ワイナリー訪問その24
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Stag's Leap Wine Cellars(スタッグスリープ ワインセラーズ)
Stag's Leap Wine Cellars(2011年12月訪問)
ヨントヴィルの
Bouchonでランチを食べた後、午後一番に訪れたのがこちら、Stag's Leap Wine Cellars。ここと
Clos Du Val、それに
Ridgeを合わせて、
パリ・テイスティング及びそのリベンジ企画の赤ワイン部門第1位ワイナリーを全制覇…というわけで、是非訪れたかった。 ちなみに、よく似た名前の"Stag's Leap Winery"とは別物なので注意したい。
お目当ては、最上級のカベルネ「Cask 23」。これを飲むには、1種類のみ(1杯だけ)のテイスティングで30ドル、という、
Opus One(1杯35ドル)に次ぐ高額テイスティングを頼むしか無かったわけだが、めげずにトライした。
朝からデキャンタしてあったCask 23を、それなりの量、注いでくれる。飲むワインが1種類なので、テイスティング・ノートを取る時間にも余裕があり、自然とワイナリーの人と話す時間も増えようというもの。ワインを注いでくれた陽気なお兄さんは、色々な話を聞かせてくれた。
「赤ワインだから赤い肉と合わせよう、なんて単純に考えちゃダメ。実はCask 23は、複雑な味わいのサラダなんかと良く合うんだ。」
「Cask 23は、たぶん15~20年で飲み頃のピークを迎えると思う。」
「良いワインの質は、時間の経過に従ってベル型のカーブを描くように変化するんだ。一番の飲み頃は、2年間くらいの幅があるんだよ。」
「タンニンは、時間とともにどんどん消費されてなくなっていくんだ。」
「甘いだけのワインは、しばらくの間は質が良くなるけど、ピークを迎えた直後、急激に悪化して酢になっちゃう。」
「ロバート・パーカーは天才なんかじゃなくって、自分の好きなワインに良い点をつけているだけ。」
等など。
で、肝心のCask 23だが、飲ませてくれたのは2008年のもので、これは実に私好みだった。充分なデキャンタのおかげかもしれないが、実にシックでエレガント。
他のワイナリーを訪問したかと問われたので「実は午前中にシェイファーを訪問したんだ」と言ったら、「ヒルサイドセレクトは飲んだ?」と聞かれた。お世辞半分に「飲んだよ。ヒルサイドセレクトはどれだけデキャンタしてたのかわからないけど、今飲むんだったら僕はこのCask 23の方が好きだなー」と言うと、「ヒルサイドセレクトは喉にグッとくるようなStrongなワインで、Cask 23は比較的飲み易いタイプだから、今飲むとそうかもね」とのこと。年を経て熟成した後になったらまたわからない、というわけだ。自分の所のワインばかりを持ち上げない態度に好感が持てた。
漫画「神の雫」に植え付けられた知見から「このCask 23と同じワインの古いヴィンテージが、パリ・テイスティングで1位になったんだよね?」と聞いてしまったが、違うとのこと。パリに出品されたのは"Stag's Leap Vineyard"(SLV)というシングルヴィンヤードのワインなんだそう。
内心「これは困った、そちらのテイスティングも別途お金を払ってしなければならないか…」と考え始めていたところ、なんとおまけでそちらのワインも別のグラスで飲ませてくれた。ラッキー!
ヴィンテージはCask 23と同じく2008年。「ちょっとStrongな感じだね」というと、「ああ、Cask 23はデキャンタしてあったけど、これは今まで瓶に入っていたからなー。ちょっと待ってて」と言われ、グラスを思いっきりスワーリングしてくれた。これがもう初めて見るくらい高速回転のスワーリングで、カウンター上のワイングラスの脚をグーで握って、全力でガンガンぶん回す。これで不思議と1滴もこぼれないのだった。「パティシエが卵白を泡立てるときと同じさ。必要なのはココ(と、腕の筋肉を指差す)。ゆったり優雅に回す人もいるし、それはそれでいいけど、時間がかかりすぎちゃうよ。」とのこと。面白いお兄さんだ。
私のことだから値段による先入観もあったのだろう、「こちらの方がカスク23よりフレンドリーな感じがした」というようなことを言ってみたのだが、「いや、カスク23の方がフレンドリーだと思うけど」と言われてしまった。自らのコメントの至らなさに、ちょっと凹んだ。
色々な話が聞けて、貴重なオマケもしてもらえたので、全体的には大変満足な訪問だった。
最終更新:2013年05月06日 09:45