かつてレシュティアス大陸にはミルフェルと呼ばれる帝国があった。
ミルフェル帝国にはあまたの騎士たちがおり、代々騎士たちのなかから優れたものが帝位に就くのが古からの慣わしであった。
ところが、魔導師にして皇帝に即位したゼノフェル・フィエルハーゼ(xenofer fielhaaze)という男がいた。
人々はゼノフェルを魔導皇帝と呼び、ゼノフェルから続く王朝を魔導王朝と呼ぶことになる。
この物語はゼノフェル・フィエルハーゼが帝位に就く前の話である。
ジェハスの丘にある魔導学院パルゼヴェで、ゼノフェルはつまらなそうに窓の外を眺めていた。
魔導師になるためには、帝国にある魔導学院を卒業しなければならなかった。
ゼノフェルは魔術書を読むことは大好きであっても、学校という場所は嫌いだったのだ。
特に息苦しい校則には耐え難かった。ガキ臭い学友たちにもあまり心を開かなかった。
よく学院を抜けだして丘の上を歩いたり、図書館で好きな本を読んだものだった。
ゼノフェルは教師も知らないような知識についてもよく知っていた。
学院の教程にない古代魔術については教師たちも知らなかったのだ。
しかし教師たちはそのようなゼノフェルに対して生意気だとか厄介者だという見方しかしなかった。
ゼノフェルの才能を認める教師も一部にはいたのだが。
帝国の領内には魔神殿と呼ばれる古代の魔族たちが封印された神殿があった。
先々代の皇帝エンケリウトは側近たちの反対を押し切り、魔神殿から魔導エネルギーを抽出しようと考え始めた。
魔神殿に付属する形で魔導所を設けようというのだ。
帝国の宮廷に属する魔術師たちの魔術力強化や帝国の都市で用いるのが目的であった。
臣下1「最近の皇帝陛下はどうも様子がおかしいぞ。」
臣下2「確かにな。まるで何かに取り憑かれているかのようだ。」
臣下1「あの呪われた魔神殿から魔導エネルギーを抽出しようなど正気の沙汰ではない」
臣下2「それはどういうことだ?」
臣下1「魔神殿の封印が解かれ古代魔族たちが帝国の領内に這い出してきたらどうするのだ。実に危険極まりない。」
臣下2「しかし我々が意見したところで耳を傾けるだろうか?」
最終更新:2013年10月08日 22:41