†



 褐色肌の少女が喚いているが、ツインズは微塵の関心もなかった。何故、あそこまで狼狽しているのかなんて、知った所でどうにもならない。
 それよりも、今はこの場をどうやって切り抜けるかが問題だった。ラニ=Ⅷの作戦が失敗した今、自分達に残されているのは正面からの戦闘あるいは撤退かと思われた……しかし、その途端にまた新たなイレギュラーが現れる。
 何の前触れもなく現れた巨人は十字の杖を構えながら、こちらに近寄ってくる。あれもまたプレイヤーなのか、あるいは何らかの攻撃プログラムか。
 何にせよ、奴の動き次第では切り抜けられるかもしれない。そう判断した途端、巨人が振り向いて来て……ツインズと視線がぶつかった。

「…………ッ!?」

 刹那、巨人から凄まじい存在感が放たれ、それを向けられたツインズは身震いした。
 全身が警鐘を鳴らしている。奴とは戦っていけないと、本能が警告を鳴らしていた。何の根拠もないが、奴と戦っては100%の確率で敗北する……そう、予感させてしまうほどだ。
 反射的に後退するが、巨人はそれ以上の速度で突貫しながら、ケルト十字の杖を振り下ろしてきた。

「Mr.ツインズ――――ッ!」

 ラニは呼びかけてくるが、ツインズがまともに聞くことはできない。何故なら、杖によって殴り飛ばされてしまったからだ。
 何の抵抗もできないまま柱に激突し、勢いのまま地面に転がってしまう。巨人の一撃はあまりにも重く、マトリックスを守護するエージェント達に匹敵……あるいは凌駕するかもしれない。それほどまでの威力を誇り、ツインズの表情は苦悶に染まる。
 何だ、この攻撃は。たった一発受けただけで、全身を構成する全てのプログラムが崩壊しかねない。こんな奴が、この世界にいる事に驚愕を隠せない。
 痛みに堪えながらも顔を上げた先には、あの巨人が腕をこちらに向けているのが見える。
 しかしだからといって、ツインズに抵抗をする暇も与えられないまま、その身体が宙に浮かびあがっていく。そして彼らは、巨人の手から放たれたケルト十字の杖によって磔にされてしまう。

「What!?」

 ツインズは驚愕しながらも足掻くが、十字架はびくともしない。
 一方で巨人の腕からは腕輪にも見える何かが現れて、回転しながら光輝いていく。それを見て、ツインズは透明化を発動させて回避しようとするが……もう遅かった。
 周囲の空間を歪ませながら眩い閃光が放たれて、そしてまだ消滅していないツインズのボディを貫いた。


 ――データドレイン。


「AAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa――――ッ!?」

 輝きによって肉体が容赦なく蹂躙され、喉から発せられた悲鳴すらも飲み込んでしまう。
 最早、激痛すらも感じない。自分自身の叫びすらも聞こえない。データが破壊される感覚すらも消えてしまっていた。
 しかし、一瞬にも満たない激痛はすぐに終わる。それによってようやくツインズは解放されたが、そのまま地面に落ちていく。



(Why……?)

 そんな中、彼は見てしまった。同盟を組んだはずのラニ=Ⅷがサーヴァントに抱えられていて、この場から立ち去る姿を。
 こちらに振り向く気配は感じられない。切り捨てられたのだと察したが、次の瞬間には視界が"白"に飲み込まれる。
 何故、彼女が自分を見捨てて逃亡したのか。何故、あの巨人のようなイレギュラーが現れたのか。そして何故、自分が狙われなければならなかったのか。
 いくつかの"何故"がツインズの中で芽生えるが、その答えを彼が手に入れる事は永遠にない。
 何故なら、彼らの肉体は跡形もなく崩れ落ちてしまうのだから。



 白き死の巨人・スケィスゼロはセグメント1をインベントリに収める。
 スケィスゼロがツインズを消去した理由はただ一つ。放送前に消去した志乃と同じように、女神アウラのセグメントを所持していたというだけ。
 何故、ツインズがセグメントを持っていたかなど、スケイスゼロは考えない。一度取り逃したはずのターゲットを見つけて、こうして確実に始末した……それだけさえあれば充分だった。
 ウラインターネットに到着してからセグメント及び腕輪の加護を受けたPCの気配を追っている内に、ネットスラムに辿り着く。そして、数人のプレイヤーを見つけた。


 その中でツインズを先に狙った理由は、単純に距離が近かったからというだけに過ぎない。
 そしてツインズはスケィスゼロにとっては全く未知の存在。故に、反撃及び逃亡を仕掛けられる前に一刻も早い殺害が必要だった。その甲斐があってツインズを呆気なくデリートすることに成功する。
 奴と共にいたプレイヤー……ラニ=Ⅷは逃亡を始めたが、腕輪の加護もセグメントの気配も感じられないので、追う必要はない。
 次に破壊するべきはブラックローズ。つまり、腕輪の加護を受けたPCだ。邪魔者も数人ほど見られるが、纏めて始末すればいいだけ。
 『死の恐怖』・スケィスゼロはケルト十字の杖を構え、それをブラックローズに向けた。



 もしも、ラニがツインズにセグメント1を渡していなければ……スケィスゼロに破壊されていたのはラニだっただろう。
 もしも、ツインズがラニからセグメント1を受け取っていなければ……ツインズはスケィスゼロに破壊されずに済んでいただろう。
 もしも、遠坂凛にリターンクリスタルが支給されていなければ……二人の内、どちらかが破壊されることはなかっただろう。
 あるいは、もしもスケィスゼロがウラインターネットに辿り着かなければ…………また違った結果もあっただろう。


 だが、それはあくまでももしも(仮定)の話であって、今には何の影響も齎さない。
 残ったのはラニ=Ⅷよりセグメントを受け取ったツインズが、不運にもスケィスゼロに狙われてしまい……破壊されてしまう。
 そんな無慈悲で呆気ない結末だけだった。




【ツインズ@マトリックスシリーズ Delete】





    4◆◆◆◆


 一瞬の出来事だった。
 先程交戦していた白い敵が、唐突に現れた謎の巨人によって破壊されてしまう。抵抗すらも許されない程に一方的で、そして残虐な光景だった。
 余りのことで、ブラック・ロータス/黒雪姫ですらも茫然と見ていることしかできない。

「な、なんだあいつは……一体、何なんだよあの化け物は……!?」

 隣にいるアーチャーの口からは震える声が出てくる。それに対する答えはなく、何事もなかったかのように巨人が振り向いてきた。
 それが意味することは、次のターゲットは私達。あの白い敵を蹂躙したように、今度は黒薔薇騎士団を全滅させるつもりでいる。
 そうはさせるかと、ブラック・ロータスは構えて飛び出そうとするが……その腕をブラックローズによって捕まえた。

「駄目よ黒雪姫! あいつとは戦っちゃ駄目!」
「ブラックローズ……何を言っているんだ。奴は……!」
「駄目なのよ! 私達だけじゃあいつには勝てないわ! 今は逃げるのよ!」

 そう叫びながらブラックローズはウインドウを展開させて、アイテム欄から二つの道具を取り出す。それは逃煙連球及び快速のチャームというアイテムだった。
 何をするのかと聞く暇もなく、ブラックローズは巨人に向けて逃煙連球を投げた途端、辺りに煙が充満する。それにより、巨人の姿が完全に見えなくなった。
 次にブラックローズは快速のチャームを使ったことで、ブラック・ロータスは身体が軽くなるのを感じる。味方全員の移動速度が上昇するアイテムの効果だった。

「二人とも、今のうちに逃げるわよ! あいつに追いつかれる前に早く!」
「待て、その前に聞かせてくれ! 奴は一体……」
「そんな暇はないのよ!」

 疑問はあっさりと切り捨てられてしまう。
 ブラックローズの表情は、先程までの勝気な雰囲気からは想像できない程に動揺に染まっている。まるでこのまま残っていたら、本当に殺されてしまうと確信しているかのようだ。

「俺も賛成だ。姫様も見ただろ? あの化け物はヤバすぎる……今のHPじゃどう考えても勝てるわけがねえし、ここは逃げるが勝ちだ。タルタルガって爺さんや、あのマスターだってとっくにいない。
 これ以上、くっちゃべってる暇なんかないぜ!」

 アーチャーの口調はいつも通りに聞こえるが、表情に余裕は見られない。
 彼の言う通り、ここに残っているのは自分達だけだ。タルタルガの姿はもう見えないし、アーチャーが敵と断定したあの少女も白い敵を切り捨てて逃亡している。
 何よりも、ブラックローズの気持ちを尊重しなければならなかった。今の彼女にまともな戦いができるとは思えない。

「……わかった。今はこの場から撤退しよう」

 ブラック・ロータス達は走り出す。
 逃煙連球と快速のチャームはレア度と効果が非常に高いアイテムだったが、その影響なのかそれぞれ一つずつしかブラックローズに支給されていない。故に、滅多なことでは使わないことにしていた。
 これまでの戦いでは絆の力で勝利を収められた。だからこそ、ダメージを追ったものの絶体絶命の状況に追い込まれることはなかった。
 しかし今は戦ってすらもいないのに、ブラックローズは二つのアイテムを惜しまずに使用している。それはつまり、あの巨人がそれほどまでに危険な相手だと知っているのだ。
 事実、ブラック・ロータスも巨人から放たれる威圧感に退きそうになっている。その場にいるだけで生存が保障されないと確信させてしまう程の圧迫感…………『死の恐怖』を味わっているようだ。


(…………キミも、ハルユキ君も…………こんな気持ちだったのか?)

 『死』というワードと同時に浮かび上がるのは、先程のメールにその名が書かれていた彼……シルバー・クロウ/有田春雪だ。
 加速世界で出会い、ゼロから彼の成長を見届けて、時には助言し、時には戦い、時には大切なもの取り戻すきっかけ……親友フーコとまた巡り合う機会を、彼から与えられた。
 そうしていくうちに彼のことを特別な存在だと認めるようになった。

『傍にいてください』

 彼はそう言ってくれた。
 ダスク・テイカーとの戦いに勝利し、杉並を守ったことのご褒美に何でも一つ言うことを聞く。それに対する答えは、彼のそばにいることだった。

『ずっと、ずっと、僕の傍にいてください。それだけが……僕の望みです』

 梅郷中を卒業してからも、ずっと、未来永劫、彼の傍にいると約束した。当たり前のように隣にいてくれることこそが、本当の幸せなのだと……そう言ってくれるかのように。
 しかし彼はもういない。その約束はもう永遠に守られることはなかった。
 ハルユキ君は嘘つきだったのか? …………違う。彼が約束を破ることなんて絶対にありえない。それは<<親>>として……そして<<黒の王>>として、いや……大切な人だからこそ、彼の姿をしっかりとこの目で見てきた。
 だから、彼は私の知らないどこかで殺されてしまった……そう受け入れるしかなかった。

(どうしてだ……どうして、いなくなったんだ? キミは傍にいてほしいと私にお願いを言ったはずだぞ! 私もキミの傍にいたいと約束した!
 それをどうして、キミのほうから破るんだ!?)

 シルバー・クロウの死。これまでだったら、タチの悪い冗談としか思えなかった。しかしこの目で最期を見届けたダン・ブラックモア卿の名前も書かれていたから、彼の死も事実だろう。
 否定したかった。泣き叫びたかった。これはただの悪夢だと思いたかった。彼がいない世界なんて、もう考えられるわけがない。
 メールを見た途端、様々な感情が溢れ出て、一気に爆発しそうになったが……

カイト……ミア……嘘でしょ?』

 …………それらを押し止めたのは、ブラックローズの叫びだった。

『何で、二人の名前が書いてあるのよ……何で、何でなのよ!?』

『カイト……何で、あんたがいなくなるのよ。あんたは『The World』を救った勇者なんでしょ? みんなの憧れなのよ…………
 あんたがいなくなったら、悲しむ人がたくさんいるのがわからないの!? ミストラルも、オルカも、エルクも、ニュークも、レイチェルも……たくさんの人が悲しむのよ!?
 それがわからないあんたじゃないでしょ!?』

 ブラックローズもまた、私と同じように大切な人達を失ってしまったのだ。彼女だけではない……アーチャーだって、共にいたはずのダン・ブラックモア卿を失ったばかりだ。
 カイト……実際に会った事はないが、彼女が言うには『The World』の危機を救った伝説の勇者らしい。彼は多くの人から慕われていることを聞いて、ハルユキ君のことを思い出してしまう。
 そして、気付いた。大切な存在を失ったのは私だけではない。みんな、同じ悲しみを背負っているのだと。


 それに悲しむのは私達だけではない。現実の世界に生きる人達だって同じことだった。
 ハルユキ君の両親、タク君、チユリ君、レイン、フーコ…………それに加速世界には彼を慕う者が大勢いるのだ。
 ハルユキ君だけではない。アッシュ・ローラー……フーコ/スカイ・レイカーの<<子>>である彼の名前も書かれてしまっている。荒々しいが、フーコと同じように義理と情に厚い世紀末ライダーもまた、このバトルロワイアルの犠牲者となってしまった。
 彼らのことを、伝えなければならなかった。

『出来る筈だ。歩みを止めることさえなければ、きっと、何かを掴むこともできるだろう』
 ダン・ブラックモア卿は死に行く最期の瞬間まで、自分達のことを案じて、止まってはいけないと言い残してくれた。
 そんな彼の想いを無碍にしてはならない。だからこそ、泣いて止まっている訳にはいかない、と……自分自身に言い聞かせた。

『ハルユキ君。私は、キミが誇らしいよ』

 ある雨の日に、今はもういないハルユキに告げた想いが、脳裏に過ぎった。
 そうだ。いつだったか、彼は私のことを誇りに思うと叫んでくれた。それに答えるように、私は彼の誇りであり続けて、そして彼もまた私の誇りであり続けた。
 お互いがお互いを想う内に、唯一無二の存在でいるようになっている。だからこそ、それを裏切る無様な姿を晒せない。
 ブラック・ロータスは自らにそう言い聞かせていた。


 …………しかし、それはハルユキの死を乗り越えたことにはならない。
 先程、周りの者達から言及されたように、彼女は己の感情を無理矢理抑えているだけだった。やり場のない想いと守らなければならない誇りが鬩ぎ合い、そして自分自身をごまかしている。
 ハルユキの死を認めたくない感情を上塗りさせていたのは、ハルユキやダンとの誓いを守りたいという誇り。だが、それも結局は一時凌ぎでしかなく、根本的な解決になっていない。
 言ってしまえば使命を果たすという名目で、彼女は逃げているのだ。自分自身の感情から、そして本当の気持ちから…………


 もしもこの場にスケィスゼロの襲来がなければ、彼女が気持ちと向き合う機会が与えられたかもしれない。ラニやツインズは手強いが、それでも対処可能な範囲だからだ。
 しかしスケィスゼロは決してそんなレベルの相手ではなく、そもそも同じ土俵で戦えるかどうかすら定かではない。故に撤退を余儀なくされ、自分自身の気持ちに目を向けられなかった。
 それによって憤りが広がっていくことにも気付かず、走り続けていた…………



    5◆◆◆◆◆



 …………一刻も早い撤退が必要だった。


 バーサーカーに担がれているラニ=Ⅷには、その思考しかなかった。
 探索クエストも、モーフィアス陣営の撃退も、また第三勢力のことも、全てを放り捨てなければならない程のイレギュラーが現れては、逃走以外の選択肢は選べない。
 ツインズが十字架に捕えられた瞬間から、彼女は躊躇なく彼らを切り捨てた。もしも、あのまま残っていたら確実に殺害されてしまうし、何よりもこれはルール無用のバトルロワイアル。一時的な同盟相手に過ぎない彼らに固執しては敗北の結末しか待っていない。


 しかしラニ自身も無傷と言う訳ではない。
 ツインズの吹き飛ばした十字杖の一撃はリーチが余りにも広く、ラニ自身も受けてしまった。幸いにもそれだけでHPが0になることはなかったが、たった一撃で半分にまで削られる程に重く、身体の節々に痛みを感じる。
 もしもバーサーカーを瞬時に召喚しなければ、きっと自身もあの光線の餌食になっていたかもしれない。あれは屈強なバーサーカーですらも一発で消去するほどの威力を持つはず。
 何よりも、巨人から放たれる雰囲気が、余りにも禍々しい。SE.RA.PH.でもデータがなかった。


(あのイレギュラーに勝利できる確率は……ほぼ0%。あれを撃破する方法を、私達は持ち合わせていない)

 エネミーともサーヴァントとも思えない未知の存在。恐らく自分達の常識で測れないほどのステータスを誇るだろう。
 どうすればダメージを与えられるのか。また、これまで他にプレイヤーの気配が見られなかったのに、如何にして現れたのか。
 何から何までアンノウンと呼ぶに相応しい。仮に何らかの違法改造を受けた敵性プログラムと言われても、納得してしまいそうだった。


 巨人がその圧倒的スペックで第三勢力及びモーフィアス達のグループも潰してくれれば御の字だなんて、そんな話ではない。
 あの巨人を放置しては残った大半のプレイヤーは殲滅されてしまうだろう。無論、それではバトルロワイアル自体が公平とはならないのだから、奴を倒す手段がどこかに存在するかもしれない。だが、そのヒントすらも掴めていない現状では、撃破などただの絵空事に過ぎなかった。
 単純に攻撃を続けてHPを0にまで追い込む……巨人の攻撃に耐える防御力を持たないのなら、返り討ちに遭うだけ。ツインズのように他のプレイヤーと同盟を組んでも、焼け石に水でしかない。

(イレギュラーを放置しては私達に勝利はありません……いずれ、あの人も危険に晒される。
 それだけは…………それだけは…………!)

 そして最大の懸念は、どこかにいるであろう岸波白野が巨人の手にかかるかもしれないこと。
 あの巨人に慈悲や躊躇といった感情がプログラミングされているとは思えない。目的を果たすまで、あらゆる障害を容赦なく破壊しつくす……それだけしか存在しないだろう。
 そして白野があれほどの危険な存在を放置するはずがなく、存在を知ったら絶対に撃退しようとするはずだった。彼は不屈の精神であらゆる困難を乗り越えてきたのだから。
 しかし今回はレベルが余りにも桁外れで、ムーンセルの膨大なる情報量を利用しない限り勝てる保証がない。


 ……現状の最優先は巨人から撤退することだ。
 振り向いてみると、幸いにもこちらから視線を外れている。何故、ツインズと同盟を組んでいない自分自身を狙わないのかは不可解だが、今はその解明など出来ない。
 第三勢力には囮になってもらうしかない。巨人という最大の障害が現れた現状では、ネットスラムのクエスト攻略すらも放棄せざるを得なかった。
 また、単独行動を始める事になってしまったことで、ゲームクリアからは遠ざかるだろう。しかし今は撤退し、何者かがあの巨人を撃破してくれる可能性に賭けるしかなかった。

(……今は合理性の欠片もない可能性を信じるしかありません。
 私が生きて……そして、あの人と再び巡り会う為にも)

 ラニ=Ⅷはバーサーカーと共に走る。
 求めるものを掴む為にも。




【B-10/ネットスラム/1日目・日中】



【ラニ=Ⅷ@Fate/EXTRA】
[ステータス]:HP50%、魔力消費(中)/令呪三画 600ポイント
[装備]: DG-0@.hack//G.U.(一丁のみ)
[アイテム]:不明支給品0~5、ラニの弁当@Fate/EXTRA、基本支給品一式、図書室で借りた本 、noitnetni.cyl_1、エリアワード『虚無』
[思考]
0:今は巨人(スケィスゼロ)から逃げる。
1:師の命令通り、聖杯を手に入れる。
そして同様に、自己の中で新たに誕生れる鳥を探す。
2:岸波白野については……
3:ネットスラムの探索クエストは後回しにしなければならない。
[サーヴァント]:バーサーカー(呂布奉先)
[ステータス]:HP70%
[備考]
※参戦時期はラニルート終了後。
※他作品の世界観を大まかに把握しました。
※DG-0@.hack//G.U.は二つ揃わないと【拾う】ことができません。



    6◆◆◆◆◆◆



 身体が軽い。快速のチャームの効果は凄まじく、黒薔薇騎士団のメンバーは凄まじい勢いで走っていた。
 しかしそれを快く思えない。自分達を追いかけているのは、かつて『The World』に脅威をもたらした八相の一体……『死の恐怖』スケィスなのだから。

「じゃあ、奴は私達では倒す事ができないのか……?」
「プロテクトブレイクまでなら何とかできるかもしれないけど、そこからあいつを完全に倒すには……カイトの腕輪が必要だわ。
 でも、カイトは…………!」
「……すまない」

 ブラック・ロータスの声は沈んでいる。表情は変わらないが、きっと暗くなっているはずだ。
 それに対して、ブラックローズは特に言及をしない。事情を詳しく知らない彼女を無神経だと言うのは余りにも酷だし、今はそれどころではなかった。
 快速のチャームの効果は永遠ではないし、もしも加速効果が切れたらすぐに追いつかれてしまう。逃煙連球も無限に使用できるが、再度使用するには時間の経過が必要らしい。
 アーチャーが言ったように、無駄話をする暇があるのなら少しでも遠くに走らなければならなかった。

「あたしには、カイトの腕輪のように八相を倒す手段はないわ……あたしだってそうなんだから、あんた達が持っているわけがない。
 だから、今は逃げるしかないの……」
「だろうな。もしかしたら、その逃煙連球って奴みたいにあいつにも制限があるかもしれねえが……そんなのを俺達が見つけられるわけがねえ」

 アーチャーの言葉には頷くしかない。普段ならそんな弱々しい選択は選ばないが、相手が相手だった。
 データドレインもなければ、ミストラルのような呪紋使いだっていない。現在のパーティが決して弱いわけではないが、回復魔法を持つ者が誰一人としていなかった。
 それ以前に、いつもいてくれた頼りになる仲間達がいない。カイトはもうどこにもいないし、ミストラルだって姿が見られない……ミストラルの場合はその方がいいかもしれないが、ブラックローズは急に不安になった。
 いつだって本当は怖かった。カズが未帰還者になってから、もしかしたらあたしだってそうなるんじゃないのか……そんな恐怖でいっぱいだった。
 だけど、カイト達が一緒にいてくれたからこそ、どんな困難も乗り越えられた。それなのにどうしてカイトやバルムンク達はいなくなったのか? これでは、何の為に『The World』で未帰還者達を救ったのかがわからなくなってしまう。

「チッ、探索と思ったらまさか命がけの鬼ごっこをやる羽目になるなんてな……たく、ついてないぜ!」


【B-10/ネットスラム/1日目・日中】


【スケィスゼロ@.hack//】
[ステータス]:HP80%(回復中)、SP100%、PP100%
[装備]:ケルト十字の杖@.hack//
[アイテム]:基本支給品一式×2、不明支給品2~6(ランサー(青)、ツインズへのDD分含む)、セグメント1@.hack//、セグメント2@.hack//、疾風刀・斬子姫@.hack//G.U.、大鎌・棘裂@.hack//G.U. 、エリアワード『虚無』
[ポイント]:900ポイント/3kill
[思考]
基本:モルガナの意志に従い、アウラの力を持つ者を追う。
1:目的を確実に遂行する。
2:アウラ(セグメント)のデータの破壊。
3:腕輪の影響を受けたPC(ブラックローズなど)の破壊。
4:自分の目的を邪魔する者は排除。
[備考]
※1234567890=1*#4>67%:0
※ランサー(青)、志乃、カイト、ハセヲ、ツインズをデータドレインしました。
※ハセヲから『モルガナの八相の残滓』を吸収したことにより、スケィスはスケィスゼロへと機能拡張(エクステンド)しました。
それに伴い、より高い戦闘能力と、より高度な判断力、そして八相全ての力を獲得しました。
※ハセヲを除く碑文使いPCを、腕輪の影響を受けたPCと誤認しています。
※ハセヲは第一相(スケィス)の碑文使いであるため、スケィスに敵として認識されません。


ロックマン@ロックマンエグゼ3】
[ステータス]:HP80%
[装備]:なし
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品1~3(本人確認済み) エリアワード『選ばれし』
[思考]
基本:殺し合いを止め、熱斗の所に帰る
1:モーフィアス、揺光と行動する。
2:ネットスラムの探索。
[備考]
※プロトに取り込まれた後からの参加です。
※アクアシャドースタイルです。
※ナビカスタマイザーの状態は後の書き手さんにお任せします。
※.hack//世界観の概要を知りました。
※マトリックスの世界観を知りました。


【揺光@.hack//G.U.】
[ステータス]:HP60%
[装備]:最後の裏切り@.hack//
[アイテム]:不明支給品0~3、平癒の水@.hack//G.U.×3、ホールメテオ@ロックマンエグゼ3、基本支給品一式 エリアワード『選ばれし』
[思考]
基本:この殺し合いから脱出する
1:ロックマン、モーフィアスと行動する。
2:ネットスラムの探索。
[備考]
※Vol.3にて、未帰還者状態から覚醒し、ハセヲのメールを確認した直後からの参戦です
※クラインと互いの情報を交換しました。時代、世界観の決定的なズレを認識しました。
※ハセヲが参加していることに気付いていません
※ロックマンエグゼの世界観を知りました。
※マトリックスの世界観を知りました。
※バーサーカーの真名を看破しました。


【モーフィアス@マトリックスシリーズ】
[ステータス]:軽い打撲、疲労(中)
[装備]:あの日の思い出@.hack//
[アイテム]:不明支給品0~2、基本支給品一式 エリアワード『選ばれし』
[思考]
基本:この空間が何であるかを突き止める
1:(いるならば)ネオを探す
2:トリニティ、セラフを探す
3:ネオがいるのなら絶対に脱出させる
4:揺光、ロックマンと共にネットスラムを探索する。
5:探索クエストを進める。ラニを警戒。
[備考]
※参戦時期はレヴォリューションズ、メロビンジアンのアジトに殴り込みを掛けた直後
※.hack//世界の概要を知りました。
※ロックマンエグゼの世界観を知りました。


『黒薔薇騎士団』


【ブラック・ロータス@アクセル・ワールド】
[ステータス]:HP50%/デュエルアバター 、令呪一画、悲しみと憤りと決意、移動速度25%UP
[装備]:なし
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品1~3 エリアワード『絶望の』
[思考]
基本:バトルロワイアルには乗らない。
0:ハルユキ君…………!
1:ブラックローズ、アーチャーと共に行動する。
2:今は巨人(スケィスゼロ)から逃げる。
3:褐色の少女(ラニ)及び黒人(モーフィアス)らを警戒。
4:クエストをクリアする。
[サーヴァント]:アーチャー(ロビンフッド)
[ステータス]:ダメージ(中)、魔力消費(大)
[備考]
時期は少なくとも9巻より後。


【ブラックローズ@.hack//】
[ステータス]:HP30%、カイトの死への悲しみと不安、移動速度25%UP
[装備]:紅蓮剣・赤鉄@.hack//G.U.
[アイテム]:基本支給品一式、逃煙連球@.hack//G.U.(現在使用不可)、エリアワード『絶望の』
[思考]
基本:バトルロワイアルを止める。
0:カイト…………!
1:黒雪姫、アーチャーと共に行動する。
2:スケィスから逃げる。
3:褐色の少女(ラニ)及び黒人(モーフィアス)らを警戒。
4:このネットスラムって……
※時期は原作終了後、ミア復活イベントを終了しているかは不明。



【快速のチャーム@.hack//G.U.】
味方全体の移動速度が25%UPするアイテム。快速のタリスマンと同じく使い捨て。
本ロワでは効果時間は30分となっている。


【逃煙連球@.hack//G.U.】
一定時間だけ姿を消して、戦闘から離脱できるアイテム。
無限使用可能&レア度が高いせいか一つしか支給されていない。


【全体備考】
※逃煙連球のように無限に使用できるアイテムには、バトルチップと同じように一度使用すると30分間使用不可能になる制限がかけられています。



103:決断の時 投下順に読む 105:対主催生徒会活動日誌9ページ目・集積編
103:決断の時 時系列順に読む 105:対主催生徒会活動日誌9ページ目・集積編
089:信じて進むしか生きられない ラニ=Ⅷ 107:Be somewhere
ツインズ Delete
ロックマン 107:Be somewhere
揺光
ブラック・ロータス
ブラックローズ
094:appearance;出現 スケィスゼロ

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2015年09月07日 21:34