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  • アイラSS 第九回

vipac @Wiki

アイラSS 第九回

最終更新:2020年06月22日 01:47

匿名ユーザー

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 時刻はその晩。三日月が地平に沈み、森が闇に塗り替えられた頃合いに移る。

 

 人工物の排された世界では、唯一の光源である月が失われると視界は完全に奪われ、存在は無と同義に化す。

 

 アイラは予定通りフリーダムトルーパーズの二人と別行動を取り、熱帯雨林の中枢を担う巨大河川に沿って東へと歩みを進めていた。ジオ・マトリクスの包囲網は市街のある西よりも平野へと繋がる東一帯に厚く展開しており、彼らをどれだけ多く、どれだけ長く引きつけるかがこのミッションの肝となる。

 

 アニーとサムはレーダー射程のはるか遠くにあるが、アリスから随時報告を受けてその位置は把握していた。彼らが敵の戦線に触れる直前に、アイラは敵陣へと躍り出る手筈だ。

 

 所定の位置に着いたのはアイラが先になったので、そのまま待機となる。ACのヘッドパーツに暗視スコープを取り付けなければ何も見えない自然の要塞にて、しかも敵に包囲されている。アイラにとっては、むしろ心地よい戦意の高揚を覚える環境だが、他の二人は正気を保つのに精一杯のプレッシャーを感じていることだろう。おそらく地球の誰よりも大きく人生の割合を訓練に注ぎこんでいる彼女に比べて、二人の精神はあまりに凡人のそれに近い。

 

「ネクスト、イザーワン、共に予定通り進行中だ」

 

 だから二人の動向に関しては一時の油断もならない。彼らが不安に負けて偵察の一機でも撃ち落そうものなら、作戦は無駄になる。そのための措置も用意してはいるものの、ミッションが本格化する前に切り札を使うようでは、成功の可能性は低いというものだ。

 

「敵の動きは?」

 

「作戦領域の東一帯に集まってきている。良い按配だよ」

 

 アイラは誘導を確実なものとするために、システムを起動させたまま行動して敵に自分の存在をアピールしている。囮としては少々あからさまではあるが、だからと言ってジオ社も戦力を割かないわけにはいかないだろう。雇ったレイヴンが一人ならば必ず差し向けるし、二人でも戦力は半減することになる。いずれにしてもアイラが撃破するには、またアニーとサムが持ち堪えるには、それで十分と言える。

 

 このまま何事もなく事が運べば、戦闘は十五分後に訪れる。アイラにとっては丁度良い休息の時間である。そのため疑われることはないだろうが、変に勘ぐられると面倒と彼女は思い、

 

「じゃあ、ちょっと休むわ。システムは起こしておくから、何かあったら繋いで」

 

 と、いつもの気紛れに粉飾して、勝手に回線を切ってしまった。悪癖をも利用するふてぶてしさは、アイラ・ルークスカイの本領である。

 

 続いてアイラはACのシステムを『スカイウォーカー』と繋ぐ。虚ろな空間の先で待つのは、もちろん端末の持ち主たるフェイだ。彼はアイラの指示通り、スカイウォーカーを開いたまま個室で待機していた。

 

「お待たせ、昨日の結果を聞かせてよ」

 

「わかった。今送るからちょっと待ってくれ」

 

 相も変らぬ素っ気無い態度を咎めようともせず、フェイは手に入れたデータをACに送ろうとするが、

 

「簡単なことだから口頭で良いって。あんまり時間ないし、ちゃっちゃと答えて」

 

 と、アイラはそれを制止した。

 

 それから一拍の間を置いたのは彼女なりの配慮だったのか。以後の質疑応答は迷う暇を一切与えない熾烈な応酬となった。そのためフェイは自分の発した答えがどんな意味を持つのか考える余裕もなかったが、その内容を以下に記すので、目にする者は彼女の意に挑戦するのも良いだろう。

 

 

・

 

・

 

・

 

「二機のヘッドパーツにレーダーはついている?」

 

「いや、どっちも装備していない」

 

「ブレードは持っている?」

 

「ネクスト、逆関節の方だな、そっちは武器腕だから関係ない。タンクのイザーワンはエムロードのブレードを使っている」

 

「ラジエータはどんなものを?」

 

「ネクストはバレーナ製品、高性能らしいな。イザーワンはコンコードから支給される汎用品だ」

 

「ネクストだけでいい、肩の装備を教えて」

 

「左肩に中型のミサイルポッド、右は空だ」

 

「ジェネレータはどう?」

 

「ラジエータと同じだ。ネクストは高性能で、イザーワンは汎用製品を載せている」

 

「これは念のためだけど、イザーワンの武装を詳細にお願い」

 

「さっきも言ったが、左腕はエムロードのブレード。右腕はマシンガンになっている」

 

「そのマシンガンは実弾? エネルギー弾?」

 

「エネルギー弾だな。これはジオ社製だ」

 

「イザーワンの肩には何を?」

 

「左肩は大型レーザーキャノン、右肩にはパルスキャノン」

 

・

 

・

 

・

 

 

「オッケー、大体わかった」

 

 無数の質問の後にアイラは何事もなかったようにそう言って答弁を終えた。

 

 怒涛のチェックが終わり、フェイは息を大きく吐いた。頭を全速力で回転させながら答えたので、自分が何を口にしたのか半分覚えておらず、

 

「問題なかったか?」

 

 と、不安を口にするも、

 

「十分。良い仕事するじゃん」

 

 奇跡的とも言えるお褒めの言葉を頂いたので危うく有頂天になりかけ、そこで我に帰って気を引き締める。躁鬱激しく情緒不安定なことこの上ないが、これが瞬間的な頭脳労働による後遺症だとしたら、それを日常的に行うアイラの精神構造はどうなっているのか、恐ろしくも思えた。

 

 アイラは情報を整理しているのか口を閉ざしたままで、回線は繋がったままなので沈黙が二人の間におりていた。フェイは間が持たないので何か話そうとも考えるが、何しろミッション中、戦闘間近という緊迫して然るべき状況である。作戦に支障をきたすことを思うと、下手なことを口には出来なかった。

 

 あれこれと悩んだ挙句、最終的に彼が選んだのは、

 

「もう、いいか?」

 

 と言う愛想のない一言であった。彼自身も口にしてから後悔したが、アイラはやはり当たり前のように肯定して、回線を切りミッションに戻ろうとする。

 

 その間際である。

 

「ありがとフェイ、助かった」

 

 アイラ・ルークスカイは感謝の言葉と共に、初めて彼の名前を呼んだ。それは前日同様に形式的でありながら、同時に決定的に異なる確かな謝辞であった。

 

 もっとも、それでのぼせ上がるほど彼は子供でもなければ楽天的でもない。ただ、相手がおおよそ人間として育てられなかったアイラ・ルークスカイであれば、多少なりとも常識的な人間らしい態度を見せたことを喜んでこそ、また人間らしい態度というものだろう。

 

 回線が途切れ、黒い箱に戻ったスカイウォーカーを見つめながら、彼はそんなことを思った。

 

 

 フェイとの会話を終えたアイラは頭の中で状況を確認していた。彼は思っていたよりも優秀らしく、推理を立てるには十分過ぎる情報を集めてきてくれた。しかし、それはアイラにとって好ましい内容ではなく、最も面倒な、最悪の事態を示唆していた。

 

 いや最悪と言うには語弊がある。本当に最悪なのは、この事実をアリスに知られることだ。スカイウォーカーを他人に貸してまで彼を警戒したのは正解だったと言える。

 

「今ならまだ、普通にやれば終わる」

 

 アイラは結論を弾き出して一人呟いた。

 

 時刻を確認すると、休息に入ってから十二分が経過していた。ほとんど休む時間などなかったが、アリスを遠ざける方便に過ぎなかったのだから仕方ないだろう。

 

 短時間にリラックスしてから再び緊張を高めるのは神経に負担がかかる。このまま飛び出すのが正解と彼女は判断し、予定より二分ほど早くミッションをスタートさせた。

 

 月のない夜空に青い妖精が舞い上がり、戦闘の開始を敵に味方に宣言した。

 

 

「囮が戦闘を始めました。ネクスト、イザーワン両機はシステムを起動させ、そのままのペースで前進ください」

 

「了解」

 

 アリスの指示に、サムの分も含めてアニーが答えた。

 

 二人はそれぞれのACを半身まで川に浸しながら、市街のある西方向へ進行している。ACの回収には不向きなので敵の警戒が薄いと判断しての作戦で、それは的確なのだが、全くの無防備であるはずもなく、これ以上進めば索敵されかねない。安全圏を今、二人は抜けようとしていた。

 

「行こう、サム」

 

 アニーは自らのAC、ネクストを操縦しながらサムに呼びかけた。彼は人一倍繊細な神経の持ち主なので、時々こうして声を掛けてやらなければ不安で足が止まってしまう。

 

「う、うん」

 

 相棒の声に勇気付けられ、サムもまた身の保証がない領域へと踏み出した。

 

「敵は見える?」

 

 ここで二人のACについて説明を入れる。

 

「うん、大きいのが十機くらい。小さくて速いのがもっと」

 

 アニーのネクストは中量逆関節型に分類されるACで、数ヶ月前にシルフィと死闘を繰り広げたルーキーブレイカーと同じタイプの武器腕を備えている。

 

「MTが十機に戦闘機か。ACはどう?」

 

 弾薬の量に制限がかけられる分は肩のミサイルで補強し、空いた可能積載重量分を充実した内装で固めていた。

 

「それっぽいのはない。僕の見える範囲では、だけど」

 

 サムのイザーワンはタンク型のACだ。エネルギー弾を発射するマシンガンに、肩にはレーザーキャノン、そしてパルスライフルと抜群の破壊力を持った兵装となっている。

 

「私はサムほど見えないから信用するよ。とにかく、それなら私たちでも何とかなりそうだね」

 

 全てがエネルギー兵器なのでジェネレータへの負担は大きくブースターに回す出力など残されていないが、タンク型であることも含めて機動力を完全に捨て去り、引き換えとして火力に特化しているのだろう。

 

「大丈夫だと思うけど、もしACが出てきたら逃げるべきだと思う」

 

 あくまで弱気なサムだが、それを明らかな間違いと指摘することは出来ない。もしACが現れたならば、それは二人以上のレイヴンを相手にしようという凄腕なのだからこの二人が敵うはずもないし、包囲を狭められジリ貧な未来が待っているとしても、アイラと合流する手も残っている。

 

「この期に及んで根性のないこと言うんじゃないの。元々これは私たちの戦いなんだから、基本的に私たちだけで何とかしないと」

 

 しかしアニーは強気な姿勢を崩さない。彼女とて力量の不足はわきまえているので、それは激励に近い意味を持っていた。最初から誰かを頼っていては、自分より弱い相手にすら戦意をなくしてしまう。彼女が鼓舞するのはサムと、誰よりも自分自身である。

 

「それにさ。アイラ・ルークスカイを見たでしょ? あの娘、サムと歳ほとんど変わらないよ。負けられないとか思わない?」

 

 アニーはサムのプライドを刺激しているつもりだったが、彼としては回答に困るだけの無理難題に過ぎず、口をつぐんでしまった。あんなに高い空の向こうまで名を馳せる、トップレイヴンと歳が近いという理由だけで比べられては、酷に過ぎるというものだ。

 

 二人が無言になると、機体がじゃぶじゃぶと川の水を切る音がよく聞こえる。そして東より散発的に響いてくる爆音、アイラ・ルークスカイが戦っている音も。

 

 サムはこめかみに指を当てて、その感触を基点に意識を拡散させた。世界は黒い球で出来ている。表面には格子状に真っ白な線が引かれており、集中力の高低で間隔が変化する。呼吸を止めて緊張すれば密になり、それを解けば逆だ。以前に計測した限りでは格子の一区間はおよそ1kmに相当し、最大で20kmほどの遠くまで球を膨らませることができる。球の中には丸が点在している。特定の意味を持つ熱源が丸に相当し、現在それは東の一点に向かって集結しつつあった。

 

 だが一部の丸は西に留まり、つまりは自分を待ち構えている。真っ赤なソレと近いうちに接触することを考えると、背中の芯が冷えあがる思いがする。

 

「サム、来たよ」

 

 風を切る飛行音が、正常な五感である聴覚を刺激した。格子の球では、西にあった丸が急速に中心部へと近づきつつあった。

 

 

 数分後、アニーとサムを襲った戦闘機は戦力の大方を奪われていた。例え半人前でもACを相手に戦闘機だけでは順当な結果と言える。

 

 サムが見たというMTの攻撃が同時に来れば、また違う展開が待っていたのかもしれないが、川に半身を沈めたACは完全に周囲の木々で姿を隠されており、空中からの砲撃以外に彼らは攻める手段を持ち合わせていなかったのである。

 

「よっし、どんどん行くよ!」

 

 会心の戦果にアニーは意気を揚々とさせ、サムは胸を撫で下ろした。敵の第一波を防いだことで、森の出口までは進路を確保できたことになる。その先は身を隠せる木々がなくなる危険地帯であるが、エムロードと合流するポイントまでは10kmもなく、強引に突破できないこともない距離だろう。加えて、西の片をつけたアイラが駆けつけてくれれば磐石の態勢である。

 

 山を一つ越えて平野が見える場所まで到達したことをアニーが報告すると、アリスは待機を二人に命じた。体の半分を包んでいた川がなくなったので、ここから隠れるためにはACを伏せさせなければならない。それでは機動力に難があり非効率的なので、アイラを待つか、一気に駆け抜ける方が得策と言えた。

 

 つまり、今後の行動は西の戦況次第になる。

 

「向こうの様子はどう?」

 

 アニーは再びサムに問う。しかし彼の目は敵と味方を区別できるように出来ていない。動きから詳細を推し量ろうとして、突然激しい頭痛に見舞われたので中断した。

 

 断末魔にも近い苦痛の声にアニーもはっとして、自らの軽率な発言を恥じた。

 

「ごめん」

 

 様々な言葉が脳内を駆け巡るも、どれもそぐわない気がして、最後に残ったのは最も簡潔な単語だった。出来るならば駆け寄って、その不完全な心と共に体を抱きしめたいとも思ったが、鉄の鎧に身を固めていてはそれも適わない。

 

「大丈夫。普通にしてればすぐに戻るから、心配しないで」

 

 サムはそう言うが、息を切らした口調はスピーカー越しにも平気と思えなかった。

 

 実際のところ、サムの異常は一時的なもので数分もすれば元に戻る。しかし戦闘が長く続くほどに同じ事を繰り返す確率は高くなる。

 

 元来の積極的な性格に、これは自分たちの戦いだと一手に抱え込む強い責任感、そしてサムの身を案ずる不安が焦りを生んだのか、アニーは独断で戦線を抜けることを提示した。それは危険と引き換えに、成功すれば最も負担の軽い策となる。彼女にとっては戦火に焼かれることよりも、この緊張感に長く身を置きじわじわとサムが絞られていくことの方が耐えられなかった。

 

 サムは反対したかったが、それが自分の身を心配する故の提案とわかっていたので、口を挟むことが出来なかった。無言で肯定の意を伝えると、アニーもそれを受け取る。

 

「動けるようになったら言って。私が先行するからOBを使って追ってくるように。正面の敵は倒すけど、ほかは全部無視。あくまで包囲を破ることを優先、いい?」

 

 サムが断るはずもない。二人の技量と敵の戦力を冷静に比較すれば、命を賭けるには無謀としか言えない程度の可能性が弾き出されるにも関わらず。

 

 アイラの恐れていたのはまさにこの展開である。不安に負けた者は、そこに一種の正当性があるために、希望の薄い行動を自ら選択する。それは性格や意志の強弱で回避できるものではないのだ。人一倍強いと言ってよい精神力を備えているアニーが、その強い気持ち故にミスを犯すように。

 

 数分の後、アニーは合図を送るとブーストを点火させ、敵戦力が展開されている平野へと駆け出した。成功の見込みが絶望的というわけではない(だからこそ選択してしまうのだが)。あとはまさに、人事を尽くして天命を待つのみである。

 

 

 戦場は瞬く間に加熱した。敵襲を知らせるサイレンがけたたましく夜に響き渡り、MTの放つバズーカ弾が大地を砕く。あるいは流れ弾となって森を焼く。

 

 ネクストは進路を塞ぐMTにミサイルの一斉射撃を食らわせ、ひるんだところを後続のイザーワンがブレードで切り裂く。高出力のブレードの前に、ACより一回り大きいその機体も崩れ落ちた。

 

 ネクストはブーストの展開を抑え、歩行で進行を続ける。全速で移動すると機動性の低いイザーワンはついて来られなくなるのである。飛び出す前にはOBで差を埋めるよう指示したが、エネルギー兵器を主体とするイザーワンにとってジェネレータ容量は死活問題だ。仮にオーバーヒートを起こせば、全兵装が使えなくなり無防備な姿を敵に晒すことになってしまう。

 

 そのため進行速度はタンク型ACのそれに準じた鈍足となった。時間をかけるだけ不利になる状況で、手痛い判断ミスと言える。追撃を振り切れないので、堅実に周辺の敵を払いながら進むことになった。堅実に進むことしかできなかった。

 

 これがいかに絶望的な窮地に立たされているということなのか、二人はまだ気付いていない。むしろ順調とすら捉えている節が見られた。

 

 そもそもAC二機はフリーダムトルーパーズとして既知の戦力である。当然、迎え撃つ側は最低限これを打倒できるだけの軍勢を整えていなければならず、そしてMTや戦闘機は明らかにその条件をそぐわない。つまりジオ社にはまだ残存戦力が隠されており、それが明るみに出ていない今、五分の戦況では確実に不足なのである。

 

 十数機目の戦闘機をネクストのマシンガンが落とすと、ジオ社の兵は突然二機から距離を取り始めた。津波の直前には一時的に潮が水平線の奥まで引いていくという。砲撃が止んでほっとしたのも束の間、二人の胸中は得体の知れない不安で満たされていた。

 

 戦場に一瞬の沈黙が走る。それを切り裂いたのは、西、敵の本拠地がある方向より飛来したヘリのプロペラ音だった。

 

 ヘリは全長10mを超える巨大なもので、装甲板の貼られていない輸送用だった。戦闘真っ只中の戦線に送り込まれる巨大な輸送物となれば、中身はおのずと知れてくる。しかしそうなると、脇を固める三機の小型ヘリの存在が気にかかった。兵器が詰まっているわけではなさそうだし、AC換装用の兵装を載せているとしても、今にも撃ち落されかねない距離まで接近するのは不自然だ。

 

 巨大ヘリの横っ腹にあるハッチが開いた。予想通り、中から現れたのはACだ。おそらくこれが今回ジオ社の雇ったレイヴンだろう。

 

 ここまでは予測の範疇だ。アニーは歯軋りしながらも迎え撃つ準備に入るし、サムも動悸を抑えて覚悟を決める。

 

 しかし、次の瞬間。彼らの緊張感は木っ端微塵に粉砕された。

 

 

 ACが投下されると、三機の小型ヘリはサーチライトを使ってその機体を照らし上げた。そう、赤と青と黄、夜の戦場ではけばけばしいことこの上ない原色の光で。

 

「お呼びとあらば即参上!」

 

 そして眩いスポットライトの中央にて、芝居がかった口調で名乗りを上げる謎のAC。どういう操縦系統になっているのか、両腕を交差させてポーズを決めているのがまた胡散臭い。

 

「レイヴン退治の専門家、情け無用義理無用の男、闇烏ことモンド様が相手になってやるぜ!」

 

 決め台詞らしき一節を唱えると、外部スピーカーを設置しているのかACから大音量のトランペットが鳴り響いた。

 

ばばばばばばばばば

 

 ヘリのプロペラが空しく回り続ける。

 

「ナニ、アレ」

 

 アニーが放心状態に陥るのも無理はない。助けに応じるのは百歩譲って認めるとして、闇烏が烏(レイヴン)を退治してどうするのかわからないし、情けも義理も無用では一体何を規範に行動しているのか。…本能?

 

「僕、レイヴンに変な憧れ持っていたのかなぁ」

 

 何だかよくわからない落胆を見せるサム。何がわからないって、目の前のアレが何なのか理解できないのに落ち込むのだから謎だ。

 

 ともあれ、たった一人のアホの出現によって、生きるか死ぬかの張り詰めた緊迫感は敵味方を問わず完全に失われた。

 

 どーすんの、これ。
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