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リボルブを終えると、木村は武器をその場に投げ捨てた。
これ以上、この興奮を抑えることは出来ない。
一度その場で深呼吸をすると、木村は真っ直ぐ敵に向かって駆け出した。
髪を振り乱し、目を血走らせ、口からは舌をたらす。
今どんなに気違い地味た顔をしているか自分でもわかっているが、一度この感情に身を任せたらそれはどうしようもない。
無防備に駆け出したかに見えた木村は、しかし敵のすぐ手前で大きく踏みとどまった。
そしてその場に伏せるほど低く身を屈ませると、右腕を下から勢いよく突き出す。
一瞬その手が風船のように大きく膨らんだかのように見えた。
バグン!
巨大な二枚貝が勢いよく閉じるような音がし、それと同時に彼の目の前にいた数匹のエネミーは跡形もなく消え去った。
身震いするほどの快感が、腕を通して全身にわたる。
木村はその快感に恍惚とした。
(まだ足りない)
木村は恍惚からさめると、再び目の前のエネミーの群れに向かっていった。
腰の重心を低くし、両足で地面にとどまると今度は二本の腕を下から突き出した。
それと同時に彼の腕は急速に異形へと姿を変えた。
それは巨大な口だった。
二つの巨大な口は大きくその口腔を広げると、エネミーの群れへと突進する。
バグン、と先ほどよりも大きな音がし、彼の腕はまた元の姿に戻っていた。
飲み込んだエネミーの体は彼の腕から血管を通り、ドクリドクリと全身行き渡る。
これこそが、木村をオフィシャルの第一戦闘部隊長たらしめている能力であった。
その体内に飼う巨大な「竜」。
シンボルとしては最も単純でありながら、最も強力な兵器であった。
何物をも受け付けぬ強靭な肌と人間を超越した瞬発力、そして破壊力。
その圧倒的な力の前では並みのシンボルの能力など小細工だった。
しかし、それは同時に大きな欲望を生む。
その欲望は捕食という行為によってのみ満たされた。
エネミーの体液で全身を染めながら木村は次の目標を探す。
「全然足りねぇ」
木村はその竜の腹が膨れるまで、狂気がかった目をしてエネミーを喰らい続けた。

いつしかエネミー達は消えていた。
「あぁ、気持ち悪ぃ……」
二日酔いの後のような酷い頭痛と吐き気に、木村は壁に体をもたれかけた。
服に染み付いたエネミーの体液がたまらなく不快だ。
窓から外を見やると、たった今の事件の処理と救護活動に人々が右往左往していた。
「大丈夫ですか?」
木村は気だるげに振り向いた。
驚いたことに立っていた嶺はほとんど無傷の状態だった。
「何したんだか知らねぇがよく平気だったな」
「言ったでしょ、あれは手抜きだったんですって」
笑いもせずに嶺は答えた。
「何だったんでしょうね、これ」
「……さあな」
一瞬言いよどんでから、木村は質問を受け流した。
ふうん、と猜疑的な眼差しで嶺は木村を見上げた。
「でもいやに早く終わったみたいですね」
「オフィシャルが来たんだろうよ」
「他人事みたいですね」
「他人事だよ。……俺は寮に帰る」
痛む頭を抑えながら木村はフラフラと立ち上がった。
「知り合いの人にあっていかなくていいんですか?」
「余計なお世話だ」
背中に投げかけられた質問に、振り返りもせずに木村はその場を立ち去った。

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最終更新:2006年09月09日 17:23