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「ウグッ………ウッ…………!」
心臓の音が何時もより大きく聞こえ、冷や汗がドッと吹き出ている。髪の色と反比例するように青白くなった顔は、苦しげに歪められていた。
尋常でない量の吐血をしながら、凄惨な状態の腹部を掴む手はガタガタと震えている。横槍が入ったお陰で決着が着かずじまいの相手の体に、折り重なるように倒れこみ、
佐倉杏子は一人呟く。
「許さねぇ……絶対許さねぇからな……っ!」
────────────────────────
「クッ……、何がどうなってやがる!?」
とある牧場に机を叩く音が響き渡る。
・・・
『アイツを救えないと悟って、せめて一人では死なせまいと自爆したと思ったらいつの間にか狂った殺し合いの会場にいた』
ありのまま今起こった事を話すとそうだが、まったく理解を超えていた。魔法や願いの力では断じてない、仮にそうだとして誰がこんなことを願うというのか?
それにソウルジェム底部に輪が付いてるのはともかく、首にも首輪が付いているのもよく分からない。
(あのウゼェバッハだかゴッホだかみたいな奴が言う事が本当なら、ソウルジェムにだけ付いてるもんじゃないのか?)
彼女ら『魔法少女』はソウルジェムという魂の結晶と魔力さえあれば、脳味噌が吹きでて心臓を抉りとられようが一応生きていられるはずなのだ。だから首にも巻いてあるのは少しおかしい気がする。
ともかくこの場を切り抜けなければいけない、しかしその前にお菓子か何か…つまめるものが欲しい所だ。
佐倉杏子にとってこれは必須事項、喫煙者が煙草を欲しがる程に自然。それにここに来る前に運動して腹がすいてるというのもある。
近くにあったデイバックを机の上に乗せ中を調べる、確かこのバッグにはいくつか道具が入れてあるとか言っていたからだ。
でもまさか戦いに必要な道具だけしか入っていないわけはないだろう、食べ物も立派に生きていくのに必要なものだ。
「うわ、グリーフシードはあんのに他は紙しかねぇのかよ……おっ、ポッキー見つけた!」
ニヘニヘと笑いながらポッキーを頬張る姿は、端から見たら遠足か何かの前にウキウキしている子供のように見えるだろう(実際はこの後に待つ人助けタイムを想像して心底真逆な事を考えているが)。次に折り畳まれた紙の検分にはいるようだ、戦いに必要な道具なんてなくても問題ないと自負してはいるがそれでもあった方が良いことに代わりはない。
「なんだこりゃ、イタリア料理?ははっ、食べたい物を書いたら出てくるわけじゃあるまいし………………『赤い水』?」
追記:この料理は赤い水の効果を受け付けない”|
あの忌むべき支配人が舞台の上で見せた『赤い水』の恐るべき効能は嫌でも頭にこびりつく。
元々ゾンビのようなものである自分達『魔法少女』にどんな影響があるのかは検討もつかないが、触れないようにするに越したことはない。
というのが彼女の見解であるが、しかし今優先すべきはさっさと方針を固めて先へ進むこと。訳の分からない紙に書いてあることに構っている暇はないのだ。
「別に今は気にしなくても問題ねぇだろ、さてお次は……」カシャカシャン!コトリ
紙を投げ捨てると内側からなんと本物のイタリア料理が!杏子は大喜びで紙に“お菓子”と書いて開いてみたが勿論何も出なかったことは言うまでもない。
「で……でもこれ本物だよな?バックの中に入ってたんだから全部私のものだよな!?」
紙から出てくる訳とか、毒が入ってるかどうかとかは、目の前の気品すら漂う芳ばしい香りと一品づつが宝石のように輝いているかのような計算された盛り付けの美しさの前には些細な問題だった。
食事の間襲われでもしたら堪らない。部屋の中、2階、外の様子、全て確認した。しかし遠くの方に猫がいただけだったので、杏子は、考えるのを止めた。
※以下
ジョジョの奇妙な冒険第四部「イタリア料理を食べにいこう!」とほぼ展開が変わらないため割愛させていただきます。
\ヒャッハー!ダイショウリダーッ!!ダレニモワタサネーカラナー!!/
☆ ☆ ☆ ☆
………しばらく経ってから。
1つ残らず絶品揃いだったのもさる事ながら食べた後に起きる不可思議な現象もまた、満足感を与えてくれた。
この間までの寝ずの番で溜まった疲れも、肩凝りも、お菓子の食べ過ぎで出来たが痛みもないので放って置いた虫歯も完璧に解消され、味わった事の無い類いの解放感が五臓六腑に染み渡る。
この料理の調理人トニオ・トラサルディのスタンド、『パールジャム』は食物の栄養素を利用し身体機能を異常活性させ『健康にする』スタンド。
一旦人が見たらコーラを飲んだらゲップするってぐらい確実に誤解されるようなグロテスクな現場になるが、その代わりすぐに料理に対応した部位が回復するのだ。
「ゾンビにされちまったって思ってたけど……これが生きてるってことなんだな、理解したよ。帰ったら週に一回ぐらいはちゃんと食事するんだ………」
最早悟りが開かれ後光が射すような表情をするレベルで感動に浸りながら、前菜とパスタを完食。目の前に残されたのはリンゴソースで甘酸っぱく味付けされた、舌に蕩ける食感が肉表面の輝く脂を見るだけで一目瞭然の子羊のソテーだけとなった。
「これが最後の一品か…………ちゃんと味わって食べなきゃ、これを作ったトニオって奴に悪いからな1切れづついくぜ」
柄にもなくテーブルマナーに気を配りつつキッチリ1皿に対して礼を欠かさない、人生で初めて一皿に対していただきますをした瞬間だった。そして期待に胸を膨らませ目を開けるとそこには…………
恐ろしいことに…………ごちそうさまの風景が広がっていた!!
「こ、これわっ!メチャウマニャス~!!こんなにうまい食べ物初めて食べたニャスーー!
うにゃ~、お口の中がとーげんきょーニャス~(* ̄w ̄*)
はっ!ごめんニャス赤い人、余りに美味しそうだったからついタダでご飯を貰ってしまったのね……」
手を合わせて謝罪するフード付きの民族衣装のようなものを纏った猫耳少女。
一時訳が分からずボーゼンとしていたが、アスパラガスと葉っぱしか残っていない皿を見て事態を把握した。
同時にわなわなと手は震え、怒髪天を突くような怒りが込み上げてきた。何せメインディシュ無許可かっ拐いの罪である、許されざる大罪と言っても過言ではない。
代わりに用心棒がどうのとかご主人があーだとか言っていたが途中から聞こえなかった。
「ウゼェ、超ウゼェ………テメェだけは絶対に許さねぇぞこの猫野郎!!ジワジワとなぶり殺しにしてやる!!覚悟しやがれ!!」
「うにゃ!?食べ物のうらみは恐ろしーいニャ………タワバッ!!?」
全身真っ赤な装束に身を包み槍を携えて向かってくる人間から逃げようとした猫……もといカカ族の少女タオの腹は爆裂した。腹具合を治す効果でもあったんだろう、一方の杏子は料理の効果を知っているため容赦なく蹴りを入れようとするが……
「はぐっ……腹、が、ぅぁぁ………」
思わずその場にしゃがみ込まざるをえない腹痛が横槍を入れる。他の料理は特に何ともなかったのだが最後のパスタ、何故かアレだけは食べ終わった後腹痛を伴う。
それを治すためにはそう!子羊背肉のソテーが必要なのだ!!
「(腹)部が悪いようだからね、今回は降りさせてもらうよ……」
槍を杖にしてよろよろと立ち上がって残ったアスパラを平らげ、その場を後にしようとした。厳密に言えばWCへ行こうとしたのだが、思ったより効果が及ぶのが早かったようで────────血を吐きながら冒頭へ戻る。
【4-Cロマニー牧場/1日目/深夜】
【佐倉杏子@
魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:内蔵が飛び出している。吐血。食べ物の怨み。ソウルジェムの濁り1%
[装備]:魔法の槍@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:ランダム支給品(0~2)、基本支給品、刀の在りかを書いた紙(不明・不明)
グリーフシード(残り100%)
[思考・状況]:基本行動方針『正義の味方』として動く。
1:クソっ、分からせてやるからな!
2:他の支給品を確認。
※死亡後からの参戦です。
※首に付いている首輪は不死者と通常参加者を見分けさせないようにする為のダミーです。
【
タオカカ@BREVBLUE】
[状態]: 内蔵が飛び出している、吐血、すごい満足感
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品(1~3)、基本支給品、刀の在りかを書いた紙(不明・不明)
[思考・状況]基本行動方針:ロン毛の人のゆう事は悪いことだから聞いてやらんニャス!
1:へにゃあぁ!腹が!はらがぁ……この間の拾い食いがよくなかったのかニャ…
2:赤い人と友だちになりたかったニャ…
3:てきとーにぶらぶらする、ケンカしてたらとめる
※参戦時期は不明です。
※五秒ほどで血も含めて元に戻ります。
【トニオ・トラサルディのイタリア料理@ジョジョの奇妙な物語】
料理に混入させることで、食べた者の身体の不調を治癒する能力を持つ。まさに「医食同源」を地で行く能力『パールジャム』を混ぜたイタリア料理。
治癒にあたり、垢がものすごいペースでボロボロ出てきたり虫歯がすごいスピードで抜けて飛んでいった挙句抜け跡から凄い速さで新しい歯が生えたり内臓破裂したりするのでとても怖い。 ちなみに、健康な人に同じ料理を食べてさせても治癒効果は現れない。
肉汁等から赤い水が吹き出さないように加工されていた。
最終更新:2013年07月22日 19:35