セントラルオブアース オフィス街のとあるカフェ。
地球政府直々の依頼を受ける為、
専属マネージャー、ヒールと共にクライアントを待つ。
「政府直々の依頼だからって、
何でわざわざ直接会わなきゃいけないんだ?」
ヒールにだけ聞こえるように小声で呟く。
「…おまえ、レイヴンなんだろ?一応。
なら、与えられた役割を果たせばいい。余計な事は考えるな」
顔を合わさずにヒールが話す。
「余程大事な依頼なんだろう。
それも、ネット上でやり取りする訳にもいかないような」
やや緊張した顔で話すヒール。
盗聴の類が無い様に周辺を厳しく警戒している。
依頼主から割り当てられた個室で待つ事15分。黒服の男性が一人現れた。
「お待たせしました」
店員のような営業スマイルを浮かべつつ、
懐からディスクを取り出すと、設置されている端末へと挿入する。
「今回の依頼は、極秘の物となります」
地球政府直々の依頼を受ける為、
専属マネージャー、ヒールと共にクライアントを待つ。
「政府直々の依頼だからって、
何でわざわざ直接会わなきゃいけないんだ?」
ヒールにだけ聞こえるように小声で呟く。
「…おまえ、レイヴンなんだろ?一応。
なら、与えられた役割を果たせばいい。余計な事は考えるな」
顔を合わさずにヒールが話す。
「余程大事な依頼なんだろう。
それも、ネット上でやり取りする訳にもいかないような」
やや緊張した顔で話すヒール。
盗聴の類が無い様に周辺を厳しく警戒している。
依頼主から割り当てられた個室で待つ事15分。黒服の男性が一人現れた。
「お待たせしました」
店員のような営業スマイルを浮かべつつ、
懐からディスクを取り出すと、設置されている端末へと挿入する。
「今回の依頼は、極秘の物となります」
作戦領域 バロウズヒル ギエンクレーター周辺
作戦目標 「母体」の排除
開始時刻 翌日 03:00
作戦目標 「母体」の排除
開始時刻 翌日 03:00
端末を操作しつつ、黒服の使者は淡々と話を進める。
「…と、いう事です。何か質問はありますか?」
「ああ、色々あるが、話してくれるのか?」
「話せる範囲内でしたら」
一呼吸おいて、プロジェクターが口を開く。
「まずは、敵戦力を具体的に説明してくれ。情報が少な過ぎる」
黒服の使者が一瞬表情を緩ませる。
「…流石ですね。その一言を私は聞きたかった。
もし、その質問が無ければ偽の依頼にすりかえておく所でしたよ」
面接試験のつもりだったのだろうか?
敵戦力の情報など、誰でも欲しがる筈だが。
黒服の使者は今までとは少し違う表情で語り始める。
「プロジェクターさん。私、いや我々が貴方にこの依頼を持って来たのは、理由が有りましてね」
「…と、いう事です。何か質問はありますか?」
「ああ、色々あるが、話してくれるのか?」
「話せる範囲内でしたら」
一呼吸おいて、プロジェクターが口を開く。
「まずは、敵戦力を具体的に説明してくれ。情報が少な過ぎる」
黒服の使者が一瞬表情を緩ませる。
「…流石ですね。その一言を私は聞きたかった。
もし、その質問が無ければ偽の依頼にすりかえておく所でしたよ」
面接試験のつもりだったのだろうか?
敵戦力の情報など、誰でも欲しがる筈だが。
黒服の使者は今までとは少し違う表情で語り始める。
「プロジェクターさん。私、いや我々が貴方にこの依頼を持って来たのは、理由が有りましてね」
「――理由…?」
予想していなかった返答に思わず鸚鵡返しになる。
「貴方は、レイヴンズアーク所属、アリーナランキングC-8。
単にアリーナランクだけで見れば、中の下、と言った所ですが…
ミッションに関しては、貴方はそれ程低い評価ではないのですよ。
実績は目立ちませんが、経験に関しては素晴らしい。
正にベテラン…の域、と言った所でしょうか」
ベテラン…確かに経験だけは豊富だ。傭兵暦も短くは無い。
自分がレイヴンとして注目されている…悪くない気分だ。
「何より、低ランクのおかげで報酬が安く済みますしね」
…ぬか喜びに終わった。恐らく本音はこちらだろう。
アークでのレイヴンの評価は依頼とアリーナ、それぞれの評価を平均して算出される。
評価が高いレイヴン程危険と報酬、共に高い依頼が回される事になる。
「MTやガードメカ、そして今回の攻撃目標である生体兵器に関する知識…
貴方にこの依頼がまわって来た一番の理由は『知識』です」
『知識』…確かに元ジャンク屋な為、
『商売道具』でもあるMTやガードメカに関しては詳しい。
扱った事は無いが、生体兵器についても、一通りの知識はある。
予想していなかった返答に思わず鸚鵡返しになる。
「貴方は、レイヴンズアーク所属、アリーナランキングC-8。
単にアリーナランクだけで見れば、中の下、と言った所ですが…
ミッションに関しては、貴方はそれ程低い評価ではないのですよ。
実績は目立ちませんが、経験に関しては素晴らしい。
正にベテラン…の域、と言った所でしょうか」
ベテラン…確かに経験だけは豊富だ。傭兵暦も短くは無い。
自分がレイヴンとして注目されている…悪くない気分だ。
「何より、低ランクのおかげで報酬が安く済みますしね」
…ぬか喜びに終わった。恐らく本音はこちらだろう。
アークでのレイヴンの評価は依頼とアリーナ、それぞれの評価を平均して算出される。
評価が高いレイヴン程危険と報酬、共に高い依頼が回される事になる。
「MTやガードメカ、そして今回の攻撃目標である生体兵器に関する知識…
貴方にこの依頼がまわって来た一番の理由は『知識』です」
『知識』…確かに元ジャンク屋な為、
『商売道具』でもあるMTやガードメカに関しては詳しい。
扱った事は無いが、生体兵器についても、一通りの知識はある。
「生体兵器…それが攻撃目標です。過去の遺産の類ですが」
端末に攻撃目標のデータが表示される。
大きな蟻のような、黒く、巨大な『母体』
「こいつは…『フリー』タイプの…」
『デストロイヤ・フリー』
数十年前、地球に姿を現した生体兵器「スカウタ・フリー」の生産ユニット。
創り出したのは、ジオ・マトリクスの一社だという噂はあるものの、真相は不明。
「何でこいつが今頃…?」
「お答えできません」
即答。
「では、他に戦力として予測される物は?」
生体兵器については黙秘だろうと判断し、質問を変える。
「MTやガードメカの類は確実に現れません」
何故、そう言い切れるのだろう。
「AC、つまり、レイヴンならあるいは…」
――レイヴン。政府からの依頼とは言え、やはり裏には企業の影。
そもそも、地球政府自体が企業で構成されているような物だ。別に珍しい事では無い。
黙って席を立ち、部屋を出る。
部屋に残されたヒールと依頼主が、正式な契約手続きを行う。
端末に攻撃目標のデータが表示される。
大きな蟻のような、黒く、巨大な『母体』
「こいつは…『フリー』タイプの…」
『デストロイヤ・フリー』
数十年前、地球に姿を現した生体兵器「スカウタ・フリー」の生産ユニット。
創り出したのは、ジオ・マトリクスの一社だという噂はあるものの、真相は不明。
「何でこいつが今頃…?」
「お答えできません」
即答。
「では、他に戦力として予測される物は?」
生体兵器については黙秘だろうと判断し、質問を変える。
「MTやガードメカの類は確実に現れません」
何故、そう言い切れるのだろう。
「AC、つまり、レイヴンならあるいは…」
――レイヴン。政府からの依頼とは言え、やはり裏には企業の影。
そもそも、地球政府自体が企業で構成されているような物だ。別に珍しい事では無い。
黙って席を立ち、部屋を出る。
部屋に残されたヒールと依頼主が、正式な契約手続きを行う。
時刻…01:30 オールド・アヴァロン合流地点
作戦領域のバロウズヒルから北の、オールド・アヴァロン。
依頼主に用意されたACガレージが、合流地点となっている。
今回の作戦は、レイヴン四名による共同戦線らしい。
自分以外の三名のレイヴンが到着するのを少々期待しつつ、待機。
――バラバラバラ、とヘリのローターが空気を切り裂く音と共に、三機のACが降り立つ。
三機のACがガレージへと入り、そして自分の視界にも入ってくる。
見覚えの有るACが、三機。それぞれが特化装備の二脚、四脚、フロート…
間違いない、『レイヴン三銃士』だ。
ACから降りた三名のレイヴンの一人が、先に待機していたプロウセイルを発見する。
「おい、こいつは…あの時のおっさんか?」
「その通り。またよろしくな。三銃士の諸君」
先に挨拶を済ませ、三人が集まった所で会話を続ける。
「三人、他にレイヴンが雇われてるとは聞いていたが、
まさかお前達とはな。腐れ縁の予感がしやがる」
「おっさんと腐れ縁かよ。出来る事なら美女との縁が欲しいんだが…」
「へへ、こないだは獲物ぜ~んぶ奪っちまったからな。今回はアテにしてるぜ?」
「汎用性に優れた機体が一機はないとな。お手並み拝見、ってとこですか」
三人それぞれから、軽口と挨拶が飛んで来る。
顔見知りである事と、彼等の軽いノリが、作戦前の緊張感を奪って行く。
リラックスし過ぎて、油断してしまいそうな位に。
作戦領域のバロウズヒルから北の、オールド・アヴァロン。
依頼主に用意されたACガレージが、合流地点となっている。
今回の作戦は、レイヴン四名による共同戦線らしい。
自分以外の三名のレイヴンが到着するのを少々期待しつつ、待機。
――バラバラバラ、とヘリのローターが空気を切り裂く音と共に、三機のACが降り立つ。
三機のACがガレージへと入り、そして自分の視界にも入ってくる。
見覚えの有るACが、三機。それぞれが特化装備の二脚、四脚、フロート…
間違いない、『レイヴン三銃士』だ。
ACから降りた三名のレイヴンの一人が、先に待機していたプロウセイルを発見する。
「おい、こいつは…あの時のおっさんか?」
「その通り。またよろしくな。三銃士の諸君」
先に挨拶を済ませ、三人が集まった所で会話を続ける。
「三人、他にレイヴンが雇われてるとは聞いていたが、
まさかお前達とはな。腐れ縁の予感がしやがる」
「おっさんと腐れ縁かよ。出来る事なら美女との縁が欲しいんだが…」
「へへ、こないだは獲物ぜ~んぶ奪っちまったからな。今回はアテにしてるぜ?」
「汎用性に優れた機体が一機はないとな。お手並み拝見、ってとこですか」
三人それぞれから、軽口と挨拶が飛んで来る。
顔見知りである事と、彼等の軽いノリが、作戦前の緊張感を奪って行く。
リラックスし過ぎて、油断してしまいそうな位に。
時刻…02:45 作戦開始まで、あと15分。
敵生体兵器は対空性能が強化されており、
輸送ヘリの類は射程内に入った瞬間に攻撃される。
その為、移動はACで行う。
四機のACが、作戦領域のバロウズヒルへと進む。
「…今回の作戦、相手は生体兵器らしい。
お前さん達、生体反応センサーは装備しているか?」
今回の攻撃目標は生体兵器である。
ACの機能次第ではレーダーや、火気管制が正確に機能しない。
その為、バイオセンサーが必須装備となる。
「モチのロンってね。おっさ…プロジェクター」
「おっさん、でいいって言ったろ?」
堅苦しいのは好きではない。
それに、彼等の様な若者からは、そう呼ばれる方が気が楽だ。
「おっさんは知らねぇだろうけどさ、
今回の依頼は、元々俺達だけの仕事だったんだよ」
先頭を進む四脚AC…ガンナー2からも通信が入る。
「けど、依頼主が戦力的に不安だ、って言うもんでね。
一人追加する事になったのさ。それがおっさんだとは知らなかったけどな」
彼等の実力はこの目で一度見ている。相当な物だった。
その彼等だけでは戦力的に不安だと言うのだ。余程の戦力が待っている…
そう判断し、シートに座り直し、安全用のベルトをしっかりと締め直す。
ヤマが大きいと判断した時の、一種の儀式だ。
敵生体兵器は対空性能が強化されており、
輸送ヘリの類は射程内に入った瞬間に攻撃される。
その為、移動はACで行う。
四機のACが、作戦領域のバロウズヒルへと進む。
「…今回の作戦、相手は生体兵器らしい。
お前さん達、生体反応センサーは装備しているか?」
今回の攻撃目標は生体兵器である。
ACの機能次第ではレーダーや、火気管制が正確に機能しない。
その為、バイオセンサーが必須装備となる。
「モチのロンってね。おっさ…プロジェクター」
「おっさん、でいいって言ったろ?」
堅苦しいのは好きではない。
それに、彼等の様な若者からは、そう呼ばれる方が気が楽だ。
「おっさんは知らねぇだろうけどさ、
今回の依頼は、元々俺達だけの仕事だったんだよ」
先頭を進む四脚AC…ガンナー2からも通信が入る。
「けど、依頼主が戦力的に不安だ、って言うもんでね。
一人追加する事になったのさ。それがおっさんだとは知らなかったけどな」
彼等の実力はこの目で一度見ている。相当な物だった。
その彼等だけでは戦力的に不安だと言うのだ。余程の戦力が待っている…
そう判断し、シートに座り直し、安全用のベルトをしっかりと締め直す。
ヤマが大きいと判断した時の、一種の儀式だ。
時刻…02:00 「D-F作戦」前線基地
青と黄色で塗装されたACの足元で、数人が騒いでいる。
…実際は一人のパイロットらしい男が、白衣を着た数人相手に喚いているだけではあるが。
「俺が主役じゃないなんて聞いてないぞ!
作戦は二機のACだけでアレを護衛しろだって?
冗談じゃない!俺一人で十分だって言った筈だ!」
バタバタと全身で怒りを表す男に、困惑した表情でなだめる白衣。
数人がかりで説得され、叱られた子供が部屋に閉じこもる様にACへと乗り込むパイロット。
「…感情制御がまるで出来てないじゃないか。
作戦の為にプラスを用意すると言っていたが、使い物になるのか?」
その様子をモニターで見ていた男が呟く。
隣で端末を操作している男が、操作を止めずに口を挟む。
「二人って話だ。一人は3、もう一人は5、らしい。あいつは3の方なんだろ」
「おい!聞こえたぞ!誰が3だって?
俺はあの『F・R』の後継者なんだぞ!俺の方が上に決まってるだろ!」
ACの外部スピーカーから、施設全域に響き渡る程大音量の反論が飛んでくる。
施設の一室から、ACのコクピットに普通なら聞こえる筈は無い。
しかし、彼は普通の人間では…無い。聴覚は常人の物とはかけ離れている。
「…確かにプラスではあるらしいな」
青と黄色で塗装されたACの足元で、数人が騒いでいる。
…実際は一人のパイロットらしい男が、白衣を着た数人相手に喚いているだけではあるが。
「俺が主役じゃないなんて聞いてないぞ!
作戦は二機のACだけでアレを護衛しろだって?
冗談じゃない!俺一人で十分だって言った筈だ!」
バタバタと全身で怒りを表す男に、困惑した表情でなだめる白衣。
数人がかりで説得され、叱られた子供が部屋に閉じこもる様にACへと乗り込むパイロット。
「…感情制御がまるで出来てないじゃないか。
作戦の為にプラスを用意すると言っていたが、使い物になるのか?」
その様子をモニターで見ていた男が呟く。
隣で端末を操作している男が、操作を止めずに口を挟む。
「二人って話だ。一人は3、もう一人は5、らしい。あいつは3の方なんだろ」
「おい!聞こえたぞ!誰が3だって?
俺はあの『F・R』の後継者なんだぞ!俺の方が上に決まってるだろ!」
ACの外部スピーカーから、施設全域に響き渡る程大音量の反論が飛んでくる。
施設の一室から、ACのコクピットに普通なら聞こえる筈は無い。
しかし、彼は普通の人間では…無い。聴覚は常人の物とはかけ離れている。
「…確かにプラスではあるらしいな」
時刻…02:20 「D-F作戦」前線基地
「来ました。二人目です」
輸送ヘリから黒いACが投下される。
誘導に従い、簡易ガレージへとACを向かわせる
ACから降りた男が、作戦司令室へと向かう。
「ご苦労。今回の作戦は、実質AC二機のみで行うと言っていい」
『D-F作戦』の司令官がレイヴンを迎える。
護衛対象の都合と、予算の関係からMTの類は出撃させない事になっている
「…足手まといは必要無い」
黒いACのレイヴンが冷たく言い放つ。
「何故、俺一人ではないのだ?あの『スペア』が何故ここに居る?」
――スペア…そう呼ばれたのは、あの青と黄色のACイーヒィーゲ。
「プラスは、同じ事を揃って言うのだな…
ビーアウトも同じ事を言っていたよ。自分だけで十分だと。
彼は、『スペア』にすぎん。好きに使えばいい」
司令官はそう言うと、これ以上話すことは無い、と言わんばかりに背を向けた。
「…了解した」
「来ました。二人目です」
輸送ヘリから黒いACが投下される。
誘導に従い、簡易ガレージへとACを向かわせる
ACから降りた男が、作戦司令室へと向かう。
「ご苦労。今回の作戦は、実質AC二機のみで行うと言っていい」
『D-F作戦』の司令官がレイヴンを迎える。
護衛対象の都合と、予算の関係からMTの類は出撃させない事になっている
「…足手まといは必要無い」
黒いACのレイヴンが冷たく言い放つ。
「何故、俺一人ではないのだ?あの『スペア』が何故ここに居る?」
――スペア…そう呼ばれたのは、あの青と黄色のACイーヒィーゲ。
「プラスは、同じ事を揃って言うのだな…
ビーアウトも同じ事を言っていたよ。自分だけで十分だと。
彼は、『スペア』にすぎん。好きに使えばいい」
司令官はそう言うと、これ以上話すことは無い、と言わんばかりに背を向けた。
「…了解した」
20分後、黒いAC「アントリオン」が基地より発進。先行する。
そのさらに10分後、青と黄色のAC「イーヒィーゲ」も出撃した。
そのさらに10分後、青と黄色のAC「イーヒィーゲ」も出撃した。