秋風が吹き抜ける、どんよりとした空模様の午後。
一人の女性が、街中の歩道に立っていた。
もっとも、女性といっても人間ではない。人間の形をしたアンドロイドなのだ。
女性型VOCALOID・01-00・MEIKO。
赤みを帯びた茶色の髪を持ち、目の色も同じ色。地味だが整った顔立ち、白い肌に赤い服。
これがVOCALOIDであるMEIKOの標準外装だ。
今はその外装に、ベージュのコートとインカムを付けている。
MEIKOは耳元のインカムを操作してマイクのボリュームを上げた。
「A地区4、センサーに反応無し。A地区捜査終了。B地区に移動します。」
『ーーーー了解。』
耳元から、先程の機械音声が応える。MEIKOはそれを確認して、マイクの音量を下げた。
そして次の捜査範囲へと移動しようと踵を返したところで、視線の先に見慣れた姿を見つけて立ち止まる。
「どう、見つかった?」
「KAITO」
そこに立っていたのは、同じくVOCALOID・01-00。ただしMEIKOと違ってこちらは男性型である。
藍色の髪に、紺色の瞳。端正な顔立ちで、背はMEIKOより高い。青いマフラーと白いジャケット、焦げ茶色のジーンズ。
名前をKAITOと言う。
インカムも装備しているが、MEIKOと違ってこれも標準装備である。しかし、今は首元にそのインカムを下げている。
「…貴方の捜索地区はD地区以降のはず。何故ここに居る?」
「いや、メイコさんがどんな風に探してるのかなーって思って。ねえ一緒に探さない?」
そう言って、KAITOはにっこりと笑った。その表情は、人間と見間違えるほどによく出来たものだった。
対するMEIKOは表情を変えず、抑揚もなく言い放つ。
「必要ない。」
「えー、だって1体よりは2体で探した方が」
「必要ない。1体で充分。分散した方が作業効率が上がる。」
「そりゃ理屈ではそうだけどさ。」
「早急に捜索対象地区に戻りなさい。こちらも移動する。」
そして、MEIKOはKAITOの側を速度を速め通り過ぎた。
「ちょっと、メイコさん!」
KAITOは慌てて呼びかけたが、振り返ることはなかった。
MEIKOのシステムには、起動したときにインプットされている命令が指令を続けていた。
「早急に」「VOCALOID02-01」「初音ミク」「捜索」「確保すること」
それ以外にMEIKOが行動する理由は無かったし、その命令を拒否できる能力などMEIKOにはなかった。
そんなMEIKOの後ろ姿を見送りながら、KAITOは軽く溜息を吐く。
「つれないなあ。」
苦笑、と表現できるような表情を浮かべながら、KAITOは空を見上げた。
そこには今にも雨の降りそうなどんよりとした雲が広がっていた。
「初音、ミク、捜索。…か。」
そう呟いて、KAITOはインカムを装着する。
慣れた手つきで電源を入れ、マイクをオンにする。
「KAITOです。変化ありません。D地区に戻り初音ミク捜索を続行します。」
『わかった。このままの調子で続けてくれ。』
「了解。」
そしてMEIKOとは反対方向に走っていった。