1◆


 進化を果たした巨人・スケィスゼロは、たった一人で『認知外迷宮(アウターダンジョン)』を彷徨っていた。
 周囲には認知外変異体(アウターバグ)が蔓延っているが、スケィスゼロは関心を向けていない。攻撃を仕掛けるならば排除するが、そうでないのなら接触する理由などなかった。
 抹消するべき存在は三つ。女神AURAのセグメントを持つ者と、力を持つ腕輪の所持者と、腕輪の影響を受けた者。それ以外と戦う意味はない。
 今は一秒の時間すら惜しかった。


 そもそも、このバトルロワイアルに放り込まれてしまった時点で、スケィスゼロは微塵の動揺すらしていない。
 多少のイレギュラーが起きた程度の認識しかなかった。撃破するPCがここにいるとわかっただけでも充分。
 既にHPは充分なほど回復したのだから、後は目的のPCを排除するだけ。それ以外、余計な感情などプログラミングされていなかった。


 回復のペースから考えて、時間はそれなりに経過している。
 スケィスゼロは来た道を戻ることなどしていない。今からマク・アヌへ戻った所で、恐らく標的はいないはず……何故なら、反応が感じられないからだ。
 それに、フィールドと『認知外迷宮(アウターダンジョン)』を繋げる歪みはいくつも感じられる。その中から、力の気配を辿ればいいだけ。
 スケィスゼロへの機能拡張(エクステンド)を果たしたことで、察知する力も増大していた。


 既に定時メールが届き、強制的に内容が表示されているが、スケィスゼロは何の関心も示さない。
 マク・アヌでKillした三人のプレイヤーも、獲得したポイントについても、これから開催されるイベントも、全てが無意味。
 【志乃】、【カイト】、【アトリ】の名前だって、スケィスゼロにとってはどうでもよかった。


 やがて進んでいる内に気配を感じる。目前には、歪みがあった。
 ワープゲート。それを察したスケィスゼロは腕輪を翳し、データハッキングを発動させて孔を開ける。その先に広がるのは、闇に覆われた世界だった。
 そこはウラインターネットと呼ばれるエリアだったが、スケィスゼロは知らない。しかし、すぐ近くには気配が感じられた。
 一度取り逃してしまったセグメントと、更に腕輪の力。それら二つが、遠くない場所から放たれている。
 それだけでもわかれば、スケィスゼロにとっては充分だった。



【???/ウラインターネットのどこか/1日目・日中】
※ウラインターネットのどこかにあるワープゲートをゲートハッキングして、そこからスケィスゼロが現れました

【スケィスゼロ@.hack//】
[ステータス]:HP80%(回復中)、SP100%、PP100%
[装備]:ケルト十字の杖@.hack//
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品2~4(ランサー(青)へのDD分含む)、セグメント2@.hack//
[ポイント]:900ポイント/3kill
[思考]
基本:モルガナの意志に従い、アウラの力を持つ者を追う。
1:目的を確実に遂行する。
2:アウラ(セグメント)のデータの破壊。
3:腕輪の影響を受けたPC(ブラックローズなど)の破壊。
4:自分の目的を邪魔する者は排除。
[備考]
※1234567890=1*#4>67%:0
※ランサー(青)、志乃、カイト、ハセヲをデータドレインしました。
※ハセヲから『モルガナの八相の残滓』を吸収したことにより、スケィスはスケィスゼロへと機能拡張(エクステンド)しました。
それに伴い、より高い戦闘能力と、より高度な判断力、そして八相全ての力を獲得しました。
※ハセヲを除く碑文使いPCを、腕輪の影響を受けたPCと誤認しています。
※ハセヲは第一相(スケィス)の碑文使いであるため、スケィスに敵として認識されません。


    2◆◆


「スケィス……いや、スケィスゼロ……コシュー……まさか、ネットスラムにいるとは……」

 『知識の蛇』に備え付けられた画面の一つを眺める者がいた。
 ダークマン。バトルロワイアルの運営を任せられている無属性のアバターだった。
 その無機質な瞳に映し出されているのは、スケィスゼロの姿だった。


 スケィスはマク・アヌでハセヲと接触したことにより、現在のスケィスゼロに機能拡張(エクステンド)を果たす。
 それから何を思ったのか、カオスゲートを通じて『認知外迷宮(アウターダンジョン)』に侵入してしまった。
 あの世界はこの『知識の蛇』ですらも感知不可能で、プレイヤーの侵入を許してしまったら、その後の動向を把握することが出来ない。
 目的を果たす以外のプログラムを持たないスケィスゼロだったことが、不幸中の幸いだった。奴ならば、運営の反逆を企てるような意志など持ち合わせていない。
 しかし、もしも他のプレイヤーにゲートハッキングをされてしまっては、バトルロワイアルそのものが崩壊する危険も芽生えるだろう。


 『認知外迷宮(アウターダンジョン)』は用意したのではなく、自然に生まれてしまった産物らしい。
 新たなる世界が生み出されてしまったことにより、その裏側もまた創造されている。すなわち、抗えない定めだ。
 それならば、『認知外迷宮(アウターダンジョン)』に通じる全てのゲートを封鎖すればいいかもしれないが、それではゲームとして成り立たなくなる。
 『認知外迷宮(アウターダンジョン)』には認知外変異体というモンスターが存在するらしいが、それも完璧と呼べるかは定かではなかった。
 並のプレイヤーならまだしも、ハセヲやエージェント・スミスのような実力者が相手では、塵に等しいかもしれない。


 だが、今はスケィスゼロの居場所さえ把握できれば、問題なかった。
 開かれたゲートは既に閉じられている。ならば、簡単に侵入されることもないだろう。
 他にゲートハッキングが可能なプレイヤーがカオスゲートの存在を察知したら別だが、その気配はない。あのオーヴァンとやらも、トワイスと榊が釘を刺した以上、こんな危険を冒す真似はしないはず。
 そう考えるダークマンは、再び画面を眺め続けた。



[???/知識の蛇/1日目・日中]



【ダークマン@ロックマンエグゼ3】
[ステータス]:健康


[全体の備考]
※認知外迷宮内に認知外変異体が存在します。





093:EXS.extream crossing sky“クレィドゥ・ザ・スカイ” 投下順に読む 095:種――ザ・シード――
093:EXS.extream crossing sky“クレィドゥ・ザ・スカイ” 時系列順に読む 095:種――ザ・シード――
086:ファントム・ペイン スケィスゼロ 104:悪しき『死の恐怖』(前編)
090:convert vol.2 to vol.3 ダークマン 105:対主催生徒会活動日誌9ページ目・集積編

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最終更新:2015年08月24日 21:09