―1948年 香港
連合軍が香港上陸を果たし、日本軍からの奪還に成功してからしばらくのこと。
当然のことながら海軍は上陸作戦に多大な貢献をしたため、米国大統領の激励を兼ねた観閲を行うことになった。
当日は正装で観閲を受けること、という通達が出た。開戦以来正装なんてしたことない艦も多く、そういった者は大慌てだった。
そして、当日。ここではコーンフィールド級重巡洋艦の列に注目してみる。
当然のことながら海軍は上陸作戦に多大な貢献をしたため、米国大統領の激励を兼ねた観閲を行うことになった。
当日は正装で観閲を受けること、という通達が出た。開戦以来正装なんてしたことない艦も多く、そういった者は大慌てだった。
そして、当日。ここではコーンフィールド級重巡洋艦の列に注目してみる。
「制服なんていつ以来だっけかぁ?」
1番艦のコーンフィールド。体格はがっちりしているが太すぎることもなく、制服は似合っている。
「んなこと覚えてっかよ……だりー」
4番艦のトバーコフィールド。制服に耐えられないのか既に前面オープンである。
先日大破から復帰したばかりなこともあり、やや痛々しい風体だ。
「着崩してたら怒られるよトバーコ兄貴」
7番艦のピオニーフィールド。女性制服をキッチリと着込んでいる。
「じゃーアイツはどうなんだよアイツは!改造制服じゃねーか!」
トバーコが指差す先には2番艦のキャロットフィールド。
制服をキッチリ着ている…ように見えるが、よく見てみると襟元や裾が開いており、装飾も加わって露出度が上がった改造制服である。
「あ~ん?なんやボクの服にケチ付けようたぁ良い度胸やないか?」
「アッいやケチなんてとんでもございませn」
「後で覚えときや」
「………………」
「っていうか、兄貴達よりシトラス姉貴の方がヤバいか……」
ピオニーの視線の先には6番艦のシトラスフィールド。
「うん?何か言った?」
自由奔放な彼女は制服など用意しておらず、普段の格好で来ていた。
とはいえ、以前のようなスケスケの服装ではない長袖長ズボンだ。
それでもこの場では明らかに浮いている。
「いや………」
ピオニーの視線は5番艦のバーレイフィールドに移る。
「何だ、何か付いてるか?」
細身な彼は普段からコートまで着込んでいるため、制服も苦はなさそうだ。
「んーん。大丈夫。よく似合ってる」
「ん、そうか」
「そういえばクローバー兄貴が静かだなぁ」
3番艦のクローバーフィールドも着崩しなどはしていないが、上の空のようだ。
「おーい、クローバー兄貴、大丈夫?」
「…………」
周囲の音に対してまるで無反応だ。これで式典終了までやり過ごすつもりだろうか。
「…まあいいか」
隣の列はコーンフィールド級の派生型の列だ。
戦車揚陸艦のコットンフィールドを見ると、制服はズボンを選択したようだ。
「あのひとどっちかハッキリしないけど…やっぱりそっかー」
そしてピオニーは軽空母のネモフィラフィールドを探していると、目が合った。
声のかけられる距離ではないので、小さく手を振ると、彼も応えてくれた。
1番艦のコーンフィールド。体格はがっちりしているが太すぎることもなく、制服は似合っている。
「んなこと覚えてっかよ……だりー」
4番艦のトバーコフィールド。制服に耐えられないのか既に前面オープンである。
先日大破から復帰したばかりなこともあり、やや痛々しい風体だ。
「着崩してたら怒られるよトバーコ兄貴」
7番艦のピオニーフィールド。女性制服をキッチリと着込んでいる。
「じゃーアイツはどうなんだよアイツは!改造制服じゃねーか!」
トバーコが指差す先には2番艦のキャロットフィールド。
制服をキッチリ着ている…ように見えるが、よく見てみると襟元や裾が開いており、装飾も加わって露出度が上がった改造制服である。
「あ~ん?なんやボクの服にケチ付けようたぁ良い度胸やないか?」
「アッいやケチなんてとんでもございませn」
「後で覚えときや」
「………………」
「っていうか、兄貴達よりシトラス姉貴の方がヤバいか……」
ピオニーの視線の先には6番艦のシトラスフィールド。
「うん?何か言った?」
自由奔放な彼女は制服など用意しておらず、普段の格好で来ていた。
とはいえ、以前のようなスケスケの服装ではない長袖長ズボンだ。
それでもこの場では明らかに浮いている。
「いや………」
ピオニーの視線は5番艦のバーレイフィールドに移る。
「何だ、何か付いてるか?」
細身な彼は普段からコートまで着込んでいるため、制服も苦はなさそうだ。
「んーん。大丈夫。よく似合ってる」
「ん、そうか」
「そういえばクローバー兄貴が静かだなぁ」
3番艦のクローバーフィールドも着崩しなどはしていないが、上の空のようだ。
「おーい、クローバー兄貴、大丈夫?」
「…………」
周囲の音に対してまるで無反応だ。これで式典終了までやり過ごすつもりだろうか。
「…まあいいか」
隣の列はコーンフィールド級の派生型の列だ。
戦車揚陸艦のコットンフィールドを見ると、制服はズボンを選択したようだ。
「あのひとどっちかハッキリしないけど…やっぱりそっかー」
そしてピオニーは軽空母のネモフィラフィールドを探していると、目が合った。
声のかけられる距離ではないので、小さく手を振ると、彼も応えてくれた。
夏の日差しの下、観閲式が始まった。
とりあえず服装でとやかく言われることは無かったようだ。
しかし、暑い。そして、話が長い。戦争が終わったわけでもないのに壇上に上がるえらい人は次々と入れ替わる。
メインたる大統領の姿は見えない。
コーンフィールド級の列ではトバーコがフラフラしていた。
隣のバーレイが少し心配そうに声をかける。
「おい、大丈夫か」
「うぃ……ダメかもしんねぇ」
「全く、何のために前を開けていたのか」
「暑いんじゃねーよ、お偉方の話が長くてしんどいんだわ」
「……情けない」
バーレイは心配して損したと言わんばかりに視線を壇上へ戻した。
しかしトバーコのふらつきは収まらない。
「あ゛ー……もうムリ」
いよいよ壇上に大統領がやってくるという頃になって、とうとうばたりと倒れ込むトバーコ。
「おい、メディック」
冷静に救援を呼ぶバーレイ。
担架を持ってすぐさまやってきたのは工作艦のヴァルカンとデルタの二隻。
「どうされましたか」
「ああ、話が長くて倒れたんだと」
「はあ」
「見苦しいからさっさと連れて行ってくれ」
「了解」
運ばれていくトバーコ。
周りの艦はさもそんなことは起こっていないかのように壇上に集中している。
ただ一隻、クローバーフィールドだけは壇上の更に上の空を見つめていたが、やはり何も言われない。
炎天下、長々と続く大統領のお話。
この勝利は諸君のお陰だの、日本の降伏は近いだの、わかりきったような話を何度も繰り返している。
「はぁ~…こうジメジメしとるとメイク崩れてまうわ…はよ終わらんかな……」
キャロットフィールドは改造制服のみならず気合の入ったメイクをしていた。
彼の目的はこの後の観閲行進だった。この催しは、一般にも開放され、多くの香港市民が見学に来ている。
おしゃれ好きな彼は、これを自分のセンスを見せびらかす良い機会だと捉えていた。
そして、大統領の演説が終わり、彼が待ちに待った時間がやってくる。
観閲行進の時間だ。
とりあえず服装でとやかく言われることは無かったようだ。
しかし、暑い。そして、話が長い。戦争が終わったわけでもないのに壇上に上がるえらい人は次々と入れ替わる。
メインたる大統領の姿は見えない。
コーンフィールド級の列ではトバーコがフラフラしていた。
隣のバーレイが少し心配そうに声をかける。
「おい、大丈夫か」
「うぃ……ダメかもしんねぇ」
「全く、何のために前を開けていたのか」
「暑いんじゃねーよ、お偉方の話が長くてしんどいんだわ」
「……情けない」
バーレイは心配して損したと言わんばかりに視線を壇上へ戻した。
しかしトバーコのふらつきは収まらない。
「あ゛ー……もうムリ」
いよいよ壇上に大統領がやってくるという頃になって、とうとうばたりと倒れ込むトバーコ。
「おい、メディック」
冷静に救援を呼ぶバーレイ。
担架を持ってすぐさまやってきたのは工作艦のヴァルカンとデルタの二隻。
「どうされましたか」
「ああ、話が長くて倒れたんだと」
「はあ」
「見苦しいからさっさと連れて行ってくれ」
「了解」
運ばれていくトバーコ。
周りの艦はさもそんなことは起こっていないかのように壇上に集中している。
ただ一隻、クローバーフィールドだけは壇上の更に上の空を見つめていたが、やはり何も言われない。
炎天下、長々と続く大統領のお話。
この勝利は諸君のお陰だの、日本の降伏は近いだの、わかりきったような話を何度も繰り返している。
「はぁ~…こうジメジメしとるとメイク崩れてまうわ…はよ終わらんかな……」
キャロットフィールドは改造制服のみならず気合の入ったメイクをしていた。
彼の目的はこの後の観閲行進だった。この催しは、一般にも開放され、多くの香港市民が見学に来ている。
おしゃれ好きな彼は、これを自分のセンスを見せびらかす良い機会だと捉えていた。
そして、大統領の演説が終わり、彼が待ちに待った時間がやってくる。
観閲行進の時間だ。
太平洋艦隊総司令官の号令で観閲行進が始まる。
しばらく待っているとコーンフィールド級の列が動き出す番が来た。
一人分空きがあるが、一応は整然と並んでいる。
「そういや何で陸でやるんだろうな?観艦式って言やあ海でやるもんだろ」
「お兄ちゃん、これは観艦式やなくて観閲行進やさかい、陸でやって当然や」
「そういうもんなのか?」
「せやせや、いつもなら陸の兵士の連中がやってるやつや」
「ふーん」
それならまぁいいか、と言った風のコーンフィールド。
隣でキャロットフィールドが観衆に向けて手を振ったり投げキッスしたりと忙しいが、我関せず。
弟はこういうやつだ、という諦めだか理解だかで気にしないようにしているようだ。
シトラスフィールドも負けじと愛想を振りまく。彼女はキャロットフィールドへの対抗心が妙に強い。
バーレイフィールド、クローバーフィールド、ピオニーフィールドは特に会話もなく周りと歩調を合わせて行進している。
うちバーレイとピオニーは普段は他の兄弟とはそれぞれ別の場所で活動していた。
バーレイは終始やれやれといった雰囲気だったが、ピオニーはなんとなく気分を良くしていた。
彼女は上の兄姉と揃う瞬間はなんだかんだ言って好きなのである。ついでに、初めて着た制服が思ったより自分に似合っていて嬉しかったのもある。
「おおきに~おおきに~!おっ、そこなべっぴんさんお手振りおおきに!ボクからはキッスのプレゼントや!」
コーンフィールド級の列で明らかに一番うるさいキャロットフィールド。
だがしかし香港市民にはどうもそれがウケたようで、手を振り返される人気ぶりである。
気合を入れた格好も外れではなかったようだ。
「おっ!エゲレスの潜水艦のおばはん!観に来てくれたんやね~」
沿道には英海軍のアブソルートの姿があった。おばちゃんを自称する身とは言え、大声で言われたせいか困惑している様子。
「ガキンチョ重巡も一緒やないの!そーれ、飴ちゃんやったるわ」
銀髪の幼女に向けて持ち込みのペロペロキャンディを投げ渡すキャロット。幼女は受け取りニッコリする。
「ん?そこな美少女もおばはんのお知り合い?また今度紹介してや!」
亜麻色ロングヘアの少女にも声をかけるが、苦笑いされてしまった。
「あんまりよそ見ばかりしてると歩調遅れるぞ」
「だいじょぶだいじょぶ、心配せんといて~」
…
……
………
「みんな居る?あ、トバーコ兄貴はまだ寝腐ってるんだ?じゃ仕方ないね」
「ええやんええやん放っとき」
「っつーことで、観閲式お疲れっした。このバーベキューは打ち上げとしてピオニーがセッティングしてくれたんだ」
「ピオニーが?珍しいな」
「いっつも私達のことバカ呼ばわりしてるクセにねー」
「いいじゃん別に」
「焼くものはたくさん用意してある。好きなだけ焼いてけ!」
「やったー!」
コーンフィールド級達の一日は、まだまだ続きそうだ。
(おわり)
しばらく待っているとコーンフィールド級の列が動き出す番が来た。
一人分空きがあるが、一応は整然と並んでいる。
「そういや何で陸でやるんだろうな?観艦式って言やあ海でやるもんだろ」
「お兄ちゃん、これは観艦式やなくて観閲行進やさかい、陸でやって当然や」
「そういうもんなのか?」
「せやせや、いつもなら陸の兵士の連中がやってるやつや」
「ふーん」
それならまぁいいか、と言った風のコーンフィールド。
隣でキャロットフィールドが観衆に向けて手を振ったり投げキッスしたりと忙しいが、我関せず。
弟はこういうやつだ、という諦めだか理解だかで気にしないようにしているようだ。
シトラスフィールドも負けじと愛想を振りまく。彼女はキャロットフィールドへの対抗心が妙に強い。
バーレイフィールド、クローバーフィールド、ピオニーフィールドは特に会話もなく周りと歩調を合わせて行進している。
うちバーレイとピオニーは普段は他の兄弟とはそれぞれ別の場所で活動していた。
バーレイは終始やれやれといった雰囲気だったが、ピオニーはなんとなく気分を良くしていた。
彼女は上の兄姉と揃う瞬間はなんだかんだ言って好きなのである。ついでに、初めて着た制服が思ったより自分に似合っていて嬉しかったのもある。
「おおきに~おおきに~!おっ、そこなべっぴんさんお手振りおおきに!ボクからはキッスのプレゼントや!」
コーンフィールド級の列で明らかに一番うるさいキャロットフィールド。
だがしかし香港市民にはどうもそれがウケたようで、手を振り返される人気ぶりである。
気合を入れた格好も外れではなかったようだ。
「おっ!エゲレスの潜水艦のおばはん!観に来てくれたんやね~」
沿道には英海軍のアブソルートの姿があった。おばちゃんを自称する身とは言え、大声で言われたせいか困惑している様子。
「ガキンチョ重巡も一緒やないの!そーれ、飴ちゃんやったるわ」
銀髪の幼女に向けて持ち込みのペロペロキャンディを投げ渡すキャロット。幼女は受け取りニッコリする。
「ん?そこな美少女もおばはんのお知り合い?また今度紹介してや!」
亜麻色ロングヘアの少女にも声をかけるが、苦笑いされてしまった。
「あんまりよそ見ばかりしてると歩調遅れるぞ」
「だいじょぶだいじょぶ、心配せんといて~」
…
……
………
「みんな居る?あ、トバーコ兄貴はまだ寝腐ってるんだ?じゃ仕方ないね」
「ええやんええやん放っとき」
「っつーことで、観閲式お疲れっした。このバーベキューは打ち上げとしてピオニーがセッティングしてくれたんだ」
「ピオニーが?珍しいな」
「いっつも私達のことバカ呼ばわりしてるクセにねー」
「いいじゃん別に」
「焼くものはたくさん用意してある。好きなだけ焼いてけ!」
「やったー!」
コーンフィールド級達の一日は、まだまだ続きそうだ。
(おわり)