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EPILOGUE(PROLOGUE) - (2011/06/06 (月) 00:32:44) のソース
EPILOGUE(PROLOGUE) ◇ _____________________ From アライアンス本部 To 阿部 マリア Subject バーテックス壊滅のために Received 05:45 _____________________ バーテックスの襲撃予告まで残り24時間。 不本意ですが、現在の戦局は 五分と言ったところでしょう。 しかし、物量において比ぶべくもない彼らが、 所詮私たちに勝てるはずもありません。 敵戦力の核は、あなた方と同じレイヴン、 それさえ潰せば、勝利は私たちのものです。 報酬はこれまで以上のものを約束しましょう。 奮起を期待します。 _____________________ _____________________ From バーテックス To 阿部 マリア Subject アライアンス打倒 Received 06:03 _____________________ 03:50、我々バーテックスは、 ディルガン流通管理局を占拠した。 この作戦の成功は、明日に控えた計画実現の 大きな足がかりとなるだろう。 レイヴン諸君に告ぐ。 同じレイヴンなら、我々の力がわかるはずだ。 協力を拒む者は、残念だが消えてもらう。 猶予はあとわずかしかない。 選ぶのは、君たち自身だ。 _____________________ 2通のメールを見比べながら、男は缶コーヒーを口元に持っていった。 「面白くなりそうだ」 物量に頼るアライアンスと少数精鋭による奇襲を主とするバーテックス。 決め手を欠く双方の戦力はほぼ互角。男は互いの陣営に属する レイヴン同士の優劣が、そのまま勝敗に結びつくと考えている。 男の考えを裏付けるようにアライアンスとバーテックスは 自らの敵方に回ったレイヴンに多額の懸賞金をかけ合った。 依頼報酬+懸賞金。生き残ったレイヴンはたったの22人。 これほどオイシイ展開にはなかなか巡り合うことができない。 「しっかり稼いでくれよ、レイヴン」 男は企業のニーズに応え、情報の販売をして生計を立てていたが 特攻兵器の襲来を機に依頼が激減。今は2通のメールの受け取り主と 個人契約を結び、レイヴン専属のリサーチャーをしている。 名前はエド・ワイズ。 ◇ 《マリア、通信ですよ》 「誰から?」 《シーラさんです》 「繋いで」 『探したわよ、レイヴン。もうコックピットの中にいたのね』 「何か問題でもあったの?」 『お父様から電話よ。後ろで音がしてるけど、今何かしているの?』 「ああ、うん、ちょっと遊んでるだけ。電話はこっちに回して」 『了解よ』 「ハーイ、パパ! お久しぶり~」 『元気そうだな、マリア。後ろが妙に騒がしくないか?』 「ノイズ入ってる? 通信状態が悪いのかも」 『そうか』 「何か用? あたし今、すっごく忙しいんだけど」 『お前、アライアンスとバーテックスの戦争に参加するつもりじゃないだろうな?』 「それを見越してシェリー伯母さんを送り付けてきたんでしょ?」 『まあ、な……。バケツ頭の言うことをちゃんと聞くんだぞ?』 「善処するわ」 『勘弁しろよ、お前がレイヴンになってから母さんのストレスがヤバいんだぞ?』 「ママは心配性なのよ。可愛い子には旅をさせろって言うじゃない」 『娘がACを乗り回して戦争するのを喜ぶ母親はいないだろ』 「でもパパはあたしの味方でしょ? 上手くフォローしてよ」 『お前がレイヴンなんかするのは俺も反対だ』 「パパも昔はやってたくせに」 『あれは死んだじいちゃんが借金をだな――』 「借金が無くなった後も続けてたの知ってるんだから」 『なぜ、知っている……?』 「ふっふっふっ、口は悪いけど優秀なリサーチャーがうちにはいるのです」 『…………いいか、絶対に無茶はするなよ?』 「もちろん!」 『キリのいいところで引き上げるんだぞ?』 「りょ~か~い!」 『お前は言い出したら聞かないからな……』 「へへへっ」 『まったく……母さんの方は俺がなんとかしといてやる』 「パパ、愛してる。ママにも伝えて」 『調子のいい娘だ………………死ぬなよ』 通信が終わるのと同時に“VRアリーナでの決着もついた”。 少女が父親と話しながら、片手間で倒したのはVRアリーナの21th クロウプレデター。総合性能の高い中量二脚型ACで 『カラスの捕食者』の名に相応しい強敵であった筈だが―― 「ちょろいちょろい」 《強いとは聞いてましたけど、これは……》 「この程度の相手ならウォーミングアップの前のストレッチって感じかな」 両親から遺伝情報のいいところばかりを受け継いだ少女の能力は、正に異常だった。 《これは草葉の陰で庵野 雲が喜んでいるかもしれません》 「アンノウン? 特攻兵器のこと?」 《あなたが生まれるきっかけを作った人ですよ》 「パパたちの仲人かなにか?」 《少し違いますね。2人にお互いの存在を再認識させるきっかけを作った人です》 「ふ~ん」 《その時のことを話してあげましょうか?》 「パ~ス、それよりもVRアリーナでもうちょっと稼いでおきたいの」 《まだやるんですか? 出撃前ですよ?》 「今日は長丁場になりそうだし、まずは弾薬費をたっぷり確保しておかないと!」 《レージとの約束を守る気が全くありませんね、この娘は……》 「パパたちに黙っててくれたら、シェリー伯母さんの研究に資金援助するのも やぶさかでない、と提案してみる。あたしの取り分の10%で手を打たない?」 《姪っ子に買収されてしまうほど、私は落ちぶれていませんよ?》 「20%あげちゃおうかな~」 《NOです!》 「じゃあ、30%でどう?」 《……NOです》 「もってけ泥棒、50%でどうだ!!」 《ノッ、ノノッ、ノッ――》 「はい、交渉成立ね!」 イレギュラーを否定した阿部 玲司の娘がとびきりのイレギュラーとは なんとも皮肉なものですね。あなたもそう思いませんか? でも、イレギュラーという言葉の意味を考えてみると納得かもしれません。 あの子は聖母への祈りを込めた歌曲と同じ名前を授けられながらも 優しい歌曲とは正反対の『暴れん坊娘』に成長してしまいましたしね。 恐るべきイレギュラー因子、といったところでしょう。 ここから先の24時間に渡る彼女の戦いは―― -That's another story! Go to LAST RAVEN-