイストの先生らしい。
「おぉ!懐かしい顔だと思ったら、君はガイストくんじゃないか。久しぶりだな」
「お久しぶりです。大変なことになってしまいましたね」
「ふむ、積もる話はあるだろうがそんなモノは後だ。今はこの扉を何とかせねばならん」
話を聞くと、先程の地震で扉を開くパスワードが変わってしまったらしい。パスワードを解析しようとしていたのだが、自分で作ったセキュリティが予想以上に優秀で突破するのに時間がかかっていたところにガイストが声をかけた、とのことだ。
『なるほど、そういう琴であれば渡に任せてください』
「この機械はガイストくんが作ったのかね?言葉が少しおかしいようだが」
「ええ、まぁ……。あとでお話ししましょう。性能は保証しますよ」
誤字ばかりのメイヴのウィンドウを見て不安になるスヴェン。だがパスワードの解析というなら確かにメイヴが適任だろう。しかしメイヴは以前ネットワークのハッキングの際に暴走してコントロール不能の状態にまで陥っている。
「大丈夫なのか、メイヴ?」
その点を心配するゲンダーにメイヴは自信満々に答える。
『大丈夫だ、問題ない』
「なに、誤ったパスワードを入力してもこちらに危害はない。そういう事なら任せて見よう」
ゲンダーの心配事とは別だったがそれならそれで安心出来る。スヴェンに場所を代わってもらい作業を始める。数分もしないうちに扉が開いた。
『作行完了です。思ったよりも供力なセキュリティでした』
「なんということだ。これほど早く破っておいて言う台詞かね」
驚きながら中に入っていくスヴェンに続いて、ゲンダーたちも中に入る。研究所の内部も酷い有様だったが、研究器具や資料が床に散らばっているくらいで施設自体は未だ問題なく機能していた。メイヴを直すための工具も探せばすぐに見つかるだろう。
「これならなんとかなりそうだな。実は先生……」
そう言ってガイストはスヴェンにこれまでの事情を話し始めた。すべてを聞き終えるまで、スヴェンは黙っていた。
「なるほど、そういうことならばここにあるものは好きに使うといい。少々散らかっているがね」
「ありがとうございます。これでメイヴを直すことができる」
『では、回炉豆を票示します。この排線がこのようになっているので、ここをこうしてみてください』
早速メイヴの修理を始める。
「たしかこの辺りだったはずだ」
ガイストが何事かつぶやき、周囲を探し始める。「見つけた」という声に近づいてみると瓦礫の間に地下へと続く階段があった。その先には金属製の重厚な扉がある。
「私の先生の研究所だ。変わった人でね。研究所を他人に知られるわけにはいかないと言ってこんな所に作ってしまったんだ」
「しかし最早バレバレダ」
元はうまく隠れていたのだろうが、周りの建物が崩れて階段は剥き出しになっていた。さらに扉の前では怪しい老人が何やらいじっている。
『早束慎入社がいるようですね』
「いや、あの人は……」
ガイストが階段を駆け下り、老人の背中に声をかける。
「先生!スヴェン先生、ご無事でしたか」
どうやら先ほど話に出ていたガイストの先生らしい。
「おぉ!懐かしい顔だと思ったら、君はガイストくんじゃないか。久しぶりだな」
「お久しぶりです。大変なことになってしまいましたね」
「ふむ、積もる話はあるだろうがそんなモノは後だ。今はこの扉を何とかせねばならん」
話を聞くと、先程の地震で扉を開くパスワードが変わってしまったらしい。パスワードを解析しようとしていたのだが、自分で作ったセキュリティが予想以上に優秀で突破するのに時間がかかっていたところにガイストが声をかけた、とのことだ。
『なるほど、そういう琴であれば渡に任せてください』
「この機械はガイストくんが作ったのかね?言葉が少しおかしいようだが」
「ええ、まぁ……。あとでお話ししましょう。性能は保証しますよ」
誤字ばかりのメイヴのウィンドウを見て不安になるスヴェン。だがパスワードの解析というなら確かにメイヴが適任だろう。しかしメイヴは以前ネットワークのハッキングの際に暴走してコントロール不能の状態にまで陥っている。
「大丈夫なのか、メイヴ?」
その点を心配するゲンダーにメイヴは自信満々に答える。
『大丈夫だ、問題ない』
「なに、誤ったパスワードを入力してもこちらに危害はない。そういう事なら任せて見よう」
ゲンダーの心配事とは別だったがそれならそれで安心出来る。スヴェンに場所を代わってもらい作業を始める。数分もしないうちに扉が開いた。
『作行完了です。思ったよりも供力なセキュリティでした』
「なんということだ。これほど早く破っておいて言う台詞かね」
驚きながら中に入っていくスヴェンに続いて、ゲンダーたちも中に入る。研究所の内部も酷い有様だったが、研究器具や資料が床に散らばっているくらいで施設自体は未だ問題なく機能していた。メイヴを直すための工具も探せばすぐに見つかるだろう。
「これならなんとかなりそうだな。実は先生……」
そう言ってガイストはスヴェンにこれまでの事情を話し始めた。すべてを聞き終えるまで、スヴェンは黙っていた。
「なるほど、そういうことならばここにあるものは好きに使うといい。少々散らかっているがね」
「ありがとうございます。これでメイヴを直すことができる」
『では、回炉豆を票示します。この排線がこのようになっているので、ここをこうしてみてください』
早速メイヴの修理を始める。
作業をほとんど終えた頃、スヴェンが小さな直方体を持ってそばに立っていた。
「ガイスト、これを持っていけ。この研究所のメインコンピュータだ。メイヴの解析に役立つだろう」
「こんなに小さいのがか?」
あまりの小ささに疑いを持つゲンダー。
「機械の性能とその大きさに相関性はない。正真正銘、この研究所の最大の頭脳だ」
「こんな物を頂いてよろしいのですか?」
「騙されていたとはいえ君は敵国ヴェルスタンドの科学者だ。あまり目立たないほうがいいだろう。それがあればどんな環境であっても最低限の作業はできる。保証するよ。なに、さっきの地震で使えなくなったというだけだ」
恐縮するガイストに、スヴェンはなんでもない様に答えた。
「スヴェンはどうするんダ?」
「ガイストがくれた霊子兵器の資料があるからな。もう少しここで頑張ってみようと思う。この有様ではマキナが戦争に勝つことはないだろうが、犠牲者は減らせるかもしれない。何か必要なものがあれば声をかけてくれ。出来る限り用意しよう」
そう言ってスヴェンは再び研究所を片付け始めた。
直にメイヴの修理も終える。ゲンダーの目的はメイヴを扱うことのできるものを捜すことだ。しかし、先程の地震も気になる。その時に見た鯰のようなものも……。ゲンダーはこれから何をなすべきか、自分のすべきことを考え始めるのだった。
「ガイスト、これを持っていけ。この研究所のメインコンピュータだ。メイヴの解析に役立つだろう」
「こんなに小さいのがか?」
あまりの小ささに疑いを持つゲンダー。
「機械の性能とその大きさに相関性はない。正真正銘、この研究所の最大の頭脳だ」
「こんな物を頂いてよろしいのですか?」
「騙されていたとはいえ君は敵国ヴェルスタンドの科学者だ。あまり目立たないほうがいいだろう。それがあればどんな環境であっても最低限の作業はできる。保証するよ。なに、さっきの地震で使えなくなったというだけだ」
恐縮するガイストに、スヴェンはなんでもない様に答えた。
「スヴェンはどうするんダ?」
「ガイストがくれた霊子兵器の資料があるからな。もう少しここで頑張ってみようと思う。この有様ではマキナが戦争に勝つことはないだろうが、犠牲者は減らせるかもしれない。何か必要なものがあれば声をかけてくれ。出来る限り用意しよう」
そう言ってスヴェンは再び研究所を片付け始めた。
直にメイヴの修理も終える。ゲンダーの目的はメイヴを扱うことのできるものを捜すことだ。しかし、先程の地震も気になる。その時に見た鯰のようなものも……。ゲンダーはこれから何をなすべきか、自分のすべきことを考え始めるのだった。
Chapter11 END
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