- ある生存者の手記
ルビコンに降り立ったベイラムは事実上の壊滅となった。ミシガン総長亡き後では組織としての体面すら保てない。
私が生き残ったのは一重に幸運であったからに他ならない。
私が生き残ったのは一重に幸運であったからに他ならない。
あれはアーキバスの連中を追っている途中のことだった。
降下部隊が作戦行動を開始すると一機のACが待ち受けていた。ケネベッタが舐めた真似しやがってと毒づいたが、自分もそれに頷くが、すぐさまミシガン総長から認識を改めろと喝を入れられた。無言で頷いたのが功を奏した。
オールバニーも過小評価を下したがそれもすぐさま喝を入れられる。曰く、かの傭兵は我々の100倍強いG5イグアスの20倍強いとのこと。なるほど2万倍かと思ったが2000倍だったようだ。計算してた奴は無駄口を叩くなと喝を入れられていた。またしても黙っていて正解だった。
状況は既に第三班まで壊滅に追い込まれ、ライガーテイルの随伴機として抜擢された自分の出番も近い。
ポトマックがライガーテイルの調整を終わらせ、ついに出撃となる。総長は自殺の予定が有る者だけついて来いと言った。なるほど眼下に広がる地獄絵図を見れば総長の評価がその通りであるなと認識させられる。これは帰れんな。素直にそう思った。
程なくしてオオサワの奴が撃墜された。しかし脱出レバーを引けたようで命はあるようだ。少し安堵をした時、アイツ、G13が既に眼前へと迫っていた。速すぎる。余りにも理不尽と言える機動力であった。普段見ていたレッドガンの奴らがまるで止まって見えるのじゃないかと思わざるを得ない。
浴びせられる銃弾の雨は瞬く間にMTを機能停止へと追いやった。間一髪脱出レバーを引きこそはしたが、大きく傷を負った。総長とG13の戦いを見届けなければならないというぎむかんだけで意識を保っていたが、総長が撃墜された時に気を失ってしまい、目覚めた時には救護室って訳だ。
治療をうけている最中、G6レッドがドアを蹴破るのではないかという勢いで入ってきた。
剣幕な様子で彼は何があったと聞いてきた。
「ミシガン総長は転んで死にました」そう答えると右の頬を強く殴られた。だが分かってはいるのだ。直衛の我々が不甲斐なかったのだ。G6レッドの怒りは受け入れるしかない。
「ミシガン総長は転んで死にました」そう答えると右の頬を強く殴られた。だが分かってはいるのだ。直衛の我々が不甲斐なかったのだ。G6レッドの怒りは受け入れるしかない。
しかし彼は少しの間を起き何かに気付いた様子をして「なぐってすまなかった」と部屋を後にしていった。止める言葉は出なかった。彼はそれだけ総長に心酔していたのは周知のこと。
願わくば無事でいてほしいが、恐らくは難しいことだろう。
私はこの手記を本星に戻る帰路でしたためている。もうどれがルビコンか分からない程の距離を移動している。
ルビコンでの経験は地獄と呼ぶに相応しい物だった。失ってものは余りに大きく、そのツケはどれほどの物になるか想像も出来ない。それでも自分の中にしかと得た物もある。それはきっとこれからも、消えることなく自己を燃やす燃料となるものだろう。
あの遠くに見える、赤く輝く星のように。