imari|
[cm]
;@snowuninit
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@wait time=500
@cl
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@wait time=500
光から闇へ身を投じる。廊下へと歩み出ると、みずきの前に立ちふさがった。[lr]
;;みずき(驚き)
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=6 e=9 y=a m=5 s=1
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=5 e=7 y=a m=9 s=1
ぞわりとツインテールが逆立った。大きく見張られたのも束の間、瞳はハッと伏せられた。[lr]
「みずき」[lr]
頬から血の気が引いてゆき、鳥肌に変じてゆく。[lr]
「……伊万里はどうした」[lr]
問うていながら語尾のアクセントは問うていない。匂いを吸わないよう一息に言い切った。[lr]
;;みずき(泣き、目に陰り)
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=5 e=6 y=b m=10 s=1
びくりと震える。それが答えだった。[lr]
血の気が落ちてゆき、鳥肌が立つ。頭は芯まで冷たく麻痺し、みずきそっくりの反応を示していることにさえ気づかなかった。[pcm]
「お前……」[lr]
しわがれた声を喉から搾り出すが、続かなかった。ひび割れた呻きは夜の闇に沈んでいった。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=10
「みのるは……」[lr]
孕んだ激情に対し、ソプラノには抑揚がなかった。感情を極限まで隠そうとしたら、こんな純粋な声になるのかもしれない。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=4 e=6 y=b m=9
皮切りにキッと眉が厳しくひそめられた。ああ。痛烈な後悔の念が胸をえぐる。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=3 e=6 y=b m=10
@bgm file="c4u.ogg"
「死ねる?」[lr]
;;BGM『crazeforyou』
「……え?」[lr]
まさか、みずきが。そんなバカな。[pcm]
妙な言葉の流れに、とっさに答えを返せなかった。答えづらい。むしろ答えられない。沈黙だけが連なる点のように続いた。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=3 e=6 y=b m=11
「あたしのために死ねる?」[lr]
だがみずきは流すつもりはないらしい。やや早口に重ねて問うてきた。[lr]
逃げられない。悟ったが、口は裏腹に時間を稼ごうとしていた。[lr]
「何を言って……」[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=2 e=3 y=b m=1
「あたしは死ねるよ。みのるのためなら」[lr]
顔を上げたみずきはそう言い切ってみせた。なんのよどみも躊躇もなく、淡々と当然のように。瞳に灯った光はどこか誇らしげで、そしてどこか寂しげだった。[pcm]
じんじんと胸の奥が熱を持った。[lr]
「……死ねる」[lr]
ハッと固まった。俺は何を言っているのだろう。胸のつかえが取れたようですっきりはしていたものの、何か空虚な喪失感のようなものも同じく感じていた。[lr]
焦燥めいた強烈な衝動が胸の奥で鎌首をもたげる。心臓の辺りがたまらなく疼き、体を折って悶えそうだった。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=2 e=2 y=b m=8
「そ」[lr]
ひとまずは満足したらしい。俺の高鳴る心臓をよそに、みずきは頷いた。ほっと安堵の息を――。[pcm]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=8 e=3 y=b m=11
「じゃ、殺せる? あたしのために、誰かを」[lr]
……呼吸が途絶えた。うろたえてはいけない。警鐘が轟々と鳴り響くが、俺は立ち尽くすことしかできなかった。[lr]
上目遣いに覗きこまれ、初めて目を伏せていたことを知った。視線をしっかりと絡ませ、逃げられないようにしてからみずきは真っすぐに言葉をぶつけてきた。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=2 e=3 y=b m=2
「あたしは殺せるよ。みのるのためなら」[lr]
――誰を?[lr]
その問いを辛うじて飲みこんだ。ねっとりとした視線に舐めまわされ、全身が総毛立つ。[pcm]
口から零れ出たとき、問いは別のものに化けていた。[lr]
「なにを……」[lr]
――俺の知ってるみずきじゃない。今さらのように恐怖の波が押し寄せてきた。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=3 y=b m=9
「知りたい? あたしのこと」[lr]
答えられない。浅い呼吸をせわしなく繰り返す俺を見て、みずきが何かこらえるような表情になった。やがて決意したように言葉を継ぐ。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=3 y=b m=7
「あたしは知りたいよ。みのるのこと、もっと」[lr]
「……知りたい」[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=2 e=2 y=b m=8
考える前に答えが滑り出ていた。[pcm]
俺はみずきの何を知っているというのだろう。何も知らない。知っているつもりで、何一つ知らなかった。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=3 y=b m=10
「あたしはみのるがいないと生きてけない。分かるでしょ?」[lr]
「ああ……」[lr]
曖昧に相槌を打ってから、ハッと冷たくなる。失策に気づいたときには、みずきは。[lr]
;;みずき(泣き笑い)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=2 e=6 y=b m=1 t=1
「なーんだ。知ってたんだ。なら……もっと前に言えば良かった」[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=2 y=b m=8
最後はほとんど涙声だった。だというのに、みずきは微笑んでみせた。その笑みはどこか泣き出しそうで。危うくて今にも崩れそうで。硝子細工めいて儚かった。思わず抱きしめてやりたくなっていた。けれど、それをためらう気持ちがあったのも事実だった。[pcm]
びくり、と震えた俺の腕。察したように潤んだ鳶色の瞳が揺れた。今まで取り繕っていた表情の鎧が剥がれ落ちてゆく。[lr]
;;みずき(病み泣き)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=8 t=1
俺の後輩はぎゅっと自分の裾を掴んでいた。手だけが暴れている。誰かにすがりつこうとしている。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=10
「来て」[lr]
漠然とした一言に、一瞬、獣が起き上がった。あってはならない妄想に歯噛みする。どこかでみずきがすがりつくのを望んでいた。[lr]
だが、実際にはみずきは狂気を抑えこんで背を向けている。吹雪のように闇に白雪が集っていった。[pcm]
;;背景『雪景色』、伊万里(シリアス照れ)
@fadeoutbgm time=1500
@cl
@snowinit backvisible=true
@bg file="white.jpg"
[ld pos=c name="imar" wear=u pose=1 b=3 e=3a m=4 c=1]
伊万里が佇んでいる。黙して、決して何も言わない。けれどその視線が何よりも雄弁に語っている。[lr]
純粋、いやむしろ純潔な懇願が浮かんでいる。『答えて?』。『応えて?』。[lr]
……答えられなかった。応えられなかった。耐え切れずに口をつぐんだ。[lr]
逃避先には、ひとつだけ心当たりがあった。[lr]
;;伊万里(哀しげ)
伊万里のひそめられた眉も目に入らなかった。一際力の入った左腕も震える肩も、何一つ意識の範疇になかった。[lr]
ぼうっとかすんだ意識の中、一人の名を呟く。[lr]
「……みずき」[pcm]
;;背景元に戻し、伊万里消し、みずき(病み泣き)。
@snowuninit
@cl
@bg file="rouka1_mizu_y.jpg" time=1000
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=10
俺は何をしているのだろう。ついさっき信じなかったばかりなのに、何をしているのだろう。[lr]
自分でも訳が分からないまま、伊万里に背を向けて駆け寄った。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=7 c=1 size=L
「あ……」[lr]
戸惑いの息をつく後輩の手を奪って指を絡める。[lr]
ほとばしったように怒涛のうねりが鬱積をことごとく押し流してゆく。冷たく冴え渡り、嘘のように静まり返ってゆく心。[lr]
先輩として、友人として。そして……。俺はコイツを支える。遠くて近い少年の頃、そう決めたのだから。[lr]
;;みずき(困惑)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=6 e=6 y=b m=8 c=1 size=L
あの頃のままのコイツを置いて、俺だけが先にゆくなんてこと、許されはしない。[pcm]
;;みずき(驚き)
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=6 e=9 y=a m=5 s=1
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=5 e=7 y=a m=9 s=1
ぞわりとツインテールが逆立った。大きく見張られたのも束の間、瞳はハッと伏せられた。[lr]
「みずき」[lr]
頬から血の気が引いてゆき、鳥肌に変じてゆく。[lr]
「……伊万里はどうした」[lr]
問うていながら語尾のアクセントは問うていない。匂いを吸わないよう一息に言い切った。[lr]
;;みずき(泣き、目に陰り)
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=5 e=6 y=b m=10 s=1
びくりと震える。それが答えだった。[lr]
血の気が落ちてゆき、鳥肌が立つ。頭は芯まで冷たく麻痺し、みずきそっくりの反応を示していることにさえ気づかなかった。[pcm]
「お前……」[lr]
しわがれた声を喉から搾り出すが、続かなかった。ひび割れた呻きは夜の闇に沈んでいった。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=10
「みのるは……」[lr]
孕んだ激情に対し、ソプラノには抑揚がなかった。感情を極限まで隠そうとしたら、こんな純粋な声になるのかもしれない。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=4 e=6 y=b m=9
皮切りにキッと眉が厳しくひそめられた。ああ。痛烈な後悔の念が胸をえぐる。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=3 e=6 y=b m=10
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「死ねる?」[lr]
;;BGM『crazeforyou』
「……え?」[lr]
まさか、みずきが。そんなバカな。[pcm]
妙な言葉の流れに、とっさに答えを返せなかった。答えづらい。むしろ答えられない。沈黙だけが連なる点のように続いた。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=3 e=6 y=b m=11
「あたしのために死ねる?」[lr]
だがみずきは流すつもりはないらしい。やや早口に重ねて問うてきた。[lr]
逃げられない。悟ったが、口は裏腹に時間を稼ごうとしていた。[lr]
「何を言って……」[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=2 e=3 y=b m=1
「あたしは死ねるよ。みのるのためなら」[lr]
顔を上げたみずきはそう言い切ってみせた。なんのよどみも躊躇もなく、淡々と当然のように。瞳に灯った光はどこか誇らしげで、そしてどこか寂しげだった。[pcm]
じんじんと胸の奥が熱を持った。[lr]
「……死ねる」[lr]
ハッと固まった。俺は何を言っているのだろう。胸のつかえが取れたようですっきりはしていたものの、何か空虚な喪失感のようなものも同じく感じていた。[lr]
焦燥めいた強烈な衝動が胸の奥で鎌首をもたげる。心臓の辺りがたまらなく疼き、体を折って悶えそうだった。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=2 e=2 y=b m=8
「そ」[lr]
ひとまずは満足したらしい。俺の高鳴る心臓をよそに、みずきは頷いた。ほっと安堵の息を――。[pcm]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=8 e=3 y=b m=11
「じゃ、殺せる? あたしのために、誰かを」[lr]
……呼吸が途絶えた。うろたえてはいけない。警鐘が轟々と鳴り響くが、俺は立ち尽くすことしかできなかった。[lr]
上目遣いに覗きこまれ、初めて目を伏せていたことを知った。視線をしっかりと絡ませ、逃げられないようにしてからみずきは真っすぐに言葉をぶつけてきた。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=2 e=3 y=b m=2
「あたしは殺せるよ。みのるのためなら」[lr]
――誰を?[lr]
その問いを辛うじて飲みこんだ。ねっとりとした視線に舐めまわされ、全身が総毛立つ。[pcm]
口から零れ出たとき、問いは別のものに化けていた。[lr]
「なにを……」[lr]
――俺の知ってるみずきじゃない。今さらのように恐怖の波が押し寄せてきた。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=3 y=b m=9
「知りたい? あたしのこと」[lr]
答えられない。浅い呼吸をせわしなく繰り返す俺を見て、みずきが何かこらえるような表情になった。やがて決意したように言葉を継ぐ。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=3 y=b m=7
「あたしは知りたいよ。みのるのこと、もっと」[lr]
「……知りたい」[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=2 e=2 y=b m=8
考える前に答えが滑り出ていた。[pcm]
俺はみずきの何を知っているというのだろう。何も知らない。知っているつもりで、何一つ知らなかった。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=3 y=b m=10
「あたしはみのるがいないと生きてけない。分かるでしょ?」[lr]
「ああ……」[lr]
曖昧に相槌を打ってから、ハッと冷たくなる。失策に気づいたときには、みずきは。[lr]
;;みずき(泣き笑い)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=2 e=6 y=b m=1 t=1
「なーんだ。知ってたんだ。なら……もっと前に言えば良かった」[lr]
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最後はほとんど涙声だった。だというのに、みずきは微笑んでみせた。その笑みはどこか泣き出しそうで。危うくて今にも崩れそうで。硝子細工めいて儚かった。思わず抱きしめてやりたくなっていた。けれど、それをためらう気持ちがあったのも事実だった。[pcm]
びくり、と震えた俺の腕。察したように潤んだ鳶色の瞳が揺れた。今まで取り繕っていた表情の鎧が剥がれ落ちてゆく。[lr]
;;みずき(病み泣き)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=8 t=1
俺の後輩はぎゅっと自分の裾を掴んでいた。手だけが暴れている。誰かにすがりつこうとしている。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=10
「来て」[lr]
漠然とした一言に、一瞬、獣が起き上がった。あってはならない妄想に歯噛みする。どこかでみずきがすがりつくのを望んでいた。[lr]
だが、実際にはみずきは狂気を抑えこんで背を向けている。吹雪のように闇に白雪が集っていった。[pcm]
;;背景『雪景色』、伊万里(シリアス照れ)
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伊万里が佇んでいる。黙して、決して何も言わない。けれどその視線が何よりも雄弁に語っている。[lr]
純粋、いやむしろ純潔な懇願が浮かんでいる。『答えて?』。『応えて?』。[lr]
……答えられなかった。応えられなかった。耐え切れずに口をつぐんだ。[lr]
逃避先には、ひとつだけ心当たりがあった。[lr]
;;伊万里(哀しげ)
伊万里のひそめられた眉も目に入らなかった。一際力の入った左腕も震える肩も、何一つ意識の範疇になかった。[lr]
ぼうっとかすんだ意識の中、一人の名を呟く。[lr]
「……みずき」[pcm]
;;背景元に戻し、伊万里消し、みずき(病み泣き)。
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「あ……」[lr]
戸惑いの息をつく後輩の手を奪って指を絡める。[lr]
ほとばしったように怒涛のうねりが鬱積をことごとく押し流してゆく。冷たく冴え渡り、嘘のように静まり返ってゆく心。[lr]
先輩として、友人として。そして……。俺はコイツを支える。遠くて近い少年の頃、そう決めたのだから。[lr]
;;みずき(困惑)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=6 e=6 y=b m=8 c=1 size=L
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;;背景『夜の山道』。懐中電灯オンリー?。みずき(落ち込み)。BGM『Lunatic Lovers~xx』
@bg2 file="trail_n.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=2000
@bgm file="llxx.ogg"
@bg2 file="trail_n.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=2000
@bgm file="llxx.ogg"
かつては整備されていたのだろうが、今となってはその痕跡が残るのみ。荒れ果てた山道を二人、連れ添って歩いた。どちらも前に出ず、後ろに遅れなかった。[lr]
大きな石が転がっていれば、ともに乗り越えた。しっかりと手を握り合って。[pcm]
大きな石が転がっていれば、ともに乗り越えた。しっかりと手を握り合って。[pcm]
;;背景『作業小屋』
@bg2 file="Lodge_n.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=1000
@bg2 file="Lodge_n.jpg" rule="縦ブラインド(左から右へ)" time=1000
やがて見えてきたシルエットは、見知ったものだった。姉さんと伊万里とみずきと俺。小学生の夏、流星群を見るために一夜を明かしたことがある。当時、材木を切り出す際、職員が寝泊りしていた作業小屋だ。[lr]
むしろ夜でなければ気がつかなかっただろう。みずきの手に力が入った。あの夏休みの夜、そうしたように。[lr]
月明かりが地に穿つ、長く長く濃密な影。その寸前で、みずきが休みなく動かしていた足をぴたりと静止させた。[lr]
;;みずき(怯え)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=9
「……」[lr]
何も言わない。ただ黙して見上げてくるだけだ。泣きそうなほどに瞳を揺らして。[pcm]
「……」[lr]
俺も何も言わない。ただ力の入った手を握り返し、少しだけ前に立った。[lr]
@cl
過去のシルエットが穿つ影。その闇に一歩、足を踏み入れる。[lr]
懐かしさを感じる余裕はなかった。むしろ恐怖だった。懐中電灯しか明かりのない夜は、こうも暗いものだとは思わなかった。全き闇。原始の恐怖が心臓を高鳴らせた。[lr]
同時に心が痛かった。みずきは、こんなところへ独りで来ていたのか……。[pcm]
場違いだったかもしれない。何をしにみずきが来ていたのか。それを考えれば。[lr]
けれど、考えられなかった。考えたくなかった。小屋へ近づくほどに深まる闇。その入り口から濃密な異臭が押し寄せてくるなんて。[lr]
そして闇は妄想を呼んだ。[lr]
むしろ夜でなければ気がつかなかっただろう。みずきの手に力が入った。あの夏休みの夜、そうしたように。[lr]
月明かりが地に穿つ、長く長く濃密な影。その寸前で、みずきが休みなく動かしていた足をぴたりと静止させた。[lr]
;;みずき(怯え)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=9
「……」[lr]
何も言わない。ただ黙して見上げてくるだけだ。泣きそうなほどに瞳を揺らして。[pcm]
「……」[lr]
俺も何も言わない。ただ力の入った手を握り返し、少しだけ前に立った。[lr]
@cl
過去のシルエットが穿つ影。その闇に一歩、足を踏み入れる。[lr]
懐かしさを感じる余裕はなかった。むしろ恐怖だった。懐中電灯しか明かりのない夜は、こうも暗いものだとは思わなかった。全き闇。原始の恐怖が心臓を高鳴らせた。[lr]
同時に心が痛かった。みずきは、こんなところへ独りで来ていたのか……。[pcm]
場違いだったかもしれない。何をしにみずきが来ていたのか。それを考えれば。[lr]
けれど、考えられなかった。考えたくなかった。小屋へ近づくほどに深まる闇。その入り口から濃密な異臭が押し寄せてくるなんて。[lr]
そして闇は妄想を呼んだ。[lr]
;;背景『雪景色』、伊万里(シリアス)を一瞬だけ表示。
@snowinit backvisible=true
@bg file="white.jpg" time=700
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@snowinit backvisible=true
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吸い寄せられるようにドアノブに手をかけていた。[lr]
;;背景『作業小屋』に戻す。SE『扉の開く音』
@snowuninit
@cl
@bg file="Lodge_n.jpg" time=700
@snowuninit
@cl
@bg file="Lodge_n.jpg" time=700
開いた隙間から溢れる強烈な悪臭。間違いない。みずきがまとっていた匂いだ。[lr]
その匂いもさることながら、鍵がかかっていなかったという事実に戦慄した。つまり中の存在は逃げられないように――。[pcm]
その匂いもさることながら、鍵がかかっていなかったという事実に戦慄した。つまり中の存在は逃げられないように――。[pcm]
;;BGMフェードアウト。背景『真っ暗に懐中電灯の明りの円』。
@fadeoutbgm time=1500
@bg file="Lodge2_n.jpg" time=700
@fadeoutbgm time=1500
@bg file="Lodge2_n.jpg" time=700
闇に光の円が映し出される。そこに、ころん、と転がっていた。[lr]
懐中電灯の淡い光の中、ころん、と。力なく生気なく。錆びついた茶褐色に染められているものの、その色は……ペールグリーン。[lr]
ぴくっと逸らした視線の先には、真っ赤に濡れた一対の黒髪。ストレートと三つ編みが、血みどろの毒々しい光沢を放っていた。[lr]
なお逸らすもそこにはいつもの糸目がカッと見開かれていて……。[pcm]
「……ぅぅぅぅ」[lr]
吐き気をこらえながら三度逸らした先には放られたチェーンソー。刃に付着しているのは、黒ずんだ紅色。真紅でさえなかった。[lr]
;;BGM『crazeforyou』
@bgm file="c4u.ogg"
対して細腕は真っ白だった。腕というのにも語弊があるかもしれない。肘から先のみなのだから。元から白かった姉さんの肌。あれは……あれが、姉さん、なのだろうか。[lr]
口に酸味が迫りあがってくる。唾を呑み、こらえる。針で胃壁をつつかれる。握りつぶされたように胃全体が蠕動する。全身が一点へ凝縮され、それが上へ上へと上ってくる。[pcm]
「……ぅぅぅぅぅうううげえええええっ!」[lr]
たまらずに解放する。屈んですべてを吐き散らした。[lr]
酸味と涙とで何も考えられなかった。長く長くえずきの音だけが夜に響く。もはや胃液さえ残っていない。だというのにまた胃が引きつった。[lr]
痙攣が通り過ぎたとき、そっとハンカチが口元を拭った。[lr]
「……?」[lr]
;;みずき(泣き笑い)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=4 y=b m=8
はにかんだ微笑み。綻び始めた蕾のような。[lr]
――なん、なんだ?[lr]
微笑んでいる? 苦しむ俺を見てか?[pcm]
疑念に体は芯まで凍ってゆく。力が抜けてへたり込んだ。みずきは笑みを隠そうともせずに口元を拭い続ける。幼児の食べかすを拭うように。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=4 y=b m=6
「動かないのっ……」[lr]
声にいつもの元気はなかった。けれど、いつものように甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるみずき。異常の中、かえって常識めいた何かが口を動かしていた。[lr]
「ありが、とうな……」[lr]
;;みずき(笑み)
@fadeoutbgm time=1500
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=2 e=2 y=b m=1
刹那、蕾がほどけて笑顔が花咲いた。その微笑みはまさに満開のそれで。突如、雷に打たれたように体の筋肉がのたうった。[pcm]
;;BGM『13と1の誓い』
@bgm file="13_1.ogg"
――そう、なのか。[lr]
みずきの苦しみ。それは俺も良く知っているものだった。孤独。自分の居場所を否定され、失うこと。[lr]
伊万里との幼馴染という居場所を失い、世話焼きな弟という居場所を失ったとき、俺に憑きまとい、骨の髄まで凍えさせた、あの孤独の寒気。沈黙の重圧。囁く静謐。[lr]
みずきはあれと対峙している。だとすれば、俺はコイツを救ってやれる。……いや、救ってもらえる。[lr]
「お前を独りには……」[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=7 y=b m=9
近づこうとする俺に、しかしみずきは後退りながら首を振った。[pcm]
;;みずき(怯え涙)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=10 t=1
「あたしね……」[lr]
みずきの視線を追った。夥しいとしか言いようのない血痕。点々とではなくむしろ床全体が血の海だ。[lr]
;↑原文 血の湖
隅に備えつけられたベッドの上に、誰かが拘束されている。[lr]
一瞬、死体かと思った。なぜなのだろう。あんなにも大切に想っていたはずなのに、みずきよりも信じたはずなのに。あまりの衝撃に忘れていた。伊万里のことを問うてここに来たのだということを。[lr]
;;背景『携帯のズーム』。SE『伊万里が殴られる鈍い音』を回想的に挿入。
通話が途絶える直前に聞こえた物音。そこから考えれば、予想してしかるべきだった。[lr]
;;SE『カキリ』
みずきへ向くと、首の骨がかすかに鳴った。[pcm]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=9 t=1
「…………」[lr]
多弁になるかと思っていた。けれど何も語らない。……言い訳はしたくないのだろう。唇を噛んでじっと見つめ返してくるのみだ。[lr]
俺は俺で茫然としているしかなかった。耳が痛くなるほどの静謐の中、互いに互いの瞳の中に言葉を探しあっていた。[lr]
やがて、重々しい息をついたのは、みずきだった。[lr]
;;みずき(泣き笑い)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=8 t=1
「あたしね……」[lr]
最初の雨粒が地面を叩くように、ぽつり、と。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=5 e=6 y=b m=6 t=1
「殺せるんだよ。ほら……」[lr]
真っ青な頬、逆立ったツインテール。左腕を豊かな胸元へ引き寄せ、すがりついている。[pcm]
その仕草はまるで伊万里の――。[lr]
迫る牙を見ながら、それでもすがろうとしない孤高にして孤独のうさぎ。ふと湧いたイメージに、掻きむしられた胸が血を噴いた。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=5 e=6 y=b m=7 t=1
――けれど。逆説のモノローグが思考の流れを断った。[lr]
殺人犯、なのだ。リアリティの欠片もない言葉だが、これが最も的を射ている。連続猟奇殺人鬼。[lr]
今、俺は何を考えているのだろう。自分に問い、自分で答える。説得しての自首。それしか考えようがない。[lr]
けれど、それは本当に正しいのだろうか。異常の真っ只中にいるというのに、常識を判断基準としていいのだろうか。[pcm]
いや、それも今となっては関係ない。どちらに転んでも、上手くやればいい。結局のところ、判断のすべては俺に委ねられている。なら、せめて偽りなく答えを出そう。――伊万里に答えを出すつもりで。[lr]
懐中電灯の淡い光の中、ころん、と。力なく生気なく。錆びついた茶褐色に染められているものの、その色は……ペールグリーン。[lr]
ぴくっと逸らした視線の先には、真っ赤に濡れた一対の黒髪。ストレートと三つ編みが、血みどろの毒々しい光沢を放っていた。[lr]
なお逸らすもそこにはいつもの糸目がカッと見開かれていて……。[pcm]
「……ぅぅぅぅ」[lr]
吐き気をこらえながら三度逸らした先には放られたチェーンソー。刃に付着しているのは、黒ずんだ紅色。真紅でさえなかった。[lr]
;;BGM『crazeforyou』
@bgm file="c4u.ogg"
対して細腕は真っ白だった。腕というのにも語弊があるかもしれない。肘から先のみなのだから。元から白かった姉さんの肌。あれは……あれが、姉さん、なのだろうか。[lr]
口に酸味が迫りあがってくる。唾を呑み、こらえる。針で胃壁をつつかれる。握りつぶされたように胃全体が蠕動する。全身が一点へ凝縮され、それが上へ上へと上ってくる。[pcm]
「……ぅぅぅぅぅうううげえええええっ!」[lr]
たまらずに解放する。屈んですべてを吐き散らした。[lr]
酸味と涙とで何も考えられなかった。長く長くえずきの音だけが夜に響く。もはや胃液さえ残っていない。だというのにまた胃が引きつった。[lr]
痙攣が通り過ぎたとき、そっとハンカチが口元を拭った。[lr]
「……?」[lr]
;;みずき(泣き笑い)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=4 y=b m=8
はにかんだ微笑み。綻び始めた蕾のような。[lr]
――なん、なんだ?[lr]
微笑んでいる? 苦しむ俺を見てか?[pcm]
疑念に体は芯まで凍ってゆく。力が抜けてへたり込んだ。みずきは笑みを隠そうともせずに口元を拭い続ける。幼児の食べかすを拭うように。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=4 y=b m=6
「動かないのっ……」[lr]
声にいつもの元気はなかった。けれど、いつものように甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるみずき。異常の中、かえって常識めいた何かが口を動かしていた。[lr]
「ありが、とうな……」[lr]
;;みずき(笑み)
@fadeoutbgm time=1500
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=2 e=2 y=b m=1
刹那、蕾がほどけて笑顔が花咲いた。その微笑みはまさに満開のそれで。突如、雷に打たれたように体の筋肉がのたうった。[pcm]
;;BGM『13と1の誓い』
@bgm file="13_1.ogg"
――そう、なのか。[lr]
みずきの苦しみ。それは俺も良く知っているものだった。孤独。自分の居場所を否定され、失うこと。[lr]
伊万里との幼馴染という居場所を失い、世話焼きな弟という居場所を失ったとき、俺に憑きまとい、骨の髄まで凍えさせた、あの孤独の寒気。沈黙の重圧。囁く静謐。[lr]
みずきはあれと対峙している。だとすれば、俺はコイツを救ってやれる。……いや、救ってもらえる。[lr]
「お前を独りには……」[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=7 y=b m=9
近づこうとする俺に、しかしみずきは後退りながら首を振った。[pcm]
;;みずき(怯え涙)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=10 t=1
「あたしね……」[lr]
みずきの視線を追った。夥しいとしか言いようのない血痕。点々とではなくむしろ床全体が血の海だ。[lr]
;↑原文 血の湖
隅に備えつけられたベッドの上に、誰かが拘束されている。[lr]
一瞬、死体かと思った。なぜなのだろう。あんなにも大切に想っていたはずなのに、みずきよりも信じたはずなのに。あまりの衝撃に忘れていた。伊万里のことを問うてここに来たのだということを。[lr]
;;背景『携帯のズーム』。SE『伊万里が殴られる鈍い音』を回想的に挿入。
通話が途絶える直前に聞こえた物音。そこから考えれば、予想してしかるべきだった。[lr]
;;SE『カキリ』
みずきへ向くと、首の骨がかすかに鳴った。[pcm]
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=9 t=1
「…………」[lr]
多弁になるかと思っていた。けれど何も語らない。……言い訳はしたくないのだろう。唇を噛んでじっと見つめ返してくるのみだ。[lr]
俺は俺で茫然としているしかなかった。耳が痛くなるほどの静謐の中、互いに互いの瞳の中に言葉を探しあっていた。[lr]
やがて、重々しい息をついたのは、みずきだった。[lr]
;;みずき(泣き笑い)
@mizu pos=c wear=u pose=3 b=5 e=6 y=b m=8 t=1
「あたしね……」[lr]
最初の雨粒が地面を叩くように、ぽつり、と。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=5 e=6 y=b m=6 t=1
「殺せるんだよ。ほら……」[lr]
真っ青な頬、逆立ったツインテール。左腕を豊かな胸元へ引き寄せ、すがりついている。[pcm]
その仕草はまるで伊万里の――。[lr]
迫る牙を見ながら、それでもすがろうとしない孤高にして孤独のうさぎ。ふと湧いたイメージに、掻きむしられた胸が血を噴いた。[lr]
@mizu pos=c wear=u pose=4 b=5 e=6 y=b m=7 t=1
――けれど。逆説のモノローグが思考の流れを断った。[lr]
殺人犯、なのだ。リアリティの欠片もない言葉だが、これが最も的を射ている。連続猟奇殺人鬼。[lr]
今、俺は何を考えているのだろう。自分に問い、自分で答える。説得しての自首。それしか考えようがない。[lr]
けれど、それは本当に正しいのだろうか。異常の真っ只中にいるというのに、常識を判断基準としていいのだろうか。[pcm]
いや、それも今となっては関係ない。どちらに転んでも、上手くやればいい。結局のところ、判断のすべては俺に委ねられている。なら、せめて偽りなく答えを出そう。――伊万里に答えを出すつもりで。[lr]
;;選択肢C『伊万里を愛している』。D『みずきを愛している』
[nowait]
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[link target="*imari2"]1.『伊万里を愛している』[endlink][r]
[link target="*mizuki2"]2.『みずきを愛している』[endlink]
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[nowait]
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[link target="*imari2"]1.『伊万里を愛している』[endlink][r]
[link target="*mizuki2"]2.『みずきを愛している』[endlink]
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[s]