「アマギャル★84~」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
アマギャル★84~ - (2010/05/08 (土) 19:34:12) のソース
★その84 『案の定、MNAからの抗議は却下されてしまいました。 これで両陣営共に1勝1敗です。』 『面白くなってきましたね。』 『はい。ですが先程の試合はショッキングでした。あれが気絶したフリだったとすると 試合前のパフォーマンスも相手を油断させる為の演出だったのでしょうか?』 『そこまで考えていたなら、神威選手の方が一枚上手だったという事になります。 単純な戦闘力ではライオンハート選手の方が優れていましたが それだけで勝敗が決まる訳ではありません。戦場と同じですね。』 『手段を選ばない勝利への執念!最近の学生は凄い!わたしも見習いたいと思います。』 『まあ、かなりのギャンブルでしたが。』 『と、仰いますと?』 『相手が気絶したフリに気付いてくれなかった場合や 気付いても攻撃を止めないという事態も十分考えられます。 私なら自分の勝利が確定するまで、絶対に攻撃の手を休めたりしませんね。』 確かにそうだな。無抵抗のまま一方的にボコられて終了も有り得る。 「なあ神威、あの作戦に自信あったのか?」 俺はしてやったり顔でご機嫌な神威に訊かずにはいられなかった。 「勿の論なんだぜ、ヒャッハ~!」 妙に自信あり気な返答が返ってきた。 「そりゃまたどうして?」 「騎士様は正々堂々がお好きだって、ワイズリポートに書いてあっただろ? 俺様はピーンときたのよ。こいつは優秀だが甘ちゃん! 絶対に引っ掛かるってな、ヒャッハ~!」 賭けは賭けでも、それなりに公算があったわけだ。 「それにライオンちゃんと俺様の相性がよくなかったんだぜ? 普通にやったって負けが見えてるなら 試さなきゃ損ってモンよ、ヒャッハー!」 う~む、普通は思い付いても実行するのを自尊心が邪魔しそうだが… 神威は勝てば官軍って感じだしな。世間の風評や批判も全く気にしないだろう。 完全に負けそうだったんだ。そう、失敗してもこいつが失う物は何も無い。 大胆且つ合理的。驚いたな…意外と考えていやがる。 更に勝利の副産物として、俺たちのお通夜ムードを一変させた。 貴様にはプライドが無いのか!と、ジナは神威を責めている。 ジノーヴィー先輩が瞬殺されたショックから回復したようだ。 神威が回復させた?これも狙った…のか… 「勝ったからいいじゃねーか、ヒャッハー!」 自分に非難を集中させて、悪い流れを絶つ。 いやいやいやいや、そこまで出来る男じゃないだろ?偶々だよな… 「そろそろエクレールの試合が始まるんだぜ?応援しようぜ、ヒャッハー!」 まさかな… 『今大会も折り返し地点まで来てしまいました、中堅戦です。』 『早いものですね。』 『さあステージ上の2機のアセンを確認しておきましょう。 エクレール選手のラファールは武器腕ブレードに、ロケット、ステルスという 極端な組み合わせ。脚部はブレードを活かす為の軽二です。 そういえばアンプさんのACも彼女と同じでエクレールという名前でしたよね?』 『はい、フランス語で稲妻という意味です。 その名に恥じぬ活躍をしてもらいたいものですね。期待しましょう。』 『対するのはポーコ・ア・ポーコ選手のクロチェット。フロートタイプの脚部に マシンガン、ENシールド、背中にロケット、肩に追加装甲 格納に小型マシンガンを隠しています。』 『機動力と防御力の両方に重点が置かれた、良いアセンですね。』 『アンプさんはこの試合をどう見ますか?』 『奇しくも剣対盾ですからね。なかなか興味深い。 自機の特性を活かした方が、より勝利に近づく事になるでしょう。』 『なりほど。さあ、中堅戦が始まります。』 ピィ ピィ ピィ ビィーーーーーーーーー! 『両者、様子を見ながら動き回る!!』 ラファールは低いジャンプを繰り返しながら軽快に、クロチェットは滑るように。 時折、エクレールさんがブレード光波とロケットで牽制を仕掛けるが、躱される。 ポコポコもロケットを撃ち返すが、当たらない。お互いに射程外だ。 『エクレール選手が徐々に間合いを詰めているように見えます。』 『彼女が仕掛けますよ。』 この解説は預言者か?次の瞬間にラファールがステルスを展開して飛び込んだ。 『これはまさしく稲妻だあーーーーーーーー!』 さっきまでの軽快なステップとは違った鋭い突っ込み。しかも彼女のは一味違う。 どういう風に違うのかと言うと、俺みたいに正面から突っ込むだけじゃない。 OBを短く使って、予想もしない所から飛んでくる。 OBをQBのように使って、様々な角度から斬りかかって来るんだ。 エクレールさんにブレードの猛特訓をしてもらった俺が一番よく知っている。 初めて彼女と立ち合った時は驚いたよ。気付いた時には斬られているんだから。 『クロチェット、危なーーーい!』 ポコポコもさぞ驚いている事だろう。 間合いを詰められ、いきなり敵機が自機の右隣にワープしたように感じた筈だ。 エクレールさんの動き対応出来ていない。 ラファールの斬撃がクロチェットを襲った。 ズザァァァン おし~い! 吹き飛んだのはクロチェットの右肩にある追加装甲だけだった。 恐らく敵の主なダメージソース―――マシンガンを持つ右腕を狙ったのだろう。 あれさえ無くなればクロチェットの火力は恐ろしく下がるからな。 ポコポコは完全に意表を突かれていた。 防いだと言うより、偶然そうなったって感じだ。運のいい奴め。 『ポーコ選手、慌ててマシンガンを撃ちまくります!』 ステルスが効いているとはいえ、近すぎる。 マシンガンを数発貰うとエクレールさんは一気に後退した。 ラファールは紙装甲だからな、見事な引き際。 『クロチェットは………追撃できない!それどころか後退し始めました。 逃げ腰のように見えます。』 よしッ!完全にエクレールさんのペースだ。 『果たして本当にそうでしょうか?よく見てください。』 んん?クロチェットは壁際にまで後退して、これって… 『防御の構えでしょうか?壁を背にしてENシールドを展開しています。 これで後ろから来られる心配は無いですね。』 『後方だけではありません。彼が陣取っている場所をもっとよく見てください。』 『”角”ですね。』 『はい、アヴァロンアリーナは八角形の円柱に近い構造をしています。 角度は浅いですがステージの外周には角があるんですよ。』 『ということは…左右もある程度は壁が守ってくれる?』 『ええ、正面は自前のENシールドがありますし、これは厄介ですよ。』 攻められる角度を減らして引き篭もりか、相手も考えたな。 ラファールの武装は主力のデュアルブレードと牽制用の小型ロケットだけ… クソッ…イヤらしい戦法だが、上手い。 『エクレール選手、これは攻め辛い。距離を離してロケットと光波攻撃に切り替えた。 ポーコ選手はシールドを構えたまま、我慢しています。』 『あまり大きく動くと、角から離れて地の利が薄くなってしまいますからね。 多少のダメージ覚悟で、回避動作を最小限に抑えているのでしょう。』 じれったい攻防が長時間続き、とうとうエクレールさんのロケットが弾切れを起こした。 パシュンという乾いたパージ音が響く。クロチェットは今だ健在。 『アンプさん、エクレール選手は仕掛けるでしょうか?』 『仕掛けざるを得ないでしょうね。』 『遠距離からブレード光波で延々と攻撃するという手もあるのでは?』 『パイロットが生身という事を忘れていませんか? じっとシールドを構えながら攻撃しているポーコ選手と 飛び回って避けながら攻撃しているエクレール選手では疲労の度合いが違います。』 『言われてみると、ラファールの動きが少し鈍くなってきたような。 動きに切れが無くなってきましたか?ちょこちょこ被弾していますね。』 『彼女、相当疲れていますよ。』 頑張ってくれ、エクレールさん… 『ラファールが再びステルスを使ったぁ!これは突っ込むぞー!』 最後の力を振り絞った突撃。エクレールさんが勝負に出た。 『ジグザグな軌道を描きながらアタックをかける姿はまさしく稲妻!』 それを必死で潰そうとするポコポコ。 ラファールの勢いを殺そうと迎撃する。 ノーロックが前提のロケット。 まるでこっちがステルスを使う事を知っていたかのような。 本当に相性最悪だ! 正面から向かってくる目標に対しては、どんな攻撃もかなり当てやすい。 ロケットがラファールを捉えた―――――かのように見えた。 『これはッ!!!』 『おおおッ!』 実況も解説も舌を巻く。 ラファールは向かってくる砲弾をブレードで”斬り捨てた”。 あまりにも信じがたい光景。こんなの見たことも聞いた事も無い。 これが…本気のエクレールさん。 デュアルブレードは読んで字の如く2つのブレード。 リロード無しでの2連撃が可能だ。 2撃目の斬撃がクロチェット本体を襲う。 ブレードとシールドがぶつかり合いスパークした。 やはり防がれてしまったか。 だが、相手も相当キテる筈。盾を持つ左腕が煙を上げている。 もう一押しだ。 『ラファールが仕切り直す為に再び間合いを離す!』 『いえ、これはENシールドに弾き飛ばされたんですよ。動きが不自然でしょう?』 ブレードとENシールドがぶつかるとブレード側が弾き飛ばされるのか!? ふらついた所にマシンガンの雨が降り注ぐ、被弾は免れない。 エクレールさんはこうなる事が分かっていて、攻めあぐねていたんだ。 『被弾しながらも後退を続けるラファール!クロチェットが角から出てきたぁ! 追撃するつもりだーーー!』 『こちらも限界が近かったのでしょう。』 『シールドをパージしたぁ!中から小型のマシンガンが姿を現すぅ!』 『ダブルトリガーで一気に勝負をかけるつもりですね。』 もう盾は無い。一旦は下がったラファールが残りのENを振り絞って再び前に出る。 それを確認したクロチェットはマシンガンをばら撒きながら全速後退。 突っ込め、エクレール。後一歩、後一歩だ! いけぇぇぇぇぇ! 銃弾を浴び続けながらもエクレールさんの斬撃が届いた! ビィーーーーーーーーー! 2機とも煙を上げて停止したぞ… 際どい…際どすぎてどっちが勝ったのか分からない。 『勝ったのは………』 どっちだ? 『ポーコ・ア・ポーコ選手!クロチェットは僅かにAPが残っています! 勝ったのはクロチェットのポーコ・ア・ポーコ選手だぁ!』 あああああ…そんな… 『接戦も接戦、手に汗握る攻防でしたね、アンプさん。』 『ポーコ選手の地の利を活かした戦法や最後の駆け引き エクレール選手の学生とは思えない技量。素晴らしい―――』 「あっ…あああ…エクレールさんが…負けた…」 2敗したという事は… 「槍杉選手、搭乗準備お願いします。」 俺が負けると… 「槍杉選手?どうしました?」 チームの負けが確定…