Determination Symphony(後編) ◆Yd1CemYSRs
◆
ずっと怖かった。
それは、人間に殺されるからではない。兄と同じ鬼殺しの剣士に狙われるからではない。
鬼になったことで、人を食ったことで、兄を、たった一人残った最後の家族を裏切ることが。
それは、人間に殺されるからではない。兄と同じ鬼殺しの剣士に狙われるからではない。
鬼になったことで、人を食ったことで、兄を、たった一人残った最後の家族を裏切ることが。
いや。
兄に見捨てられることが、怖かった。
禰豆子が人を食えば、炭治郎が禰豆子を殺す。その後、炭治郎も腹を切る。そう定められている。
自分のせいで兄が死ぬ、それは嫌だ。
自分が殺されるのはいい。兄の手に依って裁かれるのならばそれは仕方ない。受け入れられる。
だが――そのとき兄はどんな顔をしているだろうか。
禰豆子のせいで自分も死ぬのだと、何てことをしてくれたんだと、そう怒っているだろうか。失望しているだろうか。
自分のせいで兄が死ぬ、それは嫌だ。
自分が殺されるのはいい。兄の手に依って裁かれるのならばそれは仕方ない。受け入れられる。
だが――そのとき兄はどんな顔をしているだろうか。
禰豆子のせいで自分も死ぬのだと、何てことをしてくれたんだと、そう怒っているだろうか。失望しているだろうか。
――おまえなんて俺の妹じゃない。鬼め。悪鬼め!
どこからか響いてくる言葉が何よりも深く禰豆子を傷つける。
それだけの罪を犯したのだ、死んで償え、いや死すら生ぬるい、死んで許されるはずがあるものか。
兄の口から放たれるすべての言葉が呪詛となり禰豆子を苛む。
それだけの罪を犯したのだ、死んで償え、いや死すら生ぬるい、死んで許されるはずがあるものか。
兄の口から放たれるすべての言葉が呪詛となり禰豆子を苛む。
――そうだ、禰豆子。それがおまえだ。おまえはもう人ではない。鬼として生きるしかないのだ
いつしか、兄の言葉にかぶさるようにもう一つの声が響いてきた。
先の見えない暗い雨の中から現れたのは、緩やかに波打つ髪の長身の男。
兄が一度だけすれ違ったという、この世すべての邪悪を煮詰めて形にしたようなドス黒い――
先の見えない暗い雨の中から現れたのは、緩やかに波打つ髪の長身の男。
兄が一度だけすれ違ったという、この世すべての邪悪を煮詰めて形にしたようなドス黒い――
――何も悲観することはない。人間など肉に過ぎん。我らの糧となるしか価値のないただの餌だ。何を悲しむことがある
その声はひどく心地よく禰豆子を誘う。
肉。そうだ、あの肉は美味かったではないか。血の甘さ、骨の歯ごたえ、肉の柔らかさ。どれを取っても文句などない。
禰豆子はもう鬼なのだから。人を食べても仕方ない。兄に見捨てられても鬼として生きていけばいい、それだけのこと。
肉。そうだ、あの肉は美味かったではないか。血の甘さ、骨の歯ごたえ、肉の柔らかさ。どれを取っても文句などない。
禰豆子はもう鬼なのだから。人を食べても仕方ない。兄に見捨てられても鬼として生きていけばいい、それだけのこと。
――そうだ禰豆子、おまえは鬼だ。鬼として生きろ。おまえの兄もどうせおまえのことなど救ってはくれはしない
闇が禰豆子に手を伸ばす。
禰豆子は、その手を――
禰豆子は、その手を――
「何度だって言ってやる! 炭治郎はおまえを見捨てねえ! 兄貴は絶対に妹や弟を見捨てたりはしねえッ!」
世界が揺れる。
落雷の如き光と衝撃を伴ったその叫びは、禰豆子の閉じ籠もる世界そのものをこじ開けてくる。
暗雲を、雷鳴が斬り裂いていく。
落雷の如き光と衝撃を伴ったその叫びは、禰豆子の閉じ籠もる世界そのものをこじ開けてくる。
暗雲を、雷鳴が斬り裂いていく。
「なのにおまえは諦めんのか? 戦いもしねえで、おまえが兄貴を見捨てるのか!?」
知らない男の声だ。
知らない男のはずだ。
なのに、その声に込められた意志は、驚くほど熱く、泣きたくなるほどに温かい。
知らない男のはずだ。
なのに、その声に込められた意志は、驚くほど熱く、泣きたくなるほどに温かい。
「負けるな! 戦え! もう一度兄貴と会うまで、生きることを諦めんな!」
叫びの一つ一つが光の刃となり、黒を白に染めていく。
いつしかその声は、憎しみに満ちた言葉を吐き捨てていた兄の声に重なっていく。
闇もまた光を掻き消さんと禰豆子に指を伸ばす。
いつしかその声は、憎しみに満ちた言葉を吐き捨てていた兄の声に重なっていく。
闇もまた光を掻き消さんと禰豆子に指を伸ばす。
――け……るな……
――食え! 禰豆子! 餌の戯れ言に耳を貸すな! おまえはもう鬼なのだぞ!
――負けるな、禰豆子
――黙れ黙れ黙れ! 禰豆子! 食え! すべて食い殺すのだ!
――禰豆子ッ! 負けるな!
――だま……
――禰豆子! 負けるな! 俺はおまえを見捨てない!たった一人の妹を見捨てたりなんかしない! だから禰豆子、おまえも頑張れ! 負けるな禰豆子!
――ね
――頑張れ頑張れ禰豆子! 俺はいつだっておまえを見てるぞ! おまえは強い子だ! 俺の自慢の妹だ! 大切な妹だ! 禰豆子! 頑張れ! おまえが間違ってしまったのなら俺も一緒に謝る! 許してもらえないかもしれない、殴られるかもしれない、でもそれは俺も一緒だ! おまえが裁かれるなら俺も一緒に裁かれる! 地獄にだって一緒に行く! だから禰豆子、諦めないでくれ!おまえが諦めない限り、俺もおまえを諦めない! おまえがどこに行ったって必ず探し出して手を握る! 禰豆子! 負けるな! 禰豆子!
――食え! 禰豆子! 餌の戯れ言に耳を貸すな! おまえはもう鬼なのだぞ!
――負けるな、禰豆子
――黙れ黙れ黙れ! 禰豆子! 食え! すべて食い殺すのだ!
――禰豆子ッ! 負けるな!
――だま……
――禰豆子! 負けるな! 俺はおまえを見捨てない!たった一人の妹を見捨てたりなんかしない! だから禰豆子、おまえも頑張れ! 負けるな禰豆子!
――ね
――頑張れ頑張れ禰豆子! 俺はいつだっておまえを見てるぞ! おまえは強い子だ! 俺の自慢の妹だ! 大切な妹だ! 禰豆子! 頑張れ! おまえが間違ってしまったのなら俺も一緒に謝る! 許してもらえないかもしれない、殴られるかもしれない、でもそれは俺も一緒だ! おまえが裁かれるなら俺も一緒に裁かれる! 地獄にだって一緒に行く! だから禰豆子、諦めないでくれ!おまえが諦めない限り、俺もおまえを諦めない! おまえがどこに行ったって必ず探し出して手を握る! 禰豆子! 負けるな! 禰豆子!
光が闇を打ちのめした。
これはしょせん、禰豆子がこうであればいいと願う炭治郎の幻影にすぎない。禰豆子の中にある炭治郎の記憶を元にした、都合のいい幻。
だがその声は絶え間ない。炭治郎の声に重なって、ずっと禰豆子を励ます声が聞こえている。
これはしょせん、禰豆子がこうであればいいと願う炭治郎の幻影にすぎない。禰豆子の中にある炭治郎の記憶を元にした、都合のいい幻。
だがその声は絶え間ない。炭治郎の声に重なって、ずっと禰豆子を励ます声が聞こえている。
「生きろ、禰豆子ちゃん! 拳は大事なものを護るために使うもんだ……おまえにはいるんだろ! 大好きな兄貴がよ!」
「禰豆子ちゃん……そうだ、まだ君が君でいられるのなら、大事な人がいるのなら、君は人として生きるべきだ!」
「禰豆子ちゃん……そうだ、まだ君が君でいられるのなら、大事な人がいるのなら、君は人として生きるべきだ!」
いつしか声は二つ。その声に導かれるように、兄の幻の隣に、どこかで見た金髪の少年が現れた。
少年は両手に扇子を持って激しく踊っている。
少年は両手に扇子を持って激しく踊っている。
――頑張れ頑張れ禰、豆、子! 負けるな負けるな禰、豆、子!
兄の必死の、終わりなき叫びに合わせるように、少年の動きもどんどん加速していく。
それは決してふざけているわけではない。禰豆子を鼓舞しているのだとわかる。
禰豆子と視線を合わせた少年は、寂しそうに微笑み――そして笑った。
扇子を放り捨て、腰の刀を握り締め、前傾し。
それは決してふざけているわけではない。禰豆子を鼓舞しているのだとわかる。
禰豆子と視線を合わせた少年は、寂しそうに微笑み――そして笑った。
扇子を放り捨て、腰の刀を握り締め、前傾し。
――シィィィィ……!
深く鋭い呼吸音。そして光が――雷が弾けた。
雷の龍が奔り、禰豆子を呑み込まんとしていた闇を、憎むべき悪鬼を消し飛ばす。
雷の龍が奔り、禰豆子を呑み込まんとしていた闇を、憎むべき悪鬼を消し飛ばす。
――生きろ禰豆子! 生きてくれ、命を投げ出さないでくれ!
「生きろ禰豆子ちゃん! 妹や弟が自分より早く死ぬなんてのはな、兄貴にとっちゃ死ぬより辛いことなんだ!」
「禰豆子ちゃん! 君が人として生きたいのなら、どれだけ辛い道でも僕はその隣りにいる! 君と一緒に戦う! だから!」
「生きろ禰豆子ちゃん! 妹や弟が自分より早く死ぬなんてのはな、兄貴にとっちゃ死ぬより辛いことなんだ!」
「禰豆子ちゃん! 君が人として生きたいのなら、どれだけ辛い道でも僕はその隣りにいる! 君と一緒に戦う! だから!」
兄の声と、覚えのない、しかし不思議と心地いい声が唱和した。
雷の龍が天に登る。暗雲を清め祓う。禰豆子の世界を塗り潰していた雨が、止む。
瞬間――世界は光に満ちていく。
日の光。太陽の光。鬼にとって憎むべき必滅の光。
だがその温かさは禰豆子を優しく包み込む。
あ、と禰豆子は声を漏らす。懐かしい匂い。お日様の匂い。兄の匂い。
雷の龍が天に登る。暗雲を清め祓う。禰豆子の世界を塗り潰していた雨が、止む。
瞬間――世界は光に満ちていく。
日の光。太陽の光。鬼にとって憎むべき必滅の光。
だがその温かさは禰豆子を優しく包み込む。
あ、と禰豆子は声を漏らす。懐かしい匂い。お日様の匂い。兄の匂い。
――待ってろ、禰豆子
「強く」
「強く」
――兄ちゃんが必ず
「強く、」
「強く、」
――おまえを見つけるから!
「強く!」
「強く!」
――――絶対に見捨てないからな!
「強く生きろ――――ッ!」
「強く生きろ――――ッ!」
「――アア、ア……あ、ああ……わああああああああああああああっ!!!!」
◆
雅貴と悠は地を這っている。押さえつけていた禰豆子が、抵抗もできないほどの莫大な力で二人を弾き飛ばしたからだ。
いつ暴走するか神経をすり減らしながら全身の膂力を総動員して暴れる禰豆子を押さえつけていたため、二人とも体力の消耗が激しい。
声は届かなかったのか。立ち上がる禰豆子に対処すべく、アマゾンオメガが構える。
いつ暴走するか神経をすり減らしながら全身の膂力を総動員して暴れる禰豆子を押さえつけていたため、二人とも体力の消耗が激しい。
声は届かなかったのか。立ち上がる禰豆子に対処すべく、アマゾンオメガが構える。
「待て! 何かおかしいぞ」
雅貴が悠を制する。彼らの視線の先では、禰豆子が向かってくるでもなく立ち尽くしている。
禰豆子の手が持ち上がり、拳を握り――違った。
禰豆子が握り締めたのは、自らの額に生えた角だった。
禰豆子の手が持ち上がり、拳を握り――違った。
禰豆子が握り締めたのは、自らの額に生えた角だった。
「フーッ、フウウッ……グ」
血走った目。赤く染まった瞳。そこには確かに意志の光があった。
人を食えと吠え立てる本能。噛み締める清めの刀。思い出した兄の声。禰豆子を見ている二人の男。
人を食えと吠え立てる本能。噛み締める清めの刀。思い出した兄の声。禰豆子を見ている二人の男。
生きる。
鬼ではなく、人として。
大好きな兄とともに、これからも。
そのために“これ”が邪魔だ。
たとえ完全に失くすことはできなくても、もう二度と屈しはしないと、来るなら来いと、どこかにいる災禍の元凶に叩きつけるために。
鬼ではなく、人として。
大好きな兄とともに、これからも。
そのために“これ”が邪魔だ。
たとえ完全に失くすことはできなくても、もう二度と屈しはしないと、来るなら来いと、どこかにいる災禍の元凶に叩きつけるために。
「あ――うううう、あああ……!」
揺るがぬ心を刃に換えて、悪鬼を滅殺せよ!
「うああああああああああああっ――――――!」
万感の思いを込めて、禰豆子は自らの角を――鬼の証を――握り潰した。
それが、戦いの終焉だった。
それが、戦いの終焉だった。
◆
「それじゃあ、気をつけて」
「お互いにな。死ぬなよ、水澤くん」
「お互いにな。死ぬなよ、水澤くん」
数時間前に休息をとった喫茶店のすぐ側で、雅貴はバイクのキーを回す。
懐かしい排気音。広斗のバイク。緊急時だしあいつも許してくれるだろ、と雅貴は笑う。
懐かしい排気音。広斗のバイク。緊急時だしあいつも許してくれるだろ、と雅貴は笑う。
「悪いね、いろいろもらっちゃって。このバイクは弟が手塩にかけて仕上げたもんだからさ」
「いえ、ここに来れただけで十分助かりました。雅貴さんが使う方が役立つでしょう」
「いえ、ここに来れただけで十分助かりました。雅貴さんが使う方が役立つでしょう」
広斗のバイク、ハーレー・ダビッドソン VRSCDXに跨るのは、悠ではなく雅貴だった。この後も弟を探すという雅貴に悠が譲ると申し出たのだ。
「僕もアマゾンになればバイクくらいの速さで走れますから、気にしないでください」
「マジ!? ああ、まあ、マジだろうね……いやほんとごめんね? さっき蹴っちゃってさ。怒ってないよね? 恨んでないよね?」
「ちょっと根には持ってます」
「おおう。さ、さっきのカップ麺で相殺ってことにしといてくんない?」
「仕方ないですね。それで手を打ちます」
「ほっ」
「マジ!? ああ、まあ、マジだろうね……いやほんとごめんね? さっき蹴っちゃってさ。怒ってないよね? 恨んでないよね?」
「ちょっと根には持ってます」
「おおう。さ、さっきのカップ麺で相殺ってことにしといてくんない?」
「仕方ないですね。それで手を打ちます」
「ほっ」
出会いは(ほぼ雅貴のせいで)最悪だったものの、その後の共闘を経て、二人は打ち解けていた。
「拳は大事なものを護るために使う……僕にも妹がいるから、雅貴さんの言ったことはわかります。僕もそうあれたらいいんですが」
悠がそう言うと雅貴はたいそう機嫌を良くして、じゃあこれ食おうぜ! とカップ麺を出して二人で食べた。
細い見た目にそぐわない悠の底なしの食欲に雅貴は軽く引いたのだが、体力回復に必要と言われたらそりゃ仕方ないと納得して。
細い見た目にそぐわない悠の底なしの食欲に雅貴は軽く引いたのだが、体力回復に必要と言われたらそりゃ仕方ないと納得して。
「禰豆子ちゃんのことは任せたぜ。俺も炭治郎くんを探してみるからよ」
「お願いします。僕も広斗さんに会ったら雅貴さんのことを伝えますから」
「お願いします。僕も広斗さんに会ったら雅貴さんのことを伝えますから」
戦いの後、自らの角を砕いた禰豆子はその場で気を失った。死んだわけではない。だが死んだように深い眠りに落ちている。
二人は禰豆子をこの喫茶店へ運び込み、情報交換がてら休養を取ることにしたのだ。
悠はその間にアームカッターで、禰豆子を押さえつけていた雅貴の木刀を短く分割した。
雅貴が拾ったこの木刀は、詳しい原理は不明ながらも持てばイライラした気持ちがすーっと抜けていく不思議なものだった。
血に酔っていた禰豆子が瞬間的にその支配から逃れられたのも、木刀の効果あってこそ。
雅貴はそこまで意図していたわけではなく、もしかしたらいけんじゃね? くらいの気持ちだったと白状し、悠を呆れさせたりもしたが。
ともあれ。小分けされた王刀“鋸”は束ねられ紐を通され、新たな枷として禰豆子の口に嵌められている。
二人は禰豆子をこの喫茶店へ運び込み、情報交換がてら休養を取ることにしたのだ。
悠はその間にアームカッターで、禰豆子を押さえつけていた雅貴の木刀を短く分割した。
雅貴が拾ったこの木刀は、詳しい原理は不明ながらも持てばイライラした気持ちがすーっと抜けていく不思議なものだった。
血に酔っていた禰豆子が瞬間的にその支配から逃れられたのも、木刀の効果あってこそ。
雅貴はそこまで意図していたわけではなく、もしかしたらいけんじゃね? くらいの気持ちだったと白状し、悠を呆れさせたりもしたが。
ともあれ。小分けされた王刀“鋸”は束ねられ紐を通され、新たな枷として禰豆子の口に嵌められている。
「これで解決したと思う?」
「いえ……無理でしょう。角を折ったと言っても、それだけで本能を消し去れるとは思えない。この木刀の効果も認めますが、時間を引き伸ばせるだけです」
「いえ……無理でしょう。角を折ったと言っても、それだけで本能を消し去れるとは思えない。この木刀の効果も認めますが、時間を引き伸ばせるだけです」
衝動を抑え込んだとはいえ、禰豆子が人間に戻ったわけではない。額の出血がすぐに止まったことや、成人女性の体格から幼女並みに戻ったことからも明らかだ。
だが禰豆子は眠っている。数時間前までと違い、眠れている。内なる食人衝動がひとまず抑制されている証拠だった。
このまま刺激を与えなければもう少しは保つ。その間に竃門炭治郎を、禰豆子を本当の意味で安心させてやれる兄を見つけなければ。
禰豆子の戦いは己の身を省みない、誰かの援護があってようやく成り立つ自棄的なものだった。それが彼女の兄とするなら、やはり二人は出会うべきなのだ。
それでこそ開ける道もあると、悠は信じることにした。
だが禰豆子は眠っている。数時間前までと違い、眠れている。内なる食人衝動がひとまず抑制されている証拠だった。
このまま刺激を与えなければもう少しは保つ。その間に竃門炭治郎を、禰豆子を本当の意味で安心させてやれる兄を見つけなければ。
禰豆子の戦いは己の身を省みない、誰かの援護があってようやく成り立つ自棄的なものだった。それが彼女の兄とするなら、やはり二人は出会うべきなのだ。
それでこそ開ける道もあると、悠は信じることにした。
「しかし、ポン刀か。あんま良い思い出ないんだけどなぁ」
「でも強い力を感じます。多分、僕や禰豆子ちゃんのような存在にも通じる力を」
「でも強い力を感じます。多分、僕や禰豆子ちゃんのような存在にも通じる力を」
悠は自分の持っていた最後の支給品を雅貴に譲った。
それは刀。何か得体の知れない力を感じる、ご丁寧に妖刀という注意書きのされた業物の刀だった。
銘を、明神切村正。宿業を断ち切る、魔境の域に至った一振り。
悠には特に必要がないが、単独で動く雅貴にはまあ有用なものであると言えなくもない。
二人が同行するのはできないことだ。落ち着いたとはいえ、人間の雅貴が禰豆子の側にいるリスクは高い。雅貴側にも広斗を探したいという事情がある。
そして何より――
それは刀。何か得体の知れない力を感じる、ご丁寧に妖刀という注意書きのされた業物の刀だった。
銘を、明神切村正。宿業を断ち切る、魔境の域に至った一振り。
悠には特に必要がないが、単独で動く雅貴にはまあ有用なものであると言えなくもない。
二人が同行するのはできないことだ。落ち着いたとはいえ、人間の雅貴が禰豆子の側にいるリスクは高い。雅貴側にも広斗を探したいという事情がある。
そして何より――
「じゃあ、まずは自衛隊基地に行ってみるわ。知らない仲でもねえしな……」
雅貴には目的地があった。
悠が持っていたスカーフ。雅貴もよく知っているSWORDの一角、山王連合会のエンブレムが入ったもの。
それを、悠は金髪の男の遺体から拝借したと言った。まず間違いなく、その金髪は雅貴とも縁の深い男で間違いはない。
山王連合会のヘッド、コブラ。ムゲン時代から数えればかなりの長い付き合いだ。
そんなコブラが死んだとなれば、確かめないわけにもいかない。本当にコブラが死んだのなら、墓の一つでも作ってやらなければ。
雅貴は拳を突き出した。悠は意図を理解できずきょとんとする。
悠が持っていたスカーフ。雅貴もよく知っているSWORDの一角、山王連合会のエンブレムが入ったもの。
それを、悠は金髪の男の遺体から拝借したと言った。まず間違いなく、その金髪は雅貴とも縁の深い男で間違いはない。
山王連合会のヘッド、コブラ。ムゲン時代から数えればかなりの長い付き合いだ。
そんなコブラが死んだとなれば、確かめないわけにもいかない。本当にコブラが死んだのなら、墓の一つでも作ってやらなければ。
雅貴は拳を突き出した。悠は意図を理解できずきょとんとする。
「締まらねえな。ほら、拳出して」
雅貴に倣い悠が拳を握ると、雅貴は自分の拳をごつんと打ち付けた。
「俺ら、もうダチじゃん?」
「……ええ、そうですね。ありがとう、ございます」
「……ええ、そうですね。ありがとう、ございます」
アマゾンの自分にも屈託なく笑いかけてくる雅貴に、悠はやや驚き――笑った。雅貴と同じように。
いつか、人と共にいた頃を思い出す。悠を仲間として受け入れてくれた人たちのことを。
根拠はない。それでも、悠は確かに希望を感じていた。
ガチャリと二人の背後でドアを開く音がした。
いつか、人と共にいた頃を思い出す。悠を仲間として受け入れてくれた人たちのことを。
根拠はない。それでも、悠は確かに希望を感じていた。
ガチャリと二人の背後でドアを開く音がした。
「お、禰豆子ちゃん。起きたのか」
小さくなった禰豆子が、とてとてと走ってくる。少なくとも今はもう暴走してはいない。
禰豆子は小さな拳を作り、雅貴に向ける。
禰豆子は小さな拳を作り、雅貴に向ける。
「う!」
「ははは、もちろん禰豆子ちゃんも俺のダチだよ。ほら」
「ははは、もちろん禰豆子ちゃんも俺のダチだよ。ほら」
悠のときと同じように拳を打ち合わせる雅貴と禰豆子。雅貴にもすっかり懐いていた。
だが一緒にはいられないともわかっている。禰豆子はすっと悠の隣に下がり、雅貴へと手を振る。
だが一緒にはいられないともわかっている。禰豆子はすっと悠の隣に下がり、雅貴へと手を振る。
「必ず、また会おうぜ。悠、禰豆子ちゃん。次は弟も連れてくっからさ」
「無事の再会を祈ります、雅貴さん」
「うーう!」
「無事の再会を祈ります、雅貴さん」
「うーう!」
バイクはゆっくりと動き出し――そして、柔らかな朝の光の中を進んでいく。
悠と禰豆子は、去りゆく雅貴の背中を見送っていた。ずっと。ずっと。
悠と禰豆子は、去りゆく雅貴の背中を見送っていた。ずっと。ずっと。
「あの、雅貴さん! 言おうかどうか迷ったんですけど」
「んー? 何よ」
「そのバイクの後部シート、ちょっと……その、色が合ってないんじゃないかって」
「ぶふっ! くく……だよな! だよな! 俺もそう思うわ! 言っとくよ! 最高にイカしてるよなーってさ!」
「んー? 何よ」
「そのバイクの後部シート、ちょっと……その、色が合ってないんじゃないかって」
「ぶふっ! くく……だよな! だよな! 俺もそう思うわ! 言っとくよ! 最高にイカしてるよなーってさ!」
【C-7・街/1日目・早朝】
【水澤悠@仮面ライダーアマゾンズ】
[状態]:やや疲労
[装備]:悠のアマゾンズドライバー@仮面ライダーアマゾンズ
[道具]:基本支給品一式×2
[思考・状況]
基本方針:狩るべきものを狩り、守りたいものを守る
1:人を喰う、あるいは殺したモノを狩る
2:仁より先に千翼、イユ、クラゲアマゾンを殺す
3:明という人物に鮫島の最後を伝える
4:禰豆子が人として生きようとする限り、隣に立ち続ける
5:竃門炭治郎、雨宮広斗を探す
6:いずれ雨宮雅貴と合流する
[備考]
※雨宮雅貴と情報を交換し、数時間後に落ち会う約束をしました。場所と時間は後続の方にお任せします。
[状態]:やや疲労
[装備]:悠のアマゾンズドライバー@仮面ライダーアマゾンズ
[道具]:基本支給品一式×2
[思考・状況]
基本方針:狩るべきものを狩り、守りたいものを守る
1:人を喰う、あるいは殺したモノを狩る
2:仁より先に千翼、イユ、クラゲアマゾンを殺す
3:明という人物に鮫島の最後を伝える
4:禰豆子が人として生きようとする限り、隣に立ち続ける
5:竃門炭治郎、雨宮広斗を探す
6:いずれ雨宮雅貴と合流する
[備考]
※雨宮雅貴と情報を交換し、数時間後に落ち会う約束をしました。場所と時間は後続の方にお任せします。
【竈門禰豆子@鬼滅の刃】
[状態]:健康、鬼
[装備]:王刀・鋸(小分けにして束ねて口枷にしてある)@刀語
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:人として生きたい
1:兄を探す
[備考]
※人肉を食いました。
※王刀の効果で一時的に食人衝動が抑え込まれています。
※太陽を克服しました。
[状態]:健康、鬼
[装備]:王刀・鋸(小分けにして束ねて口枷にしてある)@刀語
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:人として生きたい
1:兄を探す
[備考]
※人肉を食いました。
※王刀の効果で一時的に食人衝動が抑え込まれています。
※太陽を克服しました。
【雨宮雅貴@HiGH&LOW】
[状態]:疲労(中)
[装備]:ハーレー・ダビッドソン VRSCDX【ナイトロッドスペシャル】@HiGH&LOW、明神切村正@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品一式、コブラのスカーフ、カップヌードル 北海道ミルクシーフー道ヌードル×数個@現実、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:弟、仲間と一緒に生還する
1:広斗との合流
2:コブラの生死を確認する
3:中野姉妹、鑢姉妹、竃門炭治郎を探す
4:村山とスモーキーは……まあ余裕があったら探してもいいかな
5:いずれ水澤悠、竃門禰豆子と合流する
[備考]
※水澤悠と情報を交換し、数時間後に落ち会う約束をしました。場所と時間は後続の方にお任せします。
※鑢七花を女性だと確信しています。
[状態]:疲労(中)
[装備]:ハーレー・ダビッドソン VRSCDX【ナイトロッドスペシャル】@HiGH&LOW、明神切村正@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品一式、コブラのスカーフ、カップヌードル 北海道ミルクシーフー道ヌードル×数個@現実、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:弟、仲間と一緒に生還する
1:広斗との合流
2:コブラの生死を確認する
3:中野姉妹、鑢姉妹、竃門炭治郎を探す
4:村山とスモーキーは……まあ余裕があったら探してもいいかな
5:いずれ水澤悠、竃門禰豆子と合流する
[備考]
※水澤悠と情報を交換し、数時間後に落ち会う約束をしました。場所と時間は後続の方にお任せします。
※鑢七花を女性だと確信しています。
- 明神切村正@Fate/Grand Order
水澤悠に支給。
鍛冶師にしてセイバーのサーヴァント・千子村正の手になる、宿命・宿業を断ち切る妖刀。
刀身に神気を宿し、人ならざるモノ、何度殺せど死なずの化生をも斬り滅ぼす大業物である。
鍛冶師にしてセイバーのサーヴァント・千子村正の手になる、宿命・宿業を断ち切る妖刀。
刀身に神気を宿し、人ならざるモノ、何度殺せど死なずの化生をも斬り滅ぼす大業物である。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| Determination Symphony(前編) | 水澤悠 | R |
| 竈門禰豆子 | ||
| 雨宮雅貴 | 顔 |