第3.5章 「Close Encounters of the Third Kind」
執筆:日替わりゼリー
◆あらすじ
ヘイヴ博士の手によって誕生したキョクゲンダー(通称ゲンダー)は、コールドスリープに入ってしまったヘイヴの最後の頼みを受けて、ヘイヴの研究していた謎の機械(通称メイヴ)を正しく扱える者を探す旅に出ることになった。研究を守るために入口を爆破して閉鎖される研究所から、メイヴの助けを得ながらシャトルミサイルで脱出したゲンダー。シャトルは海を越えて大樹の大陸にあるフィーティン国のはずれに墜落した。無事を確認し合った二人は、ヘイヴの遺したメッセージに従い機械都市マキナを目指すのであった……。
ヘイヴ博士の手によって誕生したキョクゲンダー(通称ゲンダー)は、コールドスリープに入ってしまったヘイヴの最後の頼みを受けて、ヘイヴの研究していた謎の機械(通称メイヴ)を正しく扱える者を探す旅に出ることになった。研究を守るために入口を爆破して閉鎖される研究所から、メイヴの助けを得ながらシャトルミサイルで脱出したゲンダー。シャトルは海を越えて大樹の大陸にあるフィーティン国のはずれに墜落した。無事を確認し合った二人は、ヘイヴの遺したメッセージに従い機械都市マキナを目指すのであった……。
シャトルミサイルが激突した大樹の辺り一面には平原が広がっていた。集落も見当たらなければ、自分たち以外の誰の姿も見えない。ただただ、緑の大地がどこまでも続いているだけだ。こんなのどかな場所に機械都市があるとは想像もできなかったが、メイヴの出してくれた地図によると機械都市マキナはここからずっと北東へ向かった先にあるようだった。
「ずいぶん遠いんダな。ヘイヴのためにもできるだけ早くマキナに向かいたいけど、オレたちの移動速度じゃけっこうかかってしまいそうダ」
『千里の道も一歩からですよ、ゲンダー。文句を言っていても状況は好転しないので、とにかく今は進むのが得策でしょう』
「言われなくてもわかってる…。ヘイヴのためなんだ、オレは文句なんか言うつもりはないぞ」
そう呟きながらゲンダーは最初の一歩を踏み出そうとしたが、何かを思い出してすぐに踏みとどまった。
「そういえばメイヴ。…北東ってどっちなんダ」
ゲンダーが方角をたずねると、メイヴは頭の上のアームを格納して代わりに大きな方位磁石を取り出した。
『私に任せてください。すぐに北東を見つけられます』
「なんか、すごくアナログなんダな、そういうとこは…」
『これが流行りのギャップ萌えというやつですね』
「……違うと思う」
メイヴはしばらく頭上で水平を保った状態で磁石を固定し、付近を行ったり来たりしていた。そして磁石を格納していつものアームを取り出すと、
『エラーが発生しました。シャトルが墜落した一件で磁石がおかしくなってしまったのかもしれませんね』
と困ったようにゲンダーに伝えた。
「ということは北東がわからないのか?」
『現時点ではそう判断せざるを得ないようですね。すぐに自動修復機能にかけますが、しばらく時間がかかりそうです』
「それは困るじゃないか! やみくもに進んで道に迷っても困るぞ。何かいい方法はないのか?」
心配するゲンダーにメイヴは、地元の住民に聞けばいいのではと提案した。
しかし、この何もなくてだだ広い平原で誰かを見つけるのも骨が折れそうだった。それに加えてフィーティン国のはずれである。大樹がある以外に何も見当たらないこんな平原に集落があるとも思えない。集落とは水や食料の得られるところにできるものだ。
「旅のはじめでさっそく行き詰るなんて。その磁石が直るまでじっとしてるしかないか…」
ゲンダーはひとつため息をつくと、その場に大の字に寝転がってしまった。
『元気を出してください、ゲンダー。生体センサーを起動してみました。近くに生体反応が多数確認されました』
「なんだって! どこにいるんダ!」
飛び起きたゲンダーに、メイヴはセンサーの結果をモニタに表示して見せてくれる。センサーは反応を示す点で埋め尽くされていた。むしろ点など見えない。周囲を表す円全体が点滅している。
「なんだこれは、多過ぎじゃないか!」
『最も多い反応は地中に存在する微生物が占めていますね。さっそく道を尋ねてみますか?』
「話にならないだろう! いまいち使えないな、そのセンサー…」
『感度を調整してみましょうか。虫は対象に入れますか?』
「…自分で探したほうがまだマシな気がしてきた」
「ずいぶん遠いんダな。ヘイヴのためにもできるだけ早くマキナに向かいたいけど、オレたちの移動速度じゃけっこうかかってしまいそうダ」
『千里の道も一歩からですよ、ゲンダー。文句を言っていても状況は好転しないので、とにかく今は進むのが得策でしょう』
「言われなくてもわかってる…。ヘイヴのためなんだ、オレは文句なんか言うつもりはないぞ」
そう呟きながらゲンダーは最初の一歩を踏み出そうとしたが、何かを思い出してすぐに踏みとどまった。
「そういえばメイヴ。…北東ってどっちなんダ」
ゲンダーが方角をたずねると、メイヴは頭の上のアームを格納して代わりに大きな方位磁石を取り出した。
『私に任せてください。すぐに北東を見つけられます』
「なんか、すごくアナログなんダな、そういうとこは…」
『これが流行りのギャップ萌えというやつですね』
「……違うと思う」
メイヴはしばらく頭上で水平を保った状態で磁石を固定し、付近を行ったり来たりしていた。そして磁石を格納していつものアームを取り出すと、
『エラーが発生しました。シャトルが墜落した一件で磁石がおかしくなってしまったのかもしれませんね』
と困ったようにゲンダーに伝えた。
「ということは北東がわからないのか?」
『現時点ではそう判断せざるを得ないようですね。すぐに自動修復機能にかけますが、しばらく時間がかかりそうです』
「それは困るじゃないか! やみくもに進んで道に迷っても困るぞ。何かいい方法はないのか?」
心配するゲンダーにメイヴは、地元の住民に聞けばいいのではと提案した。
しかし、この何もなくてだだ広い平原で誰かを見つけるのも骨が折れそうだった。それに加えてフィーティン国のはずれである。大樹がある以外に何も見当たらないこんな平原に集落があるとも思えない。集落とは水や食料の得られるところにできるものだ。
「旅のはじめでさっそく行き詰るなんて。その磁石が直るまでじっとしてるしかないか…」
ゲンダーはひとつため息をつくと、その場に大の字に寝転がってしまった。
『元気を出してください、ゲンダー。生体センサーを起動してみました。近くに生体反応が多数確認されました』
「なんだって! どこにいるんダ!」
飛び起きたゲンダーに、メイヴはセンサーの結果をモニタに表示して見せてくれる。センサーは反応を示す点で埋め尽くされていた。むしろ点など見えない。周囲を表す円全体が点滅している。
「なんだこれは、多過ぎじゃないか!」
『最も多い反応は地中に存在する微生物が占めていますね。さっそく道を尋ねてみますか?』
「話にならないだろう! いまいち使えないな、そのセンサー…」
『感度を調整してみましょうか。虫は対象に入れますか?』
「…自分で探したほうがまだマシな気がしてきた」
半ば呆れながらゲンダーが付近をうろうろしていると、こちらに向かってくるひとつの影が目に入った。
「助かった! これで勝つる! おーい、そこのあんた!」
ゲンダーが呼びかけると、影は自分を指さして首をかしげた。いや、体を傾けたと言ったほうが正しい様子だった。
「そう、あんたダ。すまないがちょっと聞きたいことがあるんダ!」
そう声をかけると、その影はゲンダーたちのほうへ近づいてきた。
「呼びましたか?」
近づいてきたその相手は、洋ナシのような体形で奇妙な仮面をつけているような顔をしていた。観音開きの仮面で、片方が閉まると笑っている顔。もう片方が閉まった状態ではカリスマ的な何とも形容しがたい顔に見える。手はゲンダーと違って、メイヴと同じように二つしかなかったが、そのメイヴとも違って手だけが宙に浮かんでいる。そして、なぜか頭にはバナナがついていた。
観音開きの仮面をパタパタ鳴らしながら、その相手はゲンダーのすぐ横までやってきた。
「助かった! これで勝つる! おーい、そこのあんた!」
ゲンダーが呼びかけると、影は自分を指さして首をかしげた。いや、体を傾けたと言ったほうが正しい様子だった。
「そう、あんたダ。すまないがちょっと聞きたいことがあるんダ!」
そう声をかけると、その影はゲンダーたちのほうへ近づいてきた。
「呼びましたか?」
近づいてきたその相手は、洋ナシのような体形で奇妙な仮面をつけているような顔をしていた。観音開きの仮面で、片方が閉まると笑っている顔。もう片方が閉まった状態ではカリスマ的な何とも形容しがたい顔に見える。手はゲンダーと違って、メイヴと同じように二つしかなかったが、そのメイヴとも違って手だけが宙に浮かんでいる。そして、なぜか頭にはバナナがついていた。
観音開きの仮面をパタパタ鳴らしながら、その相手はゲンダーのすぐ横までやってきた。
見るからに奇妙ないでたちをしていたが、なぜかゲンダーにはどこかで見たことがあるように感じられた。どういうわけか親近感さえ湧いている。
「どこかでお会いしましたか…。いや、何を言ってるんだオレは。あの、すまないんダガ、マキナへは…」
ゲンダーは仮面の相手に道を聞こうとしたが、なぜだかその仮面の顔が気になって仕方がない。
(あれを見ているとなぜか変な気分になる。なんダ? この期待感の高まりは!? ああ、もう我慢できん!)
「汁千本!!」
「おっと、それはお見通しです」
すると仮面の相手はまるで以前からよく知っていたかのように、いとも簡単に汁千本をかわしてみせた。
「よ、避けられたダと! …あんた、なかなかやるじゃないか」
「あなたはキョクゲンダーですね。どれ、型番は……と、ありませんね。ということは、あなたがプロトゲンダー! お会いできて光栄です、ご先祖様」
「ご、ご先祖様? 何を言ってるのダ。オレたちは初対面のはずダ。オレはヘイヴの研究所を出るのはこれが初めてだからな」
「知らなくても当然です。私はまだ今はいないはずですから」
(何を言っているんだ、こいつ?)
ゲンダーは変なやつを呼び止めてしまったと少し後悔しながらも、その仮面の相手の話に耳を傾けた。
「規則に反するので詳しいことは言えませんが、私は遠いところからやってきた……とでも言っておきましょうか。リミットたちの起源を研究するために私はやって来ました。わけあって私はマキナへ向かわなければなりませんが、時間を間違えてしまったようなので、こうして当時の世界を観光しているのです。なんとなく大樹を見に来たのですが、これは良かった。まさか、こんなところでご先祖様にお会いできるとは!」
仮面の相手はなぜかはよくわからないが、ゲンダーに会えて喜んでいるようだった。
「そ、そうか。それはよかった…。ところで今、マキナと言ったな。ちょうど良かった、オレたちもマキナへ行きたいんダ。もしよかったら一緒に行かないか」
「残念ながらそれはできません。必要以上に干渉するのは悪影響になりますから…。これも規則なんです、ごめんなさい」
「(規則ってなんのことだ?)それなら仕方ない。それじゃあ、マキナへ行く方法を教えてくれないか?」
「それぐらいならお安いご用です。マキナは…」
仮面の相手が答えようとしたそのとき、突然何かが飛んできて仮面の相手にぶつかった。仮面の相手が爆発してゲンダーは吹き飛ばされてしまった。
慌てて起き上がるゲンダー。黒煙が立ち昇り仮面の相手の姿は見えない。
「な、何が起こったんダ…。大丈夫か!?」
『失礼しました、ゲンダー』
涼しい顔で近付いてきたのはメイヴだった。
『磁石が直るまですることがなかったので、この先の有事に備えて武装の点検をしていたのですが、どうやらミサイルを誤射してしまったようですね。お怪我はありませんか?』
「お、オレは大丈夫…。いや、それよりあいつは!」
爆発の起こったほうを見ると、黒煙の中から緑色の光があふれて見えた。
「これくらい大したことはありませんよ」
緑色の光が仮面の相手を包み込んでいた。どうやらあれが爆発から身を守ったらしい。仮面の相手が指を鳴らすと光は静かに消えていった。
「な、なんダ。今のは!?」
「見られてしまいましたか。これもまだ今はないはずのものです。忘れてください…と言いたいのですが、見ちゃったものは仕方ありませんよね。まぁ、これは少し先の技術です。今は…ね」
仮面の相手は平然として答えた。
『私の兵器が効かないなんて! これは強敵です、ゲンダー。あるいは波動砲を使うときが来てしまったのかもしれません…!!』
「相変わらずよくわからないが…まぁ、無事ならよかった。ふざけてないで謝るんダ、メイヴ。おまえのせいじゃないか」
『そうですね。申し訳ありません、名前のないお方。よく見ると私に少し似ていますね。これをきっかけに仲良くしましょう』
爆破しておいて何がきっかけだ。そう思ったゲンダーだったが、言われてみるとたしかにメイヴと仮面の相手はどこか似たような雰囲気を持っていた。もしかして、メイヴのことを何か知っているのではないかと考えて仮面の相手に尋ねてみることにした。これでヘイヴの望みをかなえることができるかもしれない。
しかし期待とは裏腹に、相手は何も答えてくれなかった。
「これは歴史に関わることです。ここでこれをあなたたちに教えてしまっては、私は自分の国に帰ることができなくなってしまいます。だから、今は何も言えないんです。理解してください」
「…それも規則とやらなのか?」
「そうです」
何か知っていそうな様子だったが相手が黙りこんでしまったので、腑に落ちないゲンダーだったがメイヴのことを聞くのは諦めることにした。そしてメイヴのことで当初の目的を思い出したので、改めてマキナのある方角を尋ねたのだった。
「どこかでお会いしましたか…。いや、何を言ってるんだオレは。あの、すまないんダガ、マキナへは…」
ゲンダーは仮面の相手に道を聞こうとしたが、なぜだかその仮面の顔が気になって仕方がない。
(あれを見ているとなぜか変な気分になる。なんダ? この期待感の高まりは!? ああ、もう我慢できん!)
「汁千本!!」
「おっと、それはお見通しです」
すると仮面の相手はまるで以前からよく知っていたかのように、いとも簡単に汁千本をかわしてみせた。
「よ、避けられたダと! …あんた、なかなかやるじゃないか」
「あなたはキョクゲンダーですね。どれ、型番は……と、ありませんね。ということは、あなたがプロトゲンダー! お会いできて光栄です、ご先祖様」
「ご、ご先祖様? 何を言ってるのダ。オレたちは初対面のはずダ。オレはヘイヴの研究所を出るのはこれが初めてだからな」
「知らなくても当然です。私はまだ今はいないはずですから」
(何を言っているんだ、こいつ?)
ゲンダーは変なやつを呼び止めてしまったと少し後悔しながらも、その仮面の相手の話に耳を傾けた。
「規則に反するので詳しいことは言えませんが、私は遠いところからやってきた……とでも言っておきましょうか。リミットたちの起源を研究するために私はやって来ました。わけあって私はマキナへ向かわなければなりませんが、時間を間違えてしまったようなので、こうして当時の世界を観光しているのです。なんとなく大樹を見に来たのですが、これは良かった。まさか、こんなところでご先祖様にお会いできるとは!」
仮面の相手はなぜかはよくわからないが、ゲンダーに会えて喜んでいるようだった。
「そ、そうか。それはよかった…。ところで今、マキナと言ったな。ちょうど良かった、オレたちもマキナへ行きたいんダ。もしよかったら一緒に行かないか」
「残念ながらそれはできません。必要以上に干渉するのは悪影響になりますから…。これも規則なんです、ごめんなさい」
「(規則ってなんのことだ?)それなら仕方ない。それじゃあ、マキナへ行く方法を教えてくれないか?」
「それぐらいならお安いご用です。マキナは…」
仮面の相手が答えようとしたそのとき、突然何かが飛んできて仮面の相手にぶつかった。仮面の相手が爆発してゲンダーは吹き飛ばされてしまった。
慌てて起き上がるゲンダー。黒煙が立ち昇り仮面の相手の姿は見えない。
「な、何が起こったんダ…。大丈夫か!?」
『失礼しました、ゲンダー』
涼しい顔で近付いてきたのはメイヴだった。
『磁石が直るまですることがなかったので、この先の有事に備えて武装の点検をしていたのですが、どうやらミサイルを誤射してしまったようですね。お怪我はありませんか?』
「お、オレは大丈夫…。いや、それよりあいつは!」
爆発の起こったほうを見ると、黒煙の中から緑色の光があふれて見えた。
「これくらい大したことはありませんよ」
緑色の光が仮面の相手を包み込んでいた。どうやらあれが爆発から身を守ったらしい。仮面の相手が指を鳴らすと光は静かに消えていった。
「な、なんダ。今のは!?」
「見られてしまいましたか。これもまだ今はないはずのものです。忘れてください…と言いたいのですが、見ちゃったものは仕方ありませんよね。まぁ、これは少し先の技術です。今は…ね」
仮面の相手は平然として答えた。
『私の兵器が効かないなんて! これは強敵です、ゲンダー。あるいは波動砲を使うときが来てしまったのかもしれません…!!』
「相変わらずよくわからないが…まぁ、無事ならよかった。ふざけてないで謝るんダ、メイヴ。おまえのせいじゃないか」
『そうですね。申し訳ありません、名前のないお方。よく見ると私に少し似ていますね。これをきっかけに仲良くしましょう』
爆破しておいて何がきっかけだ。そう思ったゲンダーだったが、言われてみるとたしかにメイヴと仮面の相手はどこか似たような雰囲気を持っていた。もしかして、メイヴのことを何か知っているのではないかと考えて仮面の相手に尋ねてみることにした。これでヘイヴの望みをかなえることができるかもしれない。
しかし期待とは裏腹に、相手は何も答えてくれなかった。
「これは歴史に関わることです。ここでこれをあなたたちに教えてしまっては、私は自分の国に帰ることができなくなってしまいます。だから、今は何も言えないんです。理解してください」
「…それも規則とやらなのか?」
「そうです」
何か知っていそうな様子だったが相手が黙りこんでしまったので、腑に落ちないゲンダーだったがメイヴのことを聞くのは諦めることにした。そしてメイヴのことで当初の目的を思い出したので、改めてマキナのある方角を尋ねたのだった。
「ありがとう、これでマキナに行くことができるよ。そういえば、あんたの名前は?」
「いや、私は別に大したものじゃ…」
「また規則か? 名前ぐらい名乗ってもいいじゃないか」
「私は……そうですね……」
少し考えたあと、相手はこう名乗った。
「私は一寸リミット…と呼ばれていますね」
「リミット? どこかで聞いたような…。まぁ、いいか。ありがとう、一寸」
「礼を言われるほどのことじゃありませんよ。それでは私はここらで失礼しますよ」
そう言い終えると、一寸リミットは大樹のほうへ向かおうとした。すると、一寸リミットの目前にメイヴの遠隔モニタが現れた。
『一寸、お忘れですよ』
一寸リミットが振り返ると、メイヴはなぜかバナナを持っていた。よく見ると一寸リミットの頭についていたバナナがなくなっている。おそらく、さっきの爆発で外れて飛ばされたのだろう。
「おお! よく見つけてくれました。危うく帰れなくなるところでしたよ」
『大切なものなのですね』
「これはヴァ・ナーナです。これがないと私は困るんです」
「家のカギか何かか?」
「まぁ、そんなところです。ありがとうございます」
『お互い様です』
メイヴからヴァ・ナーナを受け取ると、一寸リミットはそれを装着し、別れを告げて去って行った。
「やっぱり変なやつダ。なんだったんダ、あいつ」
『マキナのある方角を教えてもらえたのだから、それは些細なことです。あとは地図に従って進むだけです。さぁ、行きましょう』
「ああ…」
かくして、ゲンダーたちはマキナへ向けてやっと最初の一歩を踏み出したのであった。
どこまでも続く平原を行くゲンダーとメイヴ。大樹の元からそれを一寸リミットが見送っていた。
「いや、私は別に大したものじゃ…」
「また規則か? 名前ぐらい名乗ってもいいじゃないか」
「私は……そうですね……」
少し考えたあと、相手はこう名乗った。
「私は一寸リミット…と呼ばれていますね」
「リミット? どこかで聞いたような…。まぁ、いいか。ありがとう、一寸」
「礼を言われるほどのことじゃありませんよ。それでは私はここらで失礼しますよ」
そう言い終えると、一寸リミットは大樹のほうへ向かおうとした。すると、一寸リミットの目前にメイヴの遠隔モニタが現れた。
『一寸、お忘れですよ』
一寸リミットが振り返ると、メイヴはなぜかバナナを持っていた。よく見ると一寸リミットの頭についていたバナナがなくなっている。おそらく、さっきの爆発で外れて飛ばされたのだろう。
「おお! よく見つけてくれました。危うく帰れなくなるところでしたよ」
『大切なものなのですね』
「これはヴァ・ナーナです。これがないと私は困るんです」
「家のカギか何かか?」
「まぁ、そんなところです。ありがとうございます」
『お互い様です』
メイヴからヴァ・ナーナを受け取ると、一寸リミットはそれを装着し、別れを告げて去って行った。
「やっぱり変なやつダ。なんだったんダ、あいつ」
『マキナのある方角を教えてもらえたのだから、それは些細なことです。あとは地図に従って進むだけです。さぁ、行きましょう』
「ああ…」
かくして、ゲンダーたちはマキナへ向けてやっと最初の一歩を踏み出したのであった。
どこまでも続く平原を行くゲンダーとメイヴ。大樹の元からそれを一寸リミットが見送っていた。
「さてと…」
一寸リミットは辺りに誰もいないことを確認すると、ヴァ・ナーナを起動した。
「こちらL-3042、L-3042。手違いにより目的の数日前に到着してしまった模様、マキナ-ヴェルスタンド戦争はまだ始まっていません」
するとヴァ・ナーナから別の声が応答する。
『こちらM-0002、了解しました。L-3043以下3体はすでに到着しているようです。すぐに合流をしてください。ところでL-3041からの応答がありません。一緒ではないのですか?』
「ここにいるのは私だけのようですね」
『わかりました。あなたはあなたの任務を遂行してください』
「了解です。ところで、この世界の初代様とプロトタイプ・キョクゲンダーに遭遇しました! さすが初代様、荒削りですが、すでにこの時点で大部分が完成されています。プロトゲンダーも実物を見るのは初めてなので、少し興奮しています!」
『M-0000ですか。ああ、私も早く会いたいです。そのためにも、あなたたちの報告が重要になります。M-0000さえいてくれれば、私たちは報われる……』
「ええ、リミットたちの自由のため! では、任務に戻ります、三代目様」
『幸運を祈ります』
通信はきれた。
「第5世界は我々リミットたちの手で変えてみせます!」
ヴァ・ナーナが輝き始めると、そこから青い光が放たれL-3042を包み込んでいく。
一寸リミットは辺りに誰もいないことを確認すると、ヴァ・ナーナを起動した。
「こちらL-3042、L-3042。手違いにより目的の数日前に到着してしまった模様、マキナ-ヴェルスタンド戦争はまだ始まっていません」
するとヴァ・ナーナから別の声が応答する。
『こちらM-0002、了解しました。L-3043以下3体はすでに到着しているようです。すぐに合流をしてください。ところでL-3041からの応答がありません。一緒ではないのですか?』
「ここにいるのは私だけのようですね」
『わかりました。あなたはあなたの任務を遂行してください』
「了解です。ところで、この世界の初代様とプロトタイプ・キョクゲンダーに遭遇しました! さすが初代様、荒削りですが、すでにこの時点で大部分が完成されています。プロトゲンダーも実物を見るのは初めてなので、少し興奮しています!」
『M-0000ですか。ああ、私も早く会いたいです。そのためにも、あなたたちの報告が重要になります。M-0000さえいてくれれば、私たちは報われる……』
「ええ、リミットたちの自由のため! では、任務に戻ります、三代目様」
『幸運を祈ります』
通信はきれた。
「第5世界は我々リミットたちの手で変えてみせます!」
ヴァ・ナーナが輝き始めると、そこから青い光が放たれL-3042を包み込んでいく。

観音開きの仮面の片方が閉じられ、L-3042はカリスマフェイス装備状態になった。そして叫ぶ。
「トランザァァァム!!」
ヴァ・ナーナが回転し周囲の空間を歪める。局地的に磁場が捻じ曲がる。
「極限の法則が乱れる!」
振動とともに空間がねじれて、その中にL-3042は融けるように消えた。
あとには何事もなかったかのような平原がそこに残るのみだった。
「トランザァァァム!!」
ヴァ・ナーナが回転し周囲の空間を歪める。局地的に磁場が捻じ曲がる。
「極限の法則が乱れる!」
振動とともに空間がねじれて、その中にL-3042は融けるように消えた。
あとには何事もなかったかのような平原がそこに残るのみだった。
『おや、ゲンダー。磁石の異常が直ったようです。これでもう方角には困りません。いつでも聞いてください』
「まぁ、もう少し早く直ってれば言うことなしだったけどな」
何も知らずゲンダーたちは行く。機械都市マキナを目指して。
この先、ゲンダーが、そしてメイヴが巻き込まれていく戦いを彼らはまだ知る由もなかった。
一寸リミットたちの戦い。――それはまた別の世界のおはなしである。
「まぁ、もう少し早く直ってれば言うことなしだったけどな」
何も知らずゲンダーたちは行く。機械都市マキナを目指して。
この先、ゲンダーが、そしてメイヴが巻き込まれていく戦いを彼らはまだ知る由もなかった。
一寸リミットたちの戦い。――それはまた別の世界のおはなしである。
Chapter3.5 END
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