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  • 第三話 迷争 その一

vipac @Wiki

第三話 迷争 その一

最終更新:2007年02月06日 11:25

匿名ユーザー

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 太陽は頂点を通過し、おとぎ話の亀の様に止まらず焦らずゆっくりと暮れへと向かっていく。
 陽光は空気を直接暖めるわけではない。光は大地に降り注ぎ、大地が得たエネルギーが熱として大気中に発散される。そのため太陽が頂点に達する時間と気温が頂点に達する時間には誤差が生じる。
 なんでも気温が最も高くなるのは午後の三時~四時ぐらいらしい。理屈によれば。
 降り注ぐ陽光の元、客足が減り始めた露店外を歩くハゲが一人。後頭部が太陽の光を反射して見ようによっては後光を背負ってるように見えなくも無い。水屋の若いのが「うおっまぶしっ」顔を背ける。
 ハゲの腕時計はきっかり午後二時をさしており、最も熱くなる時間とやらまでには一時間を残している。理屈によると。
 しかしそんな理屈は犬も食わない。理屈によって定められたことと感情とかの人間の本能的なモノとは別である。今ハゲが暑いと思っている事と、理屈によればこれからもっと暑くなるのだと言う事は実はあまり関係ない。
 白いシャツに汗が染み込んでびちゃびちゃになり、体に張り付く。
 暑い中、足を引きずって歩く。砂漠の暑さはそれこそ何千日と体験してきたが、暑いものは暑い。
 強すぎる陽光はそこら中の露店の薄い天幕を容易く突破して店番に襲い掛かる。どのテントでも陽光の侵略の速度はすさまじく、どのテントを見てもまともに店番をしているヤツなんていない。腹を出して寝てるヤツもいたし、突っ伏したまま動かなくなってる奴もいた。
 ブタ楊枝ガリの三人もガリのテントの下で腹丸出しにしてへばっていたが、ガリはトレードマークのターバンを巻いたままでいる。頭はさぞかし蒸していることだろう。
 ふと、ガリの露店を見つめる。店先に並べられた幾つもの木彫りの配置に穴があるように感じる。
 確認。
 雄雄しいたてがみと獰猛な牙のライオンがいる。王者の風格を惜しげもなく振りまいているが、そう目立つ位置にはおいていない。
 堅そうな甲羅と短い足の亀がいる。落ち着いた色の瞳は奥の奥まで透けてしまいそうなほど澄んでいる。
 二つのコブを持ったラクダがいる。広い砂漠を悠々と歩き続ける恐ろしい生命力を全身にみなぎらせていた。
 小さい躯とその割にバカみたいに長い耳のウサギがいる。その耳はきっと一キロ先の針が落ちた音でさえ聞いてしまうに違いない。
 つぶらな瞳、永遠に人間のパートナーであり奴隷である犬がいる。精悍な顔つきは一言で言い表すことの出来ない何かを感じさせる。etcetc
 順々に眺めていって初めてハゲは気付いた。
 ワシが無い。



 ちょっと前。
 ガリが不健康そうな面構えで実に健康的な笑みを浮かべる。妙な雰囲気を醸し出す顔だ。
 ガリはワシの木彫りをノブレスに手渡したときにそんな笑みを浮かべた。
 そのワシに心を持っていかれたように見つめ続けていたノブレスを見たガリは、特別料金で木彫りを売った。
 チャチな木彫りだが、需要が少ないせいでべらぼうに高い。そのべらぼうな値段設定じゃないと決して元は取れないほどのものなのだが、特別料金はわずか銀貨一枚。昼飯一食分くらい。
 さて、なんでもガリはワシの木彫りを三つ作ったらしい。ガリはバーテックスが壊滅した次の日に残ったアライアンス非所属レイヴンが何人いるかを躍起になって確かめようとしていた。確認できた人数は三人。すなわち、ジナイーダとノブレスとリムファイヤーである。
 確認できるや否やガリは店を開くのも忘れて懸命に、丁寧に、慎重にワシを三体彫った。
 そのワシをノブレスにはただ同然で売り渡してしまう。レイヴンにだけ売るつもりなんだろうが、そううまくいくものか、と思う。もう何人もいるわけでもないのに都合よくレイヴンが砂漠まで来てワシを買っていくなんてありえないと思う。
 ノブレスにワシを手渡した後、ガリはすぐにポケットからワシをひとつ取り出して、店先の一番目立つところに置いた。
 置いたのを確かに見た。
 
 しかし、そのワシは少なくとも今のハゲには見えない。木彫りの集団の中心に据えられ、王のような風格と傲慢を振りまいていたワシはどこにも見えない。
 一体どういうことなのか、
 首をかしげながら、ハゲは家路に着く。

 

 本当にどうかしている。
 いまさらレイヴン同士で決闘しようだなんてばかげている。犬だって食やしない。
 女は銃を持っている。黒光りしていて九ミリ口径で装弾数は十六発の見るも恐ろしい拳銃はノブレスの腰の後ろ辺りに突きつけられていて、ノブレスの正面に立つシーラにはそれが見えていない。
 シーラは「何事か」といった表情でノブレスを振り返る。ノブレスの背後にはユカイツーカイに晴れ渡った空の下、ただ一人だけ陰気くさいコートとフード姿の女がいる。首には、さっきノブレスがうれしそうに眺めていたのと同じ木彫りのワシがぶら下がっている。
 おまけに目つきが尋常ではない。暗闇の中でわずかな光を反射する剃刀に見えた。
 どっからどう見たってカタギでない。追っ手かチンピラかレイヴンか。多分そのうちのどれかだと思う。そのうちのどれかしかないと思う。
 アライアンスは自分達がこの町にいることは知らないと思う。しかし、尾行はついていなかったか、と言われると少し怪しい。高級そうなカフェテラスでコーヒーを飲んでいたサングラスは自分のことをちらちら見ていたような気がする。そのときはなんとも思っていなかったが、実際のところどうか。
 チンピラ連中はレイヴンの顔を知らない。ノブレスの顔もシーラの顔もばれていない筈だ。レイヴンの徹底した秘密主義はこういうところで役に立ったのだ。それでもたまに「貴様らがレイヴンに違いない」と名がドス片手に月の無い夜道を追ってくるやつはたまにいる。案外、人も鼻が効くのかもしれない。
 レイヴンに関しては不確定要素が多すぎる。わけのわからないプライドと妙な行動理念が三度のメシよりも大事な変人ばかりがレイヴンを目指すように世の中は出来ているらしく、シーラ見たレイヴンは常識の範囲を超えた認識を持つヤツばかりだった。例えばジャック・Oとか。そう思うシーラの頭の中ではノブレスはレイヴンの勘定内に入っていない。
 いまさら時代遅れの決闘なんてやらかすのもこの手合いで、物騒極まりない連中。
 一ヶ月前の事件でかなりのレイヴンが死んだことを知ったシーラは、世の中も少しは綺麗になるだろうと思ったのはノブレスには内緒だ。今この世に残っているレイヴンの数はたったの五人。この広い世界でその五人に会うことはまずないだろうと思っている。
 フード女が何か言った。カチャリと鉄と鉄の擦れあう音が聞こえて、シーラもノブレスが立ち止まったわけを悟る。
「私はレイヴン、ジナイーダだ。ノブレス=オブリージュ、貴様に決闘を申し込む」
 一息だった。
 たった五人のレイヴンだった。
 スリーセブンだ。ジャックポットだ。役満だ。
 アライアンスのクソ野郎だってチンピラだってケツにケリをいれれば済む事だ。
 しかしレイヴンである。その上時代遅れの決闘だ。
 アホか、こいつ。
 レイヴンはアホでバカでノータリンで。その点ではきっとノブレスだって負けてはいない。それは彼の宝物の映像ディスクの中身を見ればわかる。
 紅の翼とか殺しの烙印とかばっかり入っている。彼の好きな歌はダイナマイトが百五十トンだ。シーラも歌は聴かされた。個人的にはアキラのツーレロ節のほうが好みだった。
 ニッカツはバカの見るもんだ。背中で語る男の九十九パーセントはバカで残る一パーセントは阿呆。それにあこがれるやつは更なるバカだ。
「その決闘、受けよう」
 ニッカツにあこがれる間抜け面の、精一杯にニヒルな笑みを見たシーラは頭を抱えるより他はない。簡単に決闘を決めてしまうなんていい加減な事をされるのはイヤだった。
 決闘というのはどちらかが倒れるまで戦い続けなければいけない。どちらかが死ななければいけない。もしも負けたら自分はどうすればいいのか、今ノブレスに言ったら答えてくれるだろうか。
 フード女がまた一息で言う。
 「明日の朝〇六〇〇時にここから西に六十キロに来い。見届け人はかまわんが小細工は無しだ」



 風は邪気をはらむものだと聞く。なるほどACにとって砂漠の風ほどいやらしいものもない。砂漠の風は砂を運んできて、その砂は部品と部品の間に入ろうとする。ACに限ったことでなく機械にとっての敵だ。
 それを防ぐために砂漠を行くACの関節を守る特殊フィルターを各所に装着しなければならないし、それをつけたからと言って完全に砂による被害を防げるわけでもない。
 だから砂漠ではこまめに整備をする必要がある。
「オペレーター、今からバレットライフの砂抜きをする。シートの用意をしろ」
 リムファイヤーはオペレーターと一緒にいること自体がかなり少ない。自分ひとりで何もかもを決め、全てにおいて先行する。
 だからオペレーターとはそう親しいわけでもなく、今のオペレーターが専属になってから一ヶ月と少しが立っているが未だにリムはオペレーターの名前を覚えていない。
 オペレーターの方も仕事以外のことにはあまり関心が無いらしくって、リムのやり方に文句を言うことは無く。最低限の仕事を淡々とこなす。
 そのオペレーターは今、トラックでバレットライフに付き従って砂漠を行軍している。
 整備をするためのガレージも無く、ACには余分な部品を積むようなスペースは無い。砂漠を行くためにはどうしても必要な器具と弾薬のほとんどはオペレーターの乗るトラックに積まれている。
「了解。第二倉庫、開放します」
 まるでしゃべるのが面倒くさいと言う風にどこまでも事務的な返答しかオペレーターからは返ってこない。
 ゆっくりと歩いていたバレットライフは歩みを止めて四本の足を夜明けの朝顔の花びらのように開き、胴体を出来るだけ地面に近づけてから停止。ハッチを開けて砂の大地に向かって縄梯子を降ろした。
 何が起きてもすぐ動けるよう機体のジェネレーターはアイドリング状態にして砂漠の大地に向かって降りていく。大型トラックの荷台の後ろ半分が開いて、青いビニルシートと幾つもの止め具が顔を出す。
 オペレーターはトラックの運転席からタバコをふかしたまま動こうともしない。窓は締め切られていて、煙が中で渦を巻いている。
 いつものことだ。リムは過剰に助けを借りたいわけではなく、むしろあまり手を貸してもらいたくは無いと思う。親の形見には触れて欲しくない。
 シートと留め具を引きずり出して、ACに被せる。砂抜きのために間接のフィルターを外す事になるので砂を避けるためのものだ。
 馬鹿でかいシートの箸を持ったまま縄梯子を上る。シートはシートでもACを丸ごと覆うことの出来るシートだ。普通の人に持てるものだとは思えないのにリムはひょいひょいと梯子を上って頭にも到達する。シートの端を背中側に放り投げて、留め具を拾いにまた地上へ。
 何度か同じことを繰り返して、完全にACの姿は完全にシートの中に隠れる。ここまでも長いがここからも長い。
 素人目には留め具との区別がつかないような機械を機体から十メートルほどの場所に埋める。
 掃除機を担いでACの足首、膝、肘、マニピュレーター、首周りなどのどうしても完全にガードできないところを回って丁寧に掃除して回らなければならない。
 巨人の前足の足首のフィルターを引っぺがして、掃除機のスイッチを入れた。
 家庭用のじゃ無くて業務用のそのまた上の特注品。家庭用の三倍以上の大きさで吸引力も容積も騒音も排気も三倍以上と言う極悪な代物だ。砂漠を走る風の音すらも完全にかき消してしまう。
 


 トラックの中。
 窓を閉め切ったまま目つきの悪い女がタバコを吸っている。
 人類の最強兵器であるACを眺める。
 ACはヘリより速く空を駆ける。ACはどんな車両よりも速く大地を駆ける。どんな兵器よりも多彩な武装を装備していて、どんな状況にだって対応して見せる。
 まさしく万能兵器。今この世に存在する何よりも強く、汎用性も高い。
 しかしACを操縦するのは難しい。
 理屈だけの脳みそならば「難しい」と表現する。
 実際はそんな生易しいものじゃない。そもそもACは操縦者が人であることを完全に忘れた兵器だ。
 最大時速は八百キロほど。どんなに簡略化したOSを使っても捌き切る事はおそらく不可能だろう情報量。
 重力に逆らい、ニュートン力学クソ食らえの軌道を描いて飛ぶ割には操縦者の負担を減らすような装置のひとつもついていない。
 スプリングの一つも期待できない構造をしていて、乗り心地は絶叫マシーンと比べるべくも無い。人間なら歩くときの上下運動に三度でも耐え切れたら上出来だ。
 そんなACを操るための人間がいる。タバコをくゆらす女はそんなやつらを人間扱いしてはならないと思う。人間であるはずは無い。
 何年掛かったって人間には支配できる領域内の乗り物じゃないからこそ、やつらはレイヴンなのだ。人間ではないのだ。
 そんなレイヴンの中でも特に優れたものがいるらしい。アライアンスの研究部にいるパイプにそう聞いた。
 ただの半年やそこらで最低の棺桶を乗りこなし、その上でただの一度も与えられた任務をミスる事が無い。ただの一度もバケモノ同士の戦いで負けたことが無い。……らしい。
 それは生き物なのだろうか。
 そんな、人間には制御できないAC、選ばれたバケモノだけが乗ることを許されたAC。
 その状況を打開するために、今アライアンス研究部はACを大量に制御するためのプログラムを組んでいると風の噂に聞いたことがある。何でも一人の実験台のデータを基盤として感情プロセスを一切排除してしまう計画らしい。
 素晴らしい。コングラッチレーション。その夢のような計画が実現してこそやっとこの世から全てのバケモノを排除することが出来る。人間様に天下が戻ってくるのだ。そのときはもうバケモノの世ではない。
「そんな事をしなくても今この場で一人消えるわけだがな」
 フィルターだけになったタバコを灰皿に押し付けて、面倒くさがり屋の腰を持ち上げる。
 レイヴンはバケモノだ。ACは最強の兵器だ。
 だが砂の詰まった間接、本調子では無い場合はどうか。常識では考えられない量の敵を用意してやればどうか。どんなバケモノだって物量の前にはなす術もないに決まっている。既に自分はチェックメイトをかけていて、ただ一言吐くだけでキングを取れる。
 灰皿の傍らに放ったままの通信機を手に取る。通信機は特注品で、ジャマー効果を無視するために通常の何倍もの電波を発する。
「やっちまいな」
 義理の相棒に最後まで名前を教えない女はとことん口が悪い。



 ザリ。
 腰にぶら下げた通信機がため息のように馬鹿でかいノイズを吐き出した。通常の三倍うるさいバキュームよりもなお大きい、大したため息だ。
 通信機を耳に当てる。落ち着いたノイズが吹き荒れるばかりで、まともに機能を果たせるようにはとても思えない。
 捨てる。腰から引きちぎって投げ捨てる。
 投げた通信機はくるくる回って楕円軌道を描いてついには落ちてシャリと音を立てる、と思いきや、地に付く前に何かが落下地点から頭を突き出した。
 死ぬほどびびった。心臓に悪い登場シーンだが、よくよく見ればMTで、頭にはおバカにもアライアンス戦術部隊のマークがペイントされていた。
 確認も済まないうちに立ち上がる。高価なバキュームを放り出して縄梯子を一段飛ばしで上り始めた時、最初のMTに続いて盾と無骨なバズーカを掲げたMTがバレットライフを中心に円を描いて何機もせりあがってくる。
「ACだってパイロットが乗っていないならば……」
 最初に姿を現したマーキング入りのMTはバズーカを構える。ありったけに火薬を弾頭に詰めたもので、これが当たればいくらACだろうと致命傷。
 年季の入った指揮官が、目の前の強大な敵が動く前にトリガーを引こうとする。ロックはまだ緑色。縄梯子を驚異的なスピードで上るレイヴンの姿を見る。
 悲しいかなその努力は報われないことをパイロットは知っていて、マーカー右部のゲージが満タンになった時、電子音が鳴る。心臓の鼓動と一緒のタイミングで引き金を
 地雷が爆発した。
 リムは一ヶ月前のあの日から砂漠で機体の整備をするにあたって万全を期す事にしている。
 一ヶ月前から始まったアライアンスの攻撃のせいでろくに仕事もないし、パーツの規制のせいでパーツ一つを取ってもまともな探し方では見つからないようになったはずだ。
 そのはずだが、オペレーターは一ヶ月前のあの日以前と変わらぬ仕事振りを続けていたのが原因だ。
 まず、金が無くならない。恥ずかしい事だがリムは自分の貯金残高を一度も見たことが無い。
 レイヴンになってから相当経っているから結構な額にはなっているとは思うが物価の高騰し続ける現在、オペレーターの給料を払いながら仕事無しの一ヶ月を生きれば多分自分は干からびる事になるはずだ。
 なのに金は無くならない。オペレーターは金に関しての問題を一言も口にしない。
 次にパーツに不自由しない。規制され始めたせいで手に入れるのに金と時間がめちゃくちゃにかかるはずなのにどれが要ると言われてもすぐに持ってくる。怪しい。
 最後に追撃部隊の数。自分とオペレーターの二人だけの行動のハズなのにイヤになるほど毎日毎日襲撃部隊と出くわす。
 これでオペレーターが怪しくないと言い張るのであればそいつは紛れも無いキチガイであろう。
 リムはオペレータを泳がせていたつもりでいる。いつ狸寝入りの寝首を掻かれるのか楽しみでもあった。
 それで地雷をあらかじめ設置していた。それを今爆破したのだ。
 砂が舞い上がって敵の目から完全にバレットライフを覆い隠す。それでも反対側の敵からは丸見えでいるから早急に行動しなけりゃならない。
 幸い、反対側のやつ含む全員が予期してない爆発にひるんでいる。その隙にコクピットに転がり込んでスリープしていたOSをたたき起こす。こういうときのためにジェネレーターは起動させたままでいた。
 シートを被ったまま怯んだ隊長機に突撃する。留め具がそこら中に散らばって砂にうずもれる。
 


 オペレーターも肝を抜かれた。彼女としては全く尻尾を出していないつもりだったので、リムの狸寝入りにも全く気付いていない。地雷が置かれているとは思いもしなかった。
 完全に不意をついてアドバンテージを持って行ったつもりなのに、いつの間にかアドバンテージを奪われてしまっていること愕然として、加えようとしていたタバコを落とした。
 工作員検定十級不合格。



 指揮官は焦りに焦ってトリガーを引きまくる。リロードも出来ていないのに引くせいでアラートメッセージが絶えない。
「来るなあ!」
 実はこの指揮官はAC一機に部隊を全滅させられたことがある。指揮官にはAC一機一機の区別なんてつかないが、部下を殺した細くて黒いACだけは覚えている。
 ある施設の正面玄関を警備していた時で突然だった。
 不意を突かれたものの一機だけが相手だと高をくくって物量で仕掛けたのがそもそもの失敗だ。
 撃っても撃ってもあたらない。そのくせ目では追いきれない素早い動きでいつの間にかMTの背後に回っていて、装甲の弱い所をマシンガンで狙い撃ち。
 一分もしないうちに九人の味方が殺されて、残った五人の部下は言うことを聞かなくなった。
 ――命令なんて知ったことか、あいつらの仇を討つ。
 そう言っててんでバラバラに攻撃を始めた味方に勝ち目はなかった。
 最後に残ったジェレミーを除いてみんなコクピットをマシンガンで狙い撃ちされて死んだ。MTはほぼ無傷なのに、突っ立ったままぴくりとも動かない。完全に墓標になっている。
 でもそれはまだよかった。墓石代わりになるものがあるのはまだ幸運だった。
 黒い機体はジェレミーだけ違う殺し方をした。
 悪魔がジェレミーのMTに殴りかかったかと思うとMTは一瞬で火と風と思い出を全部散らしてバラバラになった。多分ジェネレーターが潰れたんだと思う。
 跡形も残らない。ジェレミーの残り香を背にした黒いシルエットしか指揮官は覚えていない。赤い瞳しか覚えていない。
 そうしてレイヴンに対して一種のトラウマを手に入れた隊長はなぜか今、レイヴン討伐隊の隊長をやっている。
 何故か、と本人に問うても脅えるだけだろうが、アライアンス本部に聞けばそんなことはすぐにわかる。
 アライアンス本部は彼がかの有名なドミナント候補、ノブレスと対峙して唯一生き残ったMT乗りだからだ。
 彼としてはそれを理由にされるのは意外でしかない。とてつもない不運としか言いようが無い。
 彼が生き残ったのは何もしなかったからだ。
 あの日、火の消えた戦場で立ち尽くすMTは一発も弾を消費していなかった。
 今日は違う。今日は撃っている。目の前のバケモノに脅えて引き金を引き続ける。
 我を失った彼はマーカー右下の数字が一桁になっているのに気付かない。夢中で弾丸の装填が終わっていないバズーカのトリガーを引き続ける。
 ガッコン。
 装填が完了した。
 しかし、そのときには既に青いシートを被ったお化けは指揮官機のすぐ目の前まで来ていて、
 右ストレート
 に見えた。実際には小型五連マシンガン「フィンガー」の銃口をコックピットに突きつけている。
 青いシートは指揮官機に覆いかぶさって、視界を真っ青に染めた。
 五発同時の銃声が響いて、あの日の部下と同じところに旅立った彼は、自分がジェレミーと違う殺され方をされたのに気付いていない。
 


 「怖がりのクセに戦いに来るんじゃない!」
 感情が高ぶっていつの間にか絶叫する。叫びながらペダルを踏み込んで機体を振り回して、両隣にいた二機の機体に同時にフィンガーを突きつけて発射。
 一秒も経たない内にMTは盾諸共蜂の巣になって立ち尽くすより他は無い。
 MTの残りは十二機の様にリムには見える。狸寝入りも見破れないバカに二段構えの作戦は立てられないだろうからこれで全部。
 通常MTは三機で一小隊。指揮官は一人しかいなかったが、数だけを見れば五小隊分も機体をそろえていて、しかもその全てが高級品。
 何から何まで過激設定のACと言うほどまではいかないが、最も厄介なタイプのMTではある。
 しかもECMジャマー搭載型。
 十二機分のジャマーに晒されてFCSが悲鳴を上げる。ゆで卵が幾つも作れそうな気体の温度は更に上昇して、コックプットの冷却優先順位を上げた。
 混乱に混乱を上塗りしたMTはただの有象無象に過ぎない。歩くのが一杯一杯で状況判断もしていない。
 ブーストを吹かして機体を流しながら回転、腰から上を全速力で回しながら両腕を広げてトリガー。
 ロックが出来なくても広範囲に弾を撒き散らすフィンガー、MTが相手ならばさしたる問題も無い。搭乗者もひよっ子ばかりのようだし。
 回りながらのがむしゃらな射撃で四機が動かなくなる。残り八機。
 仲間が半分近くもやられたのに、まだ混乱から抜け出せない阿呆どもを見ているとこちらまでいらいらしてくる。
「鈍亀のクセに! 」
 腰抜けめ。ブーストで手近な機体に一直線。砂煙が立ち上って他の機体からACの姿を覆い隠す。
 MT乗りがようやく落ち着きをある程度取り戻しているらしく、疾り寄るバレットライフに気付いてバズーカを構えなおす。
 それでも当然遅い。重装型MTのとろいスピードでACに対応できるものか。
 MTの腹部にボディーブローを浴びせるように拳を入れて、そのままトリガー。機体は痙攣するように揺れて、力をなくして仰向けに倒れ伏す。
 残るは七機。
 その七機の中には盾にペイントをした機体が混じっている。モニター越しにそれを確認したリムはそのMTが後方に下がるのを見る。
 ――副隊長か何か。少なくともヒラよりは身分が高い。
 ペイントMTをリムから隠してしまうように残る六機がファランクス隊形でバレットライフを迎えようとするが、その即席の隊形は作りが甘く、中心に大きい穴が開いている。
 下がっていた一機がどんくさいようで、仲間の機体にぶつかることを恐れて陣形に乱れを期している。
 そのまま六機のMTは無反動砲を構えてバラバラのタイミングで引き金を引く。
 全てバレットライフの足を狙っていて、バレットライフはそれを見ても動かない。
 誰もが当たる、と思った瞬間にバレットライフは下半身の四脚のみを回転させた。
 弾丸は全てハズレ。朝のニュースのテレビ占いは見事に間違いだった。MT乗り達は全員占いは信じない事に決める。砂が巻き上がってバレットライフを完全に覆い隠す。
 全員が機械だけを信用するしかない状態。ロックを継続するFCSだけを頼りに弾丸の再装填を待つ。
 ACのスピードと力は決して見かけだけのモノではない。予備動作を見られなければ、足を曲げた溜めを見られなければバッタのような跳躍性能だって見せられる。
 唐突に上昇を始めるマーカーに全員が対応できない。煙を突き破って、限界を知らぬようにバレットライフは跳ね上がる。
 視点の上下移動は難度が高く、使わないMT乗りも多い。その程度で仕事をしているのかと誰もが思っているのだが、上下移動をあまりしないのはもう常識のようになっていた。
 全員が気付いて一斉に上を見上げたときにはもう遅い。
 バレットライフが既に陣形の穴に落ちてきていて、両手を広げて脚と腰から上の両方を回しながら撃つ。
 上を向いたままのMTは六機とも成す術もなく地に伏せ、パイロットは全員何らかの負傷を負って、残るMTはたったの一機にまでなった。
 隊長が死んでからここまで一分も経っていない。
 砂煙も晴れないうちにリムは一番右のペダルを踏み込むと、全速力でバレットライフは疾り出す。
『来るんじゃねえ!』
 隊長と似たような事を言ってバズーカを構えなおすMT。
 失望に近い苦いものを感じる。
 ――所詮この程度か
 バレットライフはブースターも吹かずに四本の足で走る。傍からぼうっとした表情で見ている検定十級は人事のように、神話に見るケンタウルスの様だと思った。
 見たことも無いくせに。
 MTは突っ込んでくるバカに向かってバズーカを撃ちまくるが、一発もあたらない。
 ロックはしている。ACは避けようともしていない。でも当たらない。
 疾走するケンタウルスが蹴った後に砂煙ばかりが生まれて、唐突に途切れる。
 ジャンプ。
 MTの頭すれすれを飛び越えたときにはいつの間にかMTの前面はネズミの食ったチーズみたいに穴だらけになっていて、バレットライフの見つめる先にはトラックが一台。
 
「え」 
 女が見あげたときバレットライフは右前足をもたげている。



 リムファイヤーのとりあえずの目的はレイヴンの首のみだ。
 レイヴンはリムファイヤーにとって父の仇で、憎むのが当然。
 くだらない感傷と中途半端な社会性と現実を受け入れようとしない傲慢。レイヴンという人種はただ夢ばかりを見ている。
 木を見て森を見ず。何もわかってないくせに何もかもわかったようなマセガキの目で他人の運命まで自分のもののように振り回そうとする。
 父を殺したのはレイヴンの中の誰か、では無くレイヴンという社会そのもので、憎むべきはそれを生み出した全ての愚か者。
 異常者を排除するのはこのリムファイヤーだ。
 父を葬り去った世界のガンをこの手で葬り、この目で朽ちていくのを見届けるのだ。
 しかし一ヶ月前から獲物を横取りしようとする不届き者が横行しだした。不届きモノはアライアンスという人のエゴの塊のような愚か者の集団で、そいつらも自分が王であるかのように振舞っている。
 アライアンスはレイヴンを皆殺しにしようとしているらしいし、
 自分自身がレイヴンを殺して始めて意味がある。
 残ったレイヴンは後四人。短期間で殺せる数ではない。
 ならゆっくりと殺せるよう邪魔者を捻り潰しておくべきだろう。
 アライアンスは組織で、組織に歯向かう個人は猫に歯向かうアリの様なモノだ。
 でも
 もしもそのアリがめちゃめちゃ強かったらどうだろう。
 にやりと笑ったリムファイヤーはズボンのベルトに木彫りのワシをぶら下げている。
 座席の潰れたトラックを見つめる彼は自分が異常者であることには気付いていない。

 



 その二へ続く

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