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次の組み手の相手は、以前学校が襲撃された際に
会って話したことのある大黒 明という男子生徒だった。
「今日は!あの時は名乗ることを忘れていました!
大黒明です!よろしくお願いします!」
なんとも威勢よくハキハキと喋る少年だ。
先程戦った女子生徒とは真逆の性格をしている。
「あ、そうだ、サインもらってもよろしいですか!?」
…さ、サイン?
本気だろうか。
本気でたかだかいちオフィシャルメンバーのサインなど
欲しがっているのだろうか。
全くもって理解に苦しむ…。
「いや、自分はそういうのはちょっと…」
「え…駄目でしょうか…?」
またずんっと沈み込む。
どうにも申し訳ない気にさせられるので
取り敢えずマジックで色紙に自分の名前を書いた。
極々普通に書いた。
「うわー流石オフィシャル!力強い字ですねー!」
いやいや、どうみ見ても普通だろう。
資料や郵便物に書くのと同じように書いたのだから。
どうもこの男子生徒はオフィシャルを
どこかのバンドか何かと勘違いしてるんじゃなかろうか。

道場の真ん中で向き合った時に、大黒くんは言った。
「俺、将来は絶対オフィシャルに入りたいんですよ。
オフィシャル入って水上さんみたいにかっこよく
エネミーを倒したいんです!」
…かっこいい、か。
露骨に私怨を剥き出して単に殺戮するだけの男が
そんなにかっこよく見えるのだろうか。
エネミーは人類にとっての脅威だ。
それを戦うオフィシャルはヒーローのように
彼は捉えているのだろうか。
「…オフィシャルは、そんなかっこいいものじゃないよ」
俺はそうポツリと呟いた。
「え?」
「なんでもない。さぁ、始まるぞ」
教師が腕を上げ、そして勢いよく振り下ろす。
「始めィッ!」

開始の合図とともに後ろへ回り込んで蹴りを一発打たれる。
かと思えば脇腹へさらに回し蹴りが一発。
さらに顔面に向けて一発。
目の前から消えたと思ったら足払い、回し蹴りと続く。
俺はそれを観察するように最小限の動きでかわしていく。
それにしても素早い動きだ。
先程の女子生徒よりも更に数段速い。
普通の人間が必死にサンドバックを殴るよりもさらに速く、
どちらかと言えばマシンガンのような高速連撃だ。
まったく、ここの学校の生徒は末恐ろしい。
一分が過ぎた時点でこちらも動きを見せる。
まず大黒君が後ろに回りこんでまた蹴りを入れようとした瞬間
更に後ろへ回り込んで蹴りをいれる。
大黒君はバンと前へ吹っ飛び、前転して受身を取り
再度構える。
構えた瞬間に後ろからまた蹴りを入れる。
それ以降常に背後を取るような形で試合を運ぶ。
しかし大黒君に焦りは見えない。
余裕があるのではなく、オフィシャルメンバーと戦えることが
嬉しくて仕方ないのだろう。
オフィシャルは自分を軽くあしらうほど強くて当然。
彼はきっとそういう考えをしているのだろう。

今回は水を使わずに格闘術だけで勝負を決めることにした。
大黒くんが正面から脇腹目掛けて蹴りを入れようとした瞬間
その足を掴み、俺の方へ引き寄せて腹や胸に数発打ち込み
そのまま足を持って体を振り上げ地面へ叩きつける。
「そこまで!勝負あり!」
大黒くんはよろけながらも自分の足で立ちあがり
握手を求めた。
「やっぱりオフィシャルは凄いですね!
ますます尊敬しました!」
彼は明るくそう言い、至極丁寧にお辞儀をして
元の場所へ帰っていった。

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最終更新:2006年09月04日 23:39