#27 - (2009/04/21 (火) 22:29:31) の編集履歴(バックアップ)
#27 旅立つ友の背中に
「じゃあ、エマ・シーン(4)をツヴァイにセットして効果でドロー、地球に出撃だ!」
「今場にあるユニットはツヴァイ1枚。使わせてもらうわ、寸断!」
「今場にあるユニットはツヴァイ1枚。使わせてもらうわ、寸断!」
コストの合計値が一番低いユニットを破壊する白のコマンド…ユニット1枚の今の状況じゃ、確実にツヴァイを破壊できるわ!
本当はもっと早く使いたかったんだけどね…そのためにハイマットとか犠牲にしたのに。
本当はもっと早く使いたかったんだけどね…そのためにハイマットとか犠牲にしたのに。
「ヴァリアブルにするか迷って正解だったぜ…エマでドローしたこの1枚の手札、慈愛の眼差し!」
「破壊無効カード!?」
「破壊無効カード!?」
おっと予想外…!
松岡は資源7を支払いツヴァイの破壊を無効にした。
松岡は資源7を支払いツヴァイの破壊を無効にした。
「いいか?7点だぜ?」
「いいわ7点受けてあたしの本国は1枚…」
「つまり、負けだな」
「いいわ7点受けてあたしの本国は1枚…」
「つまり、負けだな」
松岡がうれしそうに口を開く。
いいえ、負けじゃあないのよ、これが!
いいえ、負けじゃあないのよ、これが!
「リロールフェイズにこのカードをプレイするわ!」
あたしは、あたしを勝利に導くカードをプレイした。
「清浄なる世界か!?」
「なに期待してんのよ?あんたの本国なんか回復させますか!それぞれのできること(10)よ!」
「なに期待してんのよ?あんたの本国なんか回復させますか!それぞれのできること(10)よ!」
手札とGを好きな枚数廃棄して、その3倍回復するコマンド。
使うタイミングが微妙だったからとっておいたけど、まさかここまで本国が削られるとはね…このカードのタイミングに感謝。
使うタイミングが微妙だったからとっておいたけど、まさかここまで本国が削られるとはね…このカードのタイミングに感謝。
「あんたは手札なし、本国は慈愛の資源で残り数枚…回復するけどいい?」
「あぁ…投了だ」
「あぁ…投了だ」
松岡は手をあげる。勝った!
…これでまだ1回戦なのよね。藤野はどうなったのかしら?
…これでまだ1回戦なのよね。藤野はどうなったのかしら?
「慈愛をヴァリアブルにしておけばよかったのに」
あたしはカードを片付けながら言った。
あそこで慈愛で回復されたら、どうなっていたかわからなかったのに。
あそこで慈愛で回復されたら、どうなっていたかわからなかったのに。
「そうか?Gとか廃棄すると結局負けだぜ」
「ていうか慈愛とか持ってたのね。フォトグラフでも買ったの?」
「ていうか慈愛とか持ってたのね。フォトグラフでも買ったの?」
あたしたちは、日々遊んでるから相手が持ってるカードは結構知ってるつもりだったのになぁ…いつの間に手に入れたんだろ?
「あれはな…」
「松岡、詩織のことなんだけど…」
「松岡、詩織のことなんだけど…」
松岡の言葉を遮って、あたしは思い出したかのように言った。実際忘れさせてもらってたんだけどね。
ここまできたらもうノリで話すしかない!
ここまできたらもうノリで話すしかない!
「な、なんだよ?」
「付き合ってるんだって?」
「付き合ってるんだって?」
あたしはデッキをトントンと机でならし、ケースにしまう。松岡は、なんであたしがそのことを知ってるのかと驚いた様子。
「なんで知ってるんだよ?」
「ばーか。詩織に相談されたに決まってるでしょ?」
「ばーか。詩織に相談されたに決まってるでしょ?」
場に流れる静寂。
「そ…そうか」
「そうよ!詩織、悩んでたよ。あんたの気持ちがわかんないってさ。デートとか最初の1回以外行ってないんでしょ?」
「そうよ!詩織、悩んでたよ。あんたの気持ちがわかんないってさ。デートとか最初の1回以外行ってないんでしょ?」
松岡は黙る。
なによ!何とか言いなさいよ!
なによ!何とか言いなさいよ!
「俺さ、初めてだからそういうのあんまわかんねぇんだ…」
松岡がようやく口を開く。そこから出たのは意外な言葉。
あれ?あたしの予想だと、女経験多い松岡が他の理由かなんかで、詩織と上手くいってないって感じだと思ってたんだけど…??
あれ?あたしの予想だと、女経験多い松岡が他の理由かなんかで、詩織と上手くいってないって感じだと思ってたんだけど…??
「…と、ともかくデートしてみなさいよ!」
無理やり感のあるあたしの台詞。
あたしだって経験ないんだから…そういうアドバイスはできっこない。
あたしだって経験ないんだから…そういうアドバイスはできっこない。
「そ、そんなもんかよ!?」
「そんなもんよ、きっと!」
「そんなもんよ、きっと!」
あたしは断言した。
なんだ、松岡も悩んでたんじゃん。
心の靄が晴れたわ。
なんだ、松岡も悩んでたんじゃん。
心の靄が晴れたわ。
そして、あたしにできることはもうない…。
「松岡、詩織のこと好き?」
「…ああ。無論だ」
「…ああ。無論だ」
やや唐突気味に聞いたあたしに、松岡はきっぱりと答える。
「なら、行って二人で考えなさいよ」
そう、お互いのことを想いあってる二人で考えれば、きっとなんとかなるよ。
あたしは詩織の家までの道を書いた地図を、松岡に渡す。
あたしは詩織の家までの道を書いた地図を、松岡に渡す。
「そう…だな。サンキュ、京子!…この地図じゃわかんねぇだろ」
「そんなのどうにかしなさいよ!さ、行った行った!」
「そんなのどうにかしなさいよ!さ、行った行った!」
あたしは手を振って松岡を促す。
「いろいろありがとな、京子。俺、行ってくるわ!」
「うん」
「うん」
松岡は出口に向かって歩き出す。ふと見ると、机に残されたデッキケース。
…それが意味するのは一つだ。
「そうだ京子…幹夫を頼む。エロガキだけどな」
松岡は扉に手をかけたところで振り返った。
「まかしといて。あたしの弟子にしてあげる」
あたしは拳を出す。松岡は安心した顔で「じゃあな」と手を振って扉を閉めた。
…去っていった友。
でもあたしや藤野との仲は変わらない…はず。
でもあたしや藤野との仲は変わらない…はず。
”藤野、京子、これやろうぜ”
”黒中なめんなよ藤野?”
”ギャプランに歯向かうなぁ!”
”ターン終了だ、京子”
松岡の言葉が蘇る。
何でだろう…涙が出るよ…。
何でだろう…涙が出るよ…。
「トイレ…貸してください」
「いいよ。大丈夫かい?」
「いいよ。大丈夫かい?」
信ちゃんは一部始終を見ていたのか、涙目のあたしを気遣ってくれる。
「はい。全然大丈夫です」
そう言ってトイレに入った。
つづく