右脳の天才
「人間の脳はまず左右に大分出来る。それは知っているか」
「ええ、まぁ、何度か見たことはあります」
「…。左右でそれぞれ機能が違う。細かい説明は省くし、省略の所為でやや正確さには欠ける説明になるが、まぁ聞き流せ」
「貴方の説明が全部出鱈目でも、それを看破出来る知識人がミッドガッツに何人いるか、という次元のことですがね。後ろ、来ますよ」
「分かっている。やれ、雲日。…恐らくお前の娘は脳に先天的な器質障害がある。出生時の状況から考えてもその可能性は非常に高い」
「まぁね、私が引きずり出した時点で、死体が妊娠しているのはともかく、何ヶ月かまでは分かりませんから。相当な未熟児でしたよ」
「…。あの娘には恐らく「忘却する能力」がない」
「それは怖いですね。…罠撒きますよ、気をつけて」
「あの娘、言語能力が極端に低いだろう。左脳の言語野が正常に機能していないんだ。故に視覚情報を言語化出来ず、本来なら記憶という能力が働かない筈だ。…お前こそアシッドに巻き込まれるなよ」
「では、それが何故真逆の症状に? すみません、白を」
「考えられる可能性は私には一つだ。サヴァン――右脳の天才。…まずいな」
「この程度。…興味深いですね、続けて」
「あの娘は世界を、右脳の直感的認知によって把握しているように思える。…我々常人では察しもつかないが、世界のフラクタルを見ているのなら、あの娘の言動…納得のいく部分も多い。おい、プラントを呼ぶ。もう無理だ足止めして退くぞ!」
「ますた、やる」
「ええ、まぁ、何度か見たことはあります」
「…。左右でそれぞれ機能が違う。細かい説明は省くし、省略の所為でやや正確さには欠ける説明になるが、まぁ聞き流せ」
「貴方の説明が全部出鱈目でも、それを看破出来る知識人がミッドガッツに何人いるか、という次元のことですがね。後ろ、来ますよ」
「分かっている。やれ、雲日。…恐らくお前の娘は脳に先天的な器質障害がある。出生時の状況から考えてもその可能性は非常に高い」
「まぁね、私が引きずり出した時点で、死体が妊娠しているのはともかく、何ヶ月かまでは分かりませんから。相当な未熟児でしたよ」
「…。あの娘には恐らく「忘却する能力」がない」
「それは怖いですね。…罠撒きますよ、気をつけて」
「あの娘、言語能力が極端に低いだろう。左脳の言語野が正常に機能していないんだ。故に視覚情報を言語化出来ず、本来なら記憶という能力が働かない筈だ。…お前こそアシッドに巻き込まれるなよ」
「では、それが何故真逆の症状に? すみません、白を」
「考えられる可能性は私には一つだ。サヴァン――右脳の天才。…まずいな」
「この程度。…興味深いですね、続けて」
「あの娘は世界を、右脳の直感的認知によって把握しているように思える。…我々常人では察しもつかないが、世界のフラクタルを見ているのなら、あの娘の言動…納得のいく部分も多い。おい、プラントを呼ぶ。もう無理だ足止めして退くぞ!」
「ますた、やる」
その言葉と、焔の壁が吹き上がるのが同時だった。
銀髪のアルケミストが蹈鞴を踏んで下がる。焔が起こす風に長い金髪を吹き上げられて、ハンターは笑った。決壊しかけていた線に踏み留まり、焔壁の向こうに矢雨を降らせる。
片言の少年は唇を引き結び、眸を光らせてハンターの背後に立った。その足元に不意に現れて襲い掛かろうとした魔物が、彼の一瞥を受けた刹那に文字通り「凍りつく」。間髪入れずに風矢を撃ち込んで、ハンターは満足気な笑い声を微かに立てた。
銀髪のアルケミストが蹈鞴を踏んで下がる。焔が起こす風に長い金髪を吹き上げられて、ハンターは笑った。決壊しかけていた線に踏み留まり、焔壁の向こうに矢雨を降らせる。
片言の少年は唇を引き結び、眸を光らせてハンターの背後に立った。その足元に不意に現れて襲い掛かろうとした魔物が、彼の一瞥を受けた刹那に文字通り「凍りつく」。間髪入れずに風矢を撃ち込んで、ハンターは満足気な笑い声を微かに立てた。
「は…、…飽きずに子供を連れ歩いて、また何の真似かと思えば…『その子供もか!』」
浮かべざるを得なかった驚愕の表情を慌てて拭い去り、アルケミストは吐き捨てた。そうだ、目の前のこの男、利害もなく子供を保護するような人並みの善意など持ち合わせている筈がないのだから。
「無詠唱…そうか、そうだ。フラクタルの把握…言語野など必要としない訳だ。サヴァンを二人も手懐けて何をする気だ、貴様?」
「人聞きの悪い…この子は立派な私の護衛ですよ。貴方がそれを見縊っただけでしょう」
少年の頭を撫ぜて、男は緩く笑んだ。されるままの彼の表情はただ静まり返っていて…そうだ。Autism? 何故最初から気付かなかったと、アルケミストは己の唇を噛む。
「ほら、片付いたことだし先に進みますよ。必要な材料は貴方にしか見極められないんだから、きちんとついて来てもらわないと困る」
実働込みで用意した高額な報酬なんですから、とハンターが言い、分かっている、とアルケミストは苛立たし気に吐き捨てた。
浮かべざるを得なかった驚愕の表情を慌てて拭い去り、アルケミストは吐き捨てた。そうだ、目の前のこの男、利害もなく子供を保護するような人並みの善意など持ち合わせている筈がないのだから。
「無詠唱…そうか、そうだ。フラクタルの把握…言語野など必要としない訳だ。サヴァンを二人も手懐けて何をする気だ、貴様?」
「人聞きの悪い…この子は立派な私の護衛ですよ。貴方がそれを見縊っただけでしょう」
少年の頭を撫ぜて、男は緩く笑んだ。されるままの彼の表情はただ静まり返っていて…そうだ。Autism? 何故最初から気付かなかったと、アルケミストは己の唇を噛む。
「ほら、片付いたことだし先に進みますよ。必要な材料は貴方にしか見極められないんだから、きちんとついて来てもらわないと困る」
実働込みで用意した高額な報酬なんですから、とハンターが言い、分かっている、とアルケミストは苛立たし気に吐き捨てた。
少年はただ、何も窺うことのできない無表情をして、二人を眺めていた。
こんな感じで問題ないでしょうか飛詠君とこの描写。