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戸田はその日、ただ買い物を済ませてすぐに帰る予定だった。
戸田らが生活する寮はかなり繁華街に近い。
自転車を15分も漕げばすぐ大きなデパートに着く。
しかし、その日は予定が大幅に狂いそうだった。
なぜなら、街中でとある女性歌手がゲリラライブを開いた為に
そこへ人が殺到し、なかなかその場を通り抜けられなかったのだ。
そこまで交通の妨げになるような場所ではない。
しかしながら、寮とデパートを結ぶ経路に
突如現れたそれは、戸田の足を止めるには十分だった。
よく有線で流れている曲を熱唱するその歌手に
戸田は何の興味も無かったので
ただひたすらイライラしながらその場を通り過ぎようとした。
しかしその時、女性歌手への歓声がその質を変えた。
いや、それは突如として襲撃してきたエネミーに対する
悲鳴に他ならなかった。
大勢の人間がいる中へ突如出現したエネミー達は
手当たり次第に人間を攻撃する。
こういう時の為に配置された警察官とガードマン達は
一斉にリボルブして迎撃に向かう。
入り乱れて戦うエネミーと人間。
だが、その日は何かが違っていた。

リボルブした警察官とガードマン達はエネミーを圧倒している。
すぐに事は収拾するかに思われた。
だがしかし、これまで優勢だった人間の方が
突如弾き飛ばされる。
それは強力なエネミーの増援だけではない。
屯するエネミーの中に見えたのは、間違いなく人間だった。
黒いローブを纏ったその姿は、その中にいる限り
普通エネミーと思われるだろう。
だが、彼らはめいめいシンボルを伴っていた。
そして目の前でリボルブしたかと思うと
警察官とガードマン達を次々と薙ぎ払っていく。
圧倒的、その言葉がとてもよく当てはまっている。
彼らは間違いなく殺傷することを前提に戦っている。
そして彼らが纏うローブに記された模様を見て
戸田は愕然とした。
それは噂に聞いた『シュヴァルツ』に他ならなかったからだ。
今までどこぞの宗教のように
エネミーとの共存を謳っては同士を集めているということだけは知っていた。
だが、目の前の光景は、
彼らがそれだけに止まらないことをまざまざと見せ付けていた。

エネミーとの共存を謳う宗教的組織は何も
シュヴァルツだけでは無かった。
だが、そのどれもがエネミーの襲撃を受けたりして
口先だけのものだと誰もが分かっていた。
しかし、その中でシュヴァルツだけは違っていた。
彼らは一切エネミーに襲われることがなく
本当にエネミーと共存しているようだった。
その上、エネミーからの襲撃を恐れる人々が
シュヴァルツに属そうとするも
その殆どがそれを拒否された。
シュヴァルツは、自らが属すべき人員を判別する
他に類を見ない組織だった。
それでも、彼らは今まで本当に共存を目指すだけの組織だった。
それが、一体何故このようなことをするのか。
戸田には何が何だか理解出来なかった。
「…我らが友を傷つけた罪、それは万死に値する…」
「…愚かなる旧世界の住民よ、今こそ我らが粛清を受けよ…」
そんな言葉を口にしながら戦うその姿は
最早人というよりは人の姿をしたエネミーとしか思えなかった。

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最終更新:2006年09月13日 23:41