小球と木片の無限回衝突(e<1,停止なし)
先の小球と木片の無限回衝突(e<1)では,木片が衝突の間に一旦停止する場合について考察した。最後に残った一旦停止なしの場合について,だいぶ難儀したが解けたように思う。
※相対速度0になって以降の運動を見逃していたので追加。その後計算違いをみつけてまたまた修正。ようやく『Phun』によるシミュレーションと整合する結果を得た。(2009.03.21)

最初の衝突直後の小球と木片の速さをv_1,V_1とし,両者の質量比をm/M=\alphaとおくと,運動量保存およびはねかえり定数eから次の2式が成り立つ。
\alpha v_0=\alpha v_1+V_1
ev_0=V_1-v_1
辺々引いて,
(\alpha-e)v_0=(1+\alpha)v_1 \quad \therefore \quad v_1=\frac{\alpha-e}{1+\alpha}v_0 \quad , \quad V_1=\frac{\alpha(1+e)}{1+\alpha}v_0
を得る。
初めの衝突から再衝突までの時間および移動距離をt_1,l_1とすると,
v_1t_1=V_1t_1-\frac{1}{2}\mu g{t_1}^2 \quad \therefore \quad t_1=\frac{2ev_0}{\mu g}=\frac{2e}{\mu}\sqrt{\frac{2h}{g}}
l_1=v_1t_1=\frac{2e(\alpha-e){v_0}^2}{(1+\alpha)\mu g}=\frac{4e(\alpha-e)}{(1+\alpha)\mu}\cdot h
となる。

さて,n回目の衝突直後の小球と木片の速さをv_n,V_nn+1回目の衝突直前の木片の速さを{V_n}^\primeとおく。木片は動摩擦力によって等加速度運動をするから,v_nは,V_n{V_n}^\primeの平均となり,したがってn回目衝突直後の相対速さとn+1回目衝突直前の相対速さは等しくなる。
1回目衝突直後の相対速さはV_1-v_1=ev_0であり,1回衝突ごとに相対速さはeの比で減ずるから,n回目衝突直後およびn+1回目衝突直前の相対速さはe^nv_0となる。
以上を整理すると,n回目衝突直後の小球の速さv_nに対して,
V_n=v_n+e^nv_0 \quad , \quad {V_n}^\prime=v_n-e^nv_0
の関係が成立する。

さて,n+1回目の衝突前後の運動量保存により
\alpha v_n+{V_n}^\prime=\alpha v_{n+1}+V_{n+1}
これに対して上の関係を考慮して整理すると,
v_{n+1}-v_n=-\frac{e^n(1+e)}{1+\alpha}\cdot v_0
を得る。したがって,
v_n=v_1-\frac{(1+e)v_0}{1+\alpha}\sum_{k=1}^{n-1} e^k=\left\{1-\frac{(1+e)(e-e^n)}{(1-e)(\alpha-e)}\right\}\cdot v_1
となる。

一方,n回目衝突とn+1回目衝突の間の時間をt_n,移動距離をl_nとすれば,まず
{V_n}^\prime=V_n-\mu gt_n
だから,
t_n=\frac{V_n-{V_n}^\prime}{\mu g}=\frac{2e^nv_0}{\mu g}=e^{n-1}t_1
さらに上の結果を用いて,
l_n=v_nt_n=\left\{1-\frac{(1+e)(e-e^n)}{(1-e)(\alpha-e)}\right\}\cdot v_1\cdot e^{n-1}t_1= \left\{e^{n-1}-\frac{1+e}{(1-e)(\alpha-e)}\times(e^n-e^{2n-1})\right\}\cdot l_1
を得る。

結局,小球と木片の両者が最初の衝突をしてから,相対速度が0になるまでの時間T_1と移動距離L_1は,次のようになる。
T_1=\sum_{n=1}^\infty t_n=\frac{t_1}{1-e}=\frac{2e}{(1-e)\mu}\sqrt{\frac{2h}{g}}
L_1=\sum_{n=1}^\infty l_n=\left\{\frac{1}{1-e}-\frac{1+e}{(1-e)(\alpha-e)}\left(\frac{e}{1-e}-\frac{e}{1-e^2}\right)\right\}\cdot l_1=\frac{4e(\alpha-e-\alpha e)}{(1+\alpha)(1-e)^2\mu}\cdot h
時間T_1後の両者の速さは,
v_\infty = \left\{1-\frac{(1+e)e}{(1-e)(\alpha-e)}\right\}\cdot \frac{\alpha-e}{1+\alpha}v_0 = \frac{\alpha-2e-\alpha e}{(1-e)(1+\alpha)}\cdot v_0
となり,静止するまでの時間T_2および移動距離L_2を計算すると,
T_2 = \frac{\alpha-2e-\alpha e}{1-e}\cdot\frac{v_0}{\mu g} \quad , \quad L_2=\frac{(\alpha-2e-\alpha e)^2}{2(1+\alpha)(1-e)^2}\cdot\frac{{v_0}^2}{\mu g}
を得る。

たとえば,\alpha=4,e=1/2,\mu=1/5のとき,
T_1+T_2=10\sqrt{\frac{2h}{g}}+10\sqrt{\frac{2h}{g}}=20\sqrt{\frac{2h}{g}}
L_1+L_2=12h+4h=16h
となる。

『Phun』によるシミュレーション
\alpha=4,e=1/2,\mu=1/5の場合で,衝突間の時間がeの比で減少することや,L_1+L_2=16hに近く(13hぐらい?)なることが確認できる。斜面と水平面の接続がなめらかでないから,ここでのエネルギー散逸も無視できないようだ。距離も時間もやや短めになるのはそのせいらしい。ちなみに,衝突後すべり距離を16hとしてエネルギー散逸を割り引いた初期高さを逆算すると,そのhで計算した時間は実測とほぼ一致した。

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最終更新:2009年03月21日 08:32
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