探し人はおらず ◆2lsK9hNTNE
ふれあい動物パークという名前に反して、そこには動物なんて一匹たりともいなかった。
何もいないのに柵や小屋がだけがあるのは何となく物悲しい雰囲気を感じる。木も草が生え放題なのもあって、まるでずっと前に潰れてしまったかのようだ。殺し合いのために作られたのだろうから潰れたもなにもないが。
何もいないのに柵や小屋がだけがあるのは何となく物悲しい雰囲気を感じる。木も草が生え放題なのもあって、まるでずっと前に潰れてしまったかのようだ。殺し合いのために作られたのだろうから潰れたもなにもないが。
「上田……いるか上田……」
奈緒子はささやくような声で探し人の名を呼ぶ。当然返事は返ってくるわけもなく。
「そん小せん声じゃ届かねーよ」
後ろから猛丸がツッコミを入れてきた。奈緒子は振り返らずに言う。
「大声だしたら危ない奴に聞かれるかもしれないだろ」
「でも届かねーんじゃ意味無くねーか?」
「上田に聞こえることよりも危ない奴に聞かれないことの方が大事だ!」
「でも届かねーんじゃ意味無くねーか?」
「上田に聞こえることよりも危ない奴に聞かれないことの方が大事だ!」
奈緒子は力強く断言した。上田を呼んだときよりも大きい声だった。
「そんなもんか?」
あまり納得はしていなそう声だったが、それ以上追求もしてこなかった。
猛丸はバトルロワイアルが始まってから奈緒子が最初に出会った参加者だ。本人が言うには徳川家康が国を治めていた時代の人間だそうだ。
最初は当然嘘っぱちだと思った。奈緒子が今までに会ってきた自称超能力者や霊能力者と同じ。自分がタイムスリップをしたと自慢したいだけの輩だと。
しかし猛丸は自慢するどころか、奈緒子のことを未来人かと驚き……現代では当たり前の建築物に感嘆し……事前に種があると教えた手品を見て、魔法でも見せられたかのように仰天していた(気分が良かった)。
あんなリアクションをされては奈緒子も考えを改めざるを得なかった。猛丸は嘘なんてついていない――自分は昔の人間だと思いこんでいるのだ。
きっと外界との交流が断絶している山奥だが島だかで暮らしていたのだろう。そこで暮らしている人間はみんな知識が徳川家康の時代で止まっているに違いない。
嘘ならばなんとかして論破したいところだったが、本気でそう信じているのなら無理に今その考えを正すこともない。悪いやつではなさそうだし、聞けば彼もゲンノスキという知り合いを探しているという。
現代文明に頼らず暮らしているぶん身体も鍛えられてそうだ。奈緒子は上田探しに同行してもらうことにしたのだった。
猛丸は丘の上にある木に飛びつくと猿のように素早く登った。まだ日は昇っていないが彼が普通の人間よりも夜目が効くことはわかっている。遮蔽物も少ないし、猛丸ならあそこから周囲全体が見渡せるだろう。
猛丸はバトルロワイアルが始まってから奈緒子が最初に出会った参加者だ。本人が言うには徳川家康が国を治めていた時代の人間だそうだ。
最初は当然嘘っぱちだと思った。奈緒子が今までに会ってきた自称超能力者や霊能力者と同じ。自分がタイムスリップをしたと自慢したいだけの輩だと。
しかし猛丸は自慢するどころか、奈緒子のことを未来人かと驚き……現代では当たり前の建築物に感嘆し……事前に種があると教えた手品を見て、魔法でも見せられたかのように仰天していた(気分が良かった)。
あんなリアクションをされては奈緒子も考えを改めざるを得なかった。猛丸は嘘なんてついていない――自分は昔の人間だと思いこんでいるのだ。
きっと外界との交流が断絶している山奥だが島だかで暮らしていたのだろう。そこで暮らしている人間はみんな知識が徳川家康の時代で止まっているに違いない。
嘘ならばなんとかして論破したいところだったが、本気でそう信じているのなら無理に今その考えを正すこともない。悪いやつではなさそうだし、聞けば彼もゲンノスキという知り合いを探しているという。
現代文明に頼らず暮らしているぶん身体も鍛えられてそうだ。奈緒子は上田探しに同行してもらうことにしたのだった。
猛丸は丘の上にある木に飛びつくと猿のように素早く登った。まだ日は昇っていないが彼が普通の人間よりも夜目が効くことはわかっている。遮蔽物も少ないし、猛丸ならあそこから周囲全体が見渡せるだろう。
「どうですか?」
尋ねると猛丸は奈緒子の隣に飛び降りた。高さ八メートルはあったと思うのだが受け身すら取らず平然としている。さすがに自然の中で暮らす者である。
「人っ子一人いねえ。他ぬ場所探した方がいいさ」
「そうですか……」
「そうですか……」
期待していたというほどでもないが居ないと告げられると落胆はある。
奈緒子はリュックサックから地図とカンテラを取り出した。
奈緒子たちには上田とゲンノスキの行きそうな場所に心当たりはない。ふれあい動物パークに来たのも単純にここが一番近かったからだ。それでいくと次の目的地はPENTAGONか秀知院学園ということになる。
奈緒子は地図を見ながら適当に当たりをつけた方向を二箇所、順番に呼び指して言った。
奈緒子はリュックサックから地図とカンテラを取り出した。
奈緒子たちには上田とゲンノスキの行きそうな場所に心当たりはない。ふれあい動物パークに来たのも単純にここが一番近かったからだ。それでいくと次の目的地はPENTAGONか秀知院学園ということになる。
奈緒子は地図を見ながら適当に当たりをつけた方向を二箇所、順番に呼び指して言った。
「あっちとあっちに何があるか見えますか?」
「西ぬ方にはめっさでかい建物が見えんな。東ぬ方にはもっとめっさでかい建物が見える」
「もっとめっさでかい建物ですか」
「もっとめっさでかい建物さー」
「西ぬ方にはめっさでかい建物が見えんな。東ぬ方にはもっとめっさでかい建物が見える」
「もっとめっさでかい建物ですか」
「もっとめっさでかい建物さー」
行き先は西の秀知院学園に決定した。
◆
遠くから見ても大きかったが、近づいてみると秀知院学園は予想を遥かに越える大きさだった。学院というのは学び舎のことだと聞いていたが、これではまるで大名の城だ。
未来の人間は皆こんなところで学んでいるのだろうか。猛丸は目が回る思いだった。
未来の人間は皆こんなところで学んでいるのだろうか。猛丸は目が回る思いだった。
「こんなでっけー中探すば日が昇っちーよ……」
猛丸が呆然と呟く、と奈緒子は言った。
「そうですね。地図を見て目ぼしい場所だけ探しましょう」
「地図? お前(ヤー)ここん地図ももってんぬか?」
「いえ、ですが学院という場所は大体入り口に地図があるものです」
「でも入り口ん地図なんか置いたら攻められっと時困るさー」
「今は昔とは違います。そう簡単に攻めたり攻められたりなんて起こりません」
「……そうだったな」
「地図? お前(ヤー)ここん地図ももってんぬか?」
「いえ、ですが学院という場所は大体入り口に地図があるものです」
「でも入り口ん地図なんか置いたら攻められっと時困るさー」
「今は昔とは違います。そう簡単に攻めたり攻められたりなんて起こりません」
「……そうだったな」
奈緒子の生きる未来は猛丸が生きる時代とは違う。突然誰かに攻め込まれたりなんてしない。
誰か一人が力で国を治めたりもしないし、王と奴婢のような身分の差も存在しない。皆が平等に生きる権利を持っている。
生きる人の命の値打ちが等しい国。ニライカナイみてえだと猛丸は思う。
それは猛丸の時代よりも遥か遠い――関係ないくらいの未来の話だが。
たとえずっと先のことであろうとそんな世界が当たり前に存在している。それを思うと猛丸の心は晴れやかになるのだった。
誰か一人が力で国を治めたりもしないし、王と奴婢のような身分の差も存在しない。皆が平等に生きる権利を持っている。
生きる人の命の値打ちが等しい国。ニライカナイみてえだと猛丸は思う。
それは猛丸の時代よりも遥か遠い――関係ないくらいの未来の話だが。
たとえずっと先のことであろうとそんな世界が当たり前に存在している。それを思うと猛丸の心は晴れやかになるのだった。
秀知院学園の地図の読み方は猛丸にはよくわからない。奈緒子の案内で学園内の捜索を始めた。
ただし前を歩くのは猛丸だ。奈緒子はどっちに進むかを口で指示する。本人は認めないが奈緒子は前を歩くことを怖がっているようだった。
気持ちは猛丸にもわかる。この島は恐ろしい強者(チューバ)たちで溢れている。その気配だけでも猛丸は身体が震える。
人知を外れた力を得ても猛丸は戦うことが怖い。前は石曼子(シマンズ)に勝てたが今度は勝てないのではないか。自顕流に胴まで割られて、九十九城(グスク)まで攻め入られて、みんな殺されてしまうのではないか。よくそんなことを考える。
ただし前を歩くのは猛丸だ。奈緒子はどっちに進むかを口で指示する。本人は認めないが奈緒子は前を歩くことを怖がっているようだった。
気持ちは猛丸にもわかる。この島は恐ろしい強者(チューバ)たちで溢れている。その気配だけでも猛丸は身体が震える。
人知を外れた力を得ても猛丸は戦うことが怖い。前は石曼子(シマンズ)に勝てたが今度は勝てないのではないか。自顕流に胴まで割られて、九十九城(グスク)まで攻め入られて、みんな殺されてしまうのではないか。よくそんなことを考える。
(でもゲンノスキは怖がんねえだろーな)
ゲンノスキは、猛丸が霹鬼(ヒャッキー)の面妖なる力で襲いかかっても怯まなかった、恐ろしい霹鬼の姿を見せても怯えなかった。
猛丸は九十九城の仲間のことを思うと恐れに耐えられる。ゲンノスキのことを思うと恐れに打ち勝てる。共に戦えばきっと恐れなんて感じすらしない。
猛丸は九十九城の仲間のことを思うと恐れに耐えられる。ゲンノスキのことを思うと恐れに打ち勝てる。共に戦えばきっと恐れなんて感じすらしない。
(……どこにいるん?)
この島のどこかに存在するはず運命の兄弟に思いを馳せる。
――直後。猛丸はゲンノスキを感じた。
気配ではないし、匂いでもないし、音でもない。そんなもの感じられるような近くからでもない。
遠く北東の方角、強いて言葉にするなら魂の輝きとでも呼ぶべきか。穏やかでありながら猛烈に不吉を孕んだ何かを猛丸は感じた。
――直後。猛丸はゲンノスキを感じた。
気配ではないし、匂いでもないし、音でもない。そんなもの感じられるような近くからでもない。
遠く北東の方角、強いて言葉にするなら魂の輝きとでも呼ぶべきか。穏やかでありながら猛烈に不吉を孕んだ何かを猛丸は感じた。
「どうかしましたか?」
立ち止まった猛丸に奈緒子が声をかける。
「わりい。俺(ワー)や行ちゅん」
猛丸は近くの窓を開け――飛び出した。
「ちょ、ちょっと!?」
木から飛び降りた時とはわけが違う。ここは三階で先程のの木より一回り以上の高い。下も芝生ではなく硬いコンクリート。だがそれがなんだというのか。
猛丸は足が自然に地面に着くよりも速く、蹴り跳ぶ。衝撃でコンクリートが弾ける。兄弟の元へ猛丸は駆け出した。
猛丸は足が自然に地面に着くよりも速く、蹴り跳ぶ。衝撃でコンクリートが弾ける。兄弟の元へ猛丸は駆け出した。
【E-5 秀知院学園/1日目・黎明】
【山田奈緒子@TRICK】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、奈緒子の手品道具@TRICK、魔術協会制服@Fate/Grand Order、手榴弾×3
[思考・状況]
基本方針:元の生活に帰る。
1:猛丸を追いかけるか、どうするか
2:上田さんを探す。
[備考]
※参戦時期は第3シリーズ以降です。
※自分の支給品は確認済みです。
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、奈緒子の手品道具@TRICK、魔術協会制服@Fate/Grand Order、手榴弾×3
[思考・状況]
基本方針:元の生活に帰る。
1:猛丸を追いかけるか、どうするか
2:上田さんを探す。
[備考]
※参戦時期は第3シリーズ以降です。
※自分の支給品は確認済みです。
【猛丸@衛府の七忍】
[状態]:健康
[道具]: 基本支給品一式
[思考・状況]
基本方針:琉球に戻る。
1:ゲンノスキを感じた場所へ向かう
[備考]
※参戦時期は原作3巻終了時点です。
[状態]:健康
[道具]: 基本支給品一式
[思考・状況]
基本方針:琉球に戻る。
1:ゲンノスキを感じた場所へ向かう
[備考]
※参戦時期は原作3巻終了時点です。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 時を超えた遭遇 | 山田奈緒子 | [[]] |
| 猛丸 | 南海怨身八裂心技 |