Act?1【タイトル?んなもんねーよ】
「あっつー」
ズルズルとソバをすすって、俺は今年の猛暑を嘆いた
夏真っ盛り
少しシンボルに心得のある【コントローラー】なら、自分のそれを使って涼むこともあるだろう
西田薫子さんだったか、氷のシンボル使いが羨ましい。夏限定で
しかし、俺のシンボルは、どうやっても役に立ちそうに無かった
隣を見やる
美味しそうにソバをすする少女(俺の友人、深山 奏)の周りを飛び回る三十センチほどのそれ
ツルンとした乳白色の球体のシンボル、Roi
王様、という意味で名づけた
悪意無き者に強く、悪意ある者に弱い能力を、王様と呼ばすになんと言おうか
余りに弱すぎるので、今日もこうして組手をサボって、午後の緩やかな時間を楽しんでいるのだ
陽光は容赦なく照り付けるものの、湿気はないし、風は心地よく通り過ぎる
うん、今日はもう帰ろう
Roiを手招きし、回帰する
俺は街で遊ぶべく、学食を後にした
周りに大量のお椀を重ねた、深山奏を置き去りにして
さまざまなシンボルを連れた人たちが、互いを気にすることなく通り過ぎていく
氷のシンボル使いは、かき氷を作って客寄せをしている
水や炎のシンボル使いが何人か集まって、大道芸を行い、衆人の目を集めていた
あ、水が炎のシンボルにかかって台無しになった
そう、いきなり地面が振動し、水のシンボル使いが体制を崩したのだ
「……!!」
地震ではない、余りに作為的な振動
3、4メートルはありそうな巨体、暗い肌の巨人だ、シンボルか?
いや、周りにシンボルのコントローラーは見当たらない
即ち、エネミー
街中に突如現れたエネミーに、あたりは騒然となる
いきなり掻き乱された平穏に、街の住人は硬直し、唖然と巨人を見上げる
衆目を集めながら、巨人型のエネミーは、拳を振り上げ、地面を砕いた
「ォオオオオォォォオオォォォオオオォォオオォォオオオオォオオオオ!!!!!」
飛び散る破片に怪我をする一般人と、混乱して逃げ出そうとするコントローラー
俺は場を落ち着けようと、手を鳴らそうとした。
パーーーーーン!
俺が手を敲くより先に、誰かの鳴らした音が場に響く
白衣で、長身の男
こんな街中にいるには、やや不自然な暗い雰囲気
「君、名前はなんと言うのかね?」
白衣の男が、俺に向かってそう言った
周りの一般人はすでにこの場から逃げ出しており、俺以外に声をかける対象がいないことは分かりきっている
「え、あ、俺?藤城…」
向こうから聞いてきたにもかかわらず、白衣はこちらの言葉を切った。
「ふむ、私はFouと言う、藤城君、君にはこの場の指揮をしてもらうよ」
はぁ?何を言っているんだ、この男は?
「いったいなんだよ?」
「そこの大道芸人のコントローラー、あとカキ氷作ってるコントローラー、君たちだよ
君らで協力して奴を倒してくれ」
指名されたコントローラーは、一様に顔をしかめて、何で自分が?と言った渋面を作る、もちろん俺もだ
「せめてあと六人は欲しいぞ、ここまで大物だとやりづらい」
「ふむ、君は戦術に詳しいようだね?敵の戦力、味方の戦力の把握に長けている
しかし、地形の把握はどうだい?」
言われて気付いた、街中なので辺りは建物、あのエネミーの巨体では十分に動きをとることができない
対するこちらは、巨人より小回りが効くし、複数である
なるほど、この白衣、なかなかに切れ者なようだ
感心した俺は、三人のコントローラーを呼び集めた
作戦は単純、炎と水を扱えるシンボルがあるならば、水を炎で水蒸気に変え、隠れつつ氷のシンボルで攻撃
教科書にでも載っていそうな戦法だが、それだけに有効だ
「よし……GO!」
合図とともに、俺と氷のコントローラー、大道芸人の二人に分けて、ぐるりと巨人の周りを回る
大道芸人のペアは、水蒸気による煙幕を作り出し、確実にエネミーを翻弄している
「フム……それなりに常識のある人間のようですね
だが、
その煙幕とやらに対応できないエネミーではないようですよ」
Fouが呟くと同時に、巨人は足で周りをなぎ払った
氷のコントローラーがとっさに盾を出して受け流したため、俺のペアは無傷だ
向こうの二人組みも、何とかかわしてくれたようだ
戦力、変化なし
バトル、続行
しかし、目暗まし作戦が通用しないとなれば、何か別の作戦が必要だった
水煙が晴れ、巨人に破壊された街が目に入る
衣料品店など、無傷なのは浴衣一枚と、それを着たマネキンだけだった
ん?
これならいけるか?
俺はすぐさま大道芸人ペアを呼び戻し、もう一度水煙を作ってもらった
水煙の対処法をもう覚えたらしい
巨人はまた、あたりを足でなぎ払った
バキィッ!
何かを砕く音が、あたりに響いた
巨人は、その感触で仕留めたと勘違いしたらしい
残念だったな、そいつはマネキンだ
今の俺は、お前の真上にいる
さっきの水煙は、目暗ましでもあったが、浴衣を使った気球を作るためでもあったんだよ
炎で熱された水蒸気が上に昇る性質を利用し、一気に飛び上がった気球は、今、冷えて高度を落としている
まだ、エネミーは上空にいる俺たちに完全に気付いていない
「今だ!やれ!!」
俺の掛け声に、俺の背中に乗っていた氷のシンボル(着物姿の小さな少女だ)が
俺の身体よりもでかい氷を作り出し、エネミーの脳天に叩きつけた!!
俺の掛け声に反応し、上を見上げてしまったエネミーは、氷に顔面を潰される結果となった
地面に崩れ落ちる巨人と同時、俺も少しの浮遊を終えて地に降り立つ
俺たちの勝利だ
最終更新:2006年09月04日 01:30