ネットワーク型コンパクトシティとは
都市の中の多様な魅力を複数の拠点として集約(コンパクト化)し、それを利便性の高い公共交通を中心とする多様な交通手段で連携(ネットワーク化)した都市の事である(
出典)。「集約型都市」ともいう。
宇都宮市のネットワーク型コンパクトシティ
宇都宮市では中心市街地を「都市拠点」、各地域の既存コミュニティなどに地域特性を踏まえた都市機能を集約させた「地域拠点」、市民が憩うことのできる観光地を「観光拠点」、働く・学ぶ機能が集中された地域を「産業拠点」とし、それらの拠点を基幹的公共交通で結ぶ街づくりを推進している。
ネットワーク型コンパクトシティの都市空間イメージ
ネットワーク型コンパクトシティ概念図
拠点づくりの方針
- 『都市拠点』は市の中心部に配置・形成する。全ての都市機能(「住」、「働・学」、「憩」) を集積するとともに、それぞれの機能が都市の競争力をけん引する高次性・広域性を備える。
- 『地域拠点』は各地域に配置・形成する。市民の日常生活を支える地域の拠点として, 「住」に関連する多様な都市機能を集積するとともに、地域特性に応じた「働・学」「憩」 に関する都市機能を備える。
- 『都市拠点』と『地域拠点』の2層の拠点を配置し、それぞれの拠点の連携・補完により, 市民生活に必要な機能を充足できる都市を形成する。
- 『都市拠点』、『地域拠点』に加え、地域特性や都市計画の土地利用区分を踏まえた、高次の 「働・学」に関連する都市機能を備えた『産業拠点』や、高次の「憩」に関する都市機能 を備える『観光拠点』を配置・形成する。
- なお、拠点形成に当たっては、都市計画の土地利用区分に基づく都市機能配置を基本とし ながら、これからの人口減少時代に対応した柔軟な都市機能の配置・集積を図る。
- 拠点の周縁部や郊外部において,農地や里山林など緑豊かな自然を保全する。
交通ネットワークの方針
- 『交通ネットワーク』については、都市拠点と各拠点の間を結ぶ、放射状の基幹・幹線交通 を基本に支線交通等の階層性を有する「公共交通のネットワーク」や、公共交通や経済活動の活性化を促す「道路のネットワーク」の構築により、バランスのとれたネットワークを形成する。
- 各拠点間も地域特性に応じた交通ネットワークで結び、それぞれ役割を補完しあう関係を 構築する。
- 全ての市民が、各拠点の都市機能や施設に便利で快適にアクセスできる移動環境を形成する。
拠点ごとの方針
「都市拠点」についての方針
都市拠点イメージ
- 駅前から商業・業務施設が高度に集積
- 居住、医療・福祉などの機能が複合的に集積した再開発ビルが林立
- 老朽建築物の一体的な更新がなされ、統一性のある都市景観が形成
- 歩行空間と調和の取れたLRT等の公共交通網が整備
- 高度な都市機能が集積した中心市街地にふさわしい風格のある街並みが形成
- にぎわいと潤いを創出するイベント・交流スペースが配置
- 生活の質を高める文化・芸術施設等が配置
- 交通結節機能の充実による高いアクセス性
都市機能の集積・集約
- 中枢性や広域的な求心性を高めるため、行政機関を始め、専門的な知識を必要とするサービス産業や、高い機能を有する医療・福祉,金融などの都市機能を集約する。
- 都市での生活を豊かにするため、日常生活に密着した都市機能に加え、高度な商業機能を集積する。
- 本市の経済に大きな比率を占める第三次産業を活性化させ、市民の労働の場を提供するため、商業・業務機能の集積を図る。
- 市民の高度な学びを支えるとともに、日常生活から離れ娯楽や憩いを得るため、教育、文化・芸術、情報、娯楽施設など、全市的・広域的な都市機能を集積する。
- 都市機能の集積に当たっては、憩いやゆとりを生み出す光や風の通り道を確保するとともに、集積した都市機能に必要なエネルギー利用の効率性を高めることができる都市基盤づくりを進める。
交通結節点の整備
- 人・モノが活発に交流できる基盤の創出を図るため、公共交通の輸送効率の向上、円滑な乗り継ぎ利便性の確保ができるような、多様な交通の結節点の整備、利用環境の充実を図る。
- 自動車に頼らずに各拠点に気軽にアクセスできる交通結節機能の充実を図る。
居住人口の増加
- 都市拠点においては、都市としての活力やにぎわいを生み出すため、高次の都市機能が集積し、高い利便性を得られる環境を活かし、居住人口の集約を図る。
- 人口減少局面にあっても、本市の顔にふさわしい人口規模を都市拠点に確保する。
「都市拠点圏域」の設定
- 内環状線の付近に位置する,「昭和・東・錦・西・中央・今泉・西原・簗瀬・城東・宝木・細谷・戸祭・桜・富士見・明保・宮の原・陽東・峰・石井・泉が丘・御幸・ 御幸が原」の各地域については、都市拠点と強い関連性を持ちながら互いに連担していることから、個々の地域で拠点を設定するのではなく、一つの「都市拠点圏域」として位置付け、都市拠点と役割分担を図りながら日常生活に必要な各種の機能を備える。
「地域拠点」のイメージ
- 鉄道駅と隣接したバスターミナルなど、強い交通結節性が存在
- 日常生活に必要な商業施設,公共施設等が近接して立地
- 高い防災性やバリアフリー性を備えたゆとりある都市空間
- 集合住宅や戸建住宅の近接による高い生活利便性
- 地区市民センターや学校等の公共施設,医療・福祉,公共交通の結節機能などがコンパクトに配置
- 地域内の移動や,都市拠点・近隣地域拠点への円滑な乗り継ぎ利便性を確保
- 農産物直売所など,地産地消や地域の交流を促進する機能が配置
地域拠点の形成
日常生活を支える地域拠点を、鉄道駅やこれまでの集落の成り立ち等を踏まえた場所を中心に、「河内、陽南・緑が丘、姿川・陽光、雀宮・五代・若松原、豊郷、清原、瑞穂野、上河内、篠井、富屋、国本、城山、平石、横川」に配置し、都市拠点(前述)との間や拠点相互に役割を補完しながら、市全体で市民生活に必要な都市機能を充足できるよう、地域特性に応じた都市機能を集約する。
地域拠点の配置については、公共交通の結節点である鉄道駅や、主要な幹線道路の結節点、地域におけるコミュニティ施設を拠点の中心の目安とする。
地域拠点の配置目安
地域拠点の範囲は、歩いて移動できる距離(半径約500メートル、徒歩10分〜12分以内が目安)の範囲内を基本とし、地形や用途区分、農業振興地域など約地域の状況を勘案して設定する。
市街地部(上記図参照)の地域拠点のイメージ。
郊外部(上記図参照)の地域拠点のイメージ。
都市機能の集積・集約
(「地域拠点に立地する都市機能の内容」については後述)
- 子どもから高齢者まで誰もが安心して快適に生活できるよう、商業・医療など、活気あふれる生活を支援する日常生活に密着した都市機能を集積する。
- 鉄道駅を核とする地域拠点には、一定規模の人口を必要とする商業などのサービス機能を配置する。
- 郊外部に立地する地域拠点では、コミュニティ支援施設などの地域の交流を促進する機能や,農業の振興に資する機能などを配置する。
交通結節点の整備
- ひとや環境にやさしい移動の環境を整えるため、地域内を移動するための徒歩や自転車、低炭素型の小型モビリティ、地域内交通と幹線公共交通の結節点を整備する、
居住人口の増加
- 市街化区域における地域拠点は,高齢者など外出に不安を感じる市民にとって高い利便性を得られることから、歩いて移動できる範囲において、一定の人口を集積する。
- 市街化調整区域における地域拠点は、本市農業の発展やライフスタイルの多様化に配慮しながらー地域内住民の良好な生活環境の維持・向上を図るため、居住を集約する
地域拠点に設ける都市機能
人口規模に応じた施設立地の可能性調査や、市民へのニーズ調査を踏まえ、行政サービス機能をはじめ、「食料品、日用品を買う」「入出金、振り込みをする」「医者にかかる」の各生活行動に関するサービスを、すべての地域拠点で享受できるようにする。
上記の都市機能のうち、大規模なサービス提供施設や、その他の生活行動(外食をする、衣料品を買う、遊びに行く)などは、拠点館の公共交通巣性の向上により充足を図る。
全ての地域拠点に備える都市機能
市民の生活行動 |
都市機能の施設例 |
食料品、日用品を買う |
食料品店、コンビニ、クリーニング店など |
入出金、振り込みをする |
ATM、郵便局、JAバンク、信用組合、金庫など |
医者等にかかる |
診療所、歯科医院、接骨院、理美容店など |
行政サービスに関わる都市機能
市民の生活行動 |
都市機能の施設例 |
教育を受ける |
小学校、中学校 |
公的機関の用事を済ます |
地区市民センター、出張所 |
産業拠点の形成
- 人口減少の局面にあっても経済的な発展が可能となるよう、高い生産性や付加価値、競争力などを生み出すことができる、高度な産業、研究開発機能や流通業務機能などが集積した産業空間の形成を図る。
- 幹線道路や公共交通などの利便性が高く、これまでも「宇都宮市総合計画」や「宇都宮市都市計画マスタープラン」に位置づけられてきた、「清原工業団地」、「宇都宮(平出)工業団地」、「河内工業団地」、「瑞穂野工業団地」、「河内中小工場団地」、「テクノポリスセンター地区」、「インターパーク地区」、「宇都宮インターチェンジ周辺地区を産業拠点とする。
- 各産業拠点には、立地する事業者の活動の活性化に資するインフラや施設の充実を図るとともに、都市拠点や地域拠点から基幹・幹線交通によるネットワークを構築し、結節機能を高める。
- 市民の雇用を確保するため、既存の工業団地へ新たに立地する事業者の誘導を図るとともに,既に立地している事業者の撤退を食い止める。
- 「宇都宮インターチェンジ周辺地区」については、これまでも交通の結節点として、基盤 の整備が図られてきているが、長年にわたり低利用の状況となっていることから、市北西部地域の活性化にも資するよう、積極的な利活用を図り、高規格道路と一般道路が接続する広域道路交通の結節性や、観光拠点との近接性などの立地と特性を十分に活用し、交通結節機能と公共交通ネットワークの充実を図るとともに、流通業務機能や生産機能のほか、周辺の環境も勘案しながら、交流人口の増加につながる都市機能の誘導を図る。
観光拠点の形成
- 地域固有の自然等を活かした観光資源を有し、これまでも「第5次宇都宮市総合計画」や「宇都宮市都市計画マスタープラン」に位置づけられてきた、市北西部の「古賀志地域」や 「道の駅うつのみやろまんちっく村」を含む、「大谷周辺地域」を観光拠点とする。
- 地域資源、歴史や伝統・文化を生かした特色ある地域空間の創出を図る。
- 観光拠点には、公共交通の利便性を確保するとともに,インターチェンジなどによる自動車でのアクセス性に優れた拠点の形成を図る。
公共交通ネットワークの形成
拠点間を結節する軸としての公共交通と,地域を面的にカバーする公共交通により,階層性のある公共交通ネットワークの構築を図る。
拠点間を結節する公共交通ネットワークの構築
基幹公共交通と,それらとの接続性が高い幹線公共交通により、都市拠点を中心に放射状に広がる公共交通ネットワークを構築することで、都市拠点とその他の拠点間の連携を強化する。
基幹公共交通
本市の骨格となる公共交通として、都市拠点から南北・東西方向の軸で都市拠点と各拠点間をつなぎ、幹線・支線の乗継機能を担うことのできる、輸送力や定時性・速達性など高いサービス水準を提供する。
南北方向 |
既存路線であるJR宇都宮線、東武宇都宮線 |
東西方向 |
「LRT」を東西基幹公共交通機関として導入 |
幹線公共交通
基幹公共交通と連携して、都市拠点と地域・産業・観光の各拠点間を結ぶ主要なバス路線や、市民生活に必要な公共・公益施設(後述)へのアクセスを支援する公共交通で、放射状に路線を配置し、沿線地域の特性に応じたサービス水準の維持・向上を図る。
特に二次救急医療施設へのアクセスについては、公共交通ネットワークの導線を確保するとともに、運行頻度を高めることで、市民の利便性の向上を図る。
市民生活に必要な公共・公益施設:広域的に利用される施設(二次救急医療施設以上の拠点病院、大学高校等)、市内各地域の地域行政機関(地区市民センター等) |
- オフピーク時間帯で30分に1本(2本/1h、一日30往復)を目指す。
- 「上限運賃制度」により、各地域間の移動運賃負担を400円以下に抑える。
面的な公共交通ネットワークの整備
今後、増加していく高齢者をはじめ、すべての地域住民の身近な移動手段として、面的に地域をカバーする公共交通ネットワークが必要な地域において、地域内交通を整備することで、自動車に過度に依存しないまちを実現する。
また、隣接する拠点との連結においては、交通需要の実態にあわせ、地域内交通による定時定路方式の運行や相互乗り入れ等によりネットワークを構築するものとし、一定の需要が見込まれる場合においては,支線公共交通の配置を検討する
道路ネットワークの形成
都市の骨格となる3環状12放射道路を軸とした道路ネットワークによって、道路交通の混雑解消や交通の円滑化などを通じた公共交通サービスの向上や、産業拠点や観光拠点へのアクセス性を高め、観光や物流などを通じた経済の活性化を図る。
市街地交通の円滑化
市街地の交通の円滑化によって、効率的な都市活動を支えるとともに、渋滞緩和による公共交通のサービスの向上や自動車によるCO2排出量の削減を図る。
産業拠点や観光拠点へのアクセス性の向上
産業拠点や観光拠点に隣接する自動車専用道路や地域高規格道路への、3環状12放射道路からのアクセス性の向上や、大谷スマートインターチェンジの設置などにより、観光や物流などを通じた経済の活性化を図り、各拠点における都市活動の活性化を促す。
良好な自転車利用環境の創出
安全性が高く快適な自転車走行空間を整備することで、市民の誰もが自転車を安全で、快適に利用できる環境を創出するとともに、自転車利用者の拠点施設の充実などにより、自転車の魅力を発信し、市民の自転車の利用・活用を促進することで、「自転車のまち宇都宮」の実現を図る。
交通結節機能の強化
交通結節機能の強化と利便性の向上を図るため、複数の交通手段が接続する場所については、円滑な乗り換えの実現に向けた施設・設備(
トランジットセンター)の整備を行うとともに、公共交通沿線の土地利用を検証しながら、住民の生活の利便性向上等に資する都市機能の誘導を可能とする土地利用を図る。
土地利用
市街地の低密度化と、それに伴うコミュニティの希薄化や行財政運営に係る費用の増大など、都市の活力の低下を防ぐため,既に都市基盤が整備されている場所へ居住の集約を図るとともに、郊外に広がる農地を維持・保全しながら,農地や自然環境と市街地の有機的な連携を進める。
良好な住宅地の形成
- 人口減少局面にあっても一定の人口密度を維持するため、市民のライフスタイルや居住選択を尊重しながら、高い利便性が得られる都市拠点や市街地部の地域拠点、公共交通沿線、また自然環境の豊かな郊外部における地域拠点へ、時間をかけて緩やかに居住の移転を図り,適正な住宅地を形成する。
- 良好な住宅地を形成するに当たっては、既に都市基盤整備の整っている場所での形成を基本に、居住の集約・集積を図るエリアを設定し、空き家等の既存ストックの活用を図りながら人口密度を高め、生活の質の向上を図る。
- また、環境に優しい住宅地を形成するため、低炭素型の住まいづくりを推進する。
将来的に居住の集積・集約を図っていくエリアを,以下のように設定する。
- 市街地部の居住誘導エリア
- 居住誘導エリアでは、良好な居住環境の維持に向け、空き家の適正管理を行うとともに、その活用についても積極的に取り組む。
- 都市拠点(約320ヘクタール)
- 商業・業務機能などの高度な都市機能が集積しており生活利便性が高く、土地の高度利用を前提とした居住などにより人口を集積する。
- 市街化区域の地域拠点および公共交通利便エリア
- 対象範囲
- ①市街化区域の地域拠点
- ②市街化区域の公共交通利便エリア:軸となる公共交通(鉄軌道,運行頻度の高いバス路線〔1日30往復、60本〕)沿線で、概ね鉄軌道の駅から半径500m、バス停から半径250mのエリア
- 高齢者など外出に不安を感じる市民にとって高い利便性を得られるエリアである地域拠点と、鉄軌道の駅やバス停などから歩いて移動できる範囲に、一定の人口を集積する。
- 郊外部の居住誘導エリア
- 市街化調整区域の地域拠点
- 郊外部地域の持続性を高めるため、土地利用に見合った生活利便機能の集積や、生活交通の確保、空き家の活用などにより、地域内住民の良好な生活環境の維持・向上を図りながら、地域拠点への居住集約を促進する。
- 地域拠点内の居住誘導にあたっては、市街化調整区域の新たな土地利用の方針を策定することなどにより進めていく。
- 既存集落等
- 対象範囲:地域拠点以外の地区計画・大規模な住宅団地や既存集落
- これまでの地域の特性に応じて形成された地域拠点外の地区計画、大規模な住宅団地や既存集落の居住空間を活用し、地域内の居住集約を促進しコミュニティの維持を図る。
- 居住誘導エリア外の土地利用
- 居住誘導エリア外においては、居住集約を図った後の土地の緑地等への転換などによる付加価値の向上や,自然と調和した生活環境を確保していくことなどにより、市民の多様なライフスタイルに応じた居住選択が可能となる土地利用を進める。
関連項目
最終更新:2021年10月18日 12:49