灰色の森は続いていた。
無機質なビルとビルが乱立している。その様はコンクリートの木々生い茂る森そのもの。
ぱさぱさと乾いた風が通り抜ける。むせ返るような熱が風に吹かれ街を這い回った。
無慈悲に降り注ぐ陽光を受け、ビルののっぺりとした壁面が照り返していた。

その街は、全てが全て違う筈なのに、どういう訳かどこを切り取っても非常に似通っていた。
意志を揃えている訳でもないのに、画一的。洗練されているのに、雑多。きちんと計画された筈なのに、道はぐにゃりと歪んでいる。
ともすれば迷ってしまいそうなその場所は、あたかも夜の森のよう。
何もかも正反対の筈なのに。

「はっ……はっ……」

途切れない灰色の森を、少女は、アスナは飛び上がっていた。
幻想的な薄翅を背負い、煩わしい地上から解放され、風を切る。
水色の妖精と化した少女は眼下に灰色の森を置きながら、遥かな空を飛んでいた。

「うふふ」

その視線の先に居るのは一対の少女たち。
愛らしく可憐な微笑みを浮かべる青と黒のアリス。
彼女らが灰色の森に降り立つ、かと思うと希薄な光に包まれ、輝き、気付いた時にはふっ、と消えてしまっている。
視線を逸らせばあわい光が別の場所に待っている。

「こっちよ」

動く度、ふわりと揺れるサテンドレス。
柔らかな生地が幻惑的に舞い、鏡合わせのアリスたちが笑いあう。
そこには年端もいかない少女のみが持ちえる、幼さの中に一滴の蠱惑を含んだ残酷さと隣り合わせの愛らしさがあった。

妖精も、少女も、灰色の森とはまるで正反対のものの筈。
何一つ近いものはなく、相反する位置にある。
しかし、おかしなことにその光景は奇妙な調和を見しているのだ。
空に上がる太陽の下、誰も居ない、にも拘らず煩わしい荘厳さだけは遺した灰色の街に、浮かび上がる幻想の少女たち。
灰色が殺風景で味気ないものであればあるほど、幻想の淡い魅力がくっきりと引き立つ。
何て、奇妙。

「ねえ妖精さん」
「そろそろ鬼ごっこも終わりにしましょ」
「もう飽きちゃった」

少女たちの声があちらこちらから響く。
重なり合い、時に離れ、再び重なる。幾重にもエコーの掛かった声がアスナの耳朶を打つ。
その何度目かも分からない感覚にぎり、と魔剣の柄を握りしめる。

しかし何も言い返さない。
何故ならもう知っているから。言葉が届かないことを。
このアリスたちは、目の前にいるようでいない。
彼女らは自分たちのことしか見ていない。目の前に居る筈なのに、水平の彼方に等しい距離がある。
その、周りを一切顧みない自己完結した世界が、とてつもなく傲慢に見えて、腹立たしい。

「今度はかくれんぼにしましょ、あたし?」
「いいわね、丁度鬼さんもいるし、あたし」

結局のところ、彼女らは自分(わたし)同士で会話しているだけだ。
だからもう諦めた。会話しても駄目だ。
それがただの子どもならいい。しかしあれは死をまき散らす。
止めなくては。誰かが。

ちら、と辺りを振り返る。
ネオ。トリニティが言っていた彼も来ていない。
役に立たない。やはり自分がやらなくては――

「じゃあね、妖精さん」
「また遊びましょ」

不意にアリスたちがそんなことを言い出した。
させない。その思いを胸にアスナは翅を開いた。
ぐんぐんと加速していくアバター。頬に当たる風は不快なほどに乾いていた。

手を伸ばす。
目の前に少女たちが居る。灰色の森で笑いあう少女たちが――

「え?」

――消えた。

少女も、灰色の森も。
アスナは目を見開き、辺りを確認する。
灰色の森は消えている。代わりに広がる風そよぐ草原。雲一つない空。
ああ、エリアが変わったのだ。そう気付いた時、既にアリスたちは消えていた。

「……っ」

ぎり、と音を立てた。
アリスたちは消えてしまった。あの無軌道なアリスたちは、一度でも目を放せばどこに行くのか分からない。
しかしエリアの切り替えに気付かず一瞬反応が遅れた隙に、またしても見失ってしまった。
視野が狭かったせいだろうか。あまりにも、アリスたちだけを見過ぎたから。
少し休むべきだろう。どの道そろそろ滞空制限に引っかかる筈だ。
今後のことも考え、頭を冷やす意味で一度地上に降りことにした。

「……急がないと」

徐々に高度を下げながらも、アスナは苛立たしさを募らせていた。
その最中もアスナは忘れない。
鏡の国のアリスたちを見つけて――討つ。

そして帰るのだ。彼の下へ……








「あーうん、その、キリト?」

空へと去ったユウキとカオルは既に大分遠いところまで行っている。やはり飛べると大分違うものだ。
飛び立った彼女らを見上げつつ、慎二は同行者へと語りかけた。

「まぁ、色々あったのは分かるけどさ、そんなに気にすることはないんじゃない?」

と。
彼にしては珍しく、歯に浮いたような、どこかぎこちない口調で。
すると言われたキリトは僅かに微笑みを浮かべ「大丈夫だ」と短く言った。
そう言われれば慎二はもう何も言えない。それきり会話は途切れてしまった。

陽がさんさんと照っている。陽光を受け影が色濃く見えた。
森の外では風そよぐ草原が広がっていた。湿気を含んだ風はひんやりとしていて冷たい。
そんな爽やかな草原を横目に、慎二とキリトは二人で森を進んでいた訳だが、どうも気まずい雰囲気が流れている。

(くそっ、僕こういうの慣れてないんだよ)

慎二はこそばゆく思う。
(見た目だけでも)同年代の知り合いと二人でぶらっと歩くことはあまりなかったし、
相手につらく適当に当たっていることが多い彼にとって、こう、慰めるような立場に陥ることはまずない。

と、こんな微妙に気まずい道中になってしまったのは先の話し合いによるものだ。
基本的な方針としてサチとノウミを探しつつ、アメリカエリアへ四人で東進する……というのは決まった。
だが、飛行能力を持っているプレイヤーが居るのに、それを眠らせておくのはあまりに不効率的だし、四人でずっと固まって行くメリットもそうはない。
ということで、パーティを二分割し、空と地上の二方面から探すことになった。分割といってもすぐにまた合流するのだが。

ユウキがカオルを抱え先ず空を行き、慎二とキリトが地上を行くことになった。
ある程度経ったら空組が地上組の下へと戻ってきて情報を交換。その際、キリトとユウキが交代する。こうすれば滞空制限を気にすることなく二方面から捜索することができる。空からは探しづらい森は地上組が探す。
唯一の非戦闘員であるカオルは空組に固定する。これは彼女の移動速度と、万が一の際には空の方が離脱しやすいためである。
それぞれの長所を殺すこともないし、逸れることもなく、効率的。アーチャーが考えた案だが、これ自体は慎二としても特に不満はない。

問題は二人で行くことになったキリトが、先のこともあり妙に寡黙になっていることだ。
慎二としてはゲーマーとして彼の話も聞きたかったのだが、どうもそのような雰囲気ではなさそうだ。

些末なことといえば些末なことだが、気にかかることでもある。よく知らない相手との道中というのは。
せめてユウキが間に入れば変わったのだろうが……

『珍しいな、君が相手のことを考えるなど。
 他人の事情など顧みず自分が言いたいときに厭味を言う。
 その空気の読めなさがよくも悪くも君ではなかったかね?』

霊体状態のアーチャーがさらりと言う。
悪戯っぽく口元を釣り上げる彼の姿を想像し、慎二はむっと顔をしかめた。

(空気が読めなくて悪かったね。ああ、岸波ならそうしただろうね。僕が他の奴の悩みのことまで考える義理なんてないし)

でも、と慎二は黙々と歩くキリトを一瞥し、

(なーんか面倒そうじゃん、こいつ。一々僕の言葉を気にしてきそうだし、そうなったらもっと面倒だろ?
 真面目っぽいというか、面白味がないっていうか。同じ真面目でも岸波くらい抜けてたら面白いんだけど)

はあ、と慎二は息を吐く。別に仲良し仲良しやりたい訳ではないが、気まずいのも何だか厭だし面倒だ。
自分のサーヴァント(仮)となっているアーチャーにしたって、変に上から目線と言うか、大した会話もしてなかった癖にこっちのこと見透かしたようなことを言うしで、やりづらい。
ああやはり早くライダーを……、と思わざるを得なかった。

(しかし、本当にこいつ、ユウキが言っていたような凄腕ゲーマーなのか?
 いまいち凄さが伝わってこないんだけど)

前評判と先の悲嘆に暮れていた彼の姿がどうにも結びつかない。
状況が状況だったからというのも分かるが、こういうのはイメージの問題だ。

「すまないな」

不意にキリトが口を開いた。そのタイミングがタイミングだったため、慎二は思わず肩をびくりと上げてしまった。
が、ただの偶然だと思い直し、慎二は半笑いで振り返る。
見れば彼は曇ってはいるが落ち着いた微笑みを張り付けていた。

「もうちょっと情報交換とか、パーティメンバーとして互いのことを話し合うべきなのは分かってる。
 でも、少しだけ考えさせて欲しい。色々決めておきたいんだ、今のうちに。
 ――今度は、間違わないように」
「あ……ああ」

真剣な口調で告げられた言葉に、慎二は笑みを消し、ぎくしゃくとうなずいた。
最後の言葉に含んだ重みが彼にも伝わってきたのだ。

そうして再びキリトは黙ってしまった。黙って、エリア探索として辺りに目線を配っている。
近くの草木がざわざわと揺れるのが聴こえてくる。爽やかな風だし、綺麗な風景だ。これでもう少しマシな状況だったら散歩と洒落こめたかもしれない。

『彼だって別にそう精神的に弱い人間ではないさ。事実彼はもう立ち直ろうとしている』

アーチャーが語り掛けてきた。
む、と慎二は何も言い返さない。事実そうだろうと思ったのだ。

(少なくとも、勝手に早合点して自滅した挙句不貞腐れてた奴よりはね……)

そう思いはしたが、それを口にはしない。
そんな卑屈なことを言うのは自分らしくない。

「はぁー、あのさキリト?」

代わりに慎二は話し掛けた。キリトがどうかしたか、と反応する。
そして彼は、先程までの妙な距離感を取り払い、くだけた、何時もの人を小ばかにしたような口調で、

「お前、今までのゲームですごいスコア出してきたのかもしれないけどさぁ。
 調子に乗らない方がいいよ。プレイ時間かければそりゃすごいすごい言われるかもしれない。
 でも、真のスキルってのはセンスによるところが大きいんだ。同じ土俵では廃人は僕みたいな天才には適わない。
 それを肝に入れて、精々僕のプレイイングを横で見ているんだね」

そう言ってみせた。
言われたキリトはぽかんとした顔をしている。
ああすっきりした、とも思う。変に気を使うなんてばからしい。

「気にしないでくれ。病気のようなものだ」

霊体化を解いたアーチャーがやれやれと肩を竦め、そしてまた消えていった。
病気とは何だよ、と不満気に言い、キリトから顔を背けずんずんと前を歩く。

「……待てよ、慎二」

後ろから声が聞こえてきた。キリトのものだ。
心なしか、先程より語気が緩んでいるように思えた。

「プレイヤースキルで言うなら、それこそ俺も負けないぜ。
 伊達にゲーマーやってた訳じゃないんだ。待ってろ、すぐに腕を見せてやるからさ」
「はん、勝手にするんだね」

後ろから追いかけてくる靴音を聞きながら、慎二は顔を上げた。
木の隙間から垣間見える陽が眩しい。頬に当たる陽光がほのかに熱く感じられた。

いくら宝具を使ったとはいえ、そう遠くまでは行ってないだろう。
このエリアのどこかにアイツが居る。ゲーマーを馬鹿にしたあの生意気な奴が。
そう思うと、ぐっと拳が強く握りしめられた。











大聖堂の前では風がそよいでいた。勢いよく吹く風に煽られ草木がふわっと舞い散る。
頬に当たる風が強い。これからもっと強まっていくかもしれない。
それこそ、嵐のように。

『で、ノウミ。もう出るのかい?』

霊体状態のライダーが含みのある言い方で問いかけた。
彼女はその口調は相変らずどこか楽しげに聞こえた。
姿こそ見えないが、不敵な笑みを浮かべていることが容易に分かった。

「まだ、ですかね。流石にダメージが回復していません」

ただ、と彼は言い、空に指を走らせた。
そこに表示される数値を睨み付ける。その数値はさきほどより徐々にだが回復している。
もう少しでコードキャスト[add_regen(16)]が使えるだろう。そうすれば戦闘に乗り出すことも可能だ。

『あと少しってところかい』
「ええ、ずっと寝ている気はありませんよ」

休息は必要だが、あまり腰を落ち着ける訳にはいかない。
まどろみの残る意識を冴えさせる為に、彼が取った方法は一つ。

「……精々待っていてください。きっとすぐにまた会えますから」

彼は草原に視線を向けた。
広い広い草原。このどこかに、あの下らない連中が居る。
ユウキ、カオル、そして間桐慎二。
焼き付いた屈辱の湿った熱が、意識を何よりも覚醒させる。

『しかしいい感じに開けてるねぇ。ここならいっそ砲撃戦と洒落こむのもできるけど?』

ライダーの言葉に能美は腕を組む。
砲撃戦。それはつまり、この聖堂に陣取り、ライダーのカルバリン砲で遠距離から敵を狙っていく、という手段だろう。
ここはエリアの中でも遮蔽物が少ない。エリア間を移動するならば必ず通らなくてはならない場所でもあることを考えると、悪い考えではないように思える。
ゲージに関してはその辺りのオブジェクトを破壊することで自前に用意できる訳でもある。

「……それも一つの手ですね」
『ま、やるならやるで大変だけどね。その辺の決断は任せるさシレイカンドノ。ってな』

下品な笑い声が響き渡る。
能美は無言でそれを流しつつ、その策についても考えてみる。
リスクはやはり位置がバレることだろう。近づかれれば現状の装備では厳しい。
仮にやるならば迎撃戦のことも考えなくてはならない。罠を仕掛けてもいいだろう。

「……現状ではあくまで案の一つを出ませんね。
 休みながらそれについても考えるとしましょう」

その時、しん、と風が凪いだ。

「ん? あれは……」

能美の視界になにかが映ったのだ。
草原。静止した風の向こう側、遠く離れよく見えないが、しかしそれが彼女だとはすぐに分かった。
翅を持つ少女が、この空にぽつんと点のように姿を見せている。

それを見たとき、能美もまた、奇妙な笑い声を漏らしていた。









「また、二人ですね。ユウキさん」

黒の翅でユウキは風を切る。手に抱えたカオルに微笑みながら。
漆黒の髪を艶やかにたなびかせながら、彼女は空を滑るように飛んでいた。
その顔はこんな時だと言うのに晴れやかで、どこか達観している様子でもあった。

空を飛びながら、ユウキたちは眼下を見下ろしている。草色が波打つ美しい風景が続いていた。
慎二たちとの取り決めで一時的に別れたのち、彼女たちは空から東に向かってサチとダスク・テイカ―を捜索していた。
辺りを確認しつつ飛んでいたのだが、探し人は未だ見つかっていない。

「うーん、見つからないなぁ」
「この辺りに居ないってことは、やっぱりまだ森に居るんでしょうか?」

ダスク・テイカ―はまだしもサチの方はそれほど足が速いとも思えない。
まだ捜索にそれほど時間をかけてはいないとはいえ、仮にこの辺りに居るのなら簡単に見つかりそうなものだ。
イベントの影響下にある今、森は未だに危険地帯だ。慎二かブルースたちと接触できればいいのだが……

「あ。あれがアメリカエリアみたいですよ」

不意にカオルが声を挙げた。
顔を上げてみると、なるほど確かに灰色のビル群が視界に入った。
ユウキはその距離に違和感を覚えた。先程まで一切見えなかったにしては、少々近すぎるように思えたのだ。
恐らく遠近エフェクトが強めに設定されているのだろう。仮想現実に慣れた彼女は自然とそう分析していた。

「アメリカエリアかぁ……カオルは野球場に行きたいんだよね?」
「ええ、でもそんなに急いでいるって訳でもないですよ。いまは慎二さんやキリトさんのことを優先しましょう」

カオルが微笑みを浮かべて言った。ずっと近くで見る彼女の笑みには温かいものを感じる。
会った当初よりもずっと自分に心を開いていくれている。
その事実が、ユウキの顔もまた顔をほころばせた。こうして人と繋がるのも、ネットゲームの魅力だ。

同時に思った。
こんなにも早く打ち解けられたのは、共通点があったからだろうか。
――互いに現実での命を既に持たない、仮想でのみ存在できる者であったから。

「ん? ちょっと待って」

ユウキが不意に声を上げた。
さわさわと揺れる草原の中に、ひどく愛らしいものがあったのだ。
「ちょっと下りるね」とカオルに声をかけ、ユウキは草原へと降りて行った。

「こんにちは。どうしたの君たち?」

そこで待っていたのは一対の少女。
愛らしく、麗しく、儚い。
まるで夢の中から抜け出してきたような。

そんな少女らが、草原の中に突然現れたのだ。

「あら、新しい妖精さんだわ、あたし」
「そうね、あたし。でも今度は蝙蝠さんみたい」
「うふふ、まるで悪魔だわ、あたし」

そう語り合う少女たちは、殺し合いの中だというのに、何とも楽しげだった。
恐怖もなければ悪意もない。そこにユウキは奇妙な親近感を覚えた。

「ええと……大丈夫? 誰かに襲われたりしなかった?」

ユウキの手より下ろされたカオルが声をかける。
心配の響き持った口調だったが、少女たちはそれを介した様子もなく、可憐に微笑んで、

「ううん。別に何もなかったわ。ただ青い妖精さんと鬼ごっこして遊んでいたの!」
「でね、今度はかくれんぼしているのよ」
「楽しみだわ、あたし」
「そうね、あたし。今度は何をしようかしら……」

そうして再び自分たちだけで会話を始めてしまう。
瓜二つの彼女らは鏡合わせに話し合っている。
まるでよくできた人形のよう。

「よく分かりませんが、大丈夫みたいですね」
「だね。全然怖がってる感じでもないし」

カオルがほっと息を吐いている。同時に「こんな子どもまで……」と小さく漏らしてもいた。
実際、アバターの見た目からそのリアルまでは分からないのだが、しかし彼女らはどう見ても幼い子どもにしか見えなかった。
性別を偽る、くらいならまだしも年端もいかない少女を装うと言うのは、どうやっても演技が垣間見えてしまうものだ。
バーチャル空間での対人関係が長い彼女らは、半ば直感的に少女たちが本当に少女であると確信していた。

「ねえ、君たち。ちょっと僕にも話を聞かせてよ」

安全を確認したのち、ユウキは笑みを浮かべて少女たちに話かけた。

「お姉ちゃんも?」
「そうね、ちょっと待って」

そう言って少女たちはじっとユウキの顔を見つめた。
潤んだ瞳にはどこか親愛の情がある。奇妙としかいいようがない少女たちだったが、ユウキは不思議と親近感を覚えていた。
二対の視線が絡み合う。初めはユウキを、次にカオルを見たのち、何かに合点したのか「うん!」と二人は元気よく頷いて、

「うふふ。このお姉ちゃんたち、思った通りだわ、あたし」
「そうね、あたし。あのお兄ちゃんみたい」
「うん! あたしと同じだわ、あたし」
「でも、あたしにはあたしがいるから、もうお友達はいらないわ」
「でも、あたし。猫さんが言ってたじゃないの。繋がって宝探しすると、とっても楽しいって」

おとぎ話のようなやり取りをユウキとカオルはやすらぎを覚えながら見守っていた。
草原で戯れる少女たち。ここが殺伐とした場であることは変わりないが、今のひと時だけはそれを忘れられそうだった。

「うん! じゃあお姉ちゃんたち、遊びましょ」
「きっとあたしとあたしのお友達になれるわ」
「いいの? やった。じゃ、僕も話を聞かせて」

ユウキはそうして少女たちの手を取った。
青いサテンドレスを着た少女の手は小さかった。
ともすれば手折ってしまいそうなほど細く繊細な指先は人形のそれと勘違いしてしまいそうだが、しかし柔らかく滑らかな肌が仄かな熱を伝えてきた。
その熱を共有しながら、ユウキは感じていた。
自分と似た、何かを。

(そういえば、青い妖精って言ってったっけ)

ユウキはふと思い出した。
少女たちが遊んでいたという相手として挙げた、青い妖精という言葉。
それで思う浮かぶ親友が、一人いたのだ。

(人違い、かもしれないけど。でもそうだったら、近くに居るってことだよね)

自分のかけがえのない友人――アスナ。
こんな場所でも、また会えると思うと胸の中にあったかいものが湧き出て来るような、昂ぶりに近いものを感じるのだった。

(また、一緒に遊びたいな。殺し合いなんかじゃなく、こういう風に、世界の綺麗な場所で――)

草原で少女たちと戯れながら、ユウキは心安らかに思った。
死んだ筈の自分と会ったら、きっとびっくりするだろうなぁ、とも。


[E-7と8の境目/ファンタジーエリア/1日目・昼]

【アスナ@ソードアート・オンライン】
[ステータス]:HP30%、MP70% 、AIDA悪性変異
[装備]:魔剣・マクスウェル@.hack//G.U.
[アイテム]:基本支給品一式、死銃の刺剣@ソードアート・オンライン、クソみたいな世界@.hack//、誘惑スル薔薇ノ滴@.hack//G.U.、不明支給品2~5
[思考]
基本:この殺し合いを止め、無事にキリトと再会する
1:アリスを追う
2:殺し合いに乗っていない人物を探し出し、一緒に行動する。
3:これはバグ……?
[AIDA]<????>
[備考]
※参戦時期は9巻、キリトから留学についてきてほしいという誘いを受けた直後です。
※榊は何らかの方法で、ALOのデータを丸侭手に入れていると考えています。
※会場の上空が、透明な障壁で覆われている事に気づきました。 横についても同様であると考えています。
※トリニティと互いの世界について情報を交換しました。
 その結果、自分達が異世界から来たのではないかと考えています。
※AIDAの浸食度が高まりました。それによりPCの見た目が変わっています。


[D-6/ファンタジーエリア・森と草原の境目/1日目・昼]

【間桐慎二@Fate/EXTRA】
[ステータス]:HP100%、MP50%(+40)、ユウキに対するゲーマーとしての憧れ、令呪一画
[装備]:開運の鍵@Fate/EXTRA
[アイテム]:不明支給品0~1、リカバリー30(一定時間使用不能)@ロックマンエグゼ3、基本支給品一式
[ポイント]:0ポイント/0kill
[思考]
基本:ライダーを取り戻し、ゲームチャンプの意地を見せつける。それから先はその後考える。
1:ひとまずはユウキ達についていきながら、ノウミ(ダスク・テイカー)も探す。
2:ユウキに死なれたら困る。
3:ライダーを取り戻した後は、岸波白野にアーチャーを返す。
4:サチって子もついでに探す。
5:いつかキリトも倒してみせる。
[サーヴァント]:アーチャー(無銘)
[ステータス]:HP70%、MP75%
[備考]
※参戦時期は、白野とのトレジャーハンティング開始前です。
※アーチャーは単独行動[C]スキルの効果で、マスターの魔力供給がなくても(またはマスターを失っても)一時間の間、顕界可能です。
※アーチャーの能力は原作(Fate/stay night)基準です。

【キリト@ソードアート・オンライン】
[ステータス]:HP100%、MP40/50(=95%)、疲労(大)、SAOアバター
[装備]: {虚空ノ幻、蒸気式征闘衣}@.hack//G.U.、小悪魔のベルト@Fate/EXTRA、
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~1個(水系武器なし)
[ポイント]:0ポイント/0kill
[思考・状況]
基本:絶対に生き残る。デスゲームには乗らない。
0:今はユウキ達についていきながら、サチを探す。
1:サチやユイ、それにみんなの為にも頑張りたい。
2:二度と大切なものを失いたくない。
3:レンさんやクロウのことを、残された人達に伝える。
[備考]
※参戦時期は、《アンダーワールド》で目覚める直前です。
※使用アバターに応じてスキル・アビリティ等の使用が制限されています。使用するためには該当アバターへ変更してください。
SAOアバター>ソードスキル(無属性)及びユニークスキル《二刀流》が使用可能。
ALOアバター>ソードスキル(有属性)及び魔法スキル、妖精の翅による飛行能力が使用可能。
GGOアバター>《着弾予測円(バレット・サークル)》及び《弾道予測線(バレット・ライン)》が視認可能。
※MPはALOアバターの時のみ表示されます(装備による上昇分を除く)。またMPの消費及び回復効果も、表示されている状態でのみ有効です。

[D-6/ファンタジーエリア・大聖堂前/1日目・昼]

【ダスク・テイカー@アクセル・ワールド】
[ステータス]:HP20%(回復中)、MP15%、Sゲージ5%、幸運低下(大)、胴体に貫通した穴、令呪三画
[装備]:パイル・ドライバー@アクセル・ワールド、福音のオルゴール@Fate/EXTRA
[アイテム]:不明支給品1~2、基本支給品一式
[思考]
基本:他の参加者を殺す。
1:シンジ、ユウキ、カオルに復讐する。特にカオルは惨たらしく殺す。
2:上記の三人に復讐できるスキルを奪う。
3:一先ず休息、しばらくしたらアメリカエリアへ。
[サーヴァント]:ライダー(フランシス・ドレイク)
[ステータス]:HP30%、MP30%
[備考]
※参戦時期はポイント全損する直前です。
※サーヴァントを奪いました。現界の為の魔力はデュエルアバターの必殺技ゲージで代用できます。
 ただし礼装のMPがある間はそちらが優先して消費されます
※OSS《マザーズ・ロザリオ》を奪いました。使用には刺突が可能な武器を装備している必要があります。
 注)《虚無の波動》による剣では、システム的には装備されていないものであるため使用できません。


[D-7/ファンタジーエリア・草原/1日目・昼]

【ユウキ@ソードアート・オンライン】
[ステータス]:HP10%、幸運上昇(中)
[装備]:ランベントライト@ソードアート・オンライン
[アイテム]:黄泉返りの薬×2@.hack//G.U.、基本支給品一式、不明支給品0~1
[ポイント]:0ポイント/0kill
[思考]
基本:洞窟の地底湖と大樹の様な綺麗な場所を探す。ロワについては保留。
1:みんなで野球場に行き、そのついでにサチを探す。
2:専守防衛。誰かを殺すつもりはないが、誰かに殺されるつもりもない。
3:また会えるのなら、アスナに会いたい。
4:黒いバグ(?)を警戒。 さっきの女の子(サチ)からも出ていた気がする。
5:少女たち(ありす)を守る。
[備考]
※参戦時期は、アスナ達に看取られて死亡した後。
※ダスク・テイカーに、OSS〈マザーズ・ロザリオ〉を奪われました。

【カオル@パワプロクンポケット12】
[ステータス]:HP25%
[装備]:ゲイル・スラスター@アクセル・ワールド
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[ポイント]:0ポイント/0kill
[思考]
基本:何とかしてウイルスを駆除し、生きて(?)帰る。
1:ユウキさん達についていく。
2:どこかで体内のウイルスを解析し、ワクチンを作る。
3:デンノーズのみなさんに会いたい。 生きていてほしい。
4:サチさんを見つけたら、バグを解析してワクチンを作る。
5:少女たち(ありす)を守る。
[備考]
※生前の記憶を取り戻した直後、デウエスと会う直前からの参加です。
※【C-7/遺跡】のエリアデータを解析しました。

【ありす@Fate/EXTRA】
[ステータス]:健康、魔力消費(中)、令呪:三画
[装備]:途切レヌ螺旋ノ縁(青)@.hack//G.U.
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[思考]
基本:アリスと一緒に“お茶会”を楽しむ。
1:新しい遊び相手を探して、新しい遊びを考える。
2:しばらくチェシャ猫さん(ミア)と一緒に遊ぶ。
3:またお姉ちゃん/お兄ちゃん(岸波白野)と出会ったら、今度こそ遊んでもらう。
4:ユウキとカオルに親近感。
[サーヴァント]:キャスター(アリス/ナーサリーライム)
[ステータス]:ダメージ(小)、魔力消費(大)
[装備]途切レヌ螺旋ノ縁(赤)@.hack//G.U.
[備考]
※ありすのサーヴァント持続可能時間は不明です。
※ありすとキャスターは共生関係にあります。どちらか一方が死亡した場合、もう一方も死亡します。
※ありすの転移は、距離に比例して魔力を消費します。
※ジャバウォックの能力は、キャスターの籠めた魔力量に比例して変動します。
※キャスターと【途切レヌ螺旋ノ縁】の特性により、キャスターにも途切レヌ螺旋ノ縁(赤)が装備されています。


082:空の境界・――遥かに羽撃く 投下順に読む 084:対主催生徒会活動日誌・4ページ目(隙間編)
082:空の境界・――遥かに羽撃く 時系列順に読む 085マルチタスク
070:Alice アスナ 093:EXS.extream crossing sky“クレィドゥ・ザ・スカイ”
079:勇気を胸に 間桐慎二 097:カルバリン砲がぼくを狙う
079:勇気を胸に キリト 097:カルバリン砲がぼくを狙う
080:太陽の落とし方 ダスク・テイカ― 097:カルバリン砲がぼくを狙う
079:勇気を胸に ユウキ 093:EXS.extream crossing sky“クレィドゥ・ザ・スカイ”
079:勇気を胸に カオル 093:EXS.extream crossing sky“クレィドゥ・ザ・スカイ”
070:Alice ありす 093:EXS.extream crossing sky“クレィドゥ・ザ・スカイ”

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最終更新:2015年03月13日 02:48