―1954年 高知県室戸岬
「『駆逐艦雨打の碑』………」
ゆた姉と最後に会ってから、10年が経とうとしていた。
こちらに来てすぐ、雨氷型の戦没リストを調べた。
残存艦は思ったよりは多かったけれど、今は日本に居ない子も少なくなかった。
私は元・樹氷であることは告げずに、今も生きている子を訪ねたり、戦没した子の跡が残っている場所を訪れたりしている。
保安庁の監視付きで、遠出のスケジュールもそれほど自由ではなく、ここにもやっと来ることができた。
一番来たかった場所だった。
小さな碑は雑草に埋もれがちで、訪れる人は稀なようだった。
私は少し周りを整えて、持ってきた水とブラシでほんの気持ちだけど、磨いてあげた。
「『駆逐艦雨打の碑』………」
ゆた姉と最後に会ってから、10年が経とうとしていた。
こちらに来てすぐ、雨氷型の戦没リストを調べた。
残存艦は思ったよりは多かったけれど、今は日本に居ない子も少なくなかった。
私は元・樹氷であることは告げずに、今も生きている子を訪ねたり、戦没した子の跡が残っている場所を訪れたりしている。
保安庁の監視付きで、遠出のスケジュールもそれほど自由ではなく、ここにもやっと来ることができた。
一番来たかった場所だった。
小さな碑は雑草に埋もれがちで、訪れる人は稀なようだった。
私は少し周りを整えて、持ってきた水とブラシでほんの気持ちだけど、磨いてあげた。
―室戸岬沖300km地点
「後野さん、ごめんなさい、船まで出してもらって」
「いいのいいの、貴方の気持ちは尊重する。雨氷型を量産して使い潰した我々日本人の責だ、やれることはやる」
雨打の沈没地点へ向かう船。
周りには配備されたばかりのくす型護衛艦の子が陣を組んでいる。
私もあんなふうに海を走っていた頃があった。
「さぁ、そろそろ、このあたりだ……頼まれていたものも買ってある」
そう言うと、後野さんは紫色の紫苑の花束を渡してくれた。
「何から何まで本当に……ありがとうございます」
見渡す限りの海。ゆた姉が沈んだ海。
私は舳先へ歩き、海に花束を静かに沈めた。
「ただいま、ゆた姉。さようなら。」
(おわり)
「後野さん、ごめんなさい、船まで出してもらって」
「いいのいいの、貴方の気持ちは尊重する。雨氷型を量産して使い潰した我々日本人の責だ、やれることはやる」
雨打の沈没地点へ向かう船。
周りには配備されたばかりのくす型護衛艦の子が陣を組んでいる。
私もあんなふうに海を走っていた頃があった。
「さぁ、そろそろ、このあたりだ……頼まれていたものも買ってある」
そう言うと、後野さんは紫色の紫苑の花束を渡してくれた。
「何から何まで本当に……ありがとうございます」
見渡す限りの海。ゆた姉が沈んだ海。
私は舳先へ歩き、海に花束を静かに沈めた。
「ただいま、ゆた姉。さようなら。」
(おわり)