今日は組み手が終わってから、由里が崎山に告白されてた場所の木の上でソウメンを食べている
ちなみに今日は由里と待ち合わせている
由里と一緒に昼食を食べるのは結構久しぶり
「カオル~」
木の下で由里が小さく手を振っている
ヨイショって言う声と共にほいほい登ってきた
私が乗っている木の枝に並んで座る
ゆっくりな時間が流れていた
その時、確かに平穏がそこにあった
私はいつものように黙っていたけど、今日は何故か由里まで黙っていた
そのまま無言の時が流れる。
流石に私も何か話さなければならないような気がしてきた
どんな事を話せばいいのか迷っていると、由里が口を開いた
「カオル・・・」
由里の声は震えていた。下を向いて、肩を上下させて
由里は・・・泣いていた
何がなんだかわからない。
「あ・・・あたしの」
由里が搾り出すように口を開いた
「あたしのこと・・・覚えておいてね?」
由里が木から飛び降りて走り始めた
何がなんだか・・・わからない
由里が曲がろうとした角から、崎山が出てきた
「あ・・・加賀谷・・・さん?」
さすがに泣いている由里を見て、崎山が怯んだ
その隙に、由里が崎山を押しのけてどこかに行ってしまった
崎山が私の姿を見て、駆け寄ってきた
「加賀谷さん・・・どうしたの?」
私は今あった出来事をそのまんま伝えた
崎山は少し考えた後、
「二手に分かれて探そう。なんか、嫌な予感がする」と言った
それから、私と崎山は二手に分かれ、授業をサボって由里を探した
結局見つからなかったけど
由里の部屋に行ったら、崎山に鉢合わせした
崎山に、私は首を横に振ると崎山はゆっくり近くの椅子に座った
「何か・・・心当たりは?」
崎山はしばらく口を閉ざした
でも、否定はしない
しばらく沈黙が場を支配する
遠くでチャイムが鳴っている。授業がひとつ終わったらしい
さらに数分して、崎山がやっと口を開いた
「西田さんは・・・加賀谷さんの昔を知っている?」
私は何も答えなかった
崎山はゆっくりと語り始めた
由里は小さな頃、今では考えられない程無口な子供だった
両親仲はとても悪く、夫婦喧嘩のとばっちりがよく飛んできたらしい
そして由里が8歳の時、とうとう離婚した
信じられないことに、両親共由里を見放した
由里は・・・それから7年以上孤児院で過ごした
「俺も、遠い親戚が引き取ってくれるまでは姉と同じ孤児院にいた。
と、言っても加賀谷さんはひたすら引きこもっていた
本人は知らないかもしれないけど、俺はそんな彼女のことをずっと見ていた」
崎山が孤児院を離れて2年後、崎山はこの学校に入学した
一年後、由里が入学してきたとき、崎山はすごい驚いた。
性格を無理に変え、容姿もまるで違った
そして崎山にはわかっていた。どこか辛いってことに
その証拠に・・・
「西田さん。加賀谷さんがあなたにしか心を打ち明けてない」
昔の自分のような、いや、本当の自分に近い子といることでそれを紛らわしていた
崎山はここまでを一気に話した
恐らくずっと胸に溜めていたんだろう。
崎山の顔に後悔に色は無かった
崎山の話を聞いて
私はどんどん胸が痛くなってきた
由里の本当の気持ちも気づけなかった事も、
そして崎山がどんだけ由里を想っているかってのも
「あの・・・数式に意味って・・・わかります?」
なんとなく無駄だと判っていながら発する言葉
今までの話の流れに全く関係ない言葉
その言葉に、崎山はまったく動じなかった
「あの数列の断り方は、孤児院時代でも使っていたからね。だからこそ、それを打ち破らないといけない気がした」
崎山の放つ言葉に、私は何も言葉を返せなかった
「もうちょっと探そうよ。今の話じゃ、何の解決にもなっていない」
そう言って立ち上がる崎山
その背中を見て、私はしみじみ感じる
あぁ・・・私はこの人を好きなんだ・・・と
女子寮を出た所で、誰かが立っていた
黒いローブを纏った男
私も、崎山も一瞬で感じ取った
こいつは・・・敵だ
私はすぐにリボルブをして、相手がどんな奴かも確認せずに切りかかった
男はどんな動きをしたかわからないけど、
いつのまにか私の頭を掴んで、私は宙ぶらりんになっていた
どうにかしかきゃ・・・と思った瞬間、私の頭の中に何かが流れ込んでくる感覚が襲い掛かってきた
最初は何かわからなく、ただ辛かった
次に、これは記憶が流し込まれてるということに気づいた
公園で私がエネミーに切りかかり、
そしてそのまま・・・私の家族を切り捨てる映像が絶え間なく・・・流れていく
ほんの10秒ぐらいの出来事だった
「貴女では無い」
そう言って男は私を捨てた
地面に這いつくばって、私はリボルブの解除すらできなかった
顔からいろいろな液体が流れていることにすら、私は気づかなかった
「君、女の子を探してるね?」
男は非常に友好的に崎山に話し掛けた
崎山はリボルブをしたまま、警戒を切らさずにただ黙っていた
「その子、あと8分ぐらいで死んでしまうんだが、
君に彼女を助けられる術が一つだけある」
男はただただ話し掛けていた
私は、その様子をただボーっと見ていた
「信じるか信じないかは君に任せる。
君がどう足掻こうが私無しに彼女の運命は変えられない。では」
そう言って男が消えた
ふ・・・と体が動くようになる
崎山が血相を変えて走り出す
私も体がちゃんと動くことを確認してから、崎山を追う
崎山はエネミーが馬鹿みたいにワシャワシャいる一角を見つけた
その中心にいるのは・・・由里だった
由里はリボルブもしないで、ただ突っ立っていた
「加賀谷!!!」
崎山はさん付けも忘れ、由里を守りながら回りのエネミーをバッサバッサと薙ぎ倒していく
私は走りながら気づいた
このエネミー・・・由里しか狙っていない
横目で時計を見る
男の予告、由里が死ぬまであと・・・4分
エネミーの強さ・・・襲撃時の比じゃない
崎山は由里をまもるだけの余裕がある
しかし、私は正直自分の身を守るので精一杯だった
それにしても、由里は本当に魂が抜けたような感じだった
まるで、本当に自分があと数分の命だと思っているかのように
私と崎山で一通りのエネミーを倒す
でも、まだ気を抜けない。あんな予言、失敗させないと
ズン・・・ズン・・・ズン・・・
明らかにおかしい地響き
崎山と私は同時に顔を上げる
校舎ぐらいの大きさのエネミーが私たちを見下ろしていた
エネミーが腕を振りあげる
避けようとした。由里に直撃すると考えて受け止める
私はそのまま受け止めきれず、潰された
リボルブは解けていないものの、体が動かない
再びエネミーが腕を振り上げ、由里に向かって振り下ろす
崎山がその攻撃を受け止める
2・・・3・・・4・・・
6回目についに崎山も吹き飛ばされた
その次の攻撃、無情にも由里の腹部に、それは当たった
崎山が必死になって由里の方に駆け出す
由里の周りに赤い池ができてくる
私は、その光景を見て自分の中の何かが目覚めた
気がつくと、切り刻まれたエネミーと、倒れる由里。それを抱え叫ぶ崎山が見える
嫌だ。信じたくない
崎山はフルフルと震え、そして震えを収めて顔を上げた
「おい!さっきの男!まだ時間はあるぞ!なんでもする!加賀谷を、この子を助けてくれ!!!」
男が、ローブを纏った男が姿を現す
崎山の耳元で何かを囁いた
崎山は由里を見、私を少し見て・・・うな垂れるように首を縦に振る
そして立ち上がって、ローブの男と共にどこかに消え去ろうとしていた
いや・・・何で・・・
行って欲しくない、行っちゃ・・・ダメ
そう口が開いてほしいのに、体が動かなかった
私は立ち上がり、由里の血がとまっている事を確認した
私は・・・どうしたらいいのだろう
私は・・・どうしたいのだろう
いや、そんなことは決まっている
私は、崎山が好きだ
それなら、やることは決まっている
ふと近くのマンションの屋上に目が行った
男が二人、そこにいた
左の男の顔・・・見覚えがある
Fouって言ったっけ。少なくても、今のわたしよりは何かを知っているはず
あの男を追えば・・・いや、あの男の近くにいれば、崎山に辿り着くかもしれない
わかってる。そうなると多分、この学校に来ることはもう・・・ないのだろう
振り返って、由里の頬にキスをする
なんて・・・暖かいのだろう
立ち上がって、Fouのいたマンションの屋上を目指す
もう二度と、振り向かないように
~薫子編 完~
最終更新:2006年09月16日 23:37